相続用語辞典|相続手続き時に出てくる言葉の意味を解説

この記事の位置付け

本ページは、相続用語辞典の項目に関する解説の中核となるページです。個別の論点は、次の各ページで詳しく扱っています。

相続の手続におきましては、日常では用いられない専門用語が数多く登場いたします。当ページは、当サイトに収録しています用語の解説へ導くための総覧です。各用語の名称をお選びいただきますと、それぞれの解説のページに移ります。

相続の意義

相続とは、死亡した者の財産上の権利義務を、法律の定めるところにより一定の身分関係にある者が承継することをいいます。民法第882条は、相続は死亡によって開始する旨を定めています。死亡した者を被相続人と申し、その権利義務を承継する者を相続人と申します。

相続は死亡の瞬間に当然に開始いたします。相続人が相続の開始を知っているかどうか、届出や登記の手続を済ませたかどうかを問いません。手続を行った時が相続の時であるわけではないという点は、実務上しばしば誤解されるところです。

承継の対象となりますのは、被相続人の一身に専属したものを除く一切の権利義務です。民法第896条に定めがあります。不動産、預貯金、有価証券といった積極財産のみならず、借入金、保証債務、未払の租税公課といった消極財産も承継されます。

手続の進め方

まず、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍を収集して相続人の範囲を確定し、あわせて財産及び債務の全容を調査いたします。次に、遺言書の有無を確認いたします。遺言があればその内容に従うのが原則であり、遺言がない場合には、相続人の全員による遺産分割の協議によることとなります。協議が調わないときは、家庭裁判所の調停及び審判の手続によります。

各手続には期限が定められています。相続の放棄及び限定承認は、自己のために相続の開始があったことを知った時から原則として3箇月以内です。相続税の申告及び納付は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10箇月以内です。相続の登記の申請は、所有権を取得したことを知った日から3年以内とされています。不動産登記法第76条の2に定めがあり、令和6年から義務化されたものです。

さらに、相続の開始の時から10年を経過した後にする遺産の分割につきましては、特別受益及び寄与分に関する規定が適用されません。民法第904条の3です。協議を長期にわたり放置することは、不利益を招きます。

用語の総覧

次に掲げる用語の解説を収録しています。50音の順に配列しています。

2割加算みなし相続財産遺言の意思表示能力について遺産相続未分割のままの相続税の申告遺産分割と現在居住住居遺産分割協議書の書き方の留意点遺産分割調停遺留分遺留分と相続人の子への贈与印鑑証明書延納改製原戸籍換価分割基礎控除寄与分検認限定承認固定資産評価証明書戸籍戸籍の附票戸籍抄本戸籍謄本公証人公正証書遺言公正証書遺言広大地の評価祭祀財産財産評価基本通達死因贈与死亡退職金事業承継自筆証書遺言自筆証書遺言書保管制度失踪宣告取得費加算の特例受遺者受贈者準確定申告除籍小規模宅地等の特例障害者控除推定相続人生前贈与生命保険の非課税税務調査相次相続控除相続(遺産分割)と認知症(成年後見)相続関係説明図相続欠格相続財産相続財産管理の際の注意点相続時精算課税制度相続人相続税相続税の申告の要否相続税の申告期限相続税還付相続税評価額と固定資産税評価額相続分の譲渡相続放棄相続放棄に必要な時間相続放棄手続き代襲相続代償分割単純承認嫡出子直系尊属直系卑属底地特別受益認知農地の納税猶予の特例廃除配偶者配偶者控除卑属秘密証書遺言被相続人非課税財産非嫡出子付言事項負担付遺贈物納法定相続とは法定相続分傍系未成年者控除名義預金養子養子縁組利益相反行為暦年贈与連年贈与路線価

留意事項

各用語の解説は、制度の定義と枠組みを簡潔に示すことを主眼としたものです。個別の事案における結論は、事実関係によって異なります。また、法令は改正されることがありますので、実際に手続を行われる際には最新の法令をご確認ください。

税務に関する事項につきましては、税理士にご確認ください。当事務所は税務申告及び税務代理を行うものではありません。登記の申請の代理は司法書士の業務、不動産の鑑定評価は不動産鑑定士の業務であり、いずれも当事務所が行うものではありません。当事務所がお取り扱いいたしますのは、遺産の範囲、遺産分割、遺留分侵害額請求、遺言の効力、遺産の使い込みなど、相続をめぐる民事上の紛争です。弁護士費用につきましては弁護士費用一覧のページをご覧ください。

相続に関する用語及び留意点

本ページは、相続に関する用語及び留意点を1つの頁にまとめたものです。従前、個別の頁として掲載しておりました項目を、令和8年9月4日に本ページへ統合いたしました。

目次

2割加算 配偶者と一親等の血族以外の者の相続税額の加算

相続税額の加算とは、相続又は遺贈により財産を取得した者が、被相続人の一親等の血族及び配偶者のいずれにも当たらない場合に、その者の相続税額に一定の割合を加算する制度をいいます。相続税法に定めが置かれています。

制度の趣旨と対象

被相続人と関係の近い者に比べ、関係の遠い者が財産を取得することは、いわば偶然の利益を得るものと評価し得ます。また、一世代を飛ばして財産を移転することにより課税の機会が失われることを調整する必要もあります。そこで、一定の範囲の者について税額を加重する仕組みが設けられています。

加算の対象とならないのは、被相続人の配偶者、及び一親等の血族です。子及び父母がこれに当たります。これに対し、兄弟姉妹、祖父母、甥又は姪、内縁の配偶者、その他の第三者は、加算の対象となります。

子が既に死亡しているために孫が代襲して相続人となった場合には、その孫は加算の対象とされません。被代襲者である子の地位を承継するものと扱われるためです。他方、代襲相続によらずに孫を養子とした場合には、養子は一親等の法定血族となりますものの、加算の対象から除外されないものとされています。

加算される割合その他の具体的な取扱いは法令の改正により変動いたしますので、税務の取扱いにつきましては税理士にご確認ください。当事務所は税務申告及び税務代理を行うものではありません。

実務上の留意点

第一に、遺言によって相続人以外の者に財産を遺贈される場合には、この加算が生ずることを念頭に置く必要があります。世話になった方に報いる趣旨で遺贈をされましても、税の負担によって手取りの額が想定を下回ることがあります。

第二に、孫を養子とする方法は、世代を飛ばして財産を移転する手段として説明されることがあります。もっとも、加算の対象とされること、法定相続人の数に算入することができる養子の数に制限があること、他の相続人との対立を招きやすいことなど、考慮すべき事項が多くあります。

第三に、当事務所の関心事は、むしろ紛争の予防です。相続人以外の者への遺贈は、相続人の遺留分を侵害する結果となることがしばしばあります。この場合、受遺者は遺留分侵害額請求を受ける立場に置かれ、税の負担と併せて予想外の出捐を強いられることとなります。遺言を作成される際には、遺留分に配慮した内容とすることが望まれます。

第四に、内縁の配偶者は相続人ではなく、また加算の対象ともなります。長年にわたり生活を共にされた方に財産を残すことを希望される場合には、税の負担も含めた検討を要します。

第五に、遺贈を受ける者にとっては、納付すべき税額を賄う資金の手当てが問題となります。不動産のみを遺贈された場合には、換価をしなければ納付ができないという事態が生じ得ます。遺言を作成される際には、税の負担に充てるための金銭を併せて遺贈することも検討に値します。

第六に、相続人以外の者が財産を取得する場面といたしましては、遺贈のほか、死因贈与、生命保険金の受取人としての指定などがあります。いずれについても加算の適用の有無を確認しておく必要がありますので、税理士にご確認ください。

関連する用語

遺贈、代襲相続、養子、遺留分侵害額請求が関連いたします。税務の取扱いにつきましては税理士にご確認ください。弁護士費用につきましては弁護士費用一覧のページをご覧ください。

みなし相続財産 保険金など相続税の課税の対象とされる財産

みなし相続財産とは、民法上は被相続人から相続又は遺贈により取得した財産ではないものの、実質的にこれと同様の経済的効果を有するために、相続税法上は相続又は遺贈により取得したものとみなして課税の対象とされる財産をいいます。相続税法に定めが置かれています。

主なもの

第一に、生命保険金です。被相続人の死亡により支払われる保険金で、その保険料の全部又は一部を被相続人が負担していたものがこれに当たります。受取人が固有の権利として取得するものですので、民法上の相続財産ではありません。

第二に、退職手当金等です。被相続人の死亡により支給される退職手当金、功労金その他これらに準ずる給与で、被相続人の死亡後一定の期間内に支給が確定したものがこれに当たります。

第三に、生命保険契約に関する権利、定期金に関する権利、被相続人から受けた債務の免除による利益などがあります。

相続人が取得した生命保険金及び退職手当金等につきましては、法定相続人の数を基礎として算出される一定の額までは課税価格に算入しないものとされています。この取扱いを受けられるのは相続人に限られ、相続の放棄をした者には適用がありません。具体的な算式及び金額は法令の改正により変動いたしますので、税務の取扱いにつきましては税理士にご確認ください。

実務上の留意点

第一に、課税の対象となることと、遺産分割の対象となることとは別の問題です。生命保険金及び受給者の範囲が定められている死亡退職金は、受取人又は受給者の固有の財産と解されており、原則として遺産分割の対象とはなりません。この区別を誤りますと、協議の前提を欠くこととなります。

第二に、もっとも、保険金の額が遺産の総額に比して著しく高額であり、相続人の間の不公平が到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合には、特別受益に関する民法第903条の規定を類推適用すべきものとされた判例があります。実務上しばしば争点となる論点です。

第三に、死亡退職金につきましては、支給に関する規程の内容によって法的性質が異なります。受給者の範囲及び順位が定められている場合には受給者の固有の権利と解されますが、そのような定めがない場合には遺産に属すると判断されることがあります。規程を確認する必要があります。

第四に、相続の放棄をした者でありましても、受取人として指定されていれば保険金そのものは取得することができます。ただし、非課税の取扱いを受けることはできず、また相続税額の加算の対象となることがあります。

第五に、生命保険金は、遺留分を算定するための財産の価額には原則として算入されません。遺留分侵害額請求を検討される際には、契約の内容を確認する必要があります。

関連する用語

生命保険の非課税、非課税財産、特別受益、遺留分侵害額請求が関連いたします。弁護士費用につきましては弁護士費用一覧のページをご覧ください。

遺言(いごん) 自己の死後の法律関係を定める単独の意思表示

遺言とは、遺言者が自己の死後の法律関係を定めるためにする単独の意思表示をいいます。遺言は、法律の定める方式に従わなければすることができません(民法第960条)。方式を欠く遺言は、内容がいかに明確でありましても効力を生じません。

遺言の方式

普通の方式による遺言には、自筆証書遺言、公正証書遺言及び秘密証書遺言の3種類があります(民法第967条本文)。このほか、死亡の危急に迫った者の遺言等、特別の方式による遺言が定められています。

自筆証書遺言は、遺言者が全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押してするものです(民法第968条第1項)。もっとも、相続財産の目録を添付する場合には、その目録については自書することを要しないものとされ、各頁に署名し印を押せば足りるものとされています(同条第2項)。これは方式を緩和する改正によるものです。

公正証書遺言は、証人2人以上の立会いのもとで公証人が作成いたします(民法第969条)。秘密証書遺言は、遺言の内容を秘密にしたまま、その存在を公証人及び証人に確認させる方式です(民法第970条)。

遺言をすることができる者と撤回

15歳に達した者は、遺言をすることができます(民法第961条)。遺言者は、遺言をする時においてその能力を有しなければなりません(民法第963条)。2人以上の者が同一の証書ですることはできません(民法第975条)。

遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができます(民法第1022条)。前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなされます(民法第1023条第1項)。

実務上の留意点

遺言は、遺言者の死亡の時からその効力を生じます(民法第985条第1項)。自筆証書遺言及び秘密証書遺言につきましては、保管者又は発見した相続人は、遅滞なく家庭裁判所に提出して検認を請求しなければなりません(民法第1004条第1項)。ただし、自筆証書遺言書保管制度により法務局に保管されている遺言書については、検認を要しません。

遺言によって定めることができる事項は法律に定められており、相続分の指定(民法第902条)、遺産の分割の方法の指定(民法第908条第1項)、遺贈(民法第964条)、認知、推定相続人の廃除、遺言執行者の指定などがこれに当たります。

紛争を避けるという観点からは、方式の不備が生じにくく、原本が公証役場に保管される公正証書遺言によることに利点があります。また、遺留分に配慮のない内容といたしますと、相続の開始の後に遺留分侵害額の請求を受ける余地があります。

関連する用語

自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言、検認、遺言執行者、遺留分などの用語も併せてご参照ください。弁護士費用につきましては、弁護士費用一覧のページをご覧ください。

遺言の意思表示能力について

遺言の意思表示能力について

有効な遺言を作成することができる法律上の能力を「遺言能力」と言います。遺言能力を欠いた人が作成した遺言は無効です。認知症の場合、遺言能力が問題となりますが、軽度の認知症に留まるのであれば、通常は遺言能力は否定されません。

遺言能力を知るための最も一般的な検査が「長谷川式簡易知能評価スケールテスト」です。このテストで20点に達しないと、認知症と判断されますが、過去の裁判例を参照すると14点縲怩P5点くらいあれば、遺言能力が否定されることは余りないと思います。ですので、被相続人が認知症の場合に遺言書を作成するのであれば、なるべく遺言書作成日に近い日の「長谷川式簡易知能評価スケールテスト」のテスト結果を保存しておくことにより、後で遺言能力があったかなかったかということが争いうになるのを避けることができます。

病人によっては、既に「長谷川式簡易知能評価スケールテスト」を完了しているかもしれませんので、主治医の先生に聞いてみることも有用です。

また、要介護度では、要介護4では遺言能力ありとされることが一般的のようですが、要介護5では遺言能力なしとされることの方が多いようです。

遺言執行者 遺言の内容を実現するために必要な行為をする者

遺言執行者とは、遺言の内容を実現するために必要な行為をする者をいいます。遺言者は既に死亡していますので、その意思を実現する役割を担う者を置くことができるものとされています。

選任の方法

遺言者は、遺言で、一人又は数人の遺言執行者を指定し、又はその指定を第三者に委託することができます(民法第1006条第1項)。遺言執行者がないとき、又はなくなったときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求によって、遺言執行者を選任することができます(民法第1010条)。

遺言執行者が就職を承諾したときは、直ちにその任務を行わなければなりません(民法第1007条第1項)。任務を開始したときは、遅滞なく、遺言の内容を相続人に通知しなければなりません(同条第2項)。また、遅滞なく相続財産の目録を作成して相続人に交付する義務を負います(民法第1011条第1項)。

権限と相続人の地位

遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有します(民法第1012条第1項)。遺言執行者がその権限内において遺言執行者であることを示してした行為は、相続人に対して直接にその効力を生じます(民法第1015条)。

遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができません(民法第1013条第1項)。これに違反してされた行為は無効ですが、これをもって善意の第三者に対抗することはできません(同条第2項)。

遺言執行者は、自己の責任で第三者にその任務を行わせることができます(民法第1016条第1項)。

実務上の留意点

遺言による認知(民法第781条第2項)、推定相続人の廃除及びその取消し(民法第893条、第894条第2項)につきましては、遺言執行者によらなければ実現することができません。遺言にこれらの内容を含めながら遺言執行者の指定を欠いている場合には、家庭裁判所に選任を請求する必要があります。

相続人の間に対立が生ずることが見込まれる事案におきましては、相続人以外の第三者を遺言執行者に指定しておくことが有用です。相続人の一人を指定いたしますと、他の相続人との間で利害の対立が表面化し、執行が停滞する場合があります。

遺言執行者の報酬は、遺言に定めがあるときはこれにより、定めがないときは家庭裁判所が相続財産の状況その他の事情によって定めることができます(民法第1018条第1項)。当事務所が遺言執行者に指定された場合の弁護士費用につきましては、弁護士費用一覧のページをご覧ください。

遺言執行者は、その任務を怠ったときその他正当な事由があるときは、利害関係人の請求により、家庭裁判所によって解任される場合があります(民法第1019条第1項)。また、正当な事由があるときは、家庭裁判所の許可を得て辞任することができます(同条第2項)。相続人としては、財産目録の交付がされない、執行が長期にわたって進まないといった事情がある場合に、解任の請求を検討する余地があります。

関連する用語

遺言、公正証書遺言、自筆証書遺言、遺贈、廃除、認知などの用語も併せてご参照ください。

遺産相続未分割のままの相続税の申告

遺産相続未分割のままの相続税の申告

相続税の申告期限(「被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内」)以内に遺産分割が成立していない場合の相続税んの申告について、各相続人が法定相続分に従って相続したと仮定して、一旦納税を行うこととなります。
この際、遺産相続未分割のままで相続税の申告を行う場合は、小規模宅地の特例の適用を受けることができませんので、相続税の申告期限より前に遺産分割が成立した場合に比べると、相続税額が高くなります。
もっとも、相続税額が高くなった分は、遺産分割の成立後に更正申告を行うことによって相続税の還付を受けることができます。

遺産分割 共有となった相続財産を各相続人に分属させる手続

遺産分割とは、相続の開始によって共同相続人の共有に属することとなった相続財産を、各相続人に具体的に分属させる手続をいいます。相続人が数人あるときは、相続財産はその共有に属するものとされており(民法第898条第1項)、この共有の状態を解消する手続が遺産分割です。

手続の枠組み

共同相続人は、被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の全部又は一部の分割をすることができます(民法第907条第1項)。協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、各共同相続人は、その分割を家庭裁判所に請求することができます(民法第907条第2項)。実務上は、調停の申立てを経て、調停が成立しない場合に審判へ移行いたします。

被相続人は、遺言で、遺産の分割の方法を定め、又はこれを定めることを第三者に委託することができ、相続の開始の時から5年を超えない期間を定めて分割を禁ずることもできます(民法第908条第1項)。

分割の基準と効力

遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをするものとされています(民法第906条)。

分割の方法としては、個々の財産をそのまま取得させる現物分割、特定の相続人が取得して他の相続人に対価を支払う代償分割、売却して代金を分ける換価分割、共有とする方法があります。

遺産の分割は、相続の開始の時に遡ってその効力を生じます。ただし、第三者の権利を害することはできません(民法第909条)。

実務上の留意点

相続の開始の時から10年を経過した後にする遺産の分割につきましては、原則として特別受益及び寄与分の主張をすることができず、法定相続分又は指定相続分によることとされています(民法第904条の3)。長期間放置した場合には、具体的相続分による調整の機会を失う場合がありますので、ご留意ください。

また、不動産につきましては、相続によって所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったこと及び当該所有権を取得したことを知った日から3年以内に、相続による所有権の移転の登記を申請しなければならないものとされています(不動産登記法第76条の2)。期間内に遺産分割が調わない場合には、相続人である旨の申出をする方法があります(不動産登記法第76条の3)。

配偶者の居住の確保が問題となる事案におきましては、遺産分割によって配偶者居住権を設定することができます(民法第1028条第1項第2号)。居住建物の所有権を取得させる場合と比べ、配偶者が取得する財産の評価を抑えつつ居住を継続させることが可能となる場合があります。

関連する用語

遺産分割協議、遺産分割協議書、代償分割、換価分割、配偶者居住権、法定相続分などの用語も併せてご参照ください。弁護士費用につきましては、弁護士費用一覧のページをご覧ください。

遺産分割と現在居住住居

遺産分割と現在居住住居

遺産分割の対象となるのが、被相続人の一人が現在居住している「住居のみ」であるケースがままあります。

この場合、遺産分割協議において合意が成立しない場合、相続人は裁判所に遺産分割調停を申し立てることとなり、遺産分割調停で調停が纏まらないときは、遺産分割審判で決めることになります。

この場合、被相続人の一人は、現在居住している「住居」から追い出されてしまうのでしょうか。いえいえ、通常は、現在居住している相続人を差し置いて、他の相続人に「住居」を相続させるという結論にはならないので、安心して下さい。

ただし、他の相続人もその「住居」に対する相続分を持っていますので、預貯金など他の財産が少ないときには、被相続人の一人が現在居住している「住居」を共有にせざるを得ないこととなり、この場合、後日、他の相続人から共有物分割請求を受け、その「住居」を売却せざるを得ない事態になることがありますのでご注意ください。

遺産分割協議 共同相続人の全員で遺産の分け方を決める話合い

遺産分割協議とは、共同相続人の全員が、相続財産に属する個々の財産を誰にどのように帰属させるかについて話し合い、合意をすることをいいます。共同相続人は、被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の全部又は一部の分割をすることができます(民法第907条第1項)。

協議の当事者と方法

協議には共同相続人の全員が加わらなければならず、一人でも欠いた協議は無効です。もっとも、全員が一堂に会することまでは必要とされていません。書面を順次回付する方法や、電話、書簡等によって意思を確認する方法によっても、全員の意思が合致していれば協議は成立いたします。

相続人以外にも協議に加わる者があります。包括受遺者は相続人と同一の権利義務を有しますので(民法第990条)、当事者となります。相続分の譲渡を受けた者も同様です。他方、相続放棄をした者は初めから相続人とならなかったものとみなされますので(民法第939条)、協議に加わりません。

分割の方法と基準

分割の方法には、個々の財産をそのまま各相続人に取得させる現物分割、特定の相続人が財産を取得して他の相続人に対価を支払う代償分割、財産を売却して代金を分ける換価分割、複数の相続人の共有とする方法があります。いずれによるかは、財産の性質と相続人の事情によって選択いたします。

民法は分割の基準を定めており、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをするものとしています(民法第906条)。

遺産の分割は、相続の開始の時に遡ってその効力を生じます。ただし、第三者の権利を害することはできません(民法第909条)。

実務上の留意点

協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、各共同相続人は、その分割を家庭裁判所に請求することができます(民法第907条第2項)。実務上は、まず調停の申立てを行い、調停が成立しない場合に審判に移行するのが通例です。

また、相続の開始の時から10年を経過した後にする遺産の分割につきましては、原則として特別受益及び寄与分の主張をすることができず、法定相続分又は指定相続分によることとされています(民法第904条の3)。協議が長期にわたる場合には、この期間に注意を要します。

遺産分割が調うまでの間、被相続人の預貯金から葬儀費用等を支出する必要が生ずることがあります。この場合には、各共同相続人が単独で一定の範囲の預貯金債権を行使することができる制度が設けられています(民法第909条の2)。配偶者の居住の確保が必要な事案におきましては、遺産分割によって配偶者居住権を設定する方法もあります(民法第1028条第1項第2号)。

関連する用語

遺産分割、遺産分割協議書、代償分割、換価分割、特別受益、寄与分などの用語も併せてご参照ください。弁護士費用につきましては、弁護士費用一覧のページをご覧ください。

遺産分割協議書 遺産の分割の合意の内容を記載した書面

遺産分割協議書とは、共同相続人の全員による遺産の分割の協議が調ったときに、その合意の内容を記載した書面をいいます。分割の効力は協議の成立によって生じますが、その内容を後日に証明するため、書面を作成するのが実務の通例です。

協議と書面の位置付け

共同相続人は、被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の全部又は一部の分割をすることができます(民法第907条第1項)。民法は書面の作成を協議の効力の要件とはしていません。もっとも、不動産の登記、金融機関の払戻し、相続税の申告のいずれの場面におきましても、書面の提出を求められますので、実際には作成が不可欠です。

協議には共同相続人の全員が加わらなければなりません。一人でも欠いた協議は無効です。したがいまして、協議に先立ち、戸籍謄本等によって相続人の範囲を確定しておく必要があります。包括受遺者も相続人と同一の権利義務を有しますので(民法第990条)、協議に加わることになります。

当事者に特別の事情がある場合

未成年者とその親権者がいずれも相続人である場合には、親権者が未成年者を代理して協議をすることは利益相反行為に当たりますので、家庭裁判所に特別代理人の選任を請求しなければなりません(民法第826条)。

判断能力を欠く常況にある相続人がいる場合には、成年後見人等の選任を経る必要があります。行方の知れない相続人がいる場合には、不在者の財産の管理人の選任(民法第25条)又は失踪宣告(民法第30条)の手続を経ることになります。これらの手続を省いてされた協議は、効力を否定される余地があります。

記載事項と実務上の留意点

書面には、被相続人の氏名、死亡の年月日、本籍及び最後の住所を記載して被相続人を特定し、次いで、誰がどの財産を取得するかを記載いたします。不動産につきましては、登記記録の表示に従って所在、地番、地目、地積等を記載し、預貯金につきましては金融機関名、店舗名、預金の種別及び口座番号を記載いたします。記載が不十分ですと、登記又は払戻しの手続で受理されない場合があります。

末尾に共同相続人の全員が署名し、実印を押印したうえ、印鑑登録証明書を添付するのが通例です。後日に新たな遺産が判明した場合の取扱いを定める条項を置いておきますと、再度の協議を要しない場合があります。

なお、相続債務の負担を協議で定めましても、その定めをもって債権者に対抗することはできないのが原則です。また、相続の開始の時から10年を経過した後にする分割につきましては、原則として特別受益及び寄与分の主張をすることができません(民法第904条の3)。

関連する用語

遺産分割、遺産分割協議、印鑑証明書、相続関係説明図、特別受益、寄与分などの用語も併せてご参照ください。弁護士費用につきましては、弁護士費用一覧のページをご覧ください。

遺産分割協議書の書き方の留意点

遺産分割協議書の書き方の留意点

遺産分割協議書を作成するときは、氏名と住所を正確に記載する必要があります。遺産分割協議書の記載が正確でない場合、折角、遺産分割協議書を作成したとしても、不動産登記を行うことができない場合があります。遺産分割協議書を作成するときは、通常、氏名は戸籍謄本で確認し、住所は印鑑証明書に従って記載するようにしてください。

遺産分割調停

遺産分割調停とは

相続人間において遺産分割の協議が纏まらない場合は、裁判所に遺産分割調停を申し立てることをお勧めします。遺産分割調停では、調停委員(2名)が、相続人間での話し合いを仲介・調整します。多くの場合、調停委員のうち1名は第三者である弁護士です。遺産分割調停では、相続人のうち誰にどのような法的権利があるのかを基準に話が進みます。裁判ではありませんが、裁判と同様、法律で認められる権利義務が基準となって手続きが進みます。最近では、遺産分割調停について弁護士に代理を依頼することも多くなっています。

遺贈(いぞう) 遺言によって財産を無償で他人に与える処分

遺贈とは、遺言によって財産を無償で他人に与える処分をいいます(民法第964条)。遺贈を受ける者を受遺者と申します。受遺者は相続人以外の者であっても、相続人であっても差し支えありません。

包括遺贈と特定遺贈

遺言者は、包括又は特定の名義で、その財産の全部又は一部を処分することができます(民法第964条)。財産を特定せず、遺産の全部又は一定の割合を与えるものを包括遺贈と申します。目的物を特定して与えるものを特定遺贈と申します。

包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有するものとされています(民法第990条)。したがいまして、積極財産のみならず債務も割合に応じて承継し、遺産分割の協議にも当事者として加わることになります。他方、特定遺贈の受遺者は、特定された財産を取得するにとどまり、原則として債務を承継いたしません。

効力の発生と放棄

遺贈は、遺言者の死亡の時からその効力を生じます(民法第985条第1項)。受遺者が遺言者の死亡以前に死亡したときは、遺贈は効力を生じません(民法第994条第1項)。

受遺者は、遺贈を放棄することができます。特定遺贈の放棄は、遺言者の死亡の後、いつでもすることができ、その効力は遺言者の死亡の時に遡ります(民法第986条)。これに対し、包括遺贈の放棄は、相続の承認及び放棄に関する規定によることとなりますので、原則として自己のために遺贈があったことを知った時から3か月の期間内に、家庭裁判所に申述をする必要があります。

遺贈に負担を付すこともできます(民法第1002条)。負担付遺贈を受けた者は、遺贈の目的の価額を超えない限度においてのみ、負担した義務を履行する責任を負います。

実務上の留意点

遺贈は、遺言者の単独行為であり、相手方の承諾を要しません。この点で、贈与者と受贈者との契約である死因贈与(民法第554条)と異なります。

不動産の遺贈につきましては、所有権の移転の登記を要します。遺言執行者が指定されている場合には、遺言執行者が手続を行うことになります。遺言執行者がその権限内において遺言執行者であることを示してした行為は、相続人に対して直接にその効力を生じます(民法第1015条)。登記の申請の代理は司法書士の業務ですので、当事務所においてこれを行うものではありません。

また、遺贈は遺留分侵害額の請求の対象となり得ます。税務の取扱いにつきましては、税理士にご確認ください。

相続人に対してされた遺贈につきましては、特定の財産を特定の相続人に承継させる旨の遺言、いわゆる特定財産承継遺言との区別が問題となることがあります。両者は、遺言の解釈によって振り分けられるものですが、遺贈と解されるか特定財産承継遺言と解されるかによって、放棄の可否、対抗要件の要否、賃借権の承継における承諾の要否等の取扱いが異なる場合があります。遺言の文言は、この区別を意識して定めておくことが望ましいものです。

関連する用語

受遺者、負担付遺贈、死因贈与、遺言、遺言執行者、遺留分侵害額請求などの用語も併せてご参照ください。弁護士費用につきましては、弁護士費用一覧のページをご覧ください。

遺留分

遺留分とは

遺留分とは、法定相続人が保有する権利であり、被相続人の遺言書の内容に関わらず、法定相続人が最低限度相続することができる最低保障としての相続分のことです。

ですので、被相続人が特定の相続人などに財産すべてを相続させる旨の遺言書を書いたとしても、法定相続人は、法定相続分の2分の1の遺留分を相続することができるのです。

仮にお父さんが亡くなったときにお母さんが生きているとして、2人兄弟の場合、お兄さんの遺留分は、相続財産の8分の1です。

遺留分が存在するとしても、遺留分減殺請求権は形成権と言って、権利行使した人にだけ認められる権利ですので、遺留分権利者が、遺留分減殺請求権を行使しなければ、そのまま終わりますので、遺言書(被相続人が特定の相続人などに財産すべてを相続させる旨の遺言書)を作成しておくことは大きな効果があります。

なお、遺留分減殺請求権の時効は、遺留分権利者が相続開始・減殺すべき贈与・遺贈のいずれかがあったことを知った時から1年ですので、ご注意ください。

遺留分(いりゅうぶん) 兄弟姉妹以外の相続人に保障された取り分

遺留分とは、兄弟姉妹以外の相続人のために、被相続人の財産のうち一定の割合について法律上留保された取り分をいいます(民法第1042条)。被相続人が遺言又は生前の贈与によって財産を自由に処分することができる原則に対し、相続人の生活の基盤を保護するために設けられた制度です。

