遺産分割の際に騙された!隠し財産が見つかった!遺産分割の詐欺取消や錯誤無効!

遺産分割の際に「相続時に遺産を過小評価したり、ないものとして計算したりして、他の相続人を騙して自分だけ多くの遺産を受け取る」ということは相続人間でよくある相続詐欺のケースです。

遺産分割の際に騙された!隠し財産が見つかった!遺産分割の詐欺取消や錯誤無効!

遺産分割のときに他の相続人に騙されてしまった。隠し財産をこっそり取られてしまった。このようなケースでは、遺産分割の錯誤無効や取消は可能なのでしょうか。

  • よくある遺産分割に問題のあるケース(事例)
  • 遺産分割の錯誤無効や取消は可能か
  • 遺産分割の錯誤無効や取消の方法と流れ
  • 遺産分割の錯誤無効や取消の注意点

弁護士が問題のある遺産分割への対処について解説します。

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遺産分割に問題のあるケース(事例)

遺産分割の錯誤無効や取消について説明する前に、まずはどのようなケースが遺産分割の錯誤無効や取消にあたるのか確認しましょう。よくあるのは以下のようなケースです。

遺産を「なかった」と主張して相続人の一人が我が物にしている

遺産相続で相続人に対して平等に遺産分割したはずなのに、なぜか兄だけ異様に羽振りがいい。急に車を買ったり、旅行したり、家の建て直しなどをしている。兄の収入を考えると、そこまでお金があるとは思えない。それに、遺産相続後に急に羽振りがよくなったのも気になる。調べてみると、他の相続人に遺産を「なかった」と説明し、隠していた遺産があったようだった。兄は隠していた遺産をすべて我が物にしていた。

「遺産隠しをして他の相続人に知られないように我が物にする」という遺産相続にうそやだましがあったケースです。このケースでは、遺産の一部を隠している場合と、「遺産などなかった」と説明して遺産すべてを我が物にしているケースが考えられます。上記の例は一部を我が物にしていたケースです。

被相続人が死亡する前に財産をもらって隠していた

遺産はわずかしかないはずなのに、相続人の一人だけ異様に羽振りがいい。遺産はそこまで高額ではなかったはずなのに、なぜだろう。不思議に思って確認してみると、相続人の一人だけが被相続人が亡くなり前に多額の財産をもらっていた。遺産分割は被相続人が亡くなった時点で行われ、財産を生前に多くもらった相続人はそのことを隠していた。不公平である。

このように「財産をもらったことを隠し、遺産をなし(あるいは乏しい)と主張して遺産分割する」ケースがあります。

遺産を不当に低く評価して低い価値に見せかけて多く相続した

遺産分割をしたとき、評価の低い遺産を自分から分割希望した相続人がいた。本人が欲しているならと自分を含めて他の相続人も分割に同意したが、相続後に違和感を持った。相続税評価の低い遺産の分割を希望した相続人が、異様に羽振りが良い。確認してみると、その相続人は遺産分割においてほぼ評価の低い遺産ばかり分割を希望し、相続している。これはわざと低い評価に見せかけ、他の相続人をだましてたくさんの遺産や自分に有利な遺産を持って行ったのではないだろうか。

遺産相続の際の相続税評価と一般的な評価は違っています。相続税の方の遺産の評価が低くなり、一般的な表書く方が高くなるのはよくあることです。相続税の知識がある相続人の場合は、この評価の違いを利用することがあります。

評価の違いを利用してわざと評価を低くすることで、自分だけ多額の遺産を取得したケースです。これも遺産分割でよくある事例になります。

遺産分割で騙されて錯誤無効や詐欺取消が問題になるケースの特徴

遺産分割で錯誤無効や取消の問題になるケースには以下のような特徴があります。

  • 遺産の一部または全部を「ない」と主張していたが相続人が隠していた
  • 遺産はなかったが被相続人の生前に財産を多くもらっていた
  • 遺産の価値を低く見積もり自分だけ多く相続していた
  • 遺言書は「ない」とうそをつかれて遺産分割した

このような遺産の「隠し」「秘匿」「うそをつく」「価値を低く見積もってだます」などは、遺産分割で錯誤や取消が問題になるケースの特徴になります。

なかったのに羽振りがいい。評価の低い遺産しかもらっていないのに、潤沢な金がある。このようなケースは疑った方がいいでしょう。怪しい場合は、弁護士に相談し、遺産分割や遺産について確認してもらうといいでしょう。

