遺産の全容が分からない場合に相続人が採り得る調査の手段
父が亡くなりましたが、遺産の管理は同居していた兄がすべて行っており、私には何も知らされておりません。「たいした財産はない」と言われるばかりで、預金通帳も見せてもらえません。父は会社を経営しておりましたので、そのようなはずはないと思うのですが、確かめる方法がございません。このようなご相談を、当事務所はしばしばお受けしております。
先に結論を申し上げます。相続人は、他の相続人の協力がなくとも、相当の範囲で遺産を調査することができます。相続人は、相続の承認又は放棄をする前に、相続財産の調査をすることができるものとされております(民法第915条第2項)。実務上は、金融機関に対する取引の経過の開示の請求、会社に対する各種の閲覧謄写の請求、公的な記録の取得、被相続人の手元の資料の確認という4つの経路により、遺産の全容に接近してまいります。判例は、共同相続人の1人が単独で被相続人名義の預金口座の取引の経過の開示を求めることができるものとしております。本記事では、経路ごとに具体的な手順を整理いたします。
第1節 最初に行うこと
戸籍関係の書類の収集
被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等を収集し、相続人の範囲を確定いたします。これは、金融機関その他に対する請求の前提として必要となります。法定相続情報一覧図の写しを用いますと、その後の手続が簡便になります。
遺言の有無の確認
公正証書による遺言については、公証役場において検索の制度がございます。法務局における自筆証書遺言書保管制度を利用している場合には、その確認の制度がございます。自筆による遺言が見つかった場合には、原則として家庭裁判所の検認の手続が必要でございます(民法第1004条第1項)。
期限の把握
相続の放棄又は限定承認は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内にしなければならないものとされております(民法第915条第1項)。相続税の申告は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内でございます(相続税法第27条第1項)。調査には時間を要しますので、期限を意識して着手いたします。
第2節 金融機関に対する調査
取引の経過の開示の請求
判例は、共同相続人の1人が単独で被相続人名義の預金口座の取引の経過の開示を求めることができるものとしております。したがって、他の相続人の同意がなくとも、金融機関に対して請求することができます。
請求には、被相続人の死亡及び自らが相続人であることを示す戸籍関係の書類並びに本人確認の書類が必要となります。金融機関により手続及び所要の期間が異なりますので、あらかじめ確認いたします。
残高証明書
相続の開始の日における残高証明書の発行を求めることができます。相続税の申告にも用いられる資料でございます。
取引の履歴から分かること
- 会社からの役員報酬及び配当の入金(会社の規模及び被相続人の地位を推認し得ます)
- 会社に対する貸付けの支出(会社に対する債権の存在を示します)
- 保険料の支払(生命保険契約の存在を示します)
- 証券会社との取引(有価証券の存在を示します)
- 不自然な多額の出金(生前の贈与又は使い込みの可能性を示します)
- 賃料その他の定期的な入金(会社に賃貸している資産の存在を示します)
どの金融機関に照会するか
被相続人の自宅及び会社の所在地の周辺の金融機関、被相続人が勤務先として関係していた金融機関、郵便物、カレンダー、粗品、通帳の綴り等から手がかりを得ます。金融機関によっては、支店を特定せずに全店を対象とする照会に応じる取扱いがございます。
第3節 会社に関する調査
登記から分かること
会社の履歴事項全部証明書及び閉鎖事項証明書を取得いたします。資本金の額、発行済株式の総数、役員の構成、目的、本店の所在地及びこれらの変動の経過が分かります。被相続人が役員を務めていた会社が複数ある場合もございます。
株主としての権利による請求
被相続人が保有していた株式を承継した相続人は、名義書換を請求した上で、次の請求をすることができます。
- 定款の閲覧又は謄本の交付の請求(会社法第31条第2項)
- 株主名簿の閲覧又は謄写の請求(会社法第125条第2項)
- 株主総会の議事録の閲覧又は謄写の請求(会社法第318条第4項)
- 計算書類等の閲覧又は謄本の交付の請求(会社法第442条第3項)
- 持株の割合の要件を満たす場合の会計帳簿等の閲覧又は謄写の請求(会社法第433条第1項)