遺留分を有する者と割合

遺留分を有するのは、被相続人の配偶者、子及びその代襲者並びに直系尊属です。兄弟姉妹には遺留分が認められていません(民法第1042条第1項柱書)。

遺留分の割合は、直系尊属のみが相続人である場合には遺留分を算定するための財産の価額の3分の1、それ以外の場合には2分の1です(民法第1042条第1項各号)。相続人が数人ある場合には、これらの割合に、民法第900条及び第901条の規定により算定した各自の相続分を乗じた割合が、各人の遺留分となります(民法第1042条第2項)。

算定の基礎となる財産

遺留分を算定するための財産の価額は、被相続人が相続の開始の時において有した財産の価額に、その贈与した財産の価額を加えた額から、債務の全額を控除して算定いたします(民法第1043条第1項)。

加算される贈与の範囲には、期間の限定があります。相続人以外の者に対する贈与は、原則として相続の開始前の1年間にされたものに限られます(民法第1044条第1項前段)。もっとも、当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、1年前の日より前にされたものであっても加算されます(同項後段)。相続人に対する贈与につきましては、婚姻若しくは養子縁組のため又は生計の資本として受けたものに限り、原則として相続の開始前の10年間にされたものが加算されます(民法第1044条第3項)。

実務上の留意点

遺留分を侵害する内容の遺言でありましても、その遺言が無効となるものではありません。遺言は有効なものとして効力を生じ、遺留分を侵害された相続人が、遺留分侵害額の請求をするかどうかを選択することになります(民法第1046条)。請求をしなければ、遺言のとおりの結果が確定いたします。

遺言を作成する側におきましても、遺留分に配慮のない内容といたしますと、相続の開始の後に紛争を招くことが少なくありません。特定の相続人に事業用資産を集中させる必要がある場合には、他の相続人に対する代償の手当てを併せて検討する必要があります。

なお、遺留分の放棄は、相続の開始前におきましては家庭裁判所の許可を受けたときに限りその効力を生じます(民法第1049条第1項)。相続の開始前に相続人の間で交わされた念書等は、この許可を欠く限り、遺留分の放棄としての効力を有しないものと解されています。

関連する用語

遺留分侵害額請求、遺留分の放棄、特別受益、遺贈、法定相続分などの用語も併せてご参照ください。弁護士費用につきましては、弁護士費用一覧のページをご覧ください。

遺留分と相続人の子への贈与

遺留分と相続人の子への贈与

被相続人が現金を保有している場合、相続人(子)の子(孫)に暦年贈与することにより、他の相続人(子=相続人の兄弟姉妹)の相続分や遺留分を減少させることができます。

相続人(子)の子(孫)は、相続人本人ではないので、基本的に、贈与したとしても特別受益にはなりません。

遺留分の放棄 遺留分の権利を自ら放棄する手続

遺留分の放棄とは、遺留分を有する相続人が、その遺留分に関する権利を自ら放棄することをいいます。相続の開始の前にする場合と、相続の開始の後にする場合とで、手続が異なります。

制度の内容

相続の開始前における遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を受けたときに限り、その効力を生ずるものとされています(民法第1049条第1項)。被相続人となるべき者の圧力によって放棄が強いられることを防ぐため、家庭裁判所の関与を要するものとされたものです。

家庭裁判所の実務におきましては、放棄が本人の自由な意思に基づくものであるか、放棄をするについて合理性及び必要性が認められるか、放棄に見合う代償が与えられているかといった事情を考慮して、許可の可否が判断されているものと解されています。

相続の開始の後は、家庭裁判所の許可を要しません。遺留分を侵害された相続人が、遺留分侵害額の請求をしない旨の意思を表示し、又は権利行使をしないまま期間の制限にかかることによって、結果として権利を失うことになります。

共同相続人の一人のした遺留分の放棄は、他の各共同相続人の遺留分に影響を及ぼしません(民法第1049条第2項)。すなわち、放棄によって他の相続人の遺留分が増えるわけではありません。

実務上の留意点

遺留分の放棄は、相続放棄とは全く別の制度です。遺留分を放棄いたしましても、相続人としての地位を失うものではありません。したがって、遺産分割の協議に加わる立場は残り、被相続人の債務についても法定相続分に応じて承継することになります。この点を取り違えたまま放棄がされる例がありますので、ご注意ください。

事業の承継の場面におきまして、後継者に自社株式その他の事業用資産を集中させるため、他の相続人に対して相続の開始前の遺留分の放棄を求めることがあります。もっとも、家庭裁判所は本人の意思を直接に確認いたしますので、本人の協力が得られない場合には許可を得ることができません。また、いったん許可がされますと、事情の変更がない限り、これを取り消すことは容易ではありません。

なお、一定の要件を満たす中小企業の事業の承継につきましては、中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律に、遺留分に関する民法の特例が設けられています。推定相続人全員の合意と経済産業大臣の確認及び家庭裁判所の許可を要するものですが、遺留分の放棄とは別の選択肢となる場合があります。

放棄の対象となるのは遺留分に関する権利のみです。遺贈又は贈与を受ける地位、遺産分割の協議において具体的な取得分を主張する立場、寄与分を主張する立場のいずれも、遺留分の放棄によって当然に失われるものではありません。放棄をする範囲がどこまでに及ぶのかにつきましては、書面の文言によって争いが生ずることがありますので、あらかじめ明確にしておくことが望ましいものです。

関連する用語

遺留分、遺留分侵害額請求、相続放棄、推定相続人などの用語も併せてご参照ください。遺留分の放棄を求められた場合、又は求めたい場合には、代償の相当性を含めて事前の検討を要します。当事務所は東京弁護士会所属の弁護士がご相談をお受けしています。弁護士費用につきましては、弁護士費用一覧のページをご覧ください。

遺留分侵害額請求 遺留分を侵害された相続人による金銭の請求

遺留分侵害額請求とは、遺留分を侵害された相続人が、贈与又は遺贈を受けた者に対し、遺留分の侵害額に相当する金銭の支払を請求することをいいます(民法第1046条第1項)。

制度の内容

遺留分を有するのは、兄弟姉妹以外の相続人、すなわち配偶者、子及びその代襲者並びに直系尊属です(民法第1042条)。これらの者は、被相続人が遺言又は生前の贈与によって財産を処分した結果、法律上留保された取り分を下回ることとなった場合に、その不足額の支払を求めることができます。

この権利は、金銭の支払を求める権利です。法律の改正により、贈与又は遺贈の効力そのものを失わせ、目的物の返還を求める権利から、金銭債権へと改められたものです。したがいまして、請求をいたしましても、不動産や株式が当然に共有となるわけではありません。

請求を受けた者が金銭を直ちに準備できない場合には、裁判所は、その者の請求により、金銭債務の全部又は一部の支払について相当の期限を許与することができます(民法第1047条第5項)。

期間の制限

遺留分侵害額の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間行使しないときは、時効によって消滅いたします。相続の開始の時から10年を経過したときも、同様です(民法第1048条)。

この期間は短いですので、まずは内容証明郵便によって請求の意思表示を行い、到達の事実を明らかにしておくのが実務の通例です。意思表示さえ期間内にされていれば、具体的な金額の協議はその後に行うことができます。

実務上の留意点

侵害額の計算の基礎となるのは、遺留分を算定するための財産の価額です。これは、被相続人が相続の開始の時において有した財産の価額に、贈与した財産の価額を加え、債務の全額を控除して算定いたします(民法第1043条第1項)。加算される贈与の範囲は、相続人以外の者に対するものは原則として相続の開始前の1年間にされたもの、相続人に対する婚姻若しくは養子縁組のため又は生計の資本としての贈与は原則として相続の開始前の10年間にされたものです(民法第1044条)。

実際の紛争におきましては、不動産や非上場株式の評価をめぐって主張が大きく隔たることが少なくありません。当事者間の協議が調わない場合には、家庭裁判所の調停の手続を経ることが通例です。結果を保証することはできませんが、資料の収集と評価の方法の選択が、金額を左右する場合があります。

請求を受ける側の負担の順序にも定めがあります。受遺者と受贈者とがあるときは受遺者が先に負担し、受贈者が複数あるときは後の贈与を受けた者から順に負担するものとされています(民法第1047条第1項)。誰に対して請求をすべきかを誤りますと、期間の制限にかかる場合がありますので、遺言の内容及び生前の贈与の状況を早期に把握する必要があります。

関連する用語

遺留分、遺留分の放棄、遺贈、特別受益、受遺者などの用語も併せてご参照ください。弁護士費用につきましては、弁護士費用一覧のページをご覧ください。

印鑑証明書 登録された印鑑であることを市区町村長が証明する書面

印鑑証明書とは、市区町村長に登録された印鑑につき、その印影が登録された印鑑のものであることを証明する書面をいいます。正式には印鑑登録証明書と申します。相続の手続におきましては、書面に押された印が本人の実印であることを裏付ける資料として用いられます。

登録と交付

印鑑の登録及びその証明に関する事務は、住所地の市区町村が条例に基づいて行っています。登録をした印鑑を実印と申しまして、登録をしていない印鑑と区別いたします。登録の後は、印鑑登録証又はこれに代わるカードの提示によって、証明書の交付を受けることができます。

法人につきましては、市区町村ではなく、登記所が印鑑に関する証明書を発行いたします。相続財産に法人の持分等が含まれ、法人が手続の当事者となる場合には、こちらを用いることになります。

相続の手続における用途

遺産分割協議書には、共同相続人の全員が署名し、実印を押印したうえで、各人の印鑑証明書を添付するのが実務の通例です。相続による所有権の移転の登記の申請におきましても、遺産分割協議書を添付情報とする場合には、これに押された印に係る印鑑証明書の添付が求められます。

このほか、金融機関における預貯金の払戻し又は名義の変更の手続、有価証券の名義の書換えの手続、相続税の申告書に遺産分割協議書を添付する場合などにおいても、提出を求められます。

証明書そのものに法令上の一般的な有効期間が定められているわけではありませんが、提出先が独自に作成後の期間の制限を設けていることが多くあります。手続ごとに何通必要となるかを確認したうえ、まとめて取得しておくと二度手間を避けることができます。

実務上の留意点

実印及び印鑑証明書は、本人の意思を裏付ける最も強い資料の一つです。内容を確認しないまま他の相続人に実印を預け、又は白紙の書面に押印をいたしますと、意図しない内容の遺産分割協議書が作成される危険があります。押印は、書面の内容を確認したうえで、ご自身で行っていただくのが安全です。

国外に居住しており日本国内に住民登録のない相続人につきましては、印鑑の登録をすることができません。この場合には、在外公館において署名についての証明を受け、これをもって印鑑証明書に代えるのが通例です。

なお、登記の申請の代理は司法書士の業務ですので、当事務所においてこれを行うものではありません。

また、相続人の一人が他の相続人の実印及び印鑑証明書を用いて、無断で遺産分割協議書を作成する事例が見受けられます。このような書面によって登記がされた場合には、遺産分割協議が成立していないことを主張し、登記の抹消等を求めることになりますが、既に第三者に権利が移転している場合には回復が困難となる余地があります。印鑑証明書の交付を求められた際には、何の手続に用いるものかを確認しておくことが肝要です。

関連する用語

遺産分割協議書、戸籍謄本、相続関係説明図、固定資産評価証明書などの用語も併せてご参照ください。弁護士費用につきましては、弁護士費用一覧のページをご覧ください。

延納(えんのう) 相続税を年賦により分割して納付する制度

延納とは、相続税を納期限までに一時に金銭で納付することが困難である場合に、担保を提供したうえで、年賦の方法によって分割して納付することを認める制度をいいます(相続税法第38条)。相続税は金銭による一時の納付を原則としていますので、延納はその例外に当たるものです。

制度の枠組み

延納の許可を受けるためには、納付すべき相続税額が一定の額を超えていること、金銭で納付することを困難とする事由があり、かつ延納を求める額がその困難とする金額の範囲内であること、担保を提供すること、及び納期限までに延納申請書に担保提供関係書類を添えて提出することが必要とされています。担保の提供を要しない場合も定められています。

延納をすることができる期間及び延納の期間中に課される利子税の割合は、課税相続財産のうちに不動産等の占める割合に応じて区分されています。すなわち、財産の構成によって取扱いが異なる仕組みとなっています。

延納によっても金銭で納付することが困難な事由がある場合には、一定の要件のもとで、相続により取得した財産そのものをもって納付する物納の制度が設けられています(相続税法第41条)。また、いったん延納の許可を受けた後に延納の継続が困難となったときに、物納へ変更する道も用意されています。

実務上の留意点

延納の申請は、相続税の申告期限、すなわち相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月を経過する日までに行う必要があります。この期限までに遺産分割が調っていませんと、どの相続人がどの財産を取得するのかが定まらず、担保として提供すべき財産の選定にも支障を生じます。納税の場面から逆算いたしますと、遺産分割の協議は早期に着手すべきものです。

納税資金の不足は、遺産の大部分が不動産又は非上場株式であって換価が容易でない場合に生じやすいものです。このような事案におきましては、延納及び物納の可否と併せて、換価分割によって納税資金を確保する方法、代償分割による調整の方法などを、遺産分割の内容そのものと一体として検討する必要があります。

延納の要件、期間、利子税の割合その他の具体的な取扱いは、税制の改正によって変動いたします。税務の取扱いにつきましては、税理士にご確認ください。当事務所は税務の申告の代理を行うものではなく、遺産分割及び相続人間の紛争の解決を担うものです。

なお、延納の許可を受けるためには担保の提供を要するのが原則ですが、遺産分割が調っていない段階では、相続人が単独で相続財産を担保に供することができません。この点からも、納税の期限から逆算した日程の管理が重要となります。相続人の間に深刻な対立があり、期限までに協議の成立が見込めない事案におきましては、未分割のまま申告を行ったうえで、後日の分割によって修正するという選択を迫られる場合もあります。

関連する用語

物納、換価分割、代償分割、準確定申告、財産評価基本通達などの用語も併せてご参照ください。弁護士費用につきましては、弁護士費用一覧のページをご覧ください。

改製原戸籍(かいせいげんこせき) 様式の改正前の従前の戸籍

改製原戸籍とは、戸籍法その他の関係法令の改正によって戸籍が新しい様式に作り替えられた場合に、その作り替えの元となった従前の戸籍をいいます。「かいせいげんこせき」と読みますが、現在の戸籍を意味する「現戸籍」と紛らわしいことから、実務上は「かいせいはらこせき」と読み分けることがあります。

戸籍の改製

戸籍は、これまでに複数回にわたって様式が改められてまいりました。家を単位とする編製から夫婦及びその氏を同じくする子を単位とする編製への変更、及びその後の電子計算機による事務の取扱いに伴う改製が、代表的なものです。

改製に際しましては、従前の戸籍に記載された事項のうち、既に効力を失っている事項は、新しい戸籍に移記されません。婚姻又は離婚によって従前の戸籍から除かれた者、既に死亡した者、養子縁組が解消された事実などは、新しい戸籍からは読み取ることができません。改製原戸籍は、こうした記載を保存するものとして意義を有しています。

相続の手続における必要性

相続人の範囲を確定するためには、被相続人の出生の時から死亡の時までの連続した戸籍が必要です。現在の戸籍のみを取得いたしましても、前婚における子、認知した子、既に死亡して代襲相続が生じている子などの存在が判明しない場合があります。そのため、現在の戸籍から順次遡り、改製原戸籍及び除籍の謄本を含めて収集することになります。

これらを収集した結果、想定していなかった相続人の存在が判明することは、決して稀ではありません。遺産分割の協議は共同相続人の全員によらなければ効力を生じませんので、収集を怠りますと、成立したはずの協議が後日無効となる危険があります。

実務上の留意点

戸籍法の改正により、本籍地以外の市区町村の窓口においても、戸籍謄本等の交付を請求することができる仕組みが設けられています。もっとも、請求することができる者の範囲及び対象となる戸籍には制限があり、電子計算機による処理がされていない一部の改製原戸籍等はこの仕組みの対象となりません。この場合には、従前どおり本籍地の市区町村に対して請求することになります。

古い改製原戸籍は、毛筆又は手書きの旧字体で記載されており、判読が容易でないことがあります。記載の意味を読み誤りますと相続人の範囲を誤りますので、判断に迷われる場合には専門家にご確認いただくのが安全です。

なお、改製原戸籍の謄本は、本籍地の市区町村において保存の期間が経過した場合には、交付を受けることができないことがあります。この場合には、取得することができなかった旨の証明を受け、他の資料と併せて相続人の範囲を疎明することになります。金融機関及び登記の手続におきましては、こうした取扱いの可否が窓口ごとに異なることがありますので、事前に確認しておくことが望ましいものです。

関連する用語

戸籍、戸籍謄本、戸籍抄本、除籍、戸籍の附票、相続関係説明図などの用語も併せてご参照ください。弁護士費用につきましては、弁護士費用一覧のページをご覧ください。

換価分割 遺産を売却して金銭に換え代金を分ける分割の方法

換価分割とは、遺産に属する財産を売却して金銭に換え、その代金を共同相続人の間で分ける遺産分割の方法をいいます。財産をそのまま分けることが難しく、かつ特定の相続人が代償金を支払う資力を有しない場合に選択されることが多い方法です。

他の分割の方法との関係

遺産分割の方法には、個々の財産をそのまま各相続人に取得させる現物分割、特定の相続人が財産を取得して他の相続人に対価を支払う代償分割、複数の相続人の共有とする方法、及び換価分割があります。

換価分割は、遺産の全体を金銭に置き換えたうえで分けるものですから、相続分に応じた公平な分配が最も容易であるという利点があります。他方、財産そのものを承継することができなくなりますので、居住している建物や先祖から承継してきた財産については、他の方法との比較検討を要します。

共同相続人の協議によるほか、家庭裁判所も、遺産の分割の審判をするため必要があると認めるときは、遺産に属する物又は権利の換価を命ずることができるものとされています(家事事件手続法第194条第1項)。

手続の進め方

協議による場合には、換価の対象とする財産、売却の方法、売却を委ねる者、最低の売却価格の目安、売却に要する費用の負担、代金の分配の割合及び時期を、あらかじめ定めておくことが望ましいものです。これらを定めないまま売却に着手いたしますと、価格の判断をめぐって改めて対立を生ずることがあります。

不動産につきましては、共同相続人の全員の名義で登記をしたうえで売却する方法と、便宜上、相続人のうちの一人又は数人の名義としたうえで売却し、代金を分配する方法とがあります。後者による場合には、換価分割のための便宜の措置であることを遺産分割協議書に明記しておく必要があります。この記載を欠きますと、代金の分配が相続人間の贈与と扱われる余地があります。

実務上の留意点

売却の時期及び価格について合意が得られず、手続が停滞することがあります。相場の変動によって当初の見込みが崩れ、再度の協議を要する場合もあります。期限を定めて売却活動を行い、期限内に成約しない場合の取扱いを定めておく方法が考えられます。

換価によって譲渡所得が生ずる場合には、各相続人がそれぞれ申告を行うことになります。相続税の申告期限の翌日から一定の期間内に譲渡した場合には、納付した相続税額のうち一定の額を取得費に加算することができる特例が設けられています。税務の取扱いにつきましては、税理士にご確認ください。また、不動産の鑑定評価は不動産鑑定士の業務であり、当事務所がこれを行うものではありません。

関連する用語

代償分割、遺産分割、遺産分割協議書、取得費加算の特例、底地などの用語も併せてご参照ください。弁護士費用につきましては、弁護士費用一覧のページをご覧ください。

基礎控除 課税価格から一律に差し引かれる金額

基礎控除とは、課税の対象となる金額を算定するに当たり、特別の要件を要することなく一律に差し引かれる金額をいいます。相続に関して基礎控除と申します場合には、相続税の課税価格の合計額から控除される遺産に係る基礎控除額を指すのが通例です(相続税法第15条)。

制度の枠組み

遺産に係る基礎控除額は、すべての相続に共通して適用される定額の部分と、法定相続人の数に応じて加算される部分との合計として定められています。すなわち、相続人の数が多いほど控除される額が大きくなる仕組みです。

課税価格の合計額が基礎控除額を超えない場合には、相続税の申告は原則として要しないものとされています。もっとも、小規模宅地等の特例、配偶者に対する相続税額の軽減その他の特例を適用した結果として納付すべき税額が生じないという場合には、申告をすることが特例の適用の要件とされていますので、申告が必要です。この区別を誤りますと、特例の適用を受けられない事態を招く余地があります。

法定相続人の数の算定

基礎控除額の算定の基礎となる法定相続人の数につきましては、相続の放棄があった場合であっても、その放棄がなかったものとした場合の相続人の数によるものとされています。したがいまして、相続放棄によって基礎控除額が減少することはありません。

また、被相続人に養子がある場合には、法定相続人の数に算入することができる養子の数に制限が設けられています。さらに、養子縁組が専ら相続税の負担を不当に減少させる結果となると認められる場合には、その者の数を算入しないものとされる定めがあります。

実務上の留意点

基礎控除額の具体的な金額並びに養子の数の制限その他の要件は、税制の改正によって変動いたします。具体的な金額及び最新の取扱いにつきましては、税理士にご確認ください。当事務所は税務の申告の代理を行うものではありません。

弁護士が関与いたしますのは、その前提となる相続人の範囲の確定です。戸籍の収集によって前婚における子、認知された子、代襲相続人の存在が判明いたしますと、法定相続人の数が変わり、基礎控除額にも影響が及びます。相続人の範囲に争いのある事案におきましては、まずこの点を確定させる必要があります。

なお、贈与税の課税の方式のうち暦年課税におきましても基礎控除が定められていますが、相続税の基礎控除とは全く別の制度です。両者を混同しないようご留意ください。

基礎控除額を超えるかどうかの判断の前提として、遺産の範囲そのものに争いがある場合があります。被相続人の名義でない預金が実質的に被相続人に帰属するものと評価される場合、生前に引き出された金銭の使途が問題となる場合などです。これらは遺産の範囲の確定という民事上の問題であり、弁護士が取り扱うべき事項に属します。

関連する用語

相続税、法定相続分、養子縁組、小規模宅地等の特例、配偶者控除、暦年贈与などの用語も併せてご参照ください。弁護士費用につきましては、弁護士費用一覧のページをご覧ください。

寄与分(きよぶん) 特別の寄与をした相続人に加算される額

寄与分とは、共同相続人中に、被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときに、その者の相続分に加算される額をいいます(民法第904条の2第1項)。相続分を形式的に適用したのでは実質的に不公平となる場合に、これを調整するための制度です。

要件並びに定め方及び効果

寄与分が認められるためには、寄与をした者が共同相続人であること、寄与が被相続人の事業に関する労務の提供若しくは財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法によるものであること、その寄与が特別の寄与と評価されるものであること、及び寄与によって被相続人の財産が維持され又は増加したことが必要です。

ここで「特別の」寄与とされていますのは、夫婦間の協力扶助の義務、親族間の扶養の義務の範囲にとどまる行為は含まれない趣旨です。通常期待される程度の援助や看護を超える貢献であることを要するものと解されています。

寄与分は、まず共同相続人の協議によって定めます。協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、寄与をした者の請求により、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、これを定めます(民法第904条の2第2項)。

効果といたしましては、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から寄与分を控除したものを相続財産とみなして各人の相続分を算定し、その算定された額に寄与分を加えた額をもって、寄与をした者の相続分といたします(民法第904条の2第1項)。なお、寄与分は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができません(同条第3項)。

相続人以外の者による寄与

寄与分は共同相続人に認められる制度ですので、相続人でない者の貢献は対象となりません。もっとも、この点につきましては、被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族が、相続の開始の後、相続人に対して特別寄与料の支払を請求することができる制度が設けられています(民法第1050条第1項)。相続人の配偶者が被相続人の介護に当たった場合などが、これに当たり得ます。

特別寄与料につきましては、当事者間に協議が調わないときは家庭裁判所に協議に代わる処分を請求することができますが、特別寄与者が相続の開始及び相続人を知った時から6か月を経過したとき、又は相続開始の時から1年を経過したときは、請求をすることができません(民法第1050条第2項)。期間が短いですので、ご留意ください。

実務上の留意点

寄与分は、主張をする側がその内容を明らかにする必要があります。介護の記録、支出を裏付ける領収書、事業に従事した期間及び受領した対価を示す資料など、寄与の内容と程度を具体的に示す資料の有無が結論を大きく左右いたします。相続の開始の後に資料を作成することは困難ですので、日頃からの保存が肝要です。

また、相続の開始の時から10年を経過した後にする遺産の分割におきましては、原則として寄与分の主張をすることができません(民法第904条の3)。この期間にもご注意ください。

関連する用語

特別受益、遺産分割、法定相続分、相続放棄などの用語も併せてご参照ください。弁護士費用につきましては、弁護士費用一覧のページをご覧ください。

検認(けんにん) 家庭裁判所が遺言書の状態を確認する手続

検認とは、遺言書の保管者又はこれを発見した相続人が、相続の開始を知った後、遅滞なく家庭裁判所に遺言書を提出して、その方式に関する一切の事実を調査し、遺言書の状態を保存する手続をいいます(民法第1004条第1項)。

目的と対象

検認は、遺言書の偽造及び変造を防ぎ、その時点における内容及び状態を明らかにして保存することを目的とする手続です。したがいまして、検認を経たことによって遺言が有効であると確定するものではありません。検認の後に、遺言の効力を争うことは妨げられません。この点は誤解されやすいところですので、ご留意ください。

自筆証書遺言及び秘密証書遺言は、検認を要します。これに対し、公正証書遺言については検認を要しません(民法第1004条第2項)。また、自筆証書遺言書保管制度によって法務局に保管されている遺言書につきましても、検認の規定は適用されないものとされています。

封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会いがなければ、開封することができません(民法第1004条第3項)。発見された遺言書に封がされている場合には、その場で開封してはなりません。

手続の流れ

申立ては、遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対して行います。申立てに際しましては、遺言者の出生から死亡までの戸籍、相続人全員の戸籍等を添付いたします。家庭裁判所は、相続人の全員に対して期日を通知いたしますが、出席は任意であり、一部の相続人が出席しない場合であっても手続を行うことができます。

期日におきましては、遺言書の用紙、筆記の具、加除訂正の状況、署名及び押印の有無等が確認され、その結果が調書に記載されます。手続の終了後、遺言書に検認済みであることの証明書が付されます。不動産の登記、金融機関の手続におきましては、この証明書の付された遺言書の提出を求められるのが通例です。

実務上の留意点

検認を経ないで遺言を執行し、又は家庭裁判所外において封印のある遺言書を開封した者は、過料に処せられます(民法第1005条)。もっとも、これによって遺言そのものが無効となるものではありません。

他方、開封の経緯によっては、内容を改ざんしたのではないかとの疑いを招き、相続人間の対立を深める結果となることがあります。遺言書を発見した場合には、開封せずに保管し、速やかに検認の申立てを行うことが肝要です。

なお、遺言書が複数発見された場合には、そのすべてについて検認の申立てを行います。いずれが有効であるか、いずれの内容が優先するかは検認の手続で判断されるものではなく、前の遺言が後の遺言と抵触する部分については後の遺言によって撤回されたものとみなされるという定めに従って(民法第1023条第1項)、別途に判断されることになります。

関連する用語

遺言、自筆証書遺言、秘密証書遺言、公正証書遺言、自筆証書遺言書保管制度、遺言執行者などの用語も併せてご参照ください。弁護士費用につきましては、弁護士費用一覧のページをご覧ください。

限定承認 相続財産の限度でのみ債務を弁済する相続の承認

限定承認とは、相続人が、相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して、相続の承認をすることをいいます(民法第922条)。単純承認と相続放棄との中間に位置する選択肢です。

要件と手続

限定承認は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内にしなければなりません(民法第915条第1項本文)。この期間は熟慮期間と呼ばれ、利害関係人又は検察官の請求によって家庭裁判所が伸長することができます(同項ただし書)。

相続人が数人あるときは、限定承認は、共同相続人の全員が共同してのみこれをすることができます(民法第923条)。一人でも単純承認をしている者があるときは、限定承認をすることができません。もっとも、相続放棄をした者は初めから相続人とならなかったものとみなされますので(民法第939条)、残る相続人の全員が共同すれば足ります。

手続といたしましては、家庭裁判所に対し、相続財産の目録を作成して提出したうえ、限定承認をする旨を申述いたします(民法第924条)。

清算の手続

限定承認がされますと、相続財産を清算する手続に入ります。相続人が数人あるときは、家庭裁判所は、相続人の中から相続財産の清算人を選任いたします(民法第936条第1項)。

清算人等は、限定承認をした後、すべての相続債権者及び受遺者に対し、一定の期間内にその請求の申出をすべき旨を公告し、知れている相続債権者には各別にこれを催告いたします(民法第927条)。その後、申出のあった債権者等に対し、それぞれの債権額の割合に応じて弁済を行います。

相続財産中に相続人が取得を希望する財産がある場合には、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に従い、その価額を弁済して当該財産の競売を止めることができるものとされています(民法第932条ただし書)。自宅などを手元に残したい場合に用いられる仕組みです。

実務上の留意点

限定承認は、資産と負債のいずれが多いかが判然としない場合、又は負債が上回るおそれはあるものの手元に残したい財産がある場合に、検討の余地があります。もっとも、共同相続人の全員の足並みがそろわなければ選択することができず、清算の手続も相応に煩瑣ですので、実際に用いられる例は多くありません。

また、限定承認をいたしますと、課税の面で単純承認とは異なる特有の取扱いが生じます。税務の取扱いにつきましては、税理士にご確認ください。熟慮期間は短いですので、判断に迷われる場合には、期間の伸長の申立てを検討することになります。

なお、熟慮期間の内に相続財産の全部又は一部を処分いたしますと、単純承認をしたものとみなされ(民法第921条第1号)、限定承認をすることができなくなります。被相続人の預金を解約して費消する、遺品を売却するといった行為が、これに当たると評価される余地があります。判断が定まるまでの間の行動には、慎重を期していただく必要があります。

関連する用語

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固定資産評価証明書 固定資産税の評価額を証明する書面

固定資産評価証明書とは、固定資産課税台帳に登録された土地及び家屋の価格その他の事項を証明する書面をいいます。当該資産の所在地の市町村が交付いたします。ここにいう価格は、固定資産税の課税標準の基礎となるものであり、固定資産税評価額と呼ばれています。

相続の手続における用途

第一に、相続による所有権の移転の登記の申請に際して用いられます。登記の申請には登録免許税を要し、その課税標準は不動産の価額とされていますところ、この価額は固定資産課税台帳に登録された価格によることとされています。そのため、価額を明らかにする資料として提出いたします。

第二に、相続税の申告における家屋の評価に用いられます。家屋の価額は、固定資産税評価額を基礎として算定するものとされています。これに対し、宅地の価額は、路線価が定められている地域においては路線価によって算定いたしますので、両者の扱いは異なります。