遺産分騙されたときときの錯誤無効や詐欺取消はできるのか

遺産分割に問題があった場合、遺産分割の錯誤無効や取消は可能かが問題になります。

結論としては「可能」です。

騙されたり、うそをつかれたりして遺産分割協議に合意した場合には、錯誤による無効や遺産分割協議への同意の取消ができます。

仮に取消や無効の主張ができないとすれば、遺産相続では「だました者が得をする」という構図が許されてしまいます。よって、だましや脅迫、うそに対しては取消や錯誤無効の主張ができるようになっているのです。

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遺産分割で騙されたときの「取消」とは

遺産分割協議は相続人間の契約になるため、詐欺や脅迫などがあれば、詐欺や脅迫を理由に取消できます。これは、民法96条に定めがあるのです。

民法第96条詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。

遺産分割の事例で取り上げたような、遺産分割の対象になる遺産の内容にうそがあった場合や、遺産自体を「ない」と偽られた場合などは取消できる可能性があります。

遺産分割の騙されたときの詐欺取消の方法と流れ

遺産分割の取消の意思表示を伝えます。ただ、意思表示を伝えても、意図的に遺産隠しなどをしていた人は、まず取消に応じないはずです。取消の意思表示に応じてもらえない場合は、訴訟といった裁判所の手続きで取消を主張することになります。

第三者に遺産が譲渡されてしまった場合は、もはや遺産自体を取り返すことはできません。よって、損害賠償請求などを行うことになります。

遺産分割の騙されたときの詐欺取消の注意点

取消は何時でも可能というわけではありません。取消できる期限があるのです。

遺産分割協議で騙された合意したことを知ってから(取消できるときから)5年経過したときや、遺産分割協議への同意(遺産分割協議書の作成)から20年経ったときは、遺産分割協議の取消ができなくなります。注意してください。

また、遺産が事情を知らない第三者に譲渡されてしまうと、事情を知らない第三者から取り返すことはできなくなってしまいます。この点にも注意が必要になります。取消をする場合は早めに行う必要があるのです。

遺産分割で騙されたときの「錯誤無効」とは

錯誤とは「勘違い」のことです。遺産分割のときに他相続人のうそなどで勘違い(錯誤)してしまった場合は、錯誤無効の主張が可能です。錯誤無効は民法95条に定められています。

民法第95条意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる。

たとえば、相続人ABがいたとします。遺言書にはAにとって不利で、Bにとって有利な内容が書かれていました。

AはBに「遺言書はない」とうそをつき、遺産分割しました。Bは後から遺言書の存在を知り「遺言書を知っていたら遺産分割には同意しなかった」と怒りました。このようなケースでは、錯誤無効を主張できる可能性があります。

遺産分割で騙されたときの錯誤無効の方法と流れ

遺産分割協議の錯誤無効を主張する場合、まずは相手方に錯誤主張の旨を伝えます。ただ、伝えたとしても相手が素直に応じるとは限りません。そこで、相手が応じない場合は訴訟などの裁判所の手続きで決着をつけることになるのです。

錯誤無効の主張は基本的にいつでもできます。取消と違い、特に主張できる期間に定めはないのです。しかし、時間の経過と証拠が失われてしまい、主張が難しくなる可能性があります。

遺産分割で騙されたときの錯誤無効の注意点

錯誤無効で注意したいのは、重過失があると錯誤無効が認められないという点です。たとえば、他の相続人が「遺言書はない」と言っていたのに、注意すれば遺言書の存在に気づけていたケースなどがこれに該当します。

注意していれば気づけていたはずなのに気づかなかった。つまり、錯誤無効を主張する方のミスも関係している。それなのに錯誤無効を主張するのは都合が良すぎるのではないか、という話です。

このように「注意していれば気づけた」というケースでは重過失により錯誤無効が認められない可能性もあるため、注意が必要になります。

最後に

遺産分割のときにうそや脅迫、だましなどがあった場合、錯誤無効や取消を主張できる可能性があります。ただ、わざとうそや脅迫、だましなどを行った相続人に錯誤無効や取消を求めても、スムーズに認めてもらうことは難しいのが現実です。

訴訟などで錯誤無効や取消などを求める場合、取消や錯誤無効が可能かどうかの確認などの必要になります。

遺産分割の錯誤無効や取消を裁判所の手続きで求めるには、法律の深い知識が必要です。弁護士に相談し、遺産分割内容の確認からはじめてみてはいかがでしょう。
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