遺産分割が未了である間は、株式は相続人の準共有に属し、権利行使者の指定及び通知がなければ権利を行使することができません(会社法第106条本文)。他の相続人が権利行使者となっている場合には、この経路が使えませんので、遺産分割の手続の中で開示を求めることになります。
計算書類から分かること
会社の貸借対照表には、役員に対する借入金(すなわち被相続人の会社に対する債権)が計上されていることがございます。また、保険積立金、投資有価証券、差入保証金等の勘定から、会社を通じた資産の存在を知り得ることがございます。
第4節 被相続人の手元の資料
被相続人の自宅、会社の執務室、貸金庫等に残された資料は、最も直接的な手がかりでございます。
| 資料 | 分かること |
|---|---|
| 確定申告書の控え | 所得の種類及び額、配当、不動産の賃貸、事業の状況 |
| 固定資産税の納税通知書 | 被相続人の名義の資産の所在 |
| 保険証券及び保険料の控除証明書 | 生命保険契約の存在及び受取人 |
| 証券会社からの取引の報告書 | 有価証券の保有 |
| 会社から届いた書面 | 株主としての地位、配当の状況 |
| 金銭消費貸借契約書、借用証 | 貸付金の存在 |
| 貸金庫の契約書及び鍵 | 貸金庫の内容物 |
| 手帳、名刺、年賀状 | 取引先、金融機関、専門家との関係 |
貸金庫の開扉については、金融機関により手続が異なり、相続人全員の同意を求められることがございます。
第5節 公的な記録の取得
商業登記
会社の履歴事項全部証明書及び閉鎖事項証明書は、誰でも取得することができます。被相続人が役員を務めていた会社を網羅的に把握することは容易ではございませんが、確定申告書、名刺、預金の入金の記録から手がかりを得ます。
課税に関する記録
被相続人の所得税及び贈与税の申告の内容につきましては、相続人が開示を求め得る制度がございます。手続及び可否につきましては、税理士又は所轄の税務署にご確認ください。当事務所は税務の申告及び相談を行っておりません。
資産に関する公的な記録
被相続人の名義の資産については、固定資産税の納税通知書及び市区町村における課税の記録から把握し得ることがございます。手続は市区町村により異なります。なお、これらの資産の相続に関する詳細な取扱いは、本記事の対象といたしません。
第6節 家庭裁判所の手続を用いる調査
任意の調査によっても遺産の全容が判明しない場合には、家庭裁判所に遺産分割の調停を申し立て、その手続の中で開示を求めることが考えられます(民法第907条第2項)。
調停又は審判の手続においては、裁判所に対し、調査の嘱託又は文書の送付の嘱託を求めることが考えられます。相手方が任意に応じない資料についても、裁判所を通じて入手し得る場合がございます。
また、相手方に対し、遺産の目録の提出を求め、その内容の正確性を書面により確認させるという運用が行われることもございます。虚偽の内容を述べた場合には、その後の主張の信用性が失われることになります。
第7節 使い込みが疑われる場合
取引の履歴に不自然な多額の出金が見られる場合には、生前の贈与であるのか、被相続人のために用いられたのか、あるいは無断で引き出されたのかを検討いたします。
遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合であっても、共同相続人の全員の同意により、当該処分された財産が遺産の分割の時に遺産として存在するものとみなすことができるものとされております(民法第906条の2第1項)。当該処分をした者が共同相続人の1人である場合には、その者の同意を得ることを要しないものとされております(同条第2項)。
また、被相続人の生前に無断で財産が引き出された場合には、不当利得の返還又は不法行為に基づく損害の賠償を請求することが考えられます。これらの請求権には消滅時効がございますので(民法第166条第1項、第724条)、期間の管理が必要でございます。
第8節 調査の順序
| 段階 | 内容 |
|---|---|
| 第1 | 戸籍関係の書類を収集し、相続人の範囲を確定いたします |
| 第2 | 遺言の有無を確認いたします |
| 第3 | 被相続人の手元の資料を確認いたします |
| 第4 | 金融機関に対し取引の経過の開示及び残高証明書を請求いたします |
| 第5 | 会社の登記事項証明書を取得し、名義書換を請求いたします |
| 第6 | 会社に対し定款、株主名簿、議事録、計算書類等の閲覧謄写を請求いたします |
| 第7 | 判明しない場合、遺産分割の調停を申し立て、手続の中で開示を求めます |
第9節 期限
| 事項 | 期限 | 根拠条文 |
|---|---|---|