第三に、遺産分割において不動産の価額を検討する際の一資料となります。もっとも、固定資産税評価額は課税のために画一的に定められるものであり、取引の実勢とは一致いたしません。遺産分割における評価は、当事者の合意又は家庭裁判所の判断によるものですので、これのみに依拠して分割の内容を定めますと、実質的に不均衡な結果を招く余地があります。

交付の請求

交付を請求することができるのは、当該資産の所有者のほか、相続人その他の法令に定める者です。相続人が請求する場合には、被相続人の死亡の記載のある戸籍及び請求者が相続人であることを示す戸籍を添えることになります。

あわせて名寄帳の写しを取得いたしますと、被相続人が当該市町村の区域内に所有する不動産を一覧することができます。遺産の全体を把握するうえで有用です。

実務上の留意点

私道の用に供されている土地その他の課税がされていない不動産は、評価証明書に現れないことがあります。名寄帳においても把握しきれない場合がありますので、登記記録及び公図を併せて確認し、遺産から漏れることのないよう注意を要します。相続による所有権の移転の登記は申請が義務とされていますので(不動産登記法第76条の2)、漏れを生じますと、その義務の履行にも支障を来す余地があります。

なお、登記の申請の代理は司法書士の業務であり、不動産の鑑定評価は不動産鑑定士の業務です。いずれも当事務所がこれを行うものではありません。税務の取扱いにつきましては、税理士にご確認ください。当事務所が担いますのは、遺産の範囲及び分割の内容をめぐる相続人間の紛争の解決です。

また、評価証明書に記載された価格は、その年度のものです。年度をまたいで手続を行う場合には、提出先から最新の年度のものを求められることがありますので、取得の時期にもご留意ください。

関連する用語

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戸籍 出生・婚姻・死亡等の身分関係を公証する公簿

戸籍とは、日本国民の出生、婚姻、離婚、養子縁組、認知、死亡その他の身分に関する事項を登録し、これを公証する公簿をいいます。戸籍法に基づき、市区町村がその事務を取り扱っています。

編製と記載事項

戸籍は、一の夫婦及びこれと氏を同じくする子を単位として編製されます。婚姻をいたしますと、夫婦について新たな戸籍が編製され、子が婚姻をいたしますと、その子は従前の戸籍から除かれて新たな戸籍に入ります。

戸籍には、本籍及び筆頭に記載された者の氏名が表示され、在籍する各人につき、氏名、出生の年月日、戸籍に入った原因及び年月日、実父母の氏名及び続柄、養子であるときは養親の氏名及び続柄、他の戸籍から入った者についてはその戸籍の表示などが記載されます。

本籍は、戸籍の所在を示す表示にすぎず、現に居住している場所である住所とは別のものです。本籍と住所とが異なることは珍しくありませんので、混同されませんようご留意ください。

相続における意義

相続人の範囲は、被相続人との身分関係によって法律上定まるものです。その身分関係を公に証する資料が戸籍ですから、相続の手続におきましては、まず戸籍の収集から着手することになります。

必要となるのは、被相続人の出生の時から死亡の時までの連続した戸籍です。現在の戸籍のみでは、前婚における子、認知された子、既に死亡して代襲相続が生じている子の存在が判明しないことがあるためです。戸籍は改製又は転籍によって複数にわたりますので、現在のものから順次遡って収集し、改製原戸籍及び除籍の謄本も含めて取得いたします。

戸籍に記載されない事実は、原則として相続人としての地位を基礎づけるものではありません。内縁の配偶者、事実上養育を受けた者は、戸籍に記載がない限り相続人とはなりません。他方、認知がされた子は戸籍に記載され、相続人となります。

実務上の留意点

戸籍は、現在では電子計算機によって処理されているものが多くありますが、改製前の記載は改製原戸籍として保存されています。また、在籍者の全員が除かれた戸籍は除籍として保存されます。相続人の範囲の確定には、これらを併せて確認する必要があります。

戸籍法の改正により、本籍地以外の市区町村の窓口においても戸籍謄本等の交付を請求することができる仕組みが設けられ、収集の負担は軽減されています。もっとも、請求することができる者の範囲及び対象となる戸籍には制限があります。

なお、戸籍の記載は常に正確であるとは限りません。届出の誤り、記載の遺脱その他の事情によって、実際の身分関係と符合しない場合があります。この場合には、家庭裁判所の許可を得て訂正の申請をする手続等が用意されています。相続の場面において記載に疑義がある場合には、これを放置せず、早期に確認しておくことが望ましいものです。

関連する用語

戸籍謄本、戸籍抄本、改製原戸籍、除籍、戸籍の附票、相続関係説明図などの用語も併せてご参照ください。弁護士費用につきましては、弁護士費用一覧のページをご覧ください。

戸籍の附票(こせきのふひょう) 住所の移転の経過を記録した書面

戸籍の附票とは、戸籍に記載されている者につき、その戸籍が編製された時からの住所の変遷を記録した公簿をいいます。本籍地の市区町村が、戸籍と一体のものとして作成し、住民基本台帳の記録と連動して住所の異動が反映されます。

戸籍及び住民票との関係

戸籍は身分に関する事項を、住民票は現に居住している住所を、それぞれ公証するものです。これに対し、戸籍の附票は、その戸籍に在籍していた期間における住所の履歴を示すものであり、両者を橋渡しする役割を担っています。

住民票にも住所の異動が記載されますが、市区町村を越えて転居を繰り返した場合には、転出先を順次たどらなければ履歴を把握することができません。これに対し、戸籍の附票は本籍地において一括して記録されていますので、履歴を効率よく確認することができます。

相続における用途

第一に、被相続人の同一性を証する資料として用いられます。不動産の登記記録に記録されている住所と死亡の時の住所とが異なる場合には、両者が同一人であることを示す必要があります。戸籍の附票によって住所の変遷をたどることができれば、この点を明らかにすることができます。

第二に、所在の知れない相続人の住所を調査する手がかりとなります。長年にわたって交流のない相続人がある場合であっても、戸籍をたどってその本籍地を把握し、附票を取得することによって、現在の住所に到達し得ることがあります。遺産分割の協議は共同相続人の全員によらなければ効力を生じませんので、この調査は不可欠です。

交付の請求につきましては、戸籍謄本等と同様に、請求することができる者の範囲に制限が設けられています。弁護士は、受任している事件の処理に必要な場合には、職務上の請求の方法によることができます。

実務上の留意点

戸籍の附票は、その戸籍が編製された後の住所の履歴を記録するものですので、それより前の住所は記載されません。したがいまして、婚姻等により新たな戸籍が編製されている場合には、従前の戸籍の附票も併せて取得する必要があります。

除かれた戸籍に係る附票の保存の期間は、従前は短期にとどまっていましたが、法令の改正により大幅に延長されています。もっとも、既に保存の期間が経過して交付を受けることができない場合もありますので、その際には、他の資料によって同一性又は所在を明らかにすることを検討いたします。

また、附票によって判明した住所に宛てて連絡をいたしましても、応答が得られないことがあります。住所地に居住の実体がない場合には、不在者の財産の管理人の選任(民法第25条第1項)又は失踪宣告(民法第30条)の手続によることを検討いたします。いずれによるべきかは、生死が不明であるか否か及びその期間によって異なります。

関連する用語

戸籍、戸籍謄本、除籍、改製原戸籍、相続関係説明図、失踪宣告などの用語も併せてご参照ください。弁護士費用につきましては、弁護士費用一覧のページをご覧ください。

戸籍抄本 戸籍のうち特定の者の事項のみを写した書面

戸籍抄本とは、戸籍に記載された事項のうち、請求に係る特定の者に関する部分のみを写した書面をいいます。電子計算機によって処理されている戸籍につきましては、戸籍個人事項証明書と称されます。

戸籍謄本との違い

戸籍謄本が当該戸籍に在籍する者の全員に関する記載を含むのに対し、戸籍抄本は特定の一人又は数人に関する記載のみを抜き出したものです。証明の対象となる範囲が異なるにとどまり、証明力そのものに優劣があるわけではありません。

もっとも、相続の手続におきまして通常求められますのは戸籍謄本です。相続人の範囲を確定するためには、当該戸籍に誰が在籍していたのかを漏れなく把握する必要があり、特定の者に関する記載のみでは、他に子があるかどうかを確認することができないからです。

戸籍抄本が用いられる場面

戸籍抄本で足りますのは、特定の者の出生の年月日、氏名、親子関係といった限られた事項のみを示せば足りる手続です。旅券の申請、各種の資格の登録の申請、年金に関する一部の手続などがこれに当たります。

相続に関しましても、既に相続人の範囲が確定している段階において、特定の相続人自身の身分関係を示せば足りる場面では、抄本によることが可能な場合があります。ただし、提出先によって取扱いが異なりますので、あらかじめ確認しておくことが確実です。

交付を請求することができる者の範囲は、戸籍謄本の場合と同様です。戸籍に記載されている者、その配偶者、直系尊属又は直系卑属が請求することができ(戸籍法第10条第1項)、これらに当たらない者は、自己の権利を行使し、又は自己の義務を履行するために必要であることなどを明らかにして請求することとなります(戸籍法第10条の2)。

実務上の留意点

窓口又は郵送によって請求をする際に、単に戸籍と申し出ますと、抄本が交付されることがあります。相続の手続に用いる場合には、全部を写したものが必要である旨、及び被相続人の出生の時から死亡の時までのすべてが必要である旨を明記して請求することが肝要です。取り違えますと、改めて取得する手間と費用を要することになります。

また、抄本によって手続を進めた結果、後に他の相続人の存在が判明することがあります。共同相続人の全員によらない遺産分割の協議は無効ですので、範囲の確認は謄本によって行うべきものです。

なお、戸籍抄本と戸籍謄本のいずれについても、電子計算機による処理がされていない戸籍につきましては、従前どおり謄本又は抄本の名称が用いられ、処理がされている戸籍につきましては全部事項証明書又は個人事項証明書の名称が用いられます。名称は異なりますが、証明の対象となる範囲による区別であることに変わりはありません。

関連する用語

戸籍、戸籍謄本、改製原戸籍、除籍、戸籍の附票などの用語も併せてご参照ください。弁護士費用につきましては、弁護士費用一覧のページをご覧ください。

戸籍謄本 戸籍に記載された全員の事項を写した書面

戸籍謄本とは、戸籍に記載された事項の全部を写した書面をいいます。電子計算機によって処理されている戸籍につきましては、戸籍全部事項証明書と称されます。いずれも、当該戸籍に在籍する者の全員に関する記載が含まれる点に特徴があります。

抄本との違いと相続における用途

戸籍に記載された事項の一部のみを写したものは戸籍抄本と申しまして、謄本とは区別されます。相続の手続におきまして通常求められますのは謄本です。相続人の範囲を確定するためには、当該戸籍に誰が在籍していたかを漏れなく把握する必要があり、一部のみを写した書面では足りないからです。

具体的には、相続による所有権の移転の登記、金融機関における預貯金の払戻し又は名義の変更、有価証券の名義の書換え、生命保険金の請求、相続税の申告、家庭裁判所に対する各種の申立てにおいて、提出を求められます。

交付を請求することができる者

戸籍に記載されている者、その配偶者、直系尊属又は直系卑属は、戸籍謄本等の交付を請求することができます(戸籍法第10条第1項)。したがいまして、子は親の戸籍を、孫は祖父母の戸籍を請求することができます。

これらに当たらない者、例えば兄弟姉妹の戸籍を請求する場合や、被相続人の子である相続人が他の相続人の戸籍を請求する場合には、自己の権利を行使し、又は自己の義務を履行するために必要であることなどを明らかにして請求することとなります(戸籍法第10条の2)。弁護士は、受任している事件の処理に必要な場合には、職務上の請求の方法によることができます。

実務上の留意点

被相続人の出生から死亡までの戸籍を収集いたしますと、相当な通数となることが少なくありません。手続の相手方ごとに同じ束を提出するのは煩瑣ですので、法定相続情報証明制度を利用し、登記所の認証を受けた法定相続情報一覧図の写しの交付を受ける方法があります。この写しは、多くの手続において戸籍の束に代えて用いることができ、必要な通数の交付を受けることができます。

また、提出先に原本の還付を求めることができる場合があります。あらかじめ還付の可否を確認しておきますと、重ねて取得する費用と手間を省くことができます。郵送によって請求する場合には、相続の手続に用いる旨及び出生から死亡までのすべてが必要である旨を明記しておくと、必要な範囲の交付を受けやすくなります。

なお、収集した戸籍の記載から相続人の範囲を読み解く作業は、必ずしも容易ではありません。転籍が繰り返されている場合、養子縁組及びその解消がある場合、代襲相続又は再代襲が生じている場合には、判断を誤る例が見受けられます。範囲を誤ったまま成立した遺産分割の協議は無効となりますので、疑義がある場合には専門家にご確認いただくのが安全です。

関連する用語

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公証人 公正証書の作成や認証の事務を行う法務大臣任命の者

公証人とは、当事者その他の関係人の嘱託により、公正証書の作成、私署証書の認証、確定日付の付与等の事務を行う者をいいます。法務大臣が任命し、公証役場において職務を行います。

地位と職務

公証人は、公証人法に基づき、裁判官、検察官、弁護士その他の法律の実務に携わってきた者のうちから任命されるのが通例です。国から給与の支給を受けるものではありませんが、公務に従事する者として取り扱われています。

その職務は、法律行為その他私権に関する事実についての公正証書の作成、私署証書の認証、会社その他の法人の定款の認証、確定日付の付与などです。公証人が作成した公正証書は、公文書として高い証明力を有し、また、金銭の支払を目的とする一定の内容のものにつきましては、執行認諾の文言を付すことによって、裁判の手続を経ずに強制執行の手続をとることができる効力を備えます。

相続の場面における役割

相続に関しまして公証人が関与する最も代表的な場面は、公正証書遺言の作成です。公正証書遺言は、証人2人以上の立会いのもと、遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授し、公証人がこれを筆記して遺言者及び証人に読み聞かせ又は閲覧させ、各自が署名し押印したうえ、公証人が方式に従って作成した旨を付記して署名し押印することによって作成されます(民法第969条)。

口がきけない者又は耳が聞こえない者につきましても、通訳人の通訳による申述又は自書によって口授に代えるなど、別の方式が定められています(民法第969条の2)。身体の状態により公証役場に赴くことが困難な場合には、公証人が病院又は自宅に出張して作成することも可能です。

このほか、秘密証書遺言の作成に際しても公証人が関与いたします(民法第970条)。また、任意後見契約は、法律により公正証書によってしなければならないものとされています。死因贈与契約を公正証書によって締結する例もあります。

実務上の留意点

公証人は、遺言者の意思を確認し、方式の適合を確保する役割を担っていますが、遺言者の判断能力を医学的に診断する立場にはありません。公正証書によって作成された遺言でありましても、作成の当時に遺言能力を欠いていたとして、その効力が争われる例があります。作成に際して医師の診断書を取得しておく、作成に至る経緯を記録しておくといった備えが、後日の紛争の予防に資する場合があります。

公証人の手数料は、法令の定めるところにより、目的の価額等に応じて算定されます。当事務所の弁護士費用につきましては、弁護士費用一覧のページをご覧ください。

また、公証人は嘱託を受けて証書を作成する立場にあり、いずれの当事者の利益を図る立場にもありません。相続人の間に利害の対立が見込まれる事案におきまして、遺言の内容をどのように定めるべきかという相談に応ずるものではありませんので、内容の検討そのものは、別途に弁護士にご相談いただく必要があります。

関連する用語

公正証書遺言、秘密証書遺言、自筆証書遺言、検認、遺言執行者などの用語も併せてご参照ください。

公正証書遺言

公正証書遺言とは

公正証書遺言とは、公正証書により作成した遺言書のことです。自筆証書で作成する自筆証書遺言という方法もありますが、自筆証書遺言だと偽物であると難癖を付けられるリスクがあるため、やはり公正証書遺言をお勧めします。

公正証書遺言 公証人が方式に従って作成する遺言

公正証書遺言とは、遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授し、公証人がこれを筆記して、法定の方式に従って作成する遺言をいいます(民法第969条)。普通の方式による遺言のうち、最も方式の不備が生じにくいものです。

方式

公正証書遺言は、証人2人以上の立会いのもとで作成いたします。遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授し、公証人がこれを筆記して遺言者及び証人に読み聞かせ、又は閲覧させます。遺言者及び証人が筆記の正確なことを承認した後、各自がこれに署名し、印を押します。遺言者が署名することができない場合には、公証人がその事由を付記して署名に代えることができます。最後に、公証人がその証書は方式に従って作ったものである旨を付記して、これに署名し印を押します(民法第969条)。

口がきけない者又は耳が聞こえない者が公正証書遺言をする場合には、通訳人の通訳による申述又は自書によって口授に代えるなどの別の方式が定められています(民法第969条の2)。

証人となることができない者も定められています。未成年者、推定相続人及び受遺者並びにこれらの配偶者及び直系血族、公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び使用人は、証人となることができません(民法第974条)。遺言によって財産を受ける者やその家族を証人といたしますと、遺言そのものの効力が争われる余地がありますので、ご留意ください。

他の方式に対する利点

公正証書遺言の原本は公証役場に保管されます。したがいまして、紛失、隠匿又は改ざんの危険が小さく、相続の開始の後に所在が分からなくなる事態を避けることができます。公証役場においては、遺言公正証書が作成されているかどうかを検索する仕組みが設けられており、相続人はこれを利用することができます。

また、公正証書遺言については、家庭裁判所の検認を要しません(民法第1004条第2項)。相続の開始の後、直ちに執行に着手することができますので、手続の遅滞を避けることができます。

身体の状態により公証役場に赴くことが困難な場合には、公証人が病院又は自宅に出張して作成することも可能です。

実務上の留意点

方式の点で堅固でありましても、作成の当時に遺言者が遺言能力を欠いていたとして効力が争われる例があります。高齢又は疾病により判断能力に不安がある場合には、作成に近接した時期の医師の診断書を取得し、また、遺言に至る経緯を記録しておくことが、後日の紛争の予防に資する場合があります。

内容の面におきましても、遺留分に配慮を欠いた遺言といたしますと、遺留分侵害額の請求を招くことになります。特定の相続人に事業用資産を集中させる必要がある場合には、他の相続人に対する手当てを併せて検討し、その趣旨を付言事項として記載しておく方法があります。遺言執行者を指定しておくことも、円滑な執行に資するものです。

関連する用語

遺言、自筆証書遺言、秘密証書遺言、公証人、検認、遺言執行者、付言事項などの用語も併せてご参照ください。弁護士費用につきましては、弁護士費用一覧のページをご覧ください。

広大地の評価 著しく地積の広い宅地の評価額を減額する取扱い

広大地の評価とは、その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積の広大な宅地について、相続税及び贈与税の課税価格の計算の基礎となる価額を減額する取扱いをいいます。もっとも、この取扱いは既に廃止されており、現在は、これに代わるものとして地積規模の大きな宅地の評価が設けられています。

旧来の取扱いとその問題

従前の広大地の評価は、その宅地について開発行為を行うとした場合に、道路その他の公共公益的施設の用地の負担が必要と認められるものを対象とし、地積に応じて減額の割合が定まる算式によって評価額を求めるものでした。広大な土地は、そのすべてを宅地として利用することができず、区画の割付けに際して道路等の負担を伴うことから、これを評価に反映させる趣旨です。

もっとも、適用の可否が、開発行為に伴う負担が必要と認められるかという定性的な判断に係っていましたため、納税者と課税庁との間で判断が分かれ、争いが少なくありませんでした。また、減額の割合が地積のみによって定まりましたので、土地の形状や周辺の状況が評価に反映されにくいという指摘もありました。

現在の取扱い

財産評価基本通達の改正により、平成30年1月1日以後に相続、遺贈又は贈与により取得した財産の評価につきましては、広大地の評価が廃止され、地積規模の大きな宅地の評価によることとされています。

現在の取扱いは、地積の基準に加え、路線価地域における地区の区分、都市計画法上の区域の区分、指定容積率等の形式的な要件によって適用の可否を判定し、規模格差補正率を用いて評価額を求めるものです。判定の基準が明確となり、従前に比べて予測可能性が高まったものと評価されています。

実務上の留意点

適用の要件、除外される宅地の範囲、規模格差補正率の具体的な数値は、財産評価基本通達の定めるところによるものであり、改正によって変動いたします。税務の取扱いにつきましては、税理士にご確認ください。また、不動産の鑑定評価は不動産鑑定士の業務であり、当事務所がこれを行うものではありません。

なお、相続税の課税価格の計算のための評価額と、遺産分割において共同相続人が分け方を定める際に用いる評価額とは、必ずしも一致するものではありません。前者は通達に従って画一的に算定されるものですが、後者は当事者の合意又は家庭裁判所の判断によるものであり、取引の実勢が考慮されます。この違いを踏まえずに分割の内容を定めますと、実質的に不均衡な結果を招く余地があります。

過去に開始した相続につきまして、更正の請求その他の争いが残っている事案におきましては、その相続の開始の時点における取扱いが問題となります。したがいまして、廃止された取扱いでありましても、その内容を把握しておくことに意義がないわけではありません。もっとも、これから開始する相続につきましては、現在の取扱いによることになります。

関連する用語

財産評価基本通達、路線価、底地、小規模宅地等の特例、相続税還付などの用語も併せてご参照ください。弁護士費用につきましては、弁護士費用一覧のページをご覧ください。

祭祀財産(さいしざいさん) 墓地や仏壇など祭祀のための財産

祭祀財産とは、系譜、祭具及び墳墓をいいます(民法第897条第1項)。家系図その他の系譜、位牌、仏壇、神棚等の祭具、墓石及び墓地等の墳墓がこれに当たります。祖先の祭祀のために用いられる財産であり、通常の相続財産とは異なる取扱いを受けます。

承継の仕組み

系譜、祭具及び墳墓の所有権は、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継いたします。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継いたします(民法第897条第1項)。慣習が明らかでないときは、家庭裁判所が承継すべき者を定めます(同条第2項)。

被相続人による指定は、遺言によることを要しません。生前の口頭又は書面による指定でも足り、明示のもののみならず黙示のものでもよいと解されています。もっとも、後日の争いを避けるためには、遺言その他の書面によって明らかにしておくことが望ましいものです。

祭祀財産は、相続財産とは別に扱われますので、遺産分割の対象となりません。相続分に応じて分けるものではなく、承継者が単独で承継いたします。また、相続放棄をした者であっても、祭祀を主宰すべき者として指定され、又は慣習上その地位にある場合には、祭祀財産を承継することができます。

承継者の地位

祭祀財産を承継した者が、祭祀を執り行う法律上の義務を負うものとは解されていません。したがいまして、承継者が祭祀を行わないことをもって、他の相続人が法的な請求をすることは、原則として困難です。

他方、承継者は、祭祀財産の管理及び維持に要する費用を負担することになります。墓地の管理料、法要の費用等がこれに当たります。これらの負担が少なくない場合には、遺産分割の協議において、承継者が他の相続人よりも多くの財産を取得することとし、又は他の相続人が費用を分担する旨を定める例があります。祭祀財産そのものは遺産分割の対象ではありませんが、こうした調整を協議の内容に盛り込むことは差し支えありません。

実務上の留意点

遺骨の帰属につきましては、明文の定めがありませんが、判例上、祭祀を主宰すべき者に帰属するものと解されています。分骨、改葬をめぐって親族間に対立が生ずることがあります。

誰が祭祀を主宰すべき者であるかにつきましては、指定の有無、被相続人との生活関係、承継の意思及び能力その他の事情を考慮して判断されます。協議が調わない場合には、家庭裁判所に対して祭祀承継者の指定の審判を申し立てることになります。なお、祭祀財産の課税上の取扱いにつきましては、税理士にご確認ください。

なお、墓地の使用権は、墓地の経営者との間の契約に基づく権利であり、その承継及び名義の変更につきましては、墓地の使用に関する規則の定めるところによることになります。祭祀承継者が定まりましても、規則所定の手続を経なければ名義の変更ができない場合がありますので、併せて確認しておく必要があります。

関連する用語

相続財産、非課税財産、遺産分割、相続放棄などの用語も併せてご参照ください。弁護士費用につきましては、弁護士費用一覧のページをご覧ください。

財産評価基本通達 相続財産の評価の方法を定める国税庁の通達

財産評価基本通達とは、相続税及び贈与税の課税価格の計算の基礎となる財産の価額の評価につき、その方法を定めた国税庁の通達をいいます。相続税法は、特別の定めのあるものを除き、相続、遺贈又は贈与により取得した財産の価額は当該財産の取得の時における時価による旨を定めていますが(相続税法第22条)、時価の算定は容易でないことから、評価の方法を統一するために置かれているものです。

通達の位置付け

通達は、行政組織の内部において上級の機関が下級の機関に対して発するものであり、法令ではありません。したがいまして、国民を直接に拘束する効力を有するものではありません。

もっとも、課税の実務はこれに従って行われていますので、事実上の基準として機能しています。納税者の側におきましても、通達に従った評価によることが、課税庁との間で争いを生じない方法となっています。

主な評価の方法

宅地につきましては、路線価が定められている地域においては路線価方式により、それ以外の地域においては固定資産税評価額に一定の倍率を乗ずる倍率方式によります。家屋につきましては、固定資産税評価額によることとされています。

上場株式につきましては、課税時期の最終の価格その他の一定の価格のうち最も低いものによることとされています。取引相場のない株式につきましては、会社の規模及び株主の態様に応じて、類似業種比準方式、純資産価額方式又は配当還元方式によることとされています。

また、この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価するものとされています。通達に従った評価が実勢と著しくかけ離れる事案において、この定めの適用の可否が争われることがあります。

実務上の留意点

最も注意を要しますのは、この通達による評価額と、遺産分割において共同相続人が分け方を定める際に用いる評価額とが、同じものではないという点です。前者は課税のために画一的に算定されるものですが、後者は当事者の合意又は家庭裁判所の判断によるものであり、取引の実勢が考慮されます。

とりわけ取引相場のない株式につきましては、両者が大きく隔たることがあります。通達による評価額を前提として遺産分割の内容を定めた結果、実質的に著しく不均衡な結果を招いた事例がありますので、ご留意ください。具体的な評価の方法及び算式は改正によって変動いたします。税務の取扱いにつきましては、税理士にご確認ください。

また、相続税の申告を終えた後に、評価の方法に誤りがあったとして更正の請求を検討する事案があります。請求をすることができる期間には制限がありますので、疑義を抱かれた場合には早期に税理士にご相談いただく必要があります。

関連する用語

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死因贈与 贈与者の死亡によって効力を生ずる贈与の契約

死因贈与とは、贈与者の死亡によって効力を生ずる贈与をいいます。民法は、贈与者の死亡によって効力を生ずる贈与については、その性質に反しない限り、遺贈に関する規定を準用する旨を定めています(民法第554条)。

遺贈との違い

死因贈与は、贈与者と受贈者との間の契約です。両者の意思の合致によって成立いたしますので、受贈者が知らないうちに成立するということはありません。これに対し、遺贈は遺言者の単独行為であり、相手方の承諾を要しません。この点が両者の最も大きな違いです。

契約ですから、遺言の方式に従う必要はありません。方式の不備によって効力を否定されるおそれがないという点は、死因贈与の利点です。もっとも、書面によらない贈与は各当事者が解除をすることができるものとされていますので(民法第550条本文)、書面によることが望ましく、公正証書によって作成する例も少なくありません。

撤回及び執行

遺贈に関する規定が準用される結果、贈与者は、原則としていつでも死因贈与を撤回することができるものと解されています。自己の死後の財産の処分については、最終の意思を尊重すべきであるという考え方によるものです。

もっとも、負担の付された死因贈与につきまして、受贈者が負担の全部又は一部を既に履行している場合には、特段の事情がない限り撤回することができないものと解されています。負担を履行した受贈者の期待を保護する趣旨です。

死因贈与につきましても、執行者を定めておくことができます。不動産を目的とする場合には、贈与者の生存中に始期付所有権移転の仮登記を経ておくことによって、死亡後の手続を円滑にし、また第三者への処分に備えることが可能です。

実務上の留意点

死因贈与も、被相続人の財産を無償で移転させるものですから、遺留分を侵害する場合には、遺留分侵害額の請求の対象となり得ます。特定の者に財産を集中させる目的で用いる場合には、他の相続人の遺留分への配慮を欠くことができません。

また、口頭の約束のみで書面が存在しない事案におきましては、そのような合意があったこと自体が争われることが少なくありません。相続の開始の後は贈与者から事情を聴くことができませんので、契約書の作成及び保管が極めて重要です。課税の取扱いにつきましては、税理士にご確認ください。

さらに、贈与者が死因贈与の目的とした財産を生前に第三者に譲渡してしまった場合には、その部分について死因贈与を撤回したものと扱われることになります。受贈者としては、目的物が確実に残されるという保障を得られるものではありません。この点でも、仮登記その他の備えを講じておく意義があります。

関連する用語

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死亡退職金 死亡により遺族に支給される退職手当金

死亡退職金とは、被用者又は役員が死亡したことにより、その勤務し又は在任していた会社等から遺族に対して支給される退職手当金等をいいます。死亡弔慰金その他の名称が用いられることもあります。

法的性質

死亡退職金の法的性質は、支給の根拠となる退職金規程、労働協約、就業規則等の定めによって判断されます。これらに受給権者の範囲及び順位が定められている場合には、そこで指定された遺族が、相続によってではなく、自己固有の権利として取得するものと解されています。この場合、死亡退職金は相続財産に属さず、遺産分割の対象となりません。

これに対し、受給権者に関する定めが存在しない場合には、被相続人が有していた請求権が相続財産に属するものと解される余地があります。いずれに当たるかは、規程の文言及び制度の趣旨に照らして個別に判断されるべきものであり、一律に決することはできません。

会社の役員に対する役員退職慰労金につきましては、別の考慮を要します。取締役の報酬等は、定款にその額を定めていないときは株主総会の決議によって定めるものとされており(会社法第361条第1項)、死亡による役員退職慰労金もこれに含まれるものと解されています。したがいまして、株主総会の決議を経なければ、原則として具体的な請求権が発生いたしません。

相続税及び遺産分割との関係

死亡退職金のうち、被相続人の死亡後一定の期間内に支給が確定したものは、相続又は遺贈により取得したものとみなされ、相続税の課税の対象とされています。もっとも、法定相続人の数に応じた非課税の枠が設けられています。具体的な金額及び要件は改正によって変動いたしますので、税務の取扱いにつきましては、税理士にご確認ください。

遺産分割との関係におきましては、死亡退職金が特定の相続人に支給された場合に、これを特別受益に準ずるものとして持戻しの対象とすべきかが争われることがあります。支給の趣旨、金額の多寡、他の相続人との公平その他の事情を考慮して判断されるべきものと解されており、結論は事案によって異なります。

実務上の留意点

まず確認すべきは、支給の根拠となる規程の有無及びその内容です。規程の写しの交付を求めることが出発点となります。同族の会社におきましては、規程が整備されていない、又は形式のみ存在して運用されていない例が見受けられます。

また、経営権をめぐって相続人と会社側とが対立している事案におきましては、株主総会の決議がされないことによって支給が実現しない場合があります。この場合には、会社法上の権利の行使を含めた対応を検討することになります。当事務所は、こうした局面における交渉及び紛争の解決を担うものです。

関連する用語

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自筆証書遺言 遺言者が全文・日付・氏名を自書する遺言

自筆証書遺言とは、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押すことによってする遺言をいいます(民法第968条第1項)。公証人その他の第三者の関与を要しない点に特徴があります。

方式

全文の自書が原則です。他人が代筆したもの、印字によって作成したものは、原則として効力を有しません。日付は年月日を特定することができる記載でなければならず、単に吉日と記載されたものは効力を有しないものと解されています。氏名は戸籍上の氏名によることが確実です。押印は、実印であることを要しないものと解されています。

もっとも、この自書の要件は緩和されています。自筆証書にこれと一体のものとして相続財産の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については自書することを要しないものとされました(民法第968条第2項)。したがいまして、目録を印字によって作成し、又は預貯金の通帳の写し若しくは登記事項証明書の写しを添付することが可能です。ただし、その場合には、目録の毎葉に署名し、印を押さなければなりません。自書によらない記載が両面にあるときは、その両面に署名し押印することを要します。

加除その他の変更をするときは、遺言者がその場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じません(民法第968条第3項)。訂正の方式は厳格ですので、書き損じた場合には、初めから書き直す方が安全です。

実務上の留意点

自筆証書遺言は、費用の負担が小さく、手軽に作成することができる反面、方式の不備によって効力を否定される例が少なくありません。また、保管が遺言者に委ねられていますので、紛失、隠匿、改ざん、そもそも発見されないといった危険を伴います。これらの危険は、後述の保管制度を利用することによって相当程度に避けることができます。

内容の面におきましても、財産の特定が不十分である、相続人の一部にのみ言及して残余の財産の帰属が定まらない、意味の不明確な文言が用いられているといった理由から、解釈をめぐって争いが生ずることがあります。また、作成の当時に遺言能力を欠いていたとして効力が争われる例もあります。

自筆証書遺言は、家庭裁判所の検認を要します(民法第1004条第1項)。ただし、自筆証書遺言書保管制度によって法務局に保管されている遺言書につきましては、検認を要しません。

なお、遺言書が封筒に納められ封印がされている場合には、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会いがなければ開封することができません(民法第1004条第3項)。発見した際に開封いたしますと、内容を改ざんしたのではないかとの疑いを招き、かえって紛争を深める結果を招くことがあります。開封せずに保管し、速やかに検認の申立てを行うことが肝要です。

関連する用語

遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言、自筆証書遺言書保管制度、検認、遺言執行者、付言事項などの用語も併せてご参照ください。弁護士費用につきましては、弁護士費用一覧のページをご覧ください。

自筆証書遺言書保管制度 法務局が遺言書を保管する制度

自筆証書遺言書保管制度とは、法務局における遺言書の保管等に関する法律に基づき、自筆証書によってした遺言に係る遺言書を、法務局において保管する制度をいいます。保管の事務を取り扱う法務局を遺言書保管所と申します。

保管の申請

保管の申請は、遺言者本人が、遺言書保管所に自ら出頭して行わなければなりません。代理人による申請は認められていません。申請をすることができる遺言書保管所は、遺言者の住所地、本籍地又は遺言者が所有する不動産の所在地を管轄するものです。

遺言書は封をしていないものでなければならず、また、用紙の大きさ、余白その他の様式について定めがあります。遺言書保管官は、これらの外形的な事項及び方式への適合を確認いたします。もっとも、遺言の内容が有効であるかどうかを審査するものではありません。この点は誤解されやすいところですので、ご留意ください。

遺言者は、いつでも保管の申請を撤回し、遺言書の返還を受けることができます。また、保管されている遺言書の閲覧を請求することができますが、遺言者の生存中は、遺言者以外の者が閲覧等を請求することはできません。

相続の開始の後の手続

相続人、受遺者、遺言執行者等は、特定の死亡した者について遺言書が保管されているかどうかを証明した書面の交付を請求することができます。また、遺言書の画像情報等を用いた証明書の交付を請求し、又は遺言書の閲覧を請求することができます。

これらの請求がされ、証明書の交付又は閲覧がされたときは、遺言書保管官は、他の相続人等に対して、遺言書を保管している旨を通知いたします。あわせて、遺言者があらかじめ指定した者に対し、その死亡の事実を把握した際に通知をする仕組みも設けられています。遺言書の存在が誰にも知られないまま相続の手続が進んでしまう事態を避けるためのものです。

この制度により保管されている遺言書につきましては、家庭裁判所の検認を要しません。相続の開始の後、速やかに手続に着手することができます。

実務上の留意点

この制度の利点は、紛失、隠匿及び改ざんの危険を避けることができる点にあります。他方、遺言書保管官は内容の有効性を判断するものではありませんので、保管されているという事実によって遺言が有効であることが保障されるわけではありません。作成の当時に遺言能力を欠いていたとの主張、内容の解釈をめぐる争いは、なお生じ得るものです。

したがいまして、内容の検討につきましては、別途に専門家の関与を得ることが望ましいものです。弁護士費用につきましては、弁護士費用一覧のページをご覧ください。

また、この制度を利用するためには遺言者本人が遺言書保管所に出頭しなければなりませんので、身体の状態により外出が困難な方は利用することができません。このような場合には、公証人に出張を求めて公正証書遺言を作成する方法を検討することになります。いずれの方式によるべきかは、遺言者の状況及び相続人の関係に応じて選択すべきものです。

関連する用語

自筆証書遺言、遺言、公正証書遺言、検認、遺言執行者などの用語も併せてご参照ください。

失踪宣告 生死の不明な者を死亡したものとみなす裁判所の宣告

失踪宣告とは、生死が明らかでない者について、家庭裁判所が一定の要件のもとに死亡したものとみなす旨の宣告をする制度をいいます(民法第30条)。生死不明の状態が長く続きますと、その者をめぐる法律関係が確定しないままとなりますので、これを整理するために設けられたものです。

2つの類型

第一は、普通失踪と呼ばれるものです。不在者の生死が7年間明らかでないときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求により、失踪の宣告をすることができます(民法第30条第1項)。この場合には、7年の期間が満了した時に死亡したものとみなされます(民法第31条)。

第二は、危難失踪と呼ばれるものです。戦地に臨んだ者、沈没した船舶の中に在った者その他死亡の原因となるべき危難に遭遇した者の生死が、戦争が止んだ後、船舶が沈没した後又はその他の危難が去った後1年間明らかでないときも、失踪の宣告をすることができます(民法第30条第2項)。この場合には、その危難が去った時に死亡したものとみなされます(民法第31条)。

いずれの類型におきましても、請求をすることができるのは利害関係人です。相続人となるべき者、配偶者、債権者などがこれに当たります。

効果と取消し

失踪の宣告がされますと、その者は死亡したものとみなされます。これによって相続が開始し、婚姻も解消いたします。死亡したものとみなされる時点が相続の開始の時となりますので、その時点における相続人が誰であるかによって、相続関係が定まります。

もっとも、失踪者が生存すること又は宣告によって死亡とみなされた時と異なる時に死亡したことの証明があったときは、家庭裁判所は、本人又は利害関係人の請求により、失踪の宣告を取り消さなければなりません(民法第32条第1項本文)。ただし、この取消しは、宣告の後その取消しの前に善意でした行為の効力に影響を及ぼしません(同項ただし書)。また、宣告によって財産を得た者は、取消しによって権利を失いますが、現に利益を受けている限度においてのみ返還の義務を負います(同条第2項)。

実務上の留意点

遺産分割の協議は共同相続人の全員によらなければ効力を生じませんので、所在の知れない相続人がある場合には、その扱いを決しなければ手続が進みません。生死が不明である期間が要件を満たす場合には失踪宣告を検討し、所在が不明であるにとどまり生存していると考えられる場合には、不在者の財産の管理人の選任(民法第25条第1項)を検討することになります。

失踪宣告の手続におきましては、家庭裁判所による調査及び公告を要しますので、申立てから宣告まで相応の期間を要します。急を要する事案におきましては、この点も考慮して方針を選択する必要があります。なお、水難、火災等により死亡したことが確実であるものの遺体が確認されない場合には、官公署の報告に基づいて戸籍に死亡の記載がされる取扱いがあります。これは失踪宣告とは別の制度です。

関連する用語

相続人、推定相続人、戸籍の附票、代襲相続、遺産分割協議などの用語も併せてご参照ください。弁護士費用につきましては、弁護士費用一覧のページをご覧ください。

取得費加算の特例 相続税額を譲渡所得の取得費に加算する特例

取得費加算の特例とは、相続又は遺贈により取得した財産を一定の期間内に譲渡した場合に、その者が納付した相続税額のうち一定の金額を、譲渡所得の計算上、取得費に加算することができる制度をいいます。租税特別措置法に定めが置かれています。

趣旨と要件

相続によって財産を取得した者がこれを譲渡いたしますと、相続税を負担したうえ、さらに譲渡所得に対する課税を受けることになります。相続財産を換価して納税資金を確保する場合には、この重複した負担が過大となりかねません。この特例は、その負担を緩和する趣旨で設けられたものです。

適用を受けるためには、相続又は遺贈により財産を取得した者であること、その者に相続税が課され納付すべき税額があること、及び相続税の申告書の提出期限の翌日以後の一定の期間内に当該財産を譲渡していることが必要です。取得費に加算される金額の計算の方法は、法令の定めるところによります。

この特例の適用を受けるためには、譲渡をした年分の所得税について確定申告をする必要があります。自動的に適用されるものではありません。

実務上の留意点

最も注意を要しますのは、適用を受けることができる期間に限りがあるという点です。換価分割によって不動産を売却し、その代金を分ける場合には、この期間の内に売却を完了することができるかどうかが、実質的な期限として働きます。

ところが、相続人の間に対立がある事案におきましては、遺産分割の協議が調わないまま年月が経過することが少なくありません。調停及び審判を経ることとなれば、なおさらです。その結果、期間を徒過して特例の適用を受けられなくなり、当事者の全員が不利益を被るという事態が生じ得ます。

したがいまして、遺産に換価を予定する財産が含まれる場合には、税務上の期限を意識したうえで、分割の協議の日程を組み立てる必要があります。当事務所は、こうした期限を踏まえた交渉及び手続の進行を担うものであり、税務の申告の代理を行うものではありません。具体的な要件及び計算につきましては、税理士にご確認ください。

また、相続税の申告の内容が、その後の修正申告又は更正の処分によって変動いたしますと、取得費に加算される金額も変動することとなります。遺産分割が申告の後に成立し、又は内容が変更された場合にも同様です。譲渡の時期と申告の内容の確定の時期とが前後する事案におきましては、両者の関係を整理したうえで手続を進める必要があります。

なお、この特例は、相続又は遺贈により取得した財産を譲渡した場合に適用されるものであり、相続人が従前から所有していた財産の譲渡には適用がありません。代償分割によって代償金を支払うために自己の固有の財産を譲渡した場合には、適用の対象とならないことになりますので、分割の方法の選択に当たって考慮すべき点です。

関連する用語

換価分割、代償分割、相続税、準確定申告、小規模宅地等の特例などの用語も併せてご参照ください。弁護士費用につきましては、弁護士費用一覧のページをご覧ください。

受遺者(じゅいしゃ) 遺贈によって財産を受ける者

受遺者とは、遺贈によって財産を受ける者をいいます。遺贈は遺言によって財産を無償で他人に与える処分ですから(民法第964条)、その相手方が受遺者ということになります。相続人であっても、相続人以外の第三者であっても、また法人であっても、受遺者となることができます。

包括受遺者と特定受遺者

財産を特定せず、遺産の全部又は一定の割合を与えられる者を包括受遺者と申します。包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有するものとされています(民法第990条)。したがいまして、積極財産のみならず債務も割合に応じて承継し、遺産分割の協議にも当事者として加わることになります。

これに対し、目的物を特定して与えられる者を特定受遺者と申します。特定受遺者は、特定された財産を取得するにとどまり、原則として被相続人の債務を承継いたしません。

地位の得喪

受遺者が遺言者の死亡以前に死亡したときは、遺贈は効力を生じません(民法第994条第1項)。相続人が相続の開始以前に死亡した場合にその子が代襲して相続人となる仕組みとは異なり、受遺者についてはこれに相当する定めが置かれていません。したがいまして、受遺者の子が当然に遺贈を受けるものではありません。この点は、遺言を作成する際に注意を要するところであり、受遺者が先に死亡した場合の定めを併せて置いておくことが考えられます。

受遺者は、遺贈を放棄することができます。特定遺贈の放棄は遺言者の死亡の後いつでもすることができ、その効力は遺言者の死亡の時に遡ります(民法第986条)。包括遺贈の放棄につきましては、相続の承認及び放棄に関する規定によることとなります。

また、遺贈義務者その他の利害関係人は、受遺者に対し、相当の期間を定めて、その期間内に遺贈の承認又は放棄をすべき旨の催告をすることができます。受遺者がその期間内に意思を表示しないときは、遺贈を承認したものとみなされます(民法第987条)。

実務上の留意点

受遺者及びその配偶者並びに直系血族は、公正証書遺言の証人となることができません(民法第974条)。遺言によって財産を受ける者を証人といたしますと、遺言そのものの効力が争われる余地がありますので、ご留意ください。

また、受遺者は、遺留分侵害額の請求の相手方となり得ます。受遺者と受贈者とがあるときは、受遺者が先に負担するものとされています(民法第1047条第1項)。相続人以外の受遺者につきましては、課税上の取扱いが相続人と異なる場合がありますので、税理士にご確認ください。

なお、包括受遺者が遺贈を放棄する場合には、自己のために包括遺贈があったことを知った時から3か月の期間内に家庭裁判所に申述をする必要があります。この期間を徒過いたしますと、債務を含めて承継したものとして扱われる余地がありますので、遺産に債務が含まれる事案におきましては、早期に内容を把握しておく必要があります。

関連する用語

遺贈、負担付遺贈、受贈者、死因贈与、遺言執行者、遺留分侵害額請求などの用語も併せてご参照ください。弁護士費用につきましては、弁護士費用一覧のページをご覧ください。

受贈者(じゅぞうしゃ) 贈与によって財産を受ける者

受贈者とは、贈与によって財産を受ける者をいいます。財産を与える者を贈与者と申しますので、受贈者はその相手方に当たります。贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生じます(民法第549条)。

贈与契約における地位

贈与は契約ですから、受贈者の受諾がなければ成立いたしません。財産を受ける側が何も知らないうちに贈与が成立するということはありません。この点は、相手方の承諾を要しない単独行為である遺贈と異なります。遺贈によって財産を受ける者は受遺者と申しまして、受贈者とは区別されます。

書面によらない贈与は、各当事者が解除をすることができます。ただし、履行の終わった部分については、この限りではありません(民法第550条)。したがいまして、受贈者の立場からは、書面を作成しておくこと、又は速やかに引渡し若しくは登記を受けておくことが重要です。

負担の付された贈与につきましては、贈与者は、その負担の限度において、売主と同じく担保の責任を負うものとされています(民法第553条)。また、贈与者の死亡によって効力を生ずる死因贈与につきましては、その性質に反しない限り、遺贈に関する規定が準用されます(民法第554条)。

相続との関係

受贈者が相続人である場合には、その贈与が特別受益に当たるかどうかが問題となります。共同相続人中に、被相続人から遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、その贈与の価額を相続財産に加えたものを相続財産とみなして相続分を算定いたします(民法第903条第1項)。

また、贈与は遺留分の算定にも影響いたします。遺留分を算定するための財産の価額には、一定の範囲の贈与の価額が加算されます(民法第1044条)。この場合、受贈者は遺留分侵害額の請求の相手方となり得ます。受遺者と受贈者とがあるときは受遺者が先に負担し、受贈者が複数あるときは後の贈与を受けた者から順に負担するものとされています(民法第1047条第1項)。

実務上の留意点

相続の開始の後に、生前の財産の移転が贈与であったのか否かが争われる例は少なくありません。贈与であったと主張する側は、贈与者の意思と受贈者の受諾があったことを明らかにする必要があります。契約書、預金の履歴、財産の管理の実態を示す資料が重要となります。

とりわけ、名義のみが相続人に移されており、通帳及び印鑑を被相続人が管理していたという事案におきましては、贈与が成立していないものとして、被相続人に帰属する財産と評価される余地があります。生前の贈与を確実なものとするためには、書面の作成、受贈者自身による管理、資金の移動の記録といった備えが必要です。課税上の取扱いにつきましては、税理士にご確認ください。

関連する用語

受遺者、生前贈与、暦年贈与、連年贈与、死因贈与、特別受益、名義預金などの用語も併せてご参照ください。弁護士費用につきましては、弁護士費用一覧のページをご覧ください。

準確定申告 被相続人の所得税を相続人が行う確定申告

準確定申告とは、年の中途において死亡した者について、その年の1月1日から死亡の日までの所得に係る所得税等の確定申告を、相続人が被相続人に代わって行うことをいいます。本人が自ら申告をすることができないため、相続人がこれに代わるものです。

期限と申告の方法

準確定申告は、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内に行わなければならないものとされています。通常の確定申告の期限とは異なりますので、ご留意ください。相続税の申告の期限よりも早く到来する点も、見落とされやすいところです。

相続人が2人以上ある場合には、各相続人が連署して1通の申告書を提出するのが原則です。もっとも、他の相続人の氏名を付記したうえで各別に提出することもできるものとされています。この場合には、申告をした相続人は、その内容を他の相続人に通知することとされています。相続人間に対立がある事案におきましては、この方法によることが現実的な場合があります。

対象となる場面

被相続人に事業所得又は不動産所得があった場合、給与以外の所得があった場合、公的年金等の収入が一定の額を超える場合、生前に資産の譲渡があった場合などにおいて、申告を要することがあります。他方、医療費控除その他の適用を受けることによって還付を受けられる場合には、申告を要しないときであっても、申告をする実益があります。

納付すべき所得税額が生じた場合には、その税額は被相続人の債務として、相続税の課税価格の計算上控除の対象となり得ます。還付を受ける税額は、相続財産を構成することとなります。いずれも遺産分割の対象及び相続税の申告の内容に影響いたしますので、準確定申告は相続税の申告と切り離して考えることができません。

実務上の留意点

期限が短いことが最大の問題です。相続の開始の直後は、葬儀その他の対応に追われ、被相続人の帳簿、領収書、取引先との契約書といった資料が整わないまま期限が到来しがちです。とりわけ被相続人が事業を営んでいた場合には、資料の所在を早期に確認する必要があります。

相続人の間に対立があり、資料の一部を特定の相続人が占有しているという事案も少なくありません。この場合には、資料の開示を求めることが先決となります。当事務所は、こうした相続人間の交渉及び紛争の解決を担うものであり、税務の申告の代理を行うものではありません。申告の要否及び具体的な計算につきましては、税理士にご確認ください。

なお、相続放棄をした者は初めから相続人とならなかったものとみなされますので(民法第939条)、準確定申告の義務を負いません。もっとも、熟慮期間の内に申告の期限が到来することがありますので、相続を承認するか放棄するかの判断と、申告の準備とを並行して進めなければならない場合があります。

関連する用語

相続税、延納、物納、相続財産、税務調査などの用語も併せてご参照ください。弁護士費用につきましては、弁護士費用一覧のページをご覧ください。

除籍(じょせき) 在籍する者が全員いなくなった戸籍

除籍という語には、2つの意味があります。第一に、戸籍に記載されている者が、婚姻、離婚、養子縁組、死亡その他の事由によってその戸籍から除かれることをいいます。第二に、その戸籍に記載されている者の全員が除かれた戸籍そのものをいいます。

個人が除かれる場合

婚姻をいたしますと、当事者は従前の戸籍から除かれ、新たな戸籍が編製されます。養子縁組、離婚、死亡によっても、その者は戸籍から除かれます。この場合、当該戸籍には除かれた旨が記載され、電子計算機によって処理されている戸籍におきましては、氏名の欄に除籍の表示がされます。

もっとも、他に在籍する者が残っている限り、当該戸籍そのものは存続いたします。したがいまして、通常の戸籍謄本を取得することによって、除かれた者に関する記載も確認することができます。

戸籍の全体が除籍となる場合

在籍する者の全員が、死亡、婚姻、転籍等によって除かれますと、その戸籍には誰も残らないこととなります。この状態となった戸籍を除籍と申しまして、除籍簿に移されて保存されます。

この除籍について交付される写しは、除籍謄本と申します。電子計算機によって処理されているものにつきましては、除籍全部事項証明書と称されます。現に在籍者のある戸籍について交付される戸籍謄本とは、名称も、請求の際の記載も異なりますので、取り違えのないようご留意ください。

相続の手続における意義

相続人の範囲を確定するためには、被相続人の出生の時から死亡の時までの連続した戸籍を収集する必要があります。この過程におきましては、現在の戸籍のみならず、既に除籍となった戸籍及び改製原戸籍の謄本を、順次遡って取得することになります。

被相続人が戸籍における最後の在籍者であった場合には、その死亡によって当該戸籍そのものが除籍となります。したがいまして、被相続人の死亡の記載を確認するために取得すべきものは、戸籍謄本ではなく除籍謄本であることが少なくありません。

除籍簿の保存の期間は法令によって定められていますが、古い除籍につきましては、既に保存の期間が経過し、又は災害等によって滅失し、交付を受けることができない場合があります。この場合には、取得することができなかった旨の証明を受け、他の資料と併せて相続人の範囲を明らかにすることを検討いたします。

なお、戸籍法の改正により、本籍地以外の市区町村の窓口においても戸籍謄本等の交付を請求することができる仕組みが設けられ、除籍の謄本もその対象に含まれています。もっとも、請求することができる者の範囲には制限があり、また、電子計算機による処理がされていない一部の除籍等は対象となりません。この場合には、従前どおり本籍地の市区町村に対して請求することになります。

関連する用語

戸籍、戸籍謄本、戸籍抄本、改製原戸籍、戸籍の附票、相続関係説明図などの用語も併せてご参照ください。弁護士費用につきましては、弁護士費用一覧のページをご覧ください。

小規模宅地等の特例 居住用や事業用の宅地の評価額を減額する特例

小規模宅地等の特例とは、相続又は遺贈により取得した宅地等のうち、被相続人等の事業の用又は居住の用に供されていたもので一定の要件を満たすものについて、限度となる面積までの部分に限り、相続税の課税価格に算入すべき価額を減額することができる制度をいいます。

趣旨と区分

事業の用又は居住の用に供されている宅地は、その者及び家族の生活の基盤を成すものです。これを通常の方法によって評価いたしますと、相続税の負担のためにその宅地を処分せざるを得ず、事業の継続又は居住の継続が困難となるおそれがあります。この特例は、そのような事態を避ける趣旨で設けられたものです。

対象となる宅地等は、特定居住用宅地等、特定事業用宅地等、特定同族会社事業用宅地等及び貸付事業用宅地等に区分されています。区分ごとに、適用を受けることができる限度の面積及び減額の割合が定められており、また、取得する者の範囲、申告期限までの保有、居住又は事業の継続に関する要件が細かく定められています。

適用を受けるための手続

この特例の適用を受けるためには、相続税の申告書を提出することが必要です。特例を適用した結果として納付すべき税額が生じない場合であっても、申告を要します。申告をしなければ適用を受けられませんので、この点は特に注意を要します。

また、原則として、申告期限までに遺産分割が調っていることが必要です。未分割の状態では適用を受けることができません。もっとも、申告の際に所定の書面を提出しておき、その後の一定の期間内に分割が調った場合には、更正の請求によって適用を受ける道が開かれています。

実務上の留意点

相続人の間に対立があり、遺産分割の協議が調わない場合には、この特例の適用を受けられず、多額の納税を余儀なくされることがあります。しかも、その負担は相続人の全員に及びます。対立の解消が、税務上の利害とも直結しているということです。

さらに、この特例は誰がその宅地を取得するかによって適用の可否が変わり得るものです。したがいまして、遺産分割の内容をどのように定めるかという検討と、税務上の取扱いの検討とを、切り離して進めることができません。分割の方針を固める段階から、双方を並行して検討する必要があります。

限度となる面積、減額の割合その他の具体的な要件は、税制の改正によって変動いたします。税務の取扱いにつきましては、税理士にご確認ください。

なお、この特例は宅地等の評価額を減額するものであり、遺産分割において当該宅地をいくらのものとして扱うかという問題とは、別のものです。特例の適用によって相続税の課税価格が小さくなりましても、共同相続人の間における取り分の計算においては、通常の評価が用いられるのが一般です。両者を混同いたしますと、分割の内容が実質的に不均衡なものとなる余地があります。

関連する用語

基礎控除、財産評価基本通達、路線価、底地、取得費加算の特例などの用語も併せてご参照ください。弁護士費用につきましては、弁護士費用一覧のページをご覧ください。

障害者控除 障害のある相続人の相続税額から差し引く控除

障害者控除とは、相続又は遺贈により財産を取得した者が障害者に該当する法定相続人である場合に、その者の納付すべき相続税額から一定の金額を控除する制度をいいます(相続税法第19条の4)。

制度の内容

この制度は、障害のある相続人につきまして、その将来にわたる生活及び療養に要する費用を考慮し、相続税の負担を軽減する趣旨で設けられたものです。

適用を受けるためには、相続又は遺贈により財産を取得したこと、相続の開始の時において日本国内に住所を有すること、被相続人の法定相続人であること、及び障害者に該当することが必要とされています。

控除される金額は、その者が一定の年齢に達するまでの年数に応じて算定されます。すなわち、若年であるほど控除の額が大きくなる仕組みです。障害の程度に応じて、一般障害者と特別障害者とで算定の基礎が異なるものとされています。

控除しきれない金額があるときは、その者の扶養義務者の相続税額から控除することができるものとされています。また、過去の相続において既にこの控除を受けたことがある場合には、その控除の額について調整が行われます。

実務上の留意点

税務上の控除の適用と、遺産分割の手続に関する問題とは、別に検討する必要があります。障害者であることは、直ちに判断能力を欠くことを意味するものではありません。他方、精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある場合には、成年後見人等の選任を経なければ、遺産分割の協議を有効に行うことができません。

その際、成年後見人となった者が自らも共同相続人である場合には、遺産分割の協議は利益相反行為に当たりますので、特別代理人の選任を要することとなります。この点を見落としたまま成立した協議は、効力を否定される余地があります。

また、障害のある相続人の将来にわたる生活の安定を図るという観点からは、分割の内容そのものを工夫することが有用です。管理を要しない財産を取得させる、信託を活用する、負担付の遺贈を用いるといった方法が考えられます。

控除の額の算定の基礎となる年齢及び金額は、税制の改正によって変動いたします。税務の取扱いにつきましては、税理士にご確認ください。

なお、障害者控除は相続税額そのものから控除されるものであり、課税価格から控除される基礎控除とは、その働く場面が異なります。前者は税額控除、後者は課税価格の計算における控除です。控除という名称を用いる制度が複数ありますので、いずれの段階における控除であるかを意識して整理していただくと、理解しやすいものです。

相続税額から控除される制度といたしましては、このほかに未成年者控除及び相次相続控除が設けられています。いずれも、控除を受けることができる者の範囲及び算定の方法が定められていますので、該当し得る場合には、その適用の有無を確認しておく必要があります。

関連する用語

未成年者控除、相次相続控除、配偶者控除、利益相反行為、基礎控除などの用語も併せてご参照ください。弁護士費用につきましては、弁護士費用一覧のページをご覧ください。

推定相続人 相続が開始すれば相続人となるべき者

推定相続人とは、現に相続が開始したと仮定した場合に相続人となるべき者をいいます。相続はまだ開始していませんので、その地位は将来相続人となることが見込まれるというにとどまり、確定したものではありません。

誰が推定相続人となるか

推定相続人が誰であるかは、相続人の範囲に関する民法の定めによって判断されます。配偶者は常に相続人となりますので(民法第890条)、配偶者があれば常に推定相続人です。血族相続人につきましては、第1順位が子(民法第887条第1項)、第2順位が直系尊属(民法第889条第1項第1号)、第3順位が兄弟姉妹(同項第2号)であり、先順位の者があるときは後順位の者は推定相続人となりません。

この地位は、時の経過とともに変動いたします。子の出生若しくは認知、養子縁組、婚姻若しくは離婚、又は推定相続人自身の死亡によって、誰が推定相続人であるかは変わります。最終的に確定いたしますのは、相続が開始した時点です。

推定相続人の地位の限界

推定相続人の地位は、将来の期待にとどまるものです。したがいまして、相続の開始の前に、相続分を処分し、又は相続財産に属する個々の財産について権利を主張することはできません。

また、相続の開始の前に相続放棄をすることはできません。生前に「相続を放棄する」旨の念書が交わされることがありますが、これは相続放棄としての効力を有しないものです。相続放棄は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月の期間内に、家庭裁判所に申述をしなければならないものです。

これに対し、遺留分の放棄につきましては、相続の開始の前であっても、家庭裁判所の許可を受けたときに限り、その効力を生ずるものとされています(民法第1049条第1項)。相続放棄と遺留分の放棄とで取扱いが異なる点は、混同されやすいところです。

廃除その他の実務上の留意点

遺留分を有する推定相続人が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人に著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができます(民法第892条)。遺言によって廃除の意思を表示することもでき、この場合には遺言執行者が請求をいたします(民法第893条)。

事業の承継を検討する場面におきましては、推定相続人の全員の把握が出発点となります。中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律に定める遺留分に関する民法の特例は、推定相続人全員の合意を要するものですので、一人でも把握を欠きますと制度を利用することができません。生前の対策に着手する段階で、戸籍によって範囲を確認しておくことが肝要です。

関連する用語

相続人、法定相続分、代襲相続、廃除、相続欠格、遺留分の放棄などの用語も併せてご参照ください。弁護士費用につきましては、弁護士費用一覧のページをご覧ください。

生前贈与 被相続人が生存中に行う財産の贈与

生前贈与とは、財産を有する者が、生存している間に、その財産を無償で他人に与えることをいいます。死亡によって財産が移転する相続又は遺贈に対し、生存中の契約によって移転させる点に特徴があります。

贈与契約としての性質

贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生じます(民法第549条)。契約ですから、受け取る側の受諾を要します。

書面によらない贈与は、各当事者が解除をすることができます。ただし、履行の終わった部分については、この限りではありません(民法第550条)。したがいまして、確実なものといたしますためには、贈与契約書を作成し、あわせて引渡し又は登記等の履行を済ませておくことが望ましいものです。