| 相続の放棄又は限定承認 | 自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月 | 民法第915条第1項 |
| 相続税の申告 | 相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月 | 相続税法第27条第1項 |
| 遺留分侵害額の請求 | 相続の開始及び侵害の事実を知った時から1年(相続の開始から10年) | 民法第1048条 |
| 不法行為に基づく損害賠償の請求 | 損害及び加害者を知った時から3年等 | 民法第724条 |
第10節 弁護士にご相談いただく意味
この局面において難しいのは、「何があるか分からないものを探す」という点でございます。手当たり次第に調べても、時間ばかりを費やします。実務においては、被相続人の確定申告書及び預金口座の取引の履歴という2つの資料を起点として、そこから会社、保険、有価証券、貸付金へと辿るという順序が有効でございます。これらの資料からは、被相続人の経済活動の全体像が現れます。
また、他の相続人が資料を握っている場合には、任意の請求のみでは進みません。遺産分割の調停を申し立て、裁判所を通じて開示を求めるという判断を、いつ行うかが要でございます。任意の交渉に時間をかけすぎますと、相続の放棄の期間及び相続税の申告の期限が迫ってまいります。
具体的な進め方は、遺産の構成の見込み、被相続人の職業及び生活の状況、他の相続人との関係、残された資料の量等により異なり、当事務所が個別案件を通じて蓄積してまいりました実務上のノウハウにも属するため、本記事では詳細を開示しておりません。なお、税務上の取扱いにつきましては税理士にご確認ください。
第11節 調査により集める資料と、その入手先
これまでに述べた経路により入手する資料を、一覧として整理いたします。入手先と、その資料を何のために用いるのかを併せて示します。相続人ご自身で取得できるものが少なくございません。
| 資料 | 入手先 | 用いる場面 |
|---|---|---|
| 被相続人の出生から死亡までの戸籍、除籍及び改製原戸籍 | 本籍地の市区町村 | 相続人の範囲を確定いたします。すべての手続の前提となります |
| 相続人の現在の戸籍及び戸籍の附票 | 本籍地の市区町村 | 相続人の所在を把握いたします。連絡が取れない相続人がいる場合に必要でございます |
| 法定相続情報一覧図の写し | 法務局 | 金融機関等に対する各種の請求の際に、戸籍の束に代えて提出いたします |
| 公正証書遺言の検索の結果 | 公証役場 | 遺言の有無を確認いたします。全国の公証役場で作成されたものを検索することができます |
| 遺言書保管事実証明書 | 法務局 | 自筆証書遺言書保管制度により保管された遺言の有無を確認いたします |
| 預金口座の取引の経過及び残高証明書 | 各金融機関 | 資金の流れを確認し、他の財産の手がかりを得ます |
| 証券口座の残高及び取引の報告書 | 証券会社 | 有価証券を把握いたします |
| 生命保険契約の有無に関する照会の結果 | 生命保険協会の照会の制度 | 契約先の分からない生命保険契約の有無を確認いたします |
| 会社の履歴事項全部証明書及び閉鎖事項証明書 | 法務局 | 会社の状況、役員、資本金の額及び発行済株式の総数の変動を確認いたします |
| 会社の定款、株主名簿、議事録及び計算書類等 | 会社(株主としての権利により請求いたします) | 株式の内容及び会社の財務の状態を確認いたします |
| 固定資産課税台帳の記載事項の証明書(名寄帳) | 資産の所在地の市区町村 | その市区町村における被相続人名義の資産を網羅的に把握いたします |
| 登記事項証明書 | 法務局 | 名寄帳等により判明した資産について、権利の状況を確認いたします |
| 被相続人の確定申告書の控え | 手元の資料又は税務署に対する開示の請求 | 収入の内訳から、判明していない財産の手がかりを得ます |
| 貸金庫の契約の有無及び内容 | 取引のあった金融機関 | 保管された書面、証券、遺言書等の有無を確認いたします |
| 被相続人宛ての郵便物 | 被相続人の住所 | 取引のある金融機関、保険会社、証券会社等を把握いたします |
この一覧のうち、戸籍関係の書類、登記事項証明書、名寄帳及び公証役場における検索は、他の相続人の協力を要しません。まずこれらから着手いたします。
第12節 照会及び請求の書面の作成と、断られた場合の対応
金融機関に対する照会
金融機関に対しては、支店を通じて相続の開始を届け出た上で、取引の経過の開示及び残高証明書の交付を請求いたします。請求の際には、被相続人の死亡の記載のある戸籍、請求をする者が相続人であることが分かる戸籍、請求をする者の本人確認の書類及び印鑑登録証明書の提出を求められるのが通常でございます。