遺産分割及び遺留分との関係

相続人に対する生前贈与は、遺産分割において特別受益として扱われる場合があります。共同相続人中に、被相続人から婚姻若しくは養子縁組のため又は生計の資本として贈与を受けた者があるときは、その贈与の価額を相続財産に加えたものを相続財産とみなして各人の相続分を算定いたします(民法第903条第1項)。

もっとも、被相続人が持戻しを免除する意思を表示していたときは、その意思に従います(民法第903条第3項)。さらに、婚姻の期間が20年以上である夫婦の一方が他方に対し、その居住の用に供する建物又はその敷地を遺贈し又は贈与したときは、持戻しを免除する意思を表示したものと推定されます(民法第903条第4項)。配偶者の居住の安定を図る趣旨で設けられた定めです。

また、生前贈与は遺留分の算定にも影響いたします。遺留分を算定するための財産の価額には、相続人以外の者に対するものは原則として相続の開始前の1年間にされた贈与が、相続人に対する婚姻若しくは養子縁組のため又は生計の資本としての贈与は原則として相続の開始前の10年間にされたものが、それぞれ加算されます(民法第1044条)。

実務上の留意点

生前贈与は、相続の開始の後に紛争の火種となることが少なくありません。特定の相続人のみが贈与を受けていた場合には、他の相続人から特別受益として持戻しを求められ、その有無、時期及び金額をめぐって主張が対立いたします。契約書、預金の履歴その他の記録を保存しておくことが、いずれの立場においても重要です。

また、名義のみを相続人に移し、通帳及び印鑑を贈与者が引き続き管理していたという事案におきましては、贈与が成立していないものとして、被相続人に帰属する財産と評価される余地があります。加えて、判断能力が低下した後にされた贈与につきましては、意思能力の有無が争われることがあります。

課税につきましては、暦年課税と相続時精算課税の2つの方式が設けられており、また、相続の開始前の一定の期間内にされた贈与は相続税の課税価格に加算されます。金額及び期間は税制の改正によって変動いたしますので、税務の取扱いにつきましては、税理士にご確認ください。

関連する用語

暦年贈与、連年贈与、死因贈与、受贈者、特別受益、名義預金などの用語も併せてご参照ください。弁護士費用につきましては、弁護士費用一覧のページをご覧ください。

生命保険の非課税 死亡保険金のうち相続税がかからない部分

生命保険の非課税とは、被相続人の死亡によって支払われる生命保険金のうち、相続人が取得した部分につきまして、一定の額までを相続税の課税価格に算入しないものとする取扱いをいいます。相続税法に定めが置かれています。

制度の枠組み

被相続人の死亡により支払われる保険金で、その保険料の全部又は一部を被相続人が負担していたものは、民法上の相続財産には属しませんが、相続税法上はみなし相続財産として課税の対象とされます。受取人として指定された者が自己の固有の権利として取得するものであり、遺産分割の対象とはならないのが原則です。

そのうえで、相続人が取得した保険金につきましては、法定相続人の数を基礎として算出される一定の額までは、課税価格に算入しないものとされています。具体的な算式及び金額は法令の改正によって変動いたしますので、税務の取扱いにつきましては税理士にご確認ください。

この取扱いを受けられるのは相続人に限られます。相続の放棄をした者や、相続人以外の者が受取人とされている場合には、適用がありません。

実務上の留意点

第一に、生命保険金は受取人の固有の財産ですので、遺産分割協議の対象とはならないのが原則です。もっとも、保険金の額が遺産の総額に比して著しく高額であり、相続人の間の不公平が到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合には、特別受益に関する民法第903条の規定を類推適用すべきものとされた判例があります。

第二に、相続の放棄をした者でありましても、受取人として指定されていれば保険金そのものは取得することができます。ただし、前述のとおり非課税の取扱いを受けることはできません。

第三に、生命保険金は、遺留分を算定するための財産の価額には原則として算入されません。遺留分侵害額請求を検討する際に問題となることがありますので、契約の内容を確認する必要があります。

第四に、受取人が単に「相続人」と指定されている場合には、相続人が法定相続分の割合により権利を取得する旨の指定と解するのが判例の立場です。誰がいかなる割合で取得するかにつきましては、契約の文言に即した検討を要します。

第五に、保険料を誰が負担していたか、また契約者及び受取人が誰であるかによりまして、相続税、所得税又は贈与税のいずれの課税関係が生ずるかが分かれます。この点も税理士にご確認いただく事項です。

第六に、相続人の一部が保険金の存在を明らかにしないまま遺産分割の協議が進められることがあります。保険契約の有無は、生命保険契約照会制度の利用や、被相続人の預金口座からの保険料の引落しの記録によって手掛かりを得られる場合があります。

関連する用語

みなし相続財産、非課税財産、特別受益、遺留分侵害額請求が関連いたします。当事務所は税務申告の代理を行うものではありませんので、課税関係の詳細につきましては税理士にご確認ください。弁護士費用につきましては弁護士費用一覧のページをご覧ください。

税務調査 申告の内容を税務署が確認する調査

税務調査とは、申告の内容が適正であるかどうかを確認するために、税務署その他の課税庁の職員が行う調査をいいます。相続税につきましても、申告の後に調査が行われることがあります。

手続の枠組み

調査の手続につきましては、国税通則法に定めが置かれています。実地の調査を行う場合の事前の通知、調査の終了の際の手続などが規定されており、これに従って進められます。

相続税の調査は、申告書の提出から一定の期間を経た後に行われるのが通例です。被相続人が居住していた場所において、相続人から事情を聴取し、預金の通帳、証券会社からの報告書、金庫の内容等を確認するという方法によることが多くあります。

調査の結果、申告の内容に誤りがあると認められた場合には、修正申告の勧奨が行われ、これに応じない場合には更正の処分がされます。処分に不服がある場合には、再調査の請求又は審査請求を経て、訴訟によって争う道が開かれています。

相続税の調査において問題となりやすい事項

第一に、被相続人以外の名義となっている預金が、実質的には被相続人に帰属するものではないかという点です。資金の出所、通帳及び印鑑の管理の状況、贈与の事実の有無が検討されます。

第二に、相続の開始の前に引き出された現金の行方です。第三に、生前の贈与について適正に申告がされていたかという点です。第四に、取引相場のない株式及び不動産の評価の当否です。第五に、国外に所在する財産の申告の有無です。

実務上の留意点

税務代理は税理士の業務であり、当事務所がこれを行うものではありません。調査への対応につきましては、申告を担当された税理士にご相談いただくことになります。

もっとも、調査において問題とされる事項の多くは、相続人の間でも争いとなり得るものです。被相続人以外の名義の預金が遺産に属するか否か、生前に引き出された現金が特定の相続人によって費消されたのではないかといった論点は、遺産の範囲そのものをめぐる民事上の問題であり、当事務所が取り扱うところです。

また、相続人の一部が他の相続人に無断で申告を行っている場合には、その内容を確認する必要があります。申告の内容が遺産の範囲に関する当該相続人の認識を示すものとなっている場合があり、後の交渉において重要な意味を持つことがあります。

なお、調査の過程において、相続人が把握していなかった財産の存在が明らかになることがあります。この場合には、既に成立した遺産分割の協議の対象に含まれていなかった財産として、改めて分割の協議を要することとなります。あらかじめ、後日に判明した財産の取扱いを定める条項を遺産分割協議書に置いておきますと、再度の協議を避けられる場合があります。

関連する用語

名義預金、準確定申告、相続税還付、財産評価基本通達、相続財産などの用語も併せてご参照ください。弁護士費用につきましては、弁護士費用一覧のページをご覧ください。

相次相続控除 10年以内に相続が続いた場合の相続税の控除

相次相続控除とは、相続が開始した後、比較的短い期間のうちに次の相続が開始した場合に、後の相続に係る相続税の額から一定の額を控除する制度をいいます。相続税法に定めが置かれています。

制度の趣旨と枠組み

同一の財産につきまして短い期間のうちに相続が繰り返されますと、そのたびに相続税が課され、税の負担が過重となります。この不合理を緩和するために設けられたのが相次相続控除です。

前の相続におきまして被相続人が相続税を課されていたこと、及び前の相続の開始から一定の期間内に次の相続が開始したことが、適用の前提となります。控除される額は、前の相続において課された相続税の額と、前の相続の開始から今回の相続の開始までに経過した期間の長短に応じて定まる仕組みとなっており、経過した期間が長いほど控除される額は小さくなってまいります。

適用の対象となるのは相続人に限られます。相続の放棄をした者や、相続人以外で遺贈により財産を取得した者には適用がありません。具体的な算式及び期間の要件は法令の改正によって変動いたしますので、税務の取扱いにつきましては税理士にご確認ください。

実務上の留意点

第一に、この制度の適用の可否を判断するためには、前の相続に係る申告の内容を確認する必要があります。前の相続において誰がどの財産を取得し、いかなる額の相続税を納付したかという資料が手元にないという事態がしばしば生じます。前の相続の関係書類は保管しておくことが望まれます。

第二に、いわゆる数次相続、すなわち前の相続に係る遺産分割の協議が調わないうちに相続人の一人が死亡した場合には、法律関係が複雑になります。前の相続の相続人としての地位が、その者の相続人に承継されることとなり、協議に加わるべき者の範囲が拡大いたします。当初は少数の当事者による協議であったものが、二次の相続を経ることによって多数の当事者を要する協議へと変容し、連絡が取れない者や所在の不明な者が生ずることも稀ではありません。

第三に、数次相続の事案におきましては、前の相続についての遺産分割と、後の相続についての遺産分割とを、それぞれ区別して整理する必要があります。両者を混同したまま協議書を作成いたしますと、後に登記の手続において是正を求められることがあります。

第四に、相続の開始の時から10年を経過いたしますと、特別受益及び寄与分の主張が原則としてできなくなります。民法第904条の3に定めがあります。数次相続の事案におきましては前の相続の開始からの期間が問題となりますので、協議を長期にわたって放置することは避けるべきです。

第五に、相続の開始が短い期間のうちに繰り返される事案では、二次の被相続人が一次の相続において取得すべきであった財産の範囲が確定していないことが多くあります。まずは一次の相続における遺産の範囲を確定する作業から着手することが、実務上の順序となります。

関連する用語

数次相続、代襲相続、相続税還付が関連いたします。当事務所は税務申告の代理を行うものではありませんので、控除の可否及び額の計算につきましては税理士にご確認ください。弁護士費用につきましては弁護士費用一覧のページをご覧ください。

相続(遺産分割)と認知症(成年後見)

相続(遺産分割)と認知症(成年後見)

相続人の一人は、認知症で要介護度5であるということですが、これだけ重い認知症だと、通常、意思能力はありません。

遺産分割を行う前に、裁判所に成年後見人選任の申立を行う必要があるものと考えられます。

後見人はあなたでも構いませんが、遺産分割に関しては、あなたとお母さんは利害相反があるため、あなたがお母さんを代理することはできません。

そこで、遺産分割に関しては、別途裁判所に特別代理人を選任してもらう必要があります。

なお、成年後見人や特別代理人は、お母さんの利益を守る任務を負っているので、遺産分割の際は、少なくとも法定相続分(2分の1)については、お母さんに相続させる内容でないと合意できません(そうでないと裁判所が許可しません)。

もっとも、一部の預貯金がお母さんに帰属したとしても、お金の管理自体は、後見人が行う法的権限があるので、あなたが後見人になれば心配はありません。

なお、後見の申立や特別代理人選任の申立については、ご自身で行おうとすると少し大変です。弁護士に依頼することを検討することをお勧めします。

相続関係説明図 被相続人と相続人の関係を示した図

相続関係説明図とは、被相続人と相続人との身分関係を一覧することができるように図示した書面をいいます。相続の手続におきまして、戸籍の記載の内容を要約したものとして用いられます。

用途と記載事項

相続関係説明図は、被相続人の氏名、本籍、最後の住所及び死亡の年月日を記載したうえで、配偶者、子、直系尊属、兄弟姉妹といった相続人となるべき者を線で結び、それぞれの氏名、生年月日、住所及び被相続人との続柄を記載する形式が一般的です。相続の放棄をした者、既に死亡している者、代襲相続が生じている場合の代襲者につきましても、その旨を明らかにいたします。

不動産の相続の登記の申請に際してこの図を添付いたしますと、原本の還付の取扱いにより、提出した戸籍の謄本等の返還を受けることができます。金融機関における預貯金の払戻しの手続におきましても、関係者の把握を容易にするものとして用いられることがあります。

これに類するものとして、法定相続情報一覧図があります。こちらは登記所に申出をして認証を受けるものであり、認証を受けた写しの交付を受けますと、各種の手続において戸籍の謄本の束に代えて提出することができます。相続関係説明図とは異なる制度ですので、区別して理解する必要があります。

実務上の留意点

第一に、この図はあくまで戸籍の記載を整理したものであり、これ自体が権利関係を確定させるものではありません。作成の前提として、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍の謄本を収集し、相続人の範囲を確定する作業が不可欠です。転籍、婚姻、家督相続等により戸籍が改製されている場合には、改製原戸籍まで遡って収集する必要があります。

第二に、戸籍を精査いたしますと、当初把握していなかった相続人が判明することがしばしばあります。前の婚姻における子、認知された子、養子縁組がされた子などがこれに当たります。これらの者を除外したまま成立した遺産分割の協議は無効ですので、範囲の確定は慎重に行わなければなりません。

第三に、相続の放棄をした者を相続人として記載したまま手続を進めますと、後に是正を要することとなります。放棄の有無につきましては、家庭裁判所に対する相続放棄申述受理証明書の交付の申請等によって確認いたします。

第四に、相続人の中に所在の不明な者や連絡の取れない者がある場合には、戸籍の附票によって住所を追跡することとなります。それでもなお所在が判明しないときは、不在者財産管理人の選任の申立て等の手続を検討する必要があります。

第五に、登記の申請の代理は司法書士の業務であり、当事務所がこれを行うものではありません。もっとも、相続人の範囲に争いがある場合や、遺産分割の協議が調わない場合には、当事務所においてお取り扱いいたします。

関連する用語

法定相続情報一覧図、相続人、代襲相続、相続放棄が関連いたします。弁護士費用につきましては弁護士費用一覧のページをご覧ください。

相続欠格 一定の非行により相続人の資格を失うこと

相続欠格とは、相続人となるべき者に法律の定める一定の非行があった場合に、何らの手続を要することなく、当然に相続人となる資格を失わせる制度をいいます。民法第891条に定めが置かれています。

欠格事由

民法第891条は、次に掲げる者は相続人となることができないと定めています。第一に、故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために刑に処せられた者です。第二に、被相続人が殺害されたことを知りながら、これを告発せず、又は告訴しなかった者です。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りではありません。

第三に、詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者です。第四に、詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者です。第五に、相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者です。

欠格の効果は法律上当然に生じます。家庭裁判所に対する請求も、被相続人の意思表示も要しません。この点で、被相続人の請求と家庭裁判所の審判とを要する廃除とは異なります。効果は当該相続に限って生じ、また遺贈を受ける資格も失われます。もっとも、欠格者に子がある場合には、その子が代襲相続をいたします。欠格者本人の非行を理由とする制度ですので、その子に不利益を及ぼすものではないという趣旨に基づきます。

実務上の留意点

第一に、実務において最も争われるのは、遺言書の偽造、変造、破棄又は隠匿を理由とする欠格です。判例は、相続人が遺言書に方式の違背があることを知りながらこれを是正するにとどまる行為をした場合など、相続に関して不当な利益を得る目的がなかったときには、欠格事由に当たらないものと解しています。単に形式を整える行為があったというだけでは、直ちに欠格とはなりません。

第二に、遺言書を保管していた相続人がこれを提出しない場合に、隠匿に当たるかが問題となります。この判断は、保管の経緯、提出をしない理由、他の相続人への説明の有無等の事情を総合して行われます。故意に他の相続人の相続権を害する意図が認められるか否かが要点です。

第三に、欠格の有無は遺産分割の前提となる問題です。争いがある場合には、相続人の地位の不存在の確認を求める訴えによって決着を図ることとなり、遺産分割の審判の手続の中で終局的に確定させることはできません。手続の選択を誤りますと、時間を空費することとなります。

第四に、自筆証書遺言につきましては、法務局における保管の制度が設けられています。この制度を利用しておきますと、遺言書の隠匿や破棄をめぐる紛争を未然に防ぐことができ、家庭裁判所の検認も要しないこととなります。

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相続財産 被相続人から相続人に承継される財産の総体

相続財産とは、被相続人が死亡の時に有していた財産上の一切の権利義務であって、相続人に承継されるものをいいます。民法第896条は、相続人は相続開始の時から被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する旨を定めています。

相続財産に属するもの

積極財産といたしましては、土地及び建物、預貯金、有価証券、動産、貸金債権、損害賠償請求権、借地権及び借家権、株式その他の社員としての地位などがあります。消極財産、すなわち借入金、保証債務、未払の租税公課、損害賠償義務などもまた相続財産に含まれます。相続とは積極財産のみを承継するものではないという点は、実務上とりわけ重要です。

他方、被相続人の一身に専属した権利義務は承継されません。民法第896条ただし書に定めがあります。扶養を請求する権利、生活保護を受ける権利、代理人としての地位、雇用契約上の労務を提供する義務などがこれに当たります。

また、被相続人を被保険者とする生命保険金で受取人が特定の者と指定されているもの、及び受給者の範囲が法令等によって定められている死亡退職金は、受取人の固有の財産と解されており、相続財産には属しないのが原則です。ただし、相続税法上はみなし相続財産として課税の対象とされます。系譜、祭具及び墳墓に関する権利は、祖先の祭祀を主宰すべき者が承継するものとされており、遺産分割の対象とはなりません。

実務上の留意点

第一に、預貯金債権は、かつては相続の開始により当然に分割されるものと解されていましたが、判例が変更され、現在は遺産分割の対象となるものとされています。もっとも、相続人が単独で払戻しを受けることができる制度が設けられており、葬儀の費用等の当面の支出に充てることが可能です。

第二に、相続財産の範囲そのものに争いが生ずることがあります。被相続人以外の名義となっている預金が実質的には被相続人に帰属するのではないかという名義預金の問題、被相続人の生前に引き出された現金の帰趨の問題などがこれに当たります。範囲に争いがある場合には、遺産の確認を求める訴えによって決着を図ることとなり、遺産分割の手続とは別に検討を要します。

第三に、消極財産の存在を看過して単純承認をいたしますと、相続人が自己の固有の財産をもって弁済の責めを負うこととなります。財産の調査を尽くしたうえで、相続の放棄又は限定承認を検討すべき場合があります。熟慮期間は原則として自己のために相続の開始があったことを知った時から3箇月ですが、調査に時間を要する場合には期間の伸長の申立てをすることができます。

第四に、金銭債務のような可分債務は、相続の開始とともに法定相続分に応じて当然に分割され、各相続人が承継するものと解されています。遺産分割の協議において特定の相続人が全ての債務を負担する旨を定めましても、その合意を債権者に対抗することはできません。債権者の承諾を得る必要があります。

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みなし相続財産、名義預金、遺産分割、相続放棄、限定承認が関連いたします。弁護士費用につきましては弁護士費用一覧のページをご覧ください。

相続財産管理の際の注意点

相続財産管理の際の注意点

被相続人の死亡後、預金の管理など、何に費消したか分からない金銭がある場合、使途不明金となりますが、相続人間で相続財産管理を行っていた相続人が自己費消したのではないかと、争いになることがよくあります。このような争いを防ぐため、被相続人のために使った金銭については、必ず領収証を保存し、家計簿をつけておくことが必要です。

相続時精算課税制度 贈与税と相続税を一体として精算する制度

相続時精算課税制度(そうぞくじせいさんかぜいせいど)

相続時精算課税制度とは2,500万円の贈与まで贈与税を納めず相続時に相続税として納める(清算する)制度のことです。相続時精算課税制度を利用した場合は相続時に贈与分もプラスして相続税の計算を行います。

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相続人 被相続人の権利義務を承継する者

相続人とは、被相続人の権利義務を承継する者として法律が定めた者をいいます。民法は、相続人となるべき者の範囲と順位を法定しており、当事者の意思によってこれを変更することはできません。

相続人の範囲と順位

被相続人の配偶者は、常に相続人となります。民法第890条に定めがあります。ここにいう配偶者とは、婚姻の届出をした者をいい、内縁の配偶者は含まれません。

血族相続人につきましては順位が定められています。第1順位は子です。民法第887条に定めがあります。実子と養子、嫡出子と嫡出でない子との間に、相続分の差はありません。子が相続の開始以前に死亡し、又は相続欠格若しくは廃除により相続権を失ったときは、その者の子が代襲して相続人となります。

第2順位は直系尊属です。子及びその代襲者がない場合に相続人となり、親等の異なる者の間では近い者が優先いたします。第3順位は兄弟姉妹です。子及び直系尊属のいずれもない場合に相続人となり、兄弟姉妹が既に死亡している場合には、その子が一代に限り代襲いたします。以上は民法第889条に定めがあります。

相続の放棄をした者は、初めから相続人とならなかったものとみなされます。したがいまして、先順位の者が全員放棄をいたしますと、次順位の者が相続人となります。

実務上の留意点

第一に、相続人の範囲の確定は、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍を収集して行います。前の婚姻における子、認知された子、養子縁組がされた子が判明することは稀ではありません。相続人を一人でも欠いたまま成立した遺産分割の協議は無効ですので、この作業を省略することはできません。

第二に、内縁の配偶者は相続人ではありません。長年にわたり生活を共にしていた場合でありましても同様です。財産を承継させることを望まれる場合には、遺言による必要があります。

第三に、被相続人の療養看護に努めた者が相続人でない場合には、特別寄与者として、相続人に対し特別寄与料の支払を請求することができます。民法第1050条に定めがあり、平成30年の相続法の改正により設けられた制度です。子の配偶者などがこれに当たり得ます。

第四に、相続人が存在しない場合には、相続財産清算人が選任され、清算の手続を経たうえで、特別縁故者への分与又は国庫への帰属という処理がされます。令和3年の民法の改正により、従前の相続財産管理人はこの名称に改められています。

第五に、相続人の中に認知症等により判断能力を欠く者がある場合には、成年後見人等の選任を経なければ遺産分割の協議を行うことができません。また、相続人である親とその未成年の子とが共に相続人となる場合には利益が相反いたしますので、特別代理人の選任を要します。

第六に、相続人の一人が行方不明である場合には、不在者財産管理人の選任を求め、又は失踪の宣告の申立てをしたうえで手続を進めることとなります。いずれも家庭裁判所の手続を要しますので、相応の期間を見込んでおく必要があります。

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被相続人、法定相続分、代襲相続、相続欠格、廃除、特別寄与料が関連いたします。弁護士費用につきましては弁護士費用一覧のページをご覧ください。

相続税

相続税とは

相続人が、相続や遺贈等により亡くなった人の遺産を取得した際、当該遺産の価額の合計額が、相続税法が定める基礎控除額(3000万円+600万円×法定相続人)を超える場合に、当該超過分の遺産に対し課税される国税をいう。

相続税の申告の要否

相続税の申告の要否

相続財産が、基礎控除額(4800万円)以下であれば、相続税の申告義務は発生しません。

また、葬儀費用は、相続税法上は、相続財産の価額から差し引くことができます。

加えて、自宅不動産については、被相続人(父母)と同居していた親族(なお、原則として、施設に入居している場合も含みます)が不動産を相続する場合は、通常、小規模宅地の特例の適用を受けることができます。

小規模宅地の特例の適用を受けると、不動産の評価額が80%減少する(つまり、たった2割の相続税評価額で評価される)ため、かなり相続税がかからなくなります。

なお、小規模宅地の特例の適用を受けるためには、相続税の申告を行うことが条件ですので、相続税の申告自体は行った上で、税額が0円になるものと考えられます。

相続税の申告期限

相続税の申告期限

相続税の申告期限は、「被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内」です(相続税法27条1項)。
もっとも、いつ「知った」のかということは、必ずしも明確な証拠がある訳ではないので、被相続人が亡くなってから10ヶ月以内に申告することが一般的です。

相続税還付 過大に納付した相続税の返還を受けること

相続税還付とは、既に納付した相続税の額が本来納付すべき額を上回っていた場合に、その過大な部分の返還を受けることをいいます。国税通則法及び相続税法に定める更正の請求の手続によって行われます。

制度の枠組み

相続税の申告は、相続人が自ら財産を評価して行うものです。したがいまして、評価の方法を誤り、又は適用し得る特例を看過したまま申告がされ、結果として過大な納付となっていることがあります。このような場合には、税務署長に対して更正の請求をし、正当な額を超えて納付した部分の還付を受けることができます。

更正の請求には期限が定められています。申告書の提出期限から一定の期間内に限られるのが原則ですが、遺産分割が後に成立した場合、遺留分侵害額の請求に基づき支払うべき金銭の額が確定した場合、認知の訴えの確定により相続人に異動が生じた場合など、後発的な事由があるときは、その事由が生じたことを知った日の翌日から一定の期間内に請求をすることができます。具体的な期間及び要件は法令の改正により変動いたしますので、税務の取扱いにつきましては税理士にご確認ください。

実務上の留意点

第一に、過大な納付が生ずる原因として多いのは土地の評価です。形状が不整形である、間口が狭い、傾斜がある、高圧線が上空を通過している、騒音がある、埋蔵文化財包蔵地に当たるといった事情は、評価額を減ずる要素となり得ます。もっとも、これらの判断は専門的なものであり、税理士及び不動産鑑定士の領域に属します。当事務所が財産の評価を行うものではありません。

第二に、当事務所の観点から重要ですのは、遺産分割又は遺留分侵害額請求の結果として課税関係に変動が生ずる場面です。分割が未了のまま法定相続分により申告をしていたところ、後に分割が成立して取得した財産の額が変わったという場合には、更正の請求又は修正申告を要します。紛争の解決と税務の手続とは、時期を意識して連携させる必要があります。

第三に、還付を受けられるのは、あくまで法令に照らして正当な額を超えて納付していた場合に限られます。還付の可否及び額は個別の事情によって異なりますので、結果を保証することはできません。

第四に、相続人が複数ある場合、更正の請求は各相続人がそれぞれ行うものです。一人の相続人の評価が是正されますと、他の相続人の納付すべき額にも影響が及ぶことがありますので、相続人の間で情報を共有しておくことが望まれます。

第五に、更正の請求が認められない場合でありましても、既に成立した遺産分割の内容を当然に見直すことができるわけではありません。遺産分割の協議は、原則として錯誤等の一般的な要件を満たさない限り、その効力を否定することができないものです。申告と分割とを性急に進めることは避けるべきです。

第六に、当事務所が取り扱いますのは、遺産の範囲及び分割の内容をめぐる民事上の紛争です。申告の内容そのものに疑義がある場合には、申告を担当された税理士又は他の税理士に検討を依頼していただくこととなります。

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更正の請求、修正申告、路線価、遺留分侵害額請求が関連いたします。当事務所は税務申告及び税務代理を行うものではありませんので、還付の可否につきましては税理士にご確認ください。弁護士費用につきましては弁護士費用一覧のページをご覧ください。

相続税評価額と固定資産税評価額

相続税評価額と固定資産税評価額

不動産については、相続税の計算を行う上での評価額は、固定資産税評価額とは異なります。
多くの場合、相続税評価額が、固定資産税評価額を、1割程度上回ります。
都市部では、相続税評価額は、路線価図に記載され、インターネット上で公開されていますから、あなたも見てみることができます。
ただし、実際の相続税評価額は、単純に路線価と面積を掛けただけでなく、土地の形状なども加味して決まるため、税理士さんでないと、厳密な金額は分かりません。

相続分の譲渡 相続人が自己の相続分を他の者に譲り渡すこと

相続分の譲渡とは、共同相続人の一人が、遺産の全体に対して有する包括的な持分ないし法律上の地位を、他の共同相続人又は第三者に移転することをいいます。民法第905条は、共同相続人の一人が遺産の分割前にその相続分を第三者に譲り渡したときの取戻権について定めており、相続分の譲渡が許されることを前提としています。

制度の内容

相続分の譲渡は、個々の財産についての持分の移転ではなく、積極財産と消極財産とを包括した遺産全体に対する割合的な地位の移転です。有償であると無償であるとを問わず行うことができ、遺産分割の協議が成立するまでの間であれば可能です。方式についての定めはありませんが、後日の紛争を避けるため、書面によることが通例です。

譲渡をいたしますと、譲渡人は遺産分割の手続の当事者ではなくなり、協議又は調停に加わる必要がなくなります。既に家庭裁判所の手続が係属している場合には、譲渡人を手続から排除する旨の裁判を求めることができます。他方、譲受人は遺産分割の手続に加わる地位を取得いたします。

相続分が相続人以外の第三者に譲り渡された場合には、他の共同相続人は、その価額及び費用を償還して、その相続分を取り戻すことができます。この取戻権は、譲渡の時から1箇月以内に行使しなければなりません。遺産の分割に無関係の第三者が加わることを防ぎ、相続人の間で遺産の帰属を決する機会を確保するための制度です。

相続分の放棄という取扱いもあります。これは自己の相続分を主張しない旨の意思表示であり、放棄された相続分は他の相続人の相続分の割合に応じて帰属いたします。譲受人を特定する相続分の譲渡とは効果が異なりますので、区別して用いる必要があります。

実務上の留意点

第一に、相続分を譲渡いたしましても、被相続人の債務についての責任を免れるものではありません。可分債務は相続の開始とともに法定相続分に応じて当然に分割され、各相続人が承継すると解されていますので、債権者に対する関係では、譲渡人が引き続き責任を負うこととなります。債務からの離脱を意図される場合には、相続の放棄によるべきです。

第二に、無償で相続分を譲渡した場合、それが遺留分を算定するための財産の価額に加えるべき贈与に当たるかが問題となります。判例は、譲渡された相続分に経済的利益が含まれるときは、贈与に当たるものと解しています。したがいまして、遺留分侵害額請求との関係で影響が生ずることがあります。

第三に、課税の関係です。無償の譲渡か有償の譲渡か、譲受人が相続人であるか第三者であるかによりまして、相続税、贈与税又は所得税のいずれの問題となるかが分かれます。税務の取扱いにつきましては税理士にご確認ください。

第四に、争いに関わりたくないという理由で安易に譲渡をいたしますと、本来取得できたはずの財産を失う結果となることがあります。遺産の全容を把握し、自己の取得し得る額を見積もったうえで判断すべきです。

第五に、相続分の譲渡があった場合でありましても、遺産の中に不動産が含まれるときは、登記の手続において譲渡の事実を証する書面を要します。譲渡証書には譲渡人の印鑑登録証明書を添えておくことが実務上望まれます。

関連する用語

相続分、遺産分割、相続放棄、遺留分侵害額請求が関連いたします。弁護士費用につきましては弁護士費用一覧のページをご覧ください。

相続放棄 相続の効力を初めから受けないとする意思表示

相続放棄とは、相続人が、被相続人の権利義務の承継を全面的に拒絶する意思表示をいいます。民法第938条は、相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならないと定めています。

手続と効果

相続放棄は、家庭裁判所に対する申述という方式によらなければ効力を生じません。相続人の間で、遺産を取得しない旨の合意をいたしましても、それは遺産分割における取得分を零とする合意にすぎず、法律上の相続放棄ではありません。この違いは債務との関係で決定的な意味を持ちます。いわゆる相続放棄の念書に署名をしたにすぎない場合には、債権者からの請求を免れることはできません。

申述は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3箇月以内にしなければなりません。この期間を熟慮期間と申します。財産の調査に時間を要する場合には、家庭裁判所に対し、この期間の伸長を求める申立てをすることができます。

放棄が受理されますと、その者は初めから相続人とならなかったものとみなされます。民法第939条に定めがあります。積極財産も消極財産も一切承継いたしません。また、相続放棄をした者に子がありましても、代襲相続は生じません。この点は、代襲が生ずる相続欠格及び廃除とは異なります。

実務上の留意点

第一に、熟慮期間の起算点です。判例は、被相続人に相続財産が全く存在しないと信ずるにつき相当な理由があると認められるときは、相続財産の全部又は一部の存在を認識した時から起算すべきものとしています。相続の開始から3箇月を経過した後に債権者から請求を受けた事案でありましても、放棄が認められる余地がありますので、直ちに諦めるべきではありません。

第二に、法定単純承認です。相続人が相続財産の全部又は一部を処分いたしますと、単純承認をしたものとみなされ、以後は放棄をすることができなくなります。預貯金を解約して費消する行為、不動産を売却する行為、被相続人の債権を取り立てる行為などが問題となります。放棄を検討される場合には、遺産に手を触れないことが肝要です。

第三に、順位の移動です。先順位の相続人が全員放棄をいたしますと、次順位の者が相続人となります。子が全員放棄をすれば直系尊属が、直系尊属もなければ兄弟姉妹が相続人となり、思いがけず債務を負う立場に置かれることがあります。関係者への連絡を怠らないことが望まれます。

第四に、放棄をした者でありましても、現に相続財産を占有しているときは、他の相続人又は相続財産の清算人に引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもってこれを保存する義務を負います。民法第940条に定めがあります。令和3年の民法の改正により、義務を負う者の範囲が現に占有する者に限られることが明確にされました。

第五に、相続人の全員が放棄をいたしますと、相続人が存在しないこととなり、利害関係人等の申立てにより相続財産清算人が選任されて清算の手続が行われます。放棄をしたからといって、直ちに一切の関わりが絶たれるわけではないという点に留意を要します。

関連する用語

限定承認、単純承認、熟慮期間、代襲相続が関連いたします。弁護士費用につきましては弁護士費用一覧のページをご覧ください。

相続放棄に必要な時間

相続放棄に必要な時間

相続放棄の申立を行うためには、戸籍謄本など、必要書類を揃えた上で、裁判所に申請書を提出する必要があります。特に、被相続人に直系卑属がいない相続に関する相続放棄の場合は、被相続人の両親の生まれてから亡くなるまでのすべての戸籍謄本を揃える必要がありますので、相続放棄の準備に1ヶ月近く必要となります。また、裁判所に相続放棄の申請書を提出してから、許可が出るまでに2週間程度かかることがあります。
これらのことを考えると、被相続人(直系卑属がいない場合)が亡くなってから1ヶ月半程度経過した時点で、相続放棄の意思決定を行う必要があることとなります。

相続放棄手続き

相続放棄手続き

相続放棄の申立を行うためには、戸籍謄本など、必要書類を揃えた上で、裁判所に申請書を提出する必要があります。

特に、お子さんのいらっしゃらない方の相続に関する相続放棄の場合は、亡くなった方のご両親の生まれてから亡くなるまでのすべての戸籍謄本を揃える必要があるので、準備にも1ヶ月近くかかります。

また、裁判所に申請書を提出してから、許可が出るまでに2週間程度かかることがあります。

これらのことを考えると、叔父さんが亡くなってから1ヶ月半程度経過した時点で、相続放棄の意思決定を行う必要があることになります。

裁判所に熟慮期間の伸長を申し立てれば、通常は、標準で3ヶ月間、相続放棄を行う期間を延ばしてくれます。

代襲相続(だいしゅうそうぞく) 孫や甥姪が代わって相続すること

代襲相続とは、相続人となるべき被相続人の子又は兄弟姉妹が、相続の開始以前に死亡し、又は相続欠格若しくは廃除によって相続権を失った場合に、その者の子が、その者に代わって同一の順位で相続人となることをいいます。民法第887条第2項及び第889条第2項に定めが置かれています。

代襲の原因と範囲

代襲の原因は、相続の開始以前の死亡、相続欠格、及び廃除の3つに限られます。相続の放棄は代襲の原因とはなりません。放棄をした者は初めから相続人とならなかったものとみなされますので、その子が代襲することはないという点に注意を要します。この点は誤解の多いところです。

被相続人の子が代襲される場合、代襲者は被相続人の孫です。さらにその孫についても代襲の原因が生じたときは、曾孫が相続人となります。これを再代襲と申しまして、直系卑属である限り制限なく続いてまいります。

これに対し、被相続人の兄弟姉妹が代襲される場合には、代襲者は兄弟姉妹の子、すなわち被相続人の甥又は姪に限られます。再代襲は認められておらず、甥又は姪が死亡していても、その子が相続人となることはありません。

代襲者の相続分は、被代襲者が受けるべきであった相続分と同一です。代襲者が複数ある場合には、その相続分を頭数で等分いたします。なお、被相続人の直系卑属でない者は代襲者となることができませんので、養子の縁組の前に生まれていた子は、養親の相続について代襲相続をいたしません。

実務上の留意点

第一に、代襲相続が生じますと当事者の数が増加し、遺産分割の協議が難航する傾向があります。世代を隔てた親族は、互いに面識がなく、被相続人との関係も希薄であることが多いためです。連絡先の把握そのものに時間を要することも珍しくありません。

第二に、代襲相続と数次相続とは区別を要します。代襲相続は相続の開始以前に相続人が死亡していた場合ですが、相続の開始の後に相続人が死亡した場合は数次相続であり、その者の相続人が地位を承継いたします。死亡の前後によって承継の構造も相続分も異なりますので、戸籍によって死亡の日を正確に確認する必要があります。

第三に、相続の放棄によって次順位の者が相続人となる場合と、代襲相続とを混同してはなりません。子が全員放棄をいたしましても孫が代襲するのではなく、第2順位の直系尊属、次いで兄弟姉妹へと順位が移ってまいります。

第四に、兄弟姉妹及びその代襲者には遺留分がありません。民法第1042条は、遺留分を有する者を兄弟姉妹以外の相続人と定めています。したがいまして、甥又は姪が相続人となる事案では、遺言があれば遺産の帰属はこれによって定まることとなります。

関連する用語

数次相続、相続欠格、廃除、相続放棄、法定相続分が関連いたします。弁護士費用につきましては弁護士費用一覧のページをご覧ください。

代償分割 財産を取得した者が他の相続人に代償金を支払う分割

代償分割とは、遺産分割の方法の一つであり、共同相続人のうちの一人又は数人に現物である財産を取得させたうえで、その者が他の相続人に対して金銭その他の財産を給付する義務を負うものとする分割の方法をいいます。家事事件手続法第195条は、家庭裁判所が債務を負担させる方法による分割を命ずることができる旨を定めています。

制度の内容

遺産分割の方法には、現物分割、代償分割、換価分割及び共有とする方法があります。現物分割は財産をそのまま各相続人に配分する方法ですが、遺産の中心が居住用の不動産や事業の用に供されている資産である場合には、これを物理的に分けることが困難です。このような場合に用いられるのが代償分割です。

審判によって代償分割が命ぜられるためには、特別の事情があると認められること、及び債務を負担することとなる相続人に支払の資力があることが必要と解されています。資力を欠く者に多額の債務を負わせましても、他の相続人の保護に資さないからです。もっとも、相続人の全員が合意をするのであれば、協議によって自由に代償分割を選択することができます。

代償金の額は、取得する財産の価額から、その相続人の具体的相続分に相当する額を控除して算出するのが基本です。評価の基準時は、遺産分割の時と解されています。相続税の申告における評価額とは基準が異なりますので、両者を混同しないよう注意を要します。

実務上の留意点

第一に、財産の評価をめぐって争いが生じやすい類型です。不動産につきましては、固定資産税評価額、相続税の路線価に基づく価額、不動産業者の査定額、不動産鑑定士による鑑定評価額のいずれによるかで結論が大きく異なります。協議の段階から、いかなる資料に基づいて評価するかを合意しておくことが望まれます。なお、不動産の鑑定評価は不動産鑑定士の業務であり、当事務所が行うものではありません。

第二に、代償金の支払の確保です。分割の協議が成立した後に支払がされないという事態を避けるため、支払の時期及び方法を協議書に明記し、遅延した場合の取扱いを定めておくべきです。金額が多額に上る場合には、公正証書によることや、取得する不動産に抵当権を設定することも検討に値します。

第三に、資金の調達です。代償金を支払う原資がない場合には、金融機関からの借入れ、又は取得した不動産を担保に供することを検討することとなります。調達の見通しが立たないまま合意をいたしますと、履行が困難となります。

第四に、事業の用に供されている資産や取引相場のない株式が遺産に含まれる場合には、事業の継続の観点から、これを後継者に集中させたうえで他の相続人に代償金を支払う方法が用いられます。この場合、評価の方法が一層専門的なものとなります。

第五に、課税の関係です。代償金の授受は相続税の課税価格の計算に影響を及ぼしますし、金銭に代えて自己の固有の財産を給付いたしますと譲渡があったものとして扱われることがあります。税務の取扱いにつきましては税理士にご確認ください。

関連する用語

現物分割、換価分割、具体的相続分、遺産分割協議が関連いたします。弁護士費用につきましては弁護士費用一覧のページをご覧ください。

単純承認 権利義務を無限に承継する相続の承認

単純承認とは、相続人が、被相続人の権利義務を無限に承継することを承認する意思表示をいいます。民法第920条は、相続人は単純承認をしたときは無限に被相続人の権利義務を承継する旨を定めています。

制度の内容

相続人には、単純承認、限定承認及び相続の放棄という3つの選択肢が与えられています。このうち単純承認は、積極財産と消極財産とを区別することなく、その全てを承継するものです。したがいまして、遺産である積極財産の額を超える債務が存在する場合には、相続人が自己の固有の財産をもって弁済の責めを負うこととなります。

単純承認は、明示の意思表示によって行うこともできますが、実際には法律の定める事由によって承認をしたものとみなされる場合が大半です。これを法定単純承認と申しまして、民法第921条に定めが置かれています。

第一の事由は、相続人が相続財産の全部又は一部を処分したときです。ただし、保存行為及び短期の賃貸をすることは、処分に当たりません。第二の事由は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3箇月の熟慮期間内に限定承認又は放棄をしなかったときです。第三の事由は、限定承認又は放棄をした後でありましても、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを財産目録中に記載しなかったときです。

実務上の留意点

第一に、いかなる行為が処分に当たるかが実務上の要点です。被相続人の預貯金を解約して自己の用途に費消する行為、遺産である不動産を売却する行為、被相続人の債権を取り立てて受領する行為、遺産分割の協議を成立させる行為などは、処分に当たると解されるおそれがあります。放棄を検討される段階では、遺産に手を触れないことが肝要です。

第二に、他方で、社会通念上相当な範囲の葬儀の費用を遺産から支出する行為につきましては、処分に当たらないと判断された裁判例があります。もっとも、その範囲は事案によって異なりますので、判断に迷われる場合には行為に及ぶ前にご相談いただくことが望まれます。

第三に、形見分けと称して遺品を持ち帰る行為も、対象となる物の価値によっては処分と評価される可能性があります。経済的価値の乏しい物にとどめるべきです。

第四に、熟慮期間の経過による法定単純承認につきましては、期間の起算点が争われることがあります。判例は、相続財産が全く存在しないと信ずるにつき相当な理由があるときは、その存在を認識した時から起算すべきものとしています。期間の経過をもって直ちに諦めるべきではありません。

第五に、単純承認をした後に多額の債務が判明した場合でありましても、原則としてこれを撤回することはできません。民法第919条は、承認及び放棄は熟慮期間内であっても撤回することができない旨を定めています。詐欺又は強迫を理由とする取消し等の余地が残るにとどまります。したがいまして、承認をするか否かの判断に先立ち、財産及び債務の調査を尽くすことが不可欠です。

関連する用語

限定承認、相続放棄、熟慮期間、相続財産が関連いたします。弁護士費用につきましては弁護士費用一覧のページをご覧ください。

嫡出子(ちゃくしゅつし) 法律上の婚姻関係にある夫婦の間の子

嫡出子とは、婚姻関係にある男女の間に生まれた子をいいます。これに対し、婚姻関係にない男女の間に生まれた子を嫡出でない子と申します。民法は嫡出子について推定の規定を置き、父子関係の早期の確定を図っています。

嫡出の推定

民法第772条は、妻が婚姻中に懐胎した子は当該婚姻における夫の子と推定し、また、女が婚姻前に懐胎した子であって婚姻が成立した後に生まれたものも同様に夫の子と推定する旨を定めています。あわせて、婚姻の成立の日から200日以内に生まれた子は婚姻前に懐胎したものと、婚姻の成立の日から200日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から300日以内に生まれた子は婚姻中に懐胎したものと推定されます。

この規定は令和4年の民法の改正によって見直されたものです。従前は、婚姻の解消等の日から300日以内に生まれた子は前の夫の子と推定されるにとどまっていましたところ、改正により、母が前の婚姻の解消等の後に再婚をしていた場合には、その子は再婚後の夫の子と推定されることとなりました。これに伴い、女性の再婚禁止期間の定めは廃止されています。

推定を覆すためには、嫡出否認の訴えによる必要があります。改正により、否認権者の範囲が父のみならず子及び母にも拡大され、出訴の期間も見直されました。この訴えによらない限り、父子関係を争うことはできないのが原則です。

相続における取扱い

相続分につきましては、嫡出子と嫡出でない子との間に差はありません。かつて民法第900条第4号ただし書は、嫡出でない子の相続分を嫡出子の2分の1と定めていましたが、最高裁判所は平成25年、この規定を法の下の平等を定める憲法第14条第1項に違反するものと判断いたしました。これを受けて同年に民法が改正され、当該規定は削除されています。したがいまして、現在は同じ順位の子として等しい相続分を有します。

古い文献や解説の中には、嫡出でない子の相続分を嫡出子の2分の1とする記述が残っていることがあります。現行法に適合いたしませんので、依拠されないようご留意ください。

実務上の留意点

第一に、嫡出でない子と父との間の法律上の親子関係は、認知によって生じます。認知がされていない場合には、父の相続について相続人となることができません。他方、母との関係は分娩の事実によって当然に生ずるものと解されています。

第二に、被相続人の戸籍を精査した結果、認知された子の存在が判明することがあります。この場合、その子を除外して成立した遺産分割の協議は無効です。戸籍の収集は出生まで遡って行わなければなりません。

第三に、相続の開始の後に認知の訴えが確定して相続人となった者は、既に分割が済んでいるときは、価額のみによる支払を請求することができます。民法第910条に定めがあります。

関連する用語

非嫡出子、認知、法定相続分、相続人が関連いたします。弁護士費用につきましては弁護士費用一覧のページをご覧ください。

直系尊属(ちょっけいそんぞく) 父母や祖父母など上の世代の血族

直系尊属とは、父母、祖父母、曾祖父母のように、自己より前の世代に属する直系の血族をいいます。これに対し、子、孫のように自己より後の世代に属する直系の血族を直系卑属と申します。

相続における地位

直系尊属は、血族相続人の第2順位に位置いたします。民法第889条第1項第1号は、被相続人に子及びその代襲者がない場合に、直系尊属が相続人となる旨を定めています。したがいまして、被相続人に子がある限り、直系尊属が相続人となることはありません。

直系尊属の間では、親等の近い者が優先いたします。父母のいずれかが存命であれば、祖父母は相続人となりません。父母がいずれも死亡している場合に、はじめて祖父母が相続人となります。同順位の者が複数あるときは、その相続分を頭数で等分いたします。

配偶者と直系尊属とが共に相続人となる場合の法定相続分は、配偶者が3分の2、直系尊属が3分の1です。民法第900条第2号に定めがあります。

養子縁組がされている場合、養親も直系尊属に当たります。普通養子縁組におきましては、実方の父母との親族関係が存続いたしますので、養親と実親とが共に直系尊属となり得ます。他方、特別養子縁組におきましては、実方の父母及びその血族との親族関係が終了いたしますので、実親は相続人となりません。

なお、直系尊属には遺留分があります。民法第1042条は、直系尊属のみが相続人である場合の遺留分を被相続人の財産の3分の1とし、その他の場合を2分の1と定めています。兄弟姉妹に遺留分がないのとは異なる取扱いです。

実務上の留意点

第一に、子のない方が亡くなられた場合には、配偶者と直系尊属とが相続人となります。配偶者としては、義理の父母との間で遺産分割の協議を行うこととなり、心理的な負担が大きい類型です。とりわけ居住している不動産が遺産の中心である場合には、深刻な対立に至ることがあります。

第二に、この類型に備える手段として、配偶者居住権の活用が考えられます。平成30年の相続法の改正により設けられた制度であり、配偶者が居住していた建物について、所有権とは別に、終身又は一定の期間にわたり無償で使用及び収益をする権利を取得するものです。遺産分割、遺贈又は死因贈与によって設定することができます。

第三に、直系尊属には遺留分がありますので、遺言によって配偶者に全ての財産を相続させる旨を定めましても、直系尊属から遺留分侵害額請求を受ける可能性があります。遺言を作成される際には、この点を織り込んで検討する必要があります。

第四に、高齢の直系尊属が相続人となる事案では、判断能力が十分でないことがあります。この場合には成年後見人等の選任を経なければ協議を行うことができず、手続に相応の期間を要します。

関連する用語

直系卑属、傍系、法定相続分、遺留分侵害額請求、配偶者居住権が関連いたします。弁護士費用につきましては弁護士費用一覧のページをご覧ください。

直系卑属(ちょっけいひぞく) 子や孫など下の世代の血族

直系卑属とは、子、孫、曾孫のように、自己より後の世代に属する直系の血族をいいます。これに対し、父母、祖父母のように自己より前の世代に属する直系の血族を直系尊属と申します。

相続における地位

被相続人の子は、血族相続人の第1順位です。民法第887条第1項に定めがあります。実子と養子との間、及び嫡出子と嫡出でない子との間に、相続分の差はありません。嫡出でない子の相続分を嫡出子の2分の1とする規定は、最高裁判所が平成25年に憲法に違反すると判断したことを受けて削除されており、現行法には存在いたしません。

子が相続の開始以前に死亡し、又は相続欠格若しくは廃除により相続権を失ったときは、その子である孫が代襲して相続人となります。孫についても同様の事由が生じたときは曾孫が相続人となり、直系卑属である限り再代襲が続いてまいります。この点は、代襲が一代に限られる兄弟姉妹の系統とは異なります。

配偶者と子とが共に相続人となる場合の法定相続分は、それぞれ2分の1です。民法第900条第1号に定めがあります。子が複数あるときは、2分の1をその頭数で等分いたします。

直系卑属には遺留分があります。したがいまして、特定の子に全ての財産を相続させる旨の遺言がされた場合でありましても、他の子は遺留分侵害額請求をすることができます。

実務上の留意点

第一に、普通養子縁組による養子は、養親の直系卑属であると同時に、実方の父母の直系卑属でもあります。したがいまして、双方の相続について相続人となります。他方、特別養子縁組の場合には実方との親族関係が終了いたしますので、実方の父母の相続については相続人となりません。

第二に、養子の子が代襲相続をすることができるか否かは、その子が養子縁組の前に生まれたか後に生まれたかによって異なります。縁組の前に生まれていた子は養親の直系卑属ではありませんので、代襲相続をいたしません。戸籍によって出生の日と縁組の日とを確認する必要があります。

第三に、孫を養子とする方法が、相続の対策として用いられることがあります。もっとも、他の相続人の相続分が減少いたしますので、相続人の間の対立を招く一因となり得ます。また、専ら相続税を回避する目的でされた縁組の効力が争われた事案もあります。判例は、そのような目的があったというだけでは直ちに縁組の意思を欠くものではないと判断いたしました。

第四に、被相続人より先に子が死亡している事案では、代襲相続によって当事者の数が増加し、世代を隔てた親族の間で協議を要することとなります。連絡先の把握から着手しなければならない例も少なくありません。

第五に、被相続人に子がある限り、直系尊属及び兄弟姉妹が相続人となることはありません。子の全員が相続の放棄をした場合には、孫が代襲するのではなく、第2順位の直系尊属へと順位が移ってまいります。放棄は代襲の原因ではないという点を確認しておく必要があります。

第六に、相続人である子の一部が既に死亡し、その子が未成年である場合には、法定代理人である親権者が協議に加わることとなります。もっとも、その親権者自身が相続人であるときは利益が相反いたしますので、家庭裁判所に特別代理人の選任を申し立てなければなりません。

関連する用語

直系尊属、代襲相続、養子、法定相続分、遺留分侵害額請求が関連いたします。弁護士費用につきましては弁護士費用一覧のページをご覧ください。

底地(そこち) 借地権の負担が付いた土地の所有権

底地とは、借地権の目的となっている土地について、その所有者が有する権利、すなわち借地権の負担が付いた土地の所有権をいいます。取引の実務及び相続税の財産評価において用いられる語です。

性質と評価

土地の所有者が他人に土地を貸し、借主が建物の所有を目的とする地上権又は賃借権を有する場合、その土地の利用権は借地権として借主に帰属いたします。所有者は所有権を有しながら、自らその土地を使用することができず、地代を収受する立場にとどまります。この状態にある所有権を底地と呼び、借主が有する権利を借地権と呼んで対比いたします。

借地借家法により、借地権の存続期間及び更新につきましては借主が厚く保護されています。契約の期間が満了いたしましても、正当の事由が認められない限り、所有者は更新を拒むことができません。したがいまして、底地は所有権でありながら、当面の間これを自ら使用することが困難な財産です。

相続税の財産評価におきましては、自用地としての価額から借地権の価額に相当する部分を控除して評価するのが原則です。控除の割合は地域ごとに定められていますが、その内容は改定されることがありますので、税務の取扱いにつきましては税理士にご確認ください。なお、財産の評価そのものは税理士及び不動産鑑定士の領域に属し、当事務所が行うものではありません。

実務上の留意点

第一に、底地は換価が容易ではありません。買い手が限られ、評価額に近い価格での売却は期待し難いのが実情です。遺産分割におきまして、底地を取得する相続人と預貯金を取得する相続人との間で、実質的な公平をどのように図るかが問題となります。相続税の評価額をそのまま分割の基準といたしますと、底地を取得した相続人に不利益が生ずるおそれがあります。

第二に、借地契約の内容の確認が不可欠です。契約書が作成されていない、又は所在が不明であるという事案は珍しくありません。地代の額、支払の状況、契約の始期、建物の登記の有無を確認し、権利関係を整理する必要があります。

第三に、賃貸人たる地位は相続により当然に承継されます。相続人が複数ある場合、遺産分割が成立するまでの間、賃貸人たる地位及び地代の債権は相続人の共有に属することとなります。地代の受領方法につき、あらかじめ相続人の間で取決めをしておくことが望まれます。

第四に、底地と借地権とを同一の者が取得いたしますと、制約のない完全な所有権となり、価値が回復いたします。借主との間で、底地の売却又は借地権の買取りについて協議する余地があります。もっとも、借主に取得の意向がない場合には交渉は難航いたします。

第五に、長期にわたり地代が据え置かれている事案が多く見受けられます。近隣の地代の水準、租税公課の額の推移等に照らして著しく不相当となっているときは、地代の増額を請求することができます。相続を機に契約の内容を見直す例があります。

第六に、借地上の建物が朽廃し、又は無断で増改築若しくは譲渡がされている場合には、契約の解除の可否が問題となります。事実関係の調査を経たうえで慎重に判断すべき事項です。

関連する用語

借地権、路線価、遺産分割、代償分割が関連いたします。弁護士費用につきましては弁護士費用一覧のページをご覧ください。

特別受益 生前贈与や遺贈により受けた特別の利益

特別受益とは、共同相続人の中に、被相続人から遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときの、その受けた利益をいいます。民法第903条に定めが置かれています。

制度の内容

相続人の一部が生前に被相続人から財産を与えられていた場合に、これを考慮せずに遺産のみを分割いたしますと、相続人の間に不公平が生じます。そこで、特別受益に当たる贈与又は遺贈の価額を相続財産の価額に加えたものを相続財産とみなし、これに法定相続分を乗じた額から当該受益の価額を控除して、その者の具体的相続分を算定いたします。この計算を持戻しと申します。

特別受益に当たり得るものといたしましては、居住用不動産の贈与又はその取得のための資金の援助、事業を開始するための資金や事業用資産の贈与、独立の資本というべき程度の金銭の贈与などがあります。他方、扶養の範囲内の支出や、被相続人の資力及び社会的地位に照らして通常と認められる範囲の教育に要した費用は、特別受益に当たらないと解されるのが通常です。個別の事情に応じた判断を要します。

被相続人は、持戻しを免除する旨の意思表示をすることができます。民法第903条第3項に定めがあります。さらに、平成30年の相続法の改正により、婚姻の期間が長期に及ぶ夫婦の一方が他方に対して居住の用に供する建物又はその敷地を遺贈又は贈与したときは、持戻しの免除の意思表示があったものと推定する規定が設けられました。同条第4項です。

実務上の留意点

第一に、期間の制限に注意を要します。民法第904条の3は、相続の開始の時から10年を経過した後にする遺産の分割については、特別受益及び寄与分に関する規定を適用しない旨を定めています。令和3年の民法の改正により設けられたものであり、長期間放置された遺産の分割を法定相続分によって処理するための規定です。特別受益を主張されるのであれば、協議を先延ばしにすべきではありません。

第二に、立証の問題です。数十年前の資金の移動が主張されることが多く、当時の資料が残っていないという事態が生じます。預金の取引の履歴、不動産の登記の記録、贈与税の申告の有無などが手掛かりとなりますが、金融機関における記録の保存期間には限りがありますので、早期に調査に着手する必要があります。

第三に、評価の基準時です。贈与された財産の価額は、相続の開始の時を基準として評価するものと解されています。金銭の贈与につきましては、貨幣価値の変動を考慮して評価すべきものとされた判例があります。

第四に、遺留分との関係です。遺留分を算定するための財産の価額に加える贈与は、相続人に対するものにつき相続の開始前の10年間にされたものに限られます。特別受益の持戻しとは対象となる範囲が異なりますので、混同しないよう注意を要します。

関連する用語

寄与分、具体的相続分、持戻し、遺留分侵害額請求が関連いたします。弁護士費用につきましては弁護士費用一覧のページをご覧ください。

認知(にんち) 婚姻外の子を自己の子と認める意思表示

認知とは、嫡出でない子について、父又は母がその子を自己の子であると認める意思表示をいい、これによって法律上の親子関係が生じます。民法第779条以下に定めが置かれています。

制度の内容

母と子との間の親子関係は、原則として分娩の事実によって当然に生ずるものと解されていますので、認知が問題となるのは主として父子関係です。婚姻関係にない男女の間に生まれた子につきましては、父が認知をしない限り、法律上の父子関係は生じません。

認知の方法には、戸籍法の定めるところにより届出をする方法と、遺言による方法とがあります。民法第781条に定めがあります。遺言による認知がされた場合には、遺言執行者が届出を行います。

成年の子を認知するには、その子の承諾を得なければなりません。民法第782条です。また、胎児を認知するには、母の承諾を要します。同法第783条第1項です。さらに、死亡した子につきましては、その直系卑属があるときに限り認知をすることができ、その直系卑属が成年者であるときはその承諾を要します。

父が任意に認知をしない場合には、子、その直系卑属又はこれらの者の法定代理人は、認知の訴えを提起することができます。民法第787条です。父の死亡の日から3年を経過したときは、この訴えを提起することができません。

認知の効力は出生の時に遡ります。民法第784条に定めがありますが、第三者が既に取得した権利を害することはできません。

実務上の留意点

第一に、認知がされますと、その子は父の相続について第1順位の相続人となります。相続分につきましては嫡出子との間に差はありません。かつて嫡出でない子の相続分を嫡出子の2分の1と定めていた規定は、最高裁判所が平成25年に憲法に違反すると判断したことを受けて削除されており、現行法には存在いたしません。

第二に、被相続人の戸籍を精査して認知された子の存在が判明することがあります。他の相続人がその存在を知らなかったという事案も珍しくありません。この者を除外して成立した遺産分割の協議は無効ですので、戸籍の収集は出生まで遡って行わなければなりません。

第三に、相続の開始の後に認知の訴えが確定して相続人となった者は、既に他の共同相続人が分割その他の処分をしていた場合には、価額のみによる支払を請求することができるにとどまります。民法第910条に定めがあります。

第四に、遺言による認知がされた場合には、遺言の内容が相続人にとって予期しないものとなり、紛争に発展することがあります。遺言執行者を指定しておくことが望まれます。

第五に、認知の訴えにおきましては、父子関係の有無が争点となります。今日では科学的な鑑定の結果が重要な証拠となりますが、当事者の協力が得られない場合もあります。この場合には、母と父とされる者との交際の状況、出生の前後の言動、養育に要する費用の負担の有無といった間接的な事実を積み重ねて立証を試みることとなります。

第六に、認知によって法律上の父子関係が生じますと、相続のみならず、扶養の義務や親権の帰属についても法律関係が生じます。相続の場面のみを捉えて判断すべきものではありません。

関連する用語

嫡出子、非嫡出子、相続人、遺言執行者が関連いたします。弁護士費用につきましては弁護士費用一覧のページをご覧ください。

農地の納税猶予の特例 耕作を続ける場合の相続税の納税の猶予

農地の納税猶予の特例とは、農業を営んでいた被相続人から相続人が農地を取得し、引き続き農業を営む場合に、一定の要件の下で、相続税の納税を猶予する制度をいいます。租税特別措置法に定めが置かれています。

制度の趣旨と枠組み

農地は面積が大きく、宅地に転用し得る地域にあるものは評価額が高額となります。これに相続税が課されますと、納税のために農地を手放さざるを得ず、農業の継続が困難となります。そこで、農業を継続することを条件として、農業投資価格を超える部分に対応する相続税の納税を猶予することとされています。

適用を受けるためには、被相続人が農業を営んでいたこと、相続人が申告期限までに農業を開始し、その後も引き続き農業を営むこと、対象となる農地が所定の要件を満たすことなどが必要です。市街化区域内の農地につきましては、生産緑地地区内にあることなど、地域の区分に応じた要件が定められています。