- 照会の対象とする期間を明示いたします。過去10年分を求めることが多うございます
- 口座の番号が分からない場合には、支店を指定して名寄せによる照会を求めます
- 被相続人が取引をしていた可能性のある金融機関を、郵便物、通帳、キャッシュカード、確定申告書の控えから洗い出します
- 交付までに日数を要しますので、他の調査と併行して進めます
会社に対する請求
会社に対する請求は、本店の所在地を宛先とし、代表取締役宛てに、配達証明付きの内容証明郵便により行います。請求の対象となる資料を事業年度及び書類の名称により特定し、閲覧を求めるのか謄本の交付を求めるのかを明示いたします。併せて、回答を求める期限を記載いたします。
断られた場合の対応
| 断られた相手方 | 次に採る手段 |
|---|---|
| 金融機関 | 拒む理由を書面により示すよう求めます。判例は、共同相続人の1人が単独で被相続人名義の預金口座の取引の経過の開示を求めることができるものとしております。それでも応じない場合には、遺産分割の調停の手続において、調査の嘱託又は文書の送付の嘱託を求めることを検討いたします |
| 会社 | 株主名簿の名義が被相続人のままであることを理由とする場合には、まず名義の書換えを請求いたします。遺産分割が未了であることを理由とする場合には、権利を行使する者を定めて通知いたします(会社法第106条本文)。それでもなお拒む場合には、閲覧謄写を求める訴え又は仮の地位を定める仮処分の申立て(民事保全法第23条第2項)を検討いたします |
| 遺産を管理している相続人 | 任意の開示を求める書面を送付し、その回答を記録いたします。応じない場合には、遺産分割の調停を申し立て、手続の中で開示を求めます(民法第907条第2項) |
| 市区町村又は法務局 | 請求をする者が相続人であることの疎明が不足していることが理由であることが多うございます。戸籍の不足を補い、又は法定相続情報一覧図の写しを添えて再度請求いたします |
記録の作成
照会又は請求をした年月日、相手方、方法、回答の内容及びその年月日を、一覧として記録してまいります。この記録は、後に調停又は審判の手続において、任意の調査を尽くしたことを示す資料となります。また、相手方が「求められていない」と述べた場合の反証ともなります。
第13節 遺産を管理している相続人から想定される主張と、反論の枠組み
| 想定される主張 | 反論の枠組み |
|---|---|
| たいした財産はない | 財産の額の多寡は、開示を拒む理由となりません。金額が僅少であるとおっしゃるのであれば、その裏付けとなる資料をお示しいただきたい旨を書面により求めます |
| 通帳は処分した、見当たらない | 通帳の有無にかかわらず、相続人は金融機関に対して取引の経過の開示を請求することができます。通帳がないことは調査を断念する理由になりません |
| 生前に父から贈与を受けたものである | 贈与であることは、これを主張する側が示すべき事柄でございます。贈与契約書、贈与税の申告の有無、資金の移動の時期及び態様を確認いたします。贈与であるとすれば、遺産分割において生前の贈与としての扱いを検討することとなります |
| 被相続人の療養看護や葬儀のために用いた | 用途ごとに、時期、金額及び裏付けとなる領収書等をお示しいただくよう求めます。裏付けのない支出については、その旨を明らかにしてまいります |
| 弁護士を立てるとは何事か、家族の問題である | 代理人を立てることは、法が認めた当然の権利の行使でございます。感情の問題と、資料の開示の要否とは切り離して整理いたします |
| 調停になれば全部話す | その意向であれば、調停の申立てを妨げる理由はございません。任意の開示に応じない旨の回答として記録いたします |
| 会社のことは会社の問題であり、相続とは関係がない | 被相続人が保有していた株式は相続財産でございます。株主としての権利により、会社に対して資料の請求を行うことができます |
| もう時間が経っているので今更どうにもならない | 権利によって期間の定めは異なります。期間が経過しているかは、権利ごとに個別に検討いたします。断念する前に、まず期間の起算点を確認いたします |
第14節 事案の類型ごとの進め方
| 類型 | 特に重点を置く調査 |
|---|---|
| 同居していた相続人が管理している場合 | 被相続人の預金口座の取引の経過を長期にわたって取得し、当該相続人の生活の実態と対照いたします。被相続人の判断能力が低下していた時期の出金に注意いたします |