猶予された税額は、相続人が死亡した場合など所定の事由が生じたときに免除されます。他方、農業を廃止した場合、農地を譲渡し又は転用した場合など、要件に適合しなくなったときは、猶予された税額に利子税を加えて納付しなければなりません。具体的な要件、期間及び金額は法令の改正により変動いたしますので、税務の取扱いにつきましては税理士にご確認ください。

実務上の留意点

第一に、この特例は相続人のうち農業を継続する者に適用されるものです。したがいまして、農地を誰が取得するかを定める遺産分割の内容と、税務上の取扱いとが密接に関連いたします。分割の協議が申告期限までに調わない場合には、適用を受けられないことがありますので、期限を意識した進行が求められます。

第二に、農地を取得した相続人は、長期にわたり農業を継続する義務を事実上負うこととなります。他の相続人が換価を望む一方で、農業を継ぐ相続人はこれに応じられないという対立が生じやすい類型です。代償分割によって調整を図ることが多くありますが、農地を取得した相続人に代償金の支払能力がないという問題に直面いたします。

第三に、農地の権利の移動につきましては農地法による制限があります。相続による取得は許可を要しませんが、農業委員会への届出が必要です。他方、遺産分割の内容として相続人以外の者に農地を取得させる場合や、第三者に譲渡する場合には、許可を要することがあります。

第四に、相続の登記につきましては、令和6年から申請が義務化されています。不動産登記法第76条の2に定めがあり、所有権を取得したことを知った日から3年以内に申請をしなければなりません。分割の協議が調わない場合には、相続人である旨の申出をすることによって義務を履行したものとみなされます。同法第76条の3です。

関連する用語

代償分割、遺産分割協議、相続登記が関連いたします。税務の取扱いにつきましては税理士にご確認ください。弁護士費用につきましては弁護士費用一覧のページをご覧ください。

廃除(はいじょ) 非行のある推定相続人の資格を失わせる制度

廃除とは、遺留分を有する推定相続人について、被相続人に対する虐待若しくは重大な侮辱があったとき、又はその他の著しい非行があったときに、被相続人の請求に基づき、家庭裁判所の審判によってその相続権を失わせる制度をいいます。民法第892条に定めが置かれています。

制度の内容

対象となるのは、遺留分を有する推定相続人に限られます。すなわち、配偶者、子及びその代襲者、並びに直系尊属です。兄弟姉妹には遺留分がありませんので、廃除の対象とはなりません。兄弟姉妹に財産を取得させたくない場合には、遺言によって他の者に相続させ、又は遺贈をすれば足りるからです。

廃除は、被相続人が生前に家庭裁判所に請求する方法によるほか、遺言によってその意思を表示する方法もあります。民法第893条は、遺言による廃除がされた場合には、遺言執行者が相続の開始の後に遅滞なく家庭裁判所に請求しなければならない旨を定めています。この場合、廃除の効力は相続開始の時に遡って生じます。

被相続人は、いつでも廃除の取消しを家庭裁判所に請求することができます。民法第894条です。廃除がされますと、その者は相続権を失いますが、その子は代襲相続をいたします。この点は相続欠格と同様です。

実務上の留意点

第一に、廃除が認められるかどうかは、家庭裁判所の判断に委ねられています。相続権を奪うという重大な効果を伴いますので、その審査は厳格です。単に折り合いが悪い、疎遠である、老後の面倒を見なかったという程度の事情では、認められないのが通例です。被相続人の側にも一因があると評価される場合には、なお認められにくくなります。

第二に、認められた事例といたしましては、継続的かつ重大な暴力が加えられていた場合、被相続人の財産を無断で処分し又は費消して著しい損害を与えた場合、被相続人の名誉を著しく毀損する行為が反復された場合などがあります。いずれも、家族としての関係が破壊されたと評価し得る程度の事情を要します。

第三に、立証の問題です。診断書、被害の届出の記録、通帳の取引の履歴、日記、書簡、第三者の陳述など、客観的な資料を積み重ねる必要があります。生前に請求される場合には、被相続人自身から事情を聴取することができますので、遺言による廃除に比べて立証が容易です。

第四に、遺言による廃除がされた事案では、被相続人が既に死亡していますので、立証が困難となります。遺言書に廃除の理由を具体的に記載しておくこと、及び関係する資料を併せて保管しておくことが望まれます。

第五に、廃除が認められない場合に備え、遺言によって当該相続人の取得分を遺留分の限度にとどめる内容とすることが、現実的な方策となることがあります。廃除の請求と遺言の作成とを併せて検討すべきです。

関連する用語

相続欠格、代襲相続、遺留分侵害額請求、遺言執行者が関連いたします。弁護士費用につきましては弁護士費用一覧のページをご覧ください。

配偶者 婚姻の相手方であり常に相続人となる者

配偶者とは、婚姻の届出をした夫又は妻をいいます。民法第890条は、被相続人の配偶者は常に相続人となる旨を定めており、他に相続人があるときは、その者と同順位で相続人となります。

相続における地位

配偶者は、血族相続人のような順位を有しません。子があればその子と、子がなければ直系尊属と、いずれもなければ兄弟姉妹と、それぞれ共に相続人となります。血族相続人が全く存在しない場合には、配偶者が単独で相続いたします。

法定相続分は、子と共に相続人となる場合は2分の1、直系尊属と共に相続人となる場合は3分の2、兄弟姉妹と共に相続人となる場合は4分の3です。民法第900条に定めがあります。

ここにいう配偶者とは、婚姻の届出をした者に限られます。内縁の配偶者は、いかに長期にわたり生活を共にしていたとしても、相続人とはなりません。他方、離婚をした元の配偶者も相続人ではありません。婚姻の届出がされているか否かという形式によって判断されるという点が、この語の理解の要点です。

配偶者の保護に関する制度

平成30年の相続法の改正により、配偶者の居住の保護を目的とする制度が設けられました。第一に、配偶者居住権です。被相続人の財産に属した建物に相続の開始の時に居住していた配偶者は、遺産分割、遺贈又は死因贈与によって、終身又は一定の期間にわたりその建物を無償で使用及び収益をする権利を取得することができます。所有権を取得する場合に比べて評価額が低く抑えられますので、居住を確保しつつ、預貯金その他の財産も取得しやすくなるという利点があります。

第二に、配偶者短期居住権です。相続の開始の時に被相続人の建物に無償で居住していた配偶者は、遺産分割によりその建物の帰属が確定する日又は相続の開始の時から一定の期間を経過する日のいずれか遅い日までの間、引き続き無償で使用することができます。直ちに退去を求められる事態を防ぐための制度です。

第三に、持戻しの免除の意思表示の推定です。婚姻の期間が長期に及ぶ夫婦の一方が他方に対し、居住の用に供する建物又はその敷地を遺贈又は贈与したときは、持戻しを免除する意思表示があったものと推定されます。民法第903条第4項です。

実務上の留意点

第一に、子のない夫婦の一方が亡くなられた場合、配偶者は義理の父母又は義理の兄弟姉妹と遺産分割の協議を行うこととなり、負担の大きい類型です。遺言を作成しておくことが有効な対策となります。とりわけ兄弟姉妹には遺留分がありませんので、遺言によって配偶者に全ての財産を相続させることが可能です。

第二に、内縁の配偶者に財産を残されることを希望される場合には、遺言、生前の贈与、生命保険金の受取人の指定などの方法を検討することとなります。相続人の遺留分に配慮した内容とすることが望まれます。

関連する用語

配偶者居住権、配偶者控除、法定相続分、遺留分侵害額請求が関連いたします。弁護士費用につきましては弁護士費用一覧のページをご覧ください。

配偶者控除 配偶者の相続税の負担を軽減する税額の軽減

相続税における配偶者控除とは、被相続人の配偶者が相続又は遺贈により財産を取得した場合に、その相続税額を軽減する制度をいいます。法令上は配偶者に対する相続税額の軽減と称されており、相続税法に定めが置かれています。

制度の趣旨と枠組み

配偶者の財産は、夫婦が共同して形成したものという側面があります。また、被相続人の死亡の後における配偶者の生活の保障という要請もあります。さらに、配偶者は同世代であることが多く、遠からず次の相続が生ずることも想定されます。これらの事情を考慮して、配偶者が取得する財産については税額を大きく軽減することとされています。

軽減の対象となるのは、配偶者の法定相続分に相当する額、又は法令の定める一定の額のいずれか多い額までに対応する部分です。その具体的な額は法令の改正により変動いたしますので、税務の取扱いにつきましては税理士にご確認ください。当事務所は税務申告及び税務代理を行うものではありません。

この軽減を受けるためには、原則として申告期限までに遺産分割が成立し、配偶者が取得する財産が確定していることを要します。分割が未了の場合には、その旨の届出をしたうえで、一定の期間内に分割を成立させることにより、後日に軽減の適用を受ける道が用意されています。

なお、婚姻の届出をした配偶者に限られます。内縁の配偶者には適用がありません。婚姻の期間の長短は問われないものとされています。

実務上の留意点

第一に、申告期限との関係です。遺産分割の協議が調わないまま期限を迎えますと、軽減の適用を受けられないこととなり、いったんは高額の納付を要します。紛争が長期化している事案では、期限内の届出を失念しないよう注意を要します。当事務所といたしましても、税務上の期限を意識しながら交渉の進行を図ることといたしています。

第二に、二次相続への配慮です。一次の相続において配偶者が多くの財産を取得いたしますと、その時点の税額は抑えられますが、配偶者の死亡による次の相続において、子が負担する税額が増加することがあります。目先の税額のみによって取得する財産を決することは、必ずしも適切ではありません。

第三に、当事務所の観点から重要ですのは、税額の軽減を理由として、配偶者に不相応に多くの財産を取得させる内容の分割が提案される場面です。配偶者の意思に沿うものであれば差し支えありませんが、他の相続人の意向によって形式的にそのような分割がされ、後に紛争を生ずる例があります。

第四に、隠蔽又は仮装がされていた財産につきましては、この軽減の適用が制限されます。名義預金の取扱いをめぐって問題となることがありますので、申告に際しては財産の帰属を慎重に検討する必要があります。

関連する用語

配偶者、配偶者居住権、名義預金、法定相続分が関連いたします。税務の取扱いにつきましては税理士にご確認ください。弁護士費用につきましては弁護士費用一覧のページをご覧ください。

卑属(ひぞく) 子や孫など自分より後の世代の血族

卑属とは、自己より後の世代に属する血族をいいます。子、孫、曾孫のような直系の関係にある者を直系卑属と申し、甥、姪のような傍系の関係にある者を傍系卑属と申します。両者を併せた総称が卑属です。

親族法上の位置付け

民法は、6親等内の血族、配偶者、及び3親等内の姻族を親族と定めています。民法第725条です。血族のうち、自己より前の世代に属する者を尊属、後の世代に属する者を卑属と呼び、さらに世代の系列が直上直下の関係にあるものを直系、共同の始祖を介して分岐した関係にあるものを傍系と呼びます。これらを組み合わせて、直系尊属、直系卑属、傍系尊属、傍系卑属という区分が用いられます。

兄弟姉妹は、自己と同じ世代に属しますので、尊属でも卑属でもありません。傍系の血族ではありますが、世代を異にしないためです。この点は混同されやすいですので、注意を要します。

相続における意義

被相続人の直系卑属である子は、血族相続人の第1順位です。民法第887条第1項に定めがあります。子が相続の開始以前に死亡し、又は相続欠格若しくは廃除によって相続権を失ったときは、その者の子が代襲して相続人となり、直系卑属である限り再代襲が続いてまいります。

これに対し、傍系卑属である甥又は姪は、被相続人の兄弟姉妹が相続人となるべき場合において、その兄弟姉妹が既に死亡しているときに代襲して相続人となるにとどまります。この代襲は一代に限られており、甥又は姪の子が相続人となることはありません。民法第889条第2項です。

遺留分につきましても取扱いが異なります。直系卑属には遺留分がありますが、兄弟姉妹及びその代襲者である甥又は姪には遺留分がありません。民法第1042条は、遺留分を有する者を兄弟姉妹以外の相続人と定めています。

実務上の留意点

第一に、被相続人に子がなく、兄弟姉妹又はその代襲者が相続人となる事案では、当事者が多数に上り、互いに面識がないことが通例です。所在の調査から着手しなければならず、協議に要する期間も長くなる傾向があります。

第二に、この類型におきましては、遺言の作成が極めて有効な対策となります。兄弟姉妹及びその代襲者には遺留分がありませんので、遺言によって配偶者その他の者に全ての財産を承継させることが可能です。子のない方につきましては、遺言の作成を検討されることが望まれます。

第三に、普通養子縁組による養子は養親の直系卑属となりますが、縁組の前に生まれていた養子の子は養親の直系卑属ではありませんので、代襲相続をいたしません。戸籍によって出生の日と縁組の日とを確認する必要があります。

関連する用語

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秘密証書遺言 内容を秘密にしたまま存在を証明させる遺言

秘密証書遺言とは、遺言者が遺言の内容を秘密にしたまま、その存在のみを公証人及び証人に確認させて作成する方式の遺言をいいます。民法第970条に定めが置かれています。

方式

秘密証書遺言の作成は、次の方式によります。第一に、遺言者がその証書に署名し、印を押すこと。第二に、遺言者がその証書を封じ、証書に用いた印章をもってこれに封印すること。第三に、遺言者が公証人1人及び証人2人以上の前に封書を提出して、自己の遺言書である旨並びにその筆者の氏名及び住所を申述すること。第四に、公証人がその証書を提出した日付及び遺言者の申述を封紙に記載した後、遺言者及び証人とともにこれに署名し、印を押すことです。

自筆証書遺言と異なり、本文を自書する必要はありません。したがいまして、パーソナルコンピュータを用いて作成したものや、第三者に筆記させたものでも差し支えありません。もっとも、署名は遺言者自身がしなければなりません。

方式に欠けるところがあり秘密証書遺言としての効力を有しない場合でありましても、自筆証書遺言としての方式を具備しているときは、自筆証書遺言としての効力を有します。民法第971条に定めがあります。

この方式による遺言は、家庭裁判所の検認を要します。封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会いをもって開封しなければなりません。

実務上の留意点

第一に、この方式は実務においてほとんど用いられていません。内容を秘密にすることができる反面、公証人が内容を確認いたしませんので、記載に不備があっても是正の機会がなく、無効となる危険が残るからです。相続人の間の紛争を予防するという目的からいたしますと、公正証書遺言によることが最も確実です。

第二に、公証役場には遺言の存在が記録されますが、遺言書そのものは遺言者が保管いたします。したがいまして、紛失、破棄又は隠匿の危険は残ります。この点、令和2年から運用が開始された自筆証書遺言書保管制度を利用いたしますと、法務局が原本を保管し、検認も要しないこととなります。内容を第三者に知られたくないという要請と、保管の確実性とを両立させる方法として、この制度が選択肢となります。

第三に、平成30年の相続法の改正により、自筆証書遺言につきましては、財産目録の部分に限り自書によらないことが認められました。民法第968条第2項であり、各葉に署名し印を押すことを要します。秘密証書遺言の利点であった作成の負担の軽さは、相対的に小さくなっています。

第四に、いずれの方式によるにせよ、遺言能力の有無が後に争われることがあります。作成の当時における診断書等の資料を併せて保管しておくことが望まれます。

関連する用語

自筆証書遺言、公正証書遺言、検認、遺言執行者が関連いたします。弁護士費用につきましては弁護士費用一覧のページをご覧ください。

被相続人 亡くなって財産を相続される側の人

被相続人とは、相続の対象となる権利義務を有していた死亡した者をいいます。これに対し、その権利義務を承継する者を相続人と申します。相続は、死亡によって開始いたします。民法第882条に定めがあります。

相続の開始と被相続人の地位

相続は、被相続人の死亡という事実によって当然に開始いたします。相続人が相続の開始を知っているか否か、届出がされているか否かは問いません。失踪の宣告がされた場合にも、死亡したものとみなされて相続が開始いたします。

被相続人の権利義務は、一身に専属するものを除き、相続人に包括して承継されます。民法第896条に定めがあります。積極財産のみならず消極財産も承継されるという点が重要です。

被相続人が生前にした遺言は、その死亡の時から効力を生じます。民法第985条です。被相続人は、遺言によって相続分を指定し、遺産分割の方法を定め、遺贈をし、遺言執行者を指定し、推定相続人を廃除し、又は子を認知することができます。もっとも、遺留分を有する相続人の権利を奪うことはできません。

数人が同時に死亡した場合において、そのいずれが先に死亡したかが明らかでないときは、同時に死亡したものと推定されます。民法第32条の2です。この場合、これらの者の間では相続が生じません。事故等により親子が同時に死亡した事案では、相続人の範囲が大きく変わりますので、死亡の先後の認定が重要な意味を持ちます。

実務上の留意点

第一に、被相続人の財産及び債務の全容を把握することが、あらゆる手続の出発点です。金融機関に対する取引の履歴の照会、証券会社への照会、不動産の名寄帳の取得、信用情報機関への照会などの方法によって調査をいたします。相続人であれば、これらの照会を単独で行うことができるものが多くあります。

第二に、被相続人の生前における財産の管理の状況が問題となることがあります。同居していた相続人が預貯金を管理していた場合には、その使途をめぐって争いが生じやすいです。取引の履歴を取得し、多額の出金の時期と使途を確認する作業が必要となります。

第三に、被相続人が事業を営んでいた場合や、取引相場のない株式を保有していた場合には、事業の承継と遺産分割とを併せて検討しなければなりません。株式が相続人の間で分散いたしますと、会社の意思決定に支障を生ずるおそれがあります。

第四に、被相続人の死亡に伴う手続には、それぞれ期限が定められています。相続の放棄及び限定承認は原則として3箇月、相続税の申告は10箇月、相続の登記の申請は取得を知った日から3年です。期限を意識して進行を管理する必要があります。

第五に、被相続人が生前に締結していた契約上の地位も、原則として承継されます。賃貸借契約における賃貸人又は賃借人の地位、保証契約における保証人の地位などがこれに当たります。とりわけ根保証につきましては、被相続人の死亡によって元本が確定するものとされていますので、確定した債務の額を確認する必要があります。

第六に、被相続人の死亡の後にその名義の預貯金口座から出金がされることがあります。相続人の一人が葬儀の費用等に充てる趣旨で行うことが多くありますが、他の相続人との間で疑義を生じさせないよう、支出の内容を記録し、領収書を保管しておくことが望まれます。

関連する用語

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非課税財産 墓地や一定の保険金など相続税がかからない財産

非課税財産とは、相続又は遺贈により取得した財産のうち、その性質、公益性その他の政策上の理由により、相続税の課税価格に算入しないものとされている財産をいいます。相続税法に定めが置かれています。

主な非課税財産

第一に、墓所、霊びょう及び祭具並びにこれらに準ずるものです。祖先の祭祀に係る財産に課税をすることは国民の感情に沿わないという趣旨に基づきます。民法第897条は、系譜、祭具及び墳墓の所有権は祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する旨を定めており、これらは遺産分割の対象ともなりません。

第二に、宗教、慈善、学術その他公益を目的とする事業を行う者が取得した財産で、その公益を目的とする事業の用に供することが確実なものです。

第三に、相続人が取得した生命保険金及び退職手当金等のうち、法定相続人の数を基礎として算出される一定の額に相当する部分です。これらは本来の相続財産ではありませんが、相続税法上はみなし相続財産として課税の対象とされたうえで、一定の額までが非課税とされています。

第四に、相続税の申告期限までに国、地方公共団体又は特定の公益法人等に贈与した財産につきましても、一定の要件の下で課税価格に算入しないものとされています。

これらの範囲、要件及び金額は法令の改正により変動いたしますので、税務の取扱いにつきましては税理士にご確認ください。当事務所は税務申告及び税務代理を行うものではありません。

実務上の留意点

第一に、非課税とされることと、遺産分割の対象となるかどうかとは、別の問題です。祭祀に関する財産は、祭祀を主宰すべき者が承継するものであり、遺産分割の対象とはなりません。誰が祭祀を主宰すべき者となるかは、被相続人の指定、慣習、又は家庭裁判所の審判によって定まります。

第二に、祭祀の承継をめぐる争いは、経済的な価値の大小にかかわらず、深刻な対立を生むことがあります。墓地の管理、法要の実施、遺骨の帰属といった事項が争点となります。遺言において祭祀を主宰すべき者を指定しておくことが、紛争の予防に資します。

第三に、生前に高額な墓地又は仏壇を購入する方法が、相続の対策として説明されることがあります。もっとも、購入の代金が未払のまま相続が開始した場合には、その債務を控除することができないものとされています。また、投資又は換価の目的で保有していると認められるものにつきましては、非課税の取扱いを受けられないことがあります。

第四に、生命保険金は受取人の固有の財産であり、原則として遺産分割の対象とはなりません。もっとも、その額が遺産の総額に比して著しく高額であり、相続人の間の不公平が著しいと評価すべき特段の事情があるときは、特別受益に関する規定を類推適用すべきものとされた判例があります。

関連する用語

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非嫡出子(ひちゃくしゅつし) 婚姻関係にない男女の間の子

非嫡出子とは、法律上の婚姻関係にない男女の間に生まれた子をいいます。法令上は嫡出でない子と表記されます。これに対し、婚姻関係にある男女の間に生まれた子を嫡出子と申します。婚姻関係の有無によって区別されるものであり、法律上の親子関係が存在しないという意味ではありません。

親子関係の成立

母と子との間の親子関係は、原則として分娩の事実によって当然に生ずるものと解されています。したがいまして、嫡出でない子でありましても、母の相続については当然に相続人となります。

これに対し、父との間の法律上の親子関係は、認知によって生じます。民法第779条は、嫡出でない子は、その父又は母がこれを認知することができる旨を定めています。認知がされていない場合には、父の相続について相続人となることができません。

認知の方法には、戸籍法の定めるところによる届出のほか、遺言による方法があります。父が任意に認知をしない場合には、子、その直系卑属又はこれらの者の法定代理人が、認知の訴えを提起することができます。民法第787条であり、父の死亡の日から3年を経過したときは提起することができません。

相続分に関する法改正

相続分につきましては、嫡出子と嫡出でない子との間に差はありません。かつて民法第900条第4号ただし書は、嫡出でない子の相続分を嫡出子の相続分の2分の1と定めていました。しかし最高裁判所は平成25年、この規定を法の下の平等を定める憲法第14条第1項に違反するものと判断いたしました。これを受けて同年に民法が改正され、当該規定は削除されています。

古い文献、書式集及び解説の中には、なお嫡出でない子の相続分を2分の1とする記述が残っていることがあります。現行法に適合いたしませんので、依拠されないようご留意ください。

実務上の留意点

第一に、被相続人の戸籍を出生まで遡って収集した結果、認知された子の存在が判明することがあります。他の相続人がその存在を知らなかったという事案は珍しくありません。この者を除外して成立した遺産分割の協議は無効です。

第二に、認知された子と他の相続人とは、面識がなく、感情的な対立を伴うことが多くあります。協議による解決が困難な場合には、家庭裁判所の調停及び審判の手続によることとなります。

第三に、相続の開始の後に認知の訴えが確定して相続人となった者は、既に他の共同相続人によって分割その他の処分がされていたときは、価額のみによる支払を請求することができるにとどまります。民法第910条に定めがあります。

第四に、被相続人が生前に認知をしていない子に財産を承継させることを望まれる場合には、遺言による認知、又は遺贈の方法を検討することとなります。いずれについても、他の相続人の遺留分に配慮する必要があります。

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付言事項(ふげんじこう) 遺言に記す法律上の効力のない記述

付言事項とは、遺言書に記載される事項のうち、法律上の効力を生じない記述をいいます。法定遺言事項に対する語であり、遺言者の心情、遺言の内容を定めた理由、家族に対する希望などを記すものです。

法定遺言事項との区別

遺言によって法律上の効力を生じさせることができる事項は、法律が定めるものに限られています。相続分の指定、遺産分割の方法の指定、遺産分割の禁止、遺贈、遺言執行者の指定、推定相続人の廃除及びその取消し、子の認知、配偶者居住権の設定などがこれに当たります。これらを法定遺言事項と申します。

これに対し、付言事項は法律上の効力を有しません。したがいまして、付言事項に記された希望に相続人が従わなかったとしても、その履行を法的に強制することはできません。もっとも、効力がないことと意味がないこととは別です。

付言事項の意義

第一に、紛争の予防に資する場合があります。特定の相続人に多くの財産を承継させる内容の遺言がされますと、他の相続人が不満を抱き、遺言の効力を争い、又は遺留分侵害額請求に及ぶことがあります。そこで、そのような配分とした理由、すなわち事業を承継させる必要があること、療養看護に尽くしたこと、生前に既に相応の援助をしていることなどを具体的に記しておきますと、相続人の理解を得られる余地が生じます。

第二に、遺言能力に関する争いへの備えとなる場合があります。遺言の効力が争われる事案では、作成の当時に遺言者が事理を弁識する能力を有していたかが争点となります。付言事項に、遺言者自身の言葉で家族の状況や財産の来歴が具体的かつ整合的に記されていますと、遺言能力を基礎付ける事情の一つとして考慮されることがあります。ただし、これのみによって能力の有無が決せられるものではありません。

第三に、祭祀、葬儀の方法、遺骨の取扱い、ペットの世話などについての希望を記すことができます。もっとも、これらを確実に実現されることを望まれる場合には、負担付遺贈や死因贈与などの法的な手段を併せて用いる必要があります。

実務上の留意点

第一に、記載の仕方に配慮を要します。特定の相続人を非難する内容や、感情的な表現を記しますと、かえって対立を激化させることがあります。淡々と理由を述べる書き方が望まれます。

第二に、法定遺言事項と付言事項との区別が不明確な記載は避けるべきです。財産の帰属に関わる記述が付言事項の中に紛れ込みますと、その趣旨をめぐって解釈の争いを招きます。

第三に、遺留分を侵害する内容の遺言につきましては、付言事項によって遺留分侵害額請求を封ずることはできません。請求がされることを前提として、これに充てる資金の手当てまで検討しておくことが望まれます。

関連する用語

遺言、遺言執行者、遺留分侵害額請求、負担付遺贈が関連いたします。弁護士費用につきましては弁護士費用一覧のページをご覧ください。

負担付遺贈 受遺者に一定の義務を負わせる遺贈

負担付遺贈とは、受遺者に一定の給付その他の義務を負担させることを付した遺贈をいいます。民法第1002条は、負担付遺贈を受けた者は、遺贈の目的の価額を超えない限度においてのみ、負担した義務を履行する責任を負う旨を定めています。

制度の内容

遺贈とは、遺言によって財産を無償で他人に与える処分です。相続人に対してすることも、相続人以外の者に対してすることもできます。これに負担を付したものが負担付遺贈であり、受遺者に対し、被相続人の債務を弁済すること、特定の者を扶養すること、居住を継続させること、祭祀を主宰すること、動物の世話をすることなどの義務を課すものです。

受遺者の責任は、遺贈の目的の価額を限度といたします。したがいまして、負担の内容が遺贈された財産の価額を上回る場合でありましても、その超える部分については履行の責任を負いません。

受遺者は、遺贈を放棄することができます。負担付遺贈の放棄がされたときは、負担の利益を受けるべき者が、自ら受遺者となることができます。民法第1002条第2項に定めがあります。

受遺者が負担した義務を履行しないときは、相続人は、相当の期間を定めてその履行の催告をすることができ、その期間内に履行がないときは、遺言の取消しを家庭裁判所に請求することができます。民法第1027条です。

なお、生前の契約によって同様のことを行う場合は負担付贈与と申しまして、これは民法第553条以下に定めのある別の制度です。遺言による処分か、契約による処分かによって、適用される規定が異なります。

実務上の留意点

第一に、負担の内容を具体的に定めることが肝要です。扶養や世話といった抽象的な文言にとどめますと、履行がされたか否かの判断が困難となり、取消しの請求をめぐって紛争を生じます。給付の内容、頻度、期間、方法をできる限り特定して記載すべきです。

第二に、履行を確保する仕組みを併せて設けることが望まれます。遺言執行者を指定し、負担の履行を監督させる方法が考えられます。また、負担の利益を受けるべき者が高齢である場合などには、信託の活用を検討する余地もあります。

第三に、遺留分との関係です。負担付遺贈も遺留分侵害額請求の対象となり得ます。この場合、受遺者が負う負担の額は、遺留分侵害額の算定において考慮されることとなります。

第四に、課税の関係です。負担付遺贈につきましては、負担の額を控除した価額を基礎として課税関係が生ずるほか、負担の利益を受ける者にも課税の問題が生ずることがあります。税務の取扱いにつきましては税理士にご確認ください。

第五に、遺贈と、いわゆる相続させる旨の遺言とを区別する必要があります。相続人に対して財産を承継させる場合、判例は、特段の事情がない限り、遺産分割の方法を定めたものと解しています。この場合には遺贈に関する規定が適用されませんので、負担を付する趣旨であれば、その旨を明確に記載しておくべきです。

第六に、受遺者が遺贈を放棄した場合の帰趨を、あらかじめ遺言に定めておくことが望まれます。放棄がされますと負担の利益を受けるべき者が受遺者となり得ますが、その者にも受ける意思がないときは、当該財産は相続人に帰属することとなります。

関連する用語

遺贈、遺言執行者、付言事項、遺留分侵害額請求が関連いたします。弁護士費用につきましては弁護士費用一覧のページをご覧ください。

物納(ぶつのう) 相続税を金銭に代えて財産で納付する制度

物納とは、相続税を金銭で納付することが困難である場合に、その納付を困難とする金額を限度として、相続又は遺贈により取得した財産そのものによって納付することをいいます。相続税法に定めが置かれています。

制度の枠組み

租税は金銭により一時に納付することが原則です。もっとも、相続税は、被相続人の死亡という予期し難い事由によって生ずるものであり、かつ課税の対象が不動産その他の換価の容易でない財産であることが多くあります。そこで、まず年賦により分割して納付する延納の制度が設けられ、延納によっても納付することが困難である場合に、例外的に物納が認められています。

物納の許可を受けるためには、延納によっても金銭で納付することを困難とする事由があること、物納に充てる財産が相続又は遺贈により取得した財産であって管理処分不適格財産に該当しないこと、納付すべき期限までに申請書及び必要な書類を提出すること、税務署長の許可を受けることが必要です。

物納に充てることができる財産には順位が定められており、国債、地方債、不動産及び船舶が第1順位、社債、株式、証券投資信託の受益証券等が第2順位、動産が第3順位とされています。また、担保権が設定されている不動産、境界が不明確な土地、権利の帰属について争いがある財産などは、管理処分不適格財産として物納に充てることができません。具体的な要件及び手続は法令の改正により変動いたしますので、税務の取扱いにつきましては税理士にご確認ください。

実務上の留意点

第一に、権利関係に争いのある財産は物納に充てることができません。したがいまして、遺産分割の協議が調わず、又は境界について隣地の所有者との間に争いがある場合には、物納の申請そのものが困難となります。紛争の解決を先送りにすることが、納税の手段を狭める結果を招くことがあります。

第二に、申請には期限があります。相続税の納付の期限までに申請をしなければなりませんので、遺産分割の協議を早期に進める必要があります。当事務所といたしましても、税務上の期限を意識しながら交渉の進行を図ることといたしています。

第三に、境界の確定、越境物の是正、賃借人との関係の整理など、物納に充てるための条件を整える作業には相応の期間を要します。土地の境界の確定は土地家屋調査士の業務であり、当事務所が行うものではありませんが、隣地の所有者との間に紛争がある場合には、当事務所においてお取り扱いいたします。

第四に、物納が許可された財産の収納価額は、原則として相続税の課税価格の計算の基礎となった価額です。市場における価格がこれを下回る場合には物納が有利となり、上回る場合には売却して金銭で納付する方が有利となることがあります。いずれによるかの判断は税理士にご確認ください。

関連する用語

延納、路線価、遺産分割協議、代償分割が関連いたします。弁護士費用につきましては弁護士費用一覧のページをご覧ください。

法定相続とは

法定相続とは、被相続人が遺言を残さなかった場合その他遺言によって相続分の指定がされていない場合に、民法の定めるところに従って相続人の範囲及び各相続人の取り分が決まる仕組みをいいます。民法が定める各相続人の取り分を法定相続分と申します。

相続人の範囲

被相続人の配偶者は、常に相続人となります(民法第890条)。ここでいう配偶者は婚姻の届出をした配偶者であり、いわゆる内縁の配偶者はこれに含まれません。

血族相続人には順位があります。第1順位は被相続人の子です(民法第887条第1項)。子が相続の開始以前に死亡したとき等には、その子が代襲して相続人となります(民法第887条第2項)。第2順位は被相続人の直系尊属であり、子及びその代襲者がない場合に相続人となります(民法第889条第1項第1号)。第3順位は被相続人の兄弟姉妹であり、第1順位及び第2順位の相続人がない場合に相続人となります(民法第889条第1項第2号)。

法定相続分

各相続人の相続分は、民法第900条に定めがあります。子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は各2分の1です。配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は3分の2、直系尊属の相続分は3分の1です。配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は4分の3、兄弟姉妹の相続分は4分の1です。子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は原則として相等しいものとされています(民法第900条第4号本文)。

もっとも、法定相続分は動かし得ないものではありません。被相続人は、遺言によって相続分を定め、又はこれを定めることを第三者に委託することができます(民法第902条第1項)。相続人全員の合意による遺産分割の協議によって、法定相続分と異なる分け方をすることも可能です。ただし、遺言による処分が兄弟姉妹以外の相続人の遺留分を侵害する場合には、遺留分侵害額の請求を受ける余地があります(民法第1042条、第1046条)。

実務上の留意点

法定相続分が定まっていることと、個々の遺産の帰属が確定していることとは別です。相続人が数人あるときは、相続財産はその共有に属し(民法第898条第1項)、個々の財産の帰属は遺産分割によって定まります。金融機関の払戻しの手続におきましても、不動産の登記の手続におきましても、遺産分割の内容を明らかにする書面の提出を求められるのが通例です。

また、相続の開始の時から10年を経過した後にする遺産の分割につきましては、原則として特別受益及び寄与分の主張をすることができず、法定相続分又は指定相続分によることとされています(民法第904条の3)。長期にわたって遺産分割を放置いたしますと、具体的相続分による調整の機会を失う場合がありますので、ご留意ください。

不動産につきましては、相続によって所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったこと及び当該所有権を取得したことを知った日から3年以内に、相続による所有権の移転の登記を申請しなければならないものとされています(不動産登記法第76条の2)。期間内に遺産分割が調わない場合には、相続人である旨の申出をする方法があります(不動産登記法第76条の3)。なお、税務の取扱いにつきましては、税理士にご確認ください。

関連する用語

法定相続分、代襲相続、遺産分割、遺留分、配偶者居住権、相続放棄、推定相続人などの用語も併せてご参照ください。当事務所は東京弁護士会所属の弁護士が、相続人の範囲及び相続分に争いのある事案のご相談をお受けしています。弁護士費用につきましては、弁護士費用一覧のページをご覧ください。

法定相続分 民法が定める各相続人の相続の割合

法定相続分とは、共同相続人が相続する割合として民法が定めるものをいいます。民法第900条に定めが置かれています。被相続人による相続分の指定がなく、また相続人の間に別段の合意がない場合の基準となる割合です。

民法の定める割合

子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各2分の1です。配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は3分の2、直系尊属の相続分は3分の1です。配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は4分の3、兄弟姉妹の相続分は4分の1です。

子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は相等しいものといたします。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の2分の1です。

配偶者がない場合には、血族相続人が全部を相続いたします。血族相続人がない場合には、配偶者が全部を相続いたします。代襲相続人の相続分は、被代襲者が受けるべきであった相続分と同一であり、代襲者が数人あるときはこれを等分いたします。

なお、嫡出でない子の相続分を嫡出子の2分の1と定めていた規定は、最高裁判所が平成25年に憲法に違反すると判断したことを受けて削除されており、現行法には存在いたしません。古い文献にはなお当該記述が残っていることがありますので、依拠されないようご留意ください。

実務上の留意点

第一に、法定相続分は当事者を拘束するものではありません。被相続人は遺言によって相続分を指定することができますし、相続人の全員が合意をするのであれば、これと異なる内容の遺産分割をすることができます。実務においてもそのような分割が広く行われています。

第二に、法定相続分と具体的相続分とは区別を要します。特別受益又は寄与分がある場合には、これらを考慮して各相続人が現実に取得すべき割合が修正されます。この修正後の割合を具体的相続分と申します。

第三に、期間の制限があります。民法第904条の3は、相続の開始の時から10年を経過した後にする遺産の分割については、特別受益及び寄与分に関する規定を適用しない旨を定めています。この期間を経過いたしますと、原則として法定相続分によって分割することとなります。令和3年の民法の改正により設けられた規定であり、遺産分割を長期にわたり放置することの不利益が明確にされています。

第四に、可分債務は、相続の開始とともに法定相続分に応じて当然に分割され、各相続人がこれを承継するものと解されています。遺産分割において特定の相続人が全ての債務を負担する旨を定めましても、債権者の承諾がない限り、これを債権者に対抗することはできません。

第五に、遺留分の額は、法定相続分に遺留分の割合を乗じて算出いたします。したがいまして、法定相続分の理解は遺留分侵害額請求の前提となります。

関連する用語

具体的相続分、特別受益、寄与分、代襲相続、遺留分侵害額請求が関連いたします。弁護士費用につきましては弁護士費用一覧のページをご覧ください。

傍系(ぼうけい) 兄弟姉妹・甥姪など直系以外の血族

傍系とは、共同の始祖から分かれた系統に属する血族の関係をいいます。これに対し、父母と子のように、世代が直上直下に連なる関係を直系と申します。兄弟姉妹、伯叔父母、甥、姪、いとこなどが傍系の血族に当たります。

親族法上の位置付け

民法は、6親等内の血族、配偶者、及び3親等内の姻族を親族と定めています。民法第725条です。血族の関係は、直系と傍系、尊属と卑属という二つの軸によって整理されます。

親等は世代の数によって定めます。直系血族の間では、その世代の数を数えます。傍系血族の間では、その一方又はその同一の祖先に遡り、その祖先から他の一方に下るまでの世代の数を数えます。民法第726条です。この計算によりますと、兄弟姉妹は2親等、伯叔父母及び甥姪は3親等、いとこは4親等となります。

兄弟姉妹は、自己と同じ世代に属しますので、尊属でも卑属でもありません。傍系の血族ではありますが、世代を異にしないためです。

相続における意義

傍系の血族のうち相続人となり得るのは、兄弟姉妹及びその代襲者である甥又は姪に限られます。民法第889条第1項第2号であり、被相続人に子及びその代襲者がなく、かつ直系尊属もない場合に、第3順位として相続人となります。伯叔父母、いとこは相続人となりません。

兄弟姉妹の代襲は一代に限られています。甥又は姪が既に死亡していても、その子が相続人となることはありません。この点は、直系卑属について再代襲が制限なく続くのとは異なります。

父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の2分の1です。民法第900条第4号ただし書に定めがあります。この規定は現行法に存在するものであり、嫡出でない子に関する削除された規定と混同されないようご留意ください。

兄弟姉妹及びその代襲者には遺留分がありません。民法第1042条は、遺留分を有する者を兄弟姉妹以外の相続人と定めています。

実務上の留意点

第一に、兄弟姉妹が相続人となる事案では、被相続人の父母の出生まで遡って戸籍を収集する必要があります。父母の前の婚姻における子など、把握していなかった兄弟姉妹が判明することがあります。収集すべき戸籍の範囲が広く、相応の期間を要します。

第二に、当事者が多数に上り、互いに面識がないことが通例です。所在の調査から着手しなければならず、協議が難航する傾向があります。

第三に、子のない方につきましては、遺言の作成が極めて有効な対策となります。兄弟姉妹及びその代襲者には遺留分がありませんので、遺言によって配偶者その他の者に全ての財産を承継させることが可能です。

関連する用語

直系尊属、直系卑属、卑属、代襲相続、法定相続分が関連いたします。弁護士費用につきましては弁護士費用一覧のページをご覧ください。

未成年者控除 未成年の相続人の相続税額から差し引く控除

未成年者控除とは、相続又は遺贈により財産を取得した者が法定相続人であり、かつ相続の開始の時において未成年者である場合に、その者の相続税額から一定の額を控除する制度をいいます。相続税法に定めが置かれています。

制度の趣旨と枠組み

未成年者は、成年に達するまでの間、養育及び教育に要する費用を必要といたします。相続税の負担によってその原資が損なわれることのないよう、税額を軽減する趣旨で設けられた制度です。同様の趣旨に基づく制度として、障害者控除があります。

控除される額は、成年に達するまでの年数を基礎として算出されます。したがいまして、年少であるほど控除される額は大きくなります。年数に1年未満の端数があるときは、これを1年として計算するものとされています。

控除を受けるべき者の相続税額から控除しきれない額があるときは、その者の扶養義務者の相続税額から控除することができるものとされています。

ここで留意を要しますのは、成年年齢の引下げです。平成30年の民法の改正により、令和4年4月1日から成年年齢は18歳とされました。民法第4条です。これに伴い、未成年者控除の基礎となる年齢も改められています。古い文献及び解説の中には、なお20歳を基準とする記述が残っていることがありますので、依拠されないようご留意ください。具体的な算式及び金額は法令の改正により変動いたしますので、税務の取扱いにつきましては税理士にご確認ください。

実務上の留意点

第一に、未成年者が相続人である場合には、遺産分割の協議に親権者が法定代理人として加わることとなります。もっとも、その親権者自身も相続人であるときは利益が相反いたしますので、家庭裁判所に特別代理人の選任を申し立てなければなりません。民法第826条に定めがあります。この手続を経ずに成立した協議は、無権代理として効力を生じないおそれがあります。

第二に、未成年者が複数ある場合には、それぞれについて特別代理人を選任する必要があります。同一の者を複数の未成年者の特別代理人とすることは、その未成年者相互の間で利益が相反いたしますので、認められません。

第三に、成年年齢が18歳に引き下げられましたことにより、18歳に達した子は自ら遺産分割の協議に加わることとなります。従前であれば親権者が代理していた場面で、本人の意思を確認しなければならないこととなりますので、手続の進め方に注意を要します。

第四に、未成年者が取得する財産の管理をどのように行うかも問題となります。親権者が管理することが原則ですが、被相続人が遺言によって管理者を指定しておくこともできます。

第五に、家庭裁判所は、特別代理人の選任に際し、協議の内容が未成年者の利益を害するものでないかを審査いたします。未成年者の取得分を法定相続分より著しく少なくする内容の協議案は、認められないことがあります。

関連する用語

障害者控除、特別代理人、法定相続分、遺産分割協議が関連いたします。税務の取扱いにつきましては税理士にご確認ください。弁護士費用につきましては弁護士費用一覧のページをご覧ください。

名義預金 名義人と実質的な帰属者とが一致しない預金

名義預金とは、預金の名義人と実質的な帰属者とが一致しない預金をいいます。名義は家族のものでありながら、実質的には被相続人に帰属していると認められるものを指すのが通例であり、相続税の課税においても、遺産の範囲を定めるうえでも問題となります。

帰属の判断

預金が誰に帰属するかは、名義のみによって定まるものではありません。判断に当たっては、原資を誰が拠出したか、通帳、印章及びキャッシュカードを誰が管理していたか、預金の利息を誰が享受していたか、名義人が預金の存在を認識していたか、贈与の事実があったと認めるに足りる事情があるかといった要素が総合的に考慮されます。

とりわけ重要ですのは、贈与の成立の有無です。贈与は当事者の一方が財産を無償で与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって効力を生ずる契約です。民法第549条に定めがあります。名義人が預金の存在を知らず、通帳も印章も被相続人が管理していたという事情がありますと、受諾がなく贈与は成立していないと判断され、被相続人に帰属するものとされる可能性が高くなります。

実務上の留意点

第一に、名義預金は相続税の税務調査において最も多く問題とされる事項の一つです。もっとも、税務代理は税理士の業務であり、当事務所がこれを行うものではありません。

第二に、当事務所が取り扱いますのは、名義預金が遺産に属するか否かという民事上の争いです。特定の相続人の名義となっている預金について、他の相続人が遺産であると主張し、名義人がこれを争うという構図が典型です。この争いは遺産の範囲そのものに関わりますので、家庭裁判所の遺産分割の手続の中で終局的に確定させることはできず、遺産の確認を求める訴えによる必要があります。

第三に、立証の手段です。預金の取引の履歴、原資となった口座からの資金の移動の記録、贈与税の申告の有無、贈与契約書の存否、名義人自身の当時の収入の状況などが手掛かりとなります。金融機関における記録の保存期間には限りがありますので、早期に調査に着手する必要があります。

第四に、生前の対策といたしましては、贈与の事実を明確にしておくことが肝要です。贈与契約書を作成し、名義人自身が通帳及び印章を管理し、名義人が自由に使用することができる状態にしておくことが望まれます。

第五に、被相続人が家族の名義で預金を作成していた事案では、その意図が贈与にあったのか、単に資金を分散して管理していたにすぎないのかが争われます。生前の言動、他の相続人への説明の有無などが重要な事情となりますので、記録を残しておくことが望まれます。

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相続財産、遺産の範囲、暦年贈与、使い込みが関連いたします。税務の取扱いにつきましては税理士にご確認ください。弁護士費用につきましては弁護士費用一覧のページをご覧ください。

養子(ようし) 養子縁組により嫡出子の身分を得た者

養子とは、養子縁組によって養親の嫡出子としての身分を取得した者をいいます。民法第809条は、養子は縁組の日から養親の嫡出子の身分を取得する旨を定めています。

普通養子と特別養子

普通養子縁組におきましては、実方の父母及びその血族との親族関係が存続いたします。したがいまして、養子は養親の相続についても、実方の父母の相続についても、いずれも相続人となります。当事者の協議による離縁も可能です。

これに対し、特別養子縁組におきましては、実方の父母及びその血族との親族関係が終了いたします。民法第817条の9です。したがいまして、特別養子は実方の父母の相続について相続人となりません。また、養子の利益のため特に必要があると認めるときに家庭裁判所が審判によって離縁させる場合を除き、離縁をすることはできません。

いずれの縁組による養子でありましても、養親の相続におきましては実子と同じ第1順位の相続人であり、相続分に差はありません。

なお、相続税の計算において法定相続人の数に算入することができる普通養子縁組による養子の数には制限が設けられており、被相続人に実子があるかどうかによって異なります。特別養子縁組による養子は実子として取り扱われます。具体的な取扱いは法令の改正により変動いたしますので、税務の取扱いにつきましては税理士にご確認ください。

実務上の留意点

第一に、養子の子が代襲相続をすることができるか否かは、その子が縁組の前に生まれたか後に生まれたかによって異なります。縁組の前に生まれていた子は養親の直系卑属ではありませんので、代襲相続をいたしません。戸籍によって出生の日と縁組の日とを確認する必要があります。

第二に、専ら相続税の負担を軽減する目的でされた縁組の効力が争われることがあります。判例は、そのような目的があったというだけでは直ちに縁組をする意思を欠くものとはいえないと判断いたしました。もっとも、縁組の届出がされた当時に本人の意思能力が失われていた場合や、届出が本人の関与なくされた場合には、無効となる余地があります。

第三に、養子縁組は他の相続人の相続分を減少させますので、相続人の間の対立を招く一因となります。とりわけ被相続人が高齢となってから縁組がされた事案では、縁組の無効の確認を求める訴えが提起されることがあります。

第四に、被相続人の戸籍を精査した結果、把握していなかった養子の存在が判明することがあります。その者を除外して成立した遺産分割の協議は無効ですので、戸籍の収集は出生まで遡って行わなければなりません。

第五に、事業を承継させる目的で後継者を養子とする例があります。この場合、株式を後継者に集中させることと、他の相続人の遺留分に配慮することとを併せて検討する必要があります。

関連する用語

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養子縁組 法律上の親子関係を作り出す身分行為

養子縁組とは、血縁上の親子関係にない者の間に、法律上の親子関係を成立させる身分行為をいいます。民法は、普通養子縁組と特別養子縁組との2種類を定めています。

普通養子縁組の要件

養親となる者は、20歳に達していなければなりません。民法第792条です。なお、成年年齢が18歳に引き下げられた後も、養親となることができる年齢は20歳とされています。

尊属又は年長者を養子とすることはできません。民法第793条です。配偶者のある者が未成年者を養子とするには、原則として配偶者とともにしなければならず、成年者を養子とする場合等には配偶者の同意を要します。

未成年者を養子とするには、家庭裁判所の許可を得なければなりません。民法第798条です。ただし、自己又は配偶者の直系卑属を養子とする場合には、許可を要しません。孫を養子とする場合がこれに当たります。

養子となる者が15歳未満であるときは、その法定代理人が本人に代わって縁組の承諾をいたします。民法第797条です。以上の要件を満たしたうえで、戸籍法の定めるところにより届出をすることによって、縁組の効力が生じます。

特別養子縁組の要件

特別養子縁組は、家庭裁判所の審判によって成立いたします。父母による養子となる者の監護が著しく困難又は不適当であることその他特別の事情がある場合において、子の利益のため特に必要があると認めるときに認められるものです。

養親となる者は配偶者のある者でなければならず、夫婦がともに養親となることを要します。原則として25歳に達していることが必要ですが、夫婦の一方が25歳に達していれば他方は20歳に達していれば足ります。

養子となる者の年齢につきましては、令和2年の民法の改正により上限が引き上げられ、原則として審判の請求の時に15歳未満であることとされました。従前は原則として6歳未満とされていましたので、古い解説に依拠されないようご留意ください。また、原則として実方の父母の同意を要します。

実務上の留意点

第一に、縁組がされますと、他の相続人の相続分及び遺留分が減少いたします。したがいまして、相続人の間の対立を招く一因となり、縁組の無効の確認を求める訴えが提起されることがあります。

第二に、被相続人が高齢となってから縁組の届出がされた事案では、当時の意思能力の有無が争点となります。診断書、介護に関する記録、当時の言動に関する陳述などが証拠となります。

第三に、縁組の意思を欠く届出は無効です。もっとも、判例は、専ら相続税の負担を軽減する目的があったというだけでは、直ちに縁組をする意思を欠くものとはいえないと判断いたしました。

関連する用語

養子、代襲相続、法定相続分、遺留分侵害額請求が関連いたします。弁護士費用につきましては弁護士費用一覧のページをご覧ください。

利益相反行為 一方に利益を他方に不利益をもたらすおそれのある行為

利益相反行為とは、その行為の性質上、一方の当事者に利益をもたらすとともに、他方の当事者に不利益をもたらすおそれのある行為をいいます。相続の場面におきましては、親権者と未成年の子との関係、成年後見人と成年被後見人との関係などにおいて問題となります。

制度の内容

民法第826条第1項は、親権を行う父又は母とその子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない旨を定めています。同条第2項は、親権を行う者が数人の子に対して親権を行う場合において、その一人と他の子との利益が相反する行為についても同様である旨を定めています。

利益が相反するか否かは、行為の外形によって客観的に判断すべきものと解されています。親権を行う者の動機や意図によって判断されるものではありません。

相続の場面における典型は、親と未成年の子とがともに相続人である場合の遺産分割の協議です。この協議は、一方の取得分が増えれば他方の取得分が減る関係にありますので、外形上当然に利益が相反いたします。したがいまして、特別代理人の選任を要します。この手続を経ずに成立した協議は、無権代理として効力を生じないおそれがあります。

未成年の子が複数ある場合には、それぞれについて特別代理人を選任しなければなりません。子相互の間でも利益が相反するためです。

相続の放棄につきましては、親権を行う者が自らも放棄をし、又は子と同時に放棄をする場合には、利益が相反しないものと解されています。他方、親権を行う者が放棄をせず、子についてのみ放棄をする場合には、利益が相反いたします。

実務上の留意点

第一に、家庭裁判所は、特別代理人の選任に際して、協議の内容が未成年の子の利益を害するものでないかを審査いたします。したがいまして、申立てに際しては遺産分割協議書の案を添えることとなり、子の取得分を法定相続分より著しく少なくする内容の案は、認められないことがあります。

第二に、成年後見人と成年被後見人との間においても同様の問題が生じます。後見人自身が相続人である場合には、後見監督人があるときはその者が代理し、ないときは特別代理人の選任を要します。認知症の配偶者と子とが相続人である事案では、しばしば問題となります。

第三に、成年年齢が18歳に引き下げられましたことにより、18歳に達した子は自ら協議に加わることとなります。従前であれば特別代理人を要した場面で、これを要しないこととなりますので、年齢の確認が必要です。

第四に、株式会社の取締役が会社と取引をする場合など、会社法上の利益相反取引につきましても、取締役会又は株主総会の承認を要します。被相続人が経営していた会社の株式が遺産に含まれる事案では、この点も検討を要します。

関連する用語

特別代理人、成年後見、遺産分割協議、相続放棄が関連いたします。弁護士費用につきましては弁護士費用一覧のページをご覧ください。

暦年贈与(れきねんぞうよ) 1年ごとに基礎控除の枠で行う贈与

暦年贈与とは、暦年課税、すなわち1月1日から12月31日までの1年間に受けた贈与の価額を合計して贈与税を課する方式による贈与をいいます。相続税法に定める贈与税の課税方式の一つであり、相続時精算課税に対する語として用いられます。

制度の枠組み

暦年課税におきましては、その年中に贈与により取得した財産の価額の合計額から基礎控除額を控除した残額に対して、累進の税率により贈与税が課されます。基礎控除の額の範囲内であれば、贈与税は課されず、申告も要しないのが原則です。この仕組みを利用して、長期にわたり計画的に財産を移転する方法が、生前の対策として説明されることがあります。

もっとも、留意を要しますのは、相続又は遺贈により財産を取得した者が、相続の開始前の一定の期間内に被相続人から受けた贈与につきましては、その価額を相続税の課税価格に加算するものとされている点です。この加算の対象となる期間は、令和5年度の税制改正により延長されており、段階的に適用されることとなっています。したがいまして、相続の開始が近い時期にされた贈与は、相続税の計算に取り込まれます。

基礎控除の額、税率、加算の対象となる期間その他の具体的な数値は法令の改正により変動いたしますので、税務の取扱いにつきましては税理士にご確認ください。当事務所は税務申告及び税務代理を行うものではありません。

実務上の留意点

第一に、贈与が成立していると認められることが前提です。贈与は、当事者の一方が財産を無償で与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって効力を生ずる契約です。民法第549条に定めがあります。名義を変更したのみで、通帳及び印章を被相続人が管理し続け、名義人が財産の存在を知らなかったという事案では、贈与は成立しておらず、名義預金として被相続人に帰属するものと判断される可能性が高いです。

第二に、当事務所の観点から重要ですのは、生前の贈与が相続人の間の紛争の火種となる点です。特定の相続人のみが多額の贈与を受けていた場合、その贈与は特別受益に当たり、遺産分割において持戻しの対象となり得ます。また、遺留分を算定するための財産の価額に加える贈与にも当たり得ます。

第三に、両者の対象となる範囲は異なります。特別受益の持戻しは相続の開始の時から10年を経過した後の分割には適用されず、遺留分の算定に加える相続人に対する贈与は相続の開始前の10年間にされたものに限られます。いずれも民法上の制度であり、税務上の加算の期間とは別のものです。混同されないようご留意ください。

第四に、贈与の事実を明確にするため、贈与契約書を作成し、受贈者自身が財産を管理する状態としておくことが望まれます。

関連する用語

連年贈与、名義預金、特別受益、相続時精算課税、遺留分侵害額請求が関連いたします。弁護士費用につきましては弁護士費用一覧のページをご覧ください。

連年贈与 複数の年にわたり継続して行う贈与

連年贈与とは、複数の年にわたり継続して贈与を行うことをいいます。暦年課税における基礎控除の額の範囲内で毎年贈与を繰り返す方法が、生前の対策として説明されることがありますが、法令上の制度の名称ではなく、実務上の呼称です。

定期金給付契約とみなされる場合

毎年一定の額を一定の期間にわたり給付する旨の合意が当初から存在すると認められる場合には、各年の贈与とはみなされず、その合意をした年において、定期金に関する権利の全体の贈与があったものとして取り扱われることがあります。この場合、各年の基礎控除を重ねて適用することはできません。

これに対し、毎年、その都度、贈与をする意思と受諾とが個別に存在すると認められる場合には、各年ごとの贈与として取り扱われます。両者の区別は、当初の合意の内容、契約書の記載、贈与の額及び時期が一定であるか否か、受贈者の管理の状況などの事情によって判断されます。

贈与の額、税率、基礎控除の額その他の具体的な数値は法令の改正により変動いたしますので、税務の取扱いにつきましては税理士にご確認ください。当事務所は税務申告及び税務代理を行うものではありません。

実務上の留意点

第一に、贈与が成立していると認められることが前提です。名義を変更したのみで、通帳及び印章を被相続人が管理し続け、名義人が財産の存在を知らなかったという事案では、贈与は成立しておらず、名義預金として被相続人に帰属するものと判断される可能性が高いです。毎年の贈与について契約書を作成し、受贈者自身が財産を管理する状態としておくことが望まれます。

第二に、相続又は遺贈により財産を取得した者が相続の開始前の一定の期間内に被相続人から受けた贈与につきましては、その価額が相続税の課税価格に加算されます。この期間は令和5年度の税制改正により延長されていますので、長期にわたる計画を要する方法となっています。

第三に、当事務所の観点から重要ですのは、相続人の間の紛争を招く点です。特定の相続人のみが継続して贈与を受けていた事実は、他の相続人が後に取引の履歴を確認して知ることとなり、深刻な対立の原因となります。当該贈与は特別受益に当たり、遺産分割において持戻しの対象となり得ますし、遺留分を算定するための財産の価額に加える贈与にも当たり得ます。

第四に、被相続人の判断能力が低下した後に、同居していた相続人が繰り返し出金をしていた事案では、それが贈与であったのか、無断の引出しであったのかが争われます。前者であれば特別受益の問題となり、後者であれば不当利得の返還又は不法行為に基づく損害賠償の問題となります。いずれと構成するかによって、手続も立証すべき事実も異なります。

第五に、生前の対策として実行される場合には、他の相続人にもその趣旨をあらかじめ説明しておくことが、紛争の予防に資します。

関連する用語

暦年贈与、名義預金、特別受益、遺留分侵害額請求が関連いたします。弁護士費用につきましては弁護士費用一覧のページをご覧ください。

路線価(ろせんか) 道路に面する宅地の相続税評価の基準額

路線価とは、相続税及び贈与税における土地の評価の基礎とするために定められる、路線すなわち道路に面する標準的な宅地の1平方メートル当たりの価額をいいます。国税庁が毎年評価替えを行い、公表しています。

評価の枠組み

市街地にある宅地は、路線価方式により評価するのが原則です。すなわち、その宅地が面する路線に付された路線価を基礎とし、奥行の長短、間口の狭小、形状の不整形、二方の路線に面していることなどの事情に応じた補正を行って、評価額を算出いたします。路線価が定められていない地域におきましては、固定資産税評価額に一定の倍率を乗ずる倍率方式によって評価いたします。

土地の価格を示す指標には、このほかに、国土交通省が公表する公示価格、都道府県が公表する基準地価格、市町村が固定資産税の課税のために定める固定資産税評価額、及び不動産鑑定士による鑑定評価額があります。それぞれ目的及び評価の基準時が異なりますので、同一の土地について複数の異なる価額が併存いたします。路線価は公示価格を基礎として定められるものとされています。

なお、財産の評価は税理士及び不動産鑑定士の領域に属し、当事務所が行うものではありません。評価の詳細につきましては税理士にご確認ください。

実務上の留意点

第一に、遺産分割において土地をいかなる価額で評価するかは、しばしば最大の争点となります。相続税の申告においては路線価方式によることとなりますが、遺産分割における評価は、原則として分割の時における時価によるべきものと解されています。路線価は課税のための評価であり、市場における取引価格とは一致いたしません。相続税の評価額をそのまま分割の基準といたしますと、当事者の一方に不利益が生ずることがあります。

第二に、当事者の間で評価について合意ができない場合には、家庭裁判所の手続において不動産鑑定士による鑑定が実施されることがあります。もっとも、鑑定には相応の費用と期間を要しますので、まずは複数の業者の査定を取得して協議することが多くあります。

第三に、協議の初期の段階で、いかなる資料に基づいて評価するかを合意しておくことが望まれます。各当事者が自己に有利な指標を主張し続けますと、協議が長期化いたします。

第四に、代償分割において代償金の額を算定する場合にも、この評価が前提となります。評価額の差は、そのまま各相続人の取得する経済的価値の差となって現れます。

第五に、路線価は毎年評価替えがされます。相続の開始の年に応じた路線価によることとなりますので、資料を参照される際には対象となる年を確認する必要があります。

第六に、土地の上に建物が存する場合や、借地権が設定されている場合には、更地としての評価から権利の負担に相当する部分を控除して評価いたします。同一の土地でありましても、利用の状況によって評価額が大きく異なりますので、現況を確認する必要があります。

第七に、相続の登記の申請につきましては、令和6年から義務化されています。不動産登記法第76条の2に定めがあり、所有権を取得したことを知った日から3年以内に申請をしなければなりません。分割の協議が調わない場合には、相続人である旨の申出をすることによって義務を履行したものとみなされます。同法第76条の3です。

関連する用語

底地、借地権、代償分割、遺産分割協議、相続税還付が関連いたします。弁護士費用につきましては弁護士費用一覧のページをご覧ください。

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