| 会社の役員又は従業員が実質的に管理している場合 | 会社の登記事項証明書により役員の異動を確認し、株主としての権利により計算書類等の開示を求めます。被相続人の会社に対する貸付けの有無を確認いたします |
| 被相続人の配偶者が管理している場合 | 婚姻の時期、財産の取得の時期及び原資を対照いたします。名義が配偶者となっていても被相続人の資金により取得された財産の有無を検討いたします |
| 被相続人が複数の会社を有していた場合 | 各社の履歴事項全部証明書を取得し、相互の出資の関係を把握いたします。決算公告の有無も確認いたします |
| 相続人の一部と連絡が取れない場合 | 戸籍の附票により住所を調査いたします。所在が判明しない場合には、家庭裁判所の手続の利用を検討いたします |
| 被相続人が生前に判断能力を欠いていた疑いがある場合 | 診療の記録、介護の認定に関する記録、施設の記録を確認いたします。当該時期における財産の移転の有無を重点的に調査いたします |
いずれの類型におきましても、出発点は同じでございます。相続人の範囲を確定し、他の相続人の協力を要しない資料から先に集めることでございます。
よくあるご質問
質問1 他の相続人の同意がなくても銀行に照会できますか。
判例は、共同相続人の1人が単独で被相続人名義の預金口座の取引の経過の開示を求めることができるものとしております。金融機関ごとに手続が定められておりますので、必要な書類を確認の上で請求いたします。
質問2 会社の決算書を見たいのですが、株主として認められません。
まず名義書換を請求いたします。相続その他の一般承継により株式を取得した者は、単独で株主名簿記載事項の記載又は記録を請求することができるものとされております。遺産分割が未了である場合には、権利行使者の指定が必要となります(会社法第106条本文)。
質問3 3か月の期間内に調査が終わりません。
相続の承認又は放棄をすべき期間については、利害関係人又は検察官の請求により、家庭裁判所においてこれを伸長することができるものとされております(民法第915条第1項ただし書)。期間内に申立てを行う必要がございます。
質問4 兄が「遺産はこれだけだ」と一覧を出してきました。
その内容を鵜呑みにせず、預金口座の取引の履歴及び確定申告書の控えと照合いたします。記載のない資産が判明することが少なくございません。
質問5 貸金庫があるようです。
貸金庫の開扉の手続は金融機関により異なり、相続人全員の同意を求められることがございます。応じない相続人がいる場合の取扱いは、事案により異なりますので、個別に検討を要します。
質問6 金融機関から「相続人全員の同意書がなければ応じられない」と言われました。
判例は、共同相続人の1人が単独で被相続人名義の預金口座の取引の経過の開示を求めることができるものとしております。書面によりその旨を述べ、拒む理由を書面で示すよう求めることが考えられます。
質問7 被相続人がどの金融機関と取引していたか分かりません。
被相続人宛ての郵便物、通帳、キャッシュカード、確定申告書の控え、自宅や勤務先の近隣にある金融機関から候補を洗い出し、順に照会をいたします。生命保険については、協会の照会の制度により契約の有無を確認することが考えられます。
質問8 調査に費用と時間がどれくらいかかりますか。
戸籍関係の書類の収集だけでも、本籍地が複数に及ぶ場合には日数を要します。金融機関の取引の経過の開示も、交付まで日数を要するのが通常でございます。3か月の期間が問題となる場合には、期間の伸長の申立てを併せてご検討ください。弁護士費用については、当ウェブサイトの弁護士費用一覧のページをご覧ください。
本記事の根拠条文
民法
- 第166条第1項(債権等の消滅時効)
- 第724条(不法行為による損害賠償請求権の消滅時効)
- 第906条の2第1項・第2項(遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合の遺産の範囲)
- 第907条第2項(遺産の分割の請求)
- 第915条第1項・第2項(相続の承認又は放棄をすべき期間及び相続財産の調査)
- 第1004条第1項(遺言書の検認)
- 第1048条(遺留分侵害額の請求権の期間の制限)
会社法
- 第31条第2項(定款の閲覧等)
- 第106条(共有者による権利の行使)
- 第125条第2項(株主名簿の閲覧等)
- 第318条第4項(株主総会の議事録の閲覧等)
- 第433条第1項(会計帳簿の閲覧等の請求)
- 第442条第3項(計算書類等の閲覧等の請求)
相続税法 第27条第1項(相続税の申告書の提出期限)
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