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非上場株式の遺産分割は相続税評価額を基準に分割しては絶対にいけません!!

公開 2024年6月13日更新 2026年11月1日

▶ 非上場株式の相続税評価額の決まり方と上場株式との違い及び計算方法

本記事は、非上場株式を含む遺産について、相続税申告書の評価額を基準に遺産分割を求められている相続人の方に向けたものです。既に相続税評価額で分割され、取り分が減ってしまった方は、相続税評価額で分割され取り分が減ってしまった場合の主張の組み立てをご覧ください。

本稿は、相続税の申告のために税理士が算定した相続税評価額を、そのまま遺産分割の基準としてはならない理由について、現金と非上場株式との評価の違いを示して注意を促すものです。遺産分割において非上場株式の評価額を実際にどのように定めるか、すなわち基準となる時点、算定の考え方、会社の性格による使い分け、資料の集め方並びに協議、調停及び審判における進め方については 遺産分割における非上場株式の評価額の決め方 をご参照ください。

遺産に非上場株式が含まれている場合、税理士先生の株価算定する相続税申告書の相続税評価額を非上場株式の時価だと勘違いして、相続税評価額を基準に遺産分割を行ってしまい、非常に不公平でバランスの取れない遺産分割をしてしまう相続の件が増えています。

すなわち、相続税評価額では、以下の通り、1億円の現金は間違いなく1億円と評価されます(1000万円の現金は1000万円と評価されます)が、1億円の非上場株式は1000万円程度の評価にしかならないこともあります。

例 相続税評価額 時価
1億円の現金 1億円 1億円
非上場株式 1000万円 1億円

ですので、亡くなった父が会社を経営しており非上場株式(時価1億円で相続税評価額1000万円)を保有していた場合、相続税評価額を基準に遺産分割を行ってしまうと、兄弟間で以下のような遺産分割が行われてしまい、著しく不公平な遺産分割になってしまうのです。この場合、兄妹で、同じ額の遺産を相続したように見えますが、実は全然違うのです。

兄:非上場株式(相続税評価額1000万円だが時価1億円)
妹:現金1000万円

相続税申告書の評価額は遺産分割における評価額ではない!

要するに、相続税申告書の株式評価額は、株式の価値を表す時価とは全く違うものですので、遺産分割における基準額として使用してはいけないのです。

このことは、税理士先生の間では常識のようですが、弁護士の中では全く知られていません。

税理士先生はあまりにも常識で当たり前なのでいちいち説明しないとのこと。弁護士先生は全く想像すらしていないし税理士先生も殊更に教えてくれないので全然知らなかったとのこと。

相続税評価額に基づいて相続税申告書を作成しますが、その中に非上場株式の評価額も書かれていますが、その評価額というのは相続税評価額であり、国税庁が相続税を計算するための便宜的な数字に過ぎないのです(会社というのは不動産と異なり非常に評価がしにくく、他方、大量な相続案件について公平な課税のためには無難な株価評価ができ不公平感がないようにする必要があり、そのために作成されたのが財産評価基本通達であり相続税評価額ですので、大量処理のためのやむを得ない制度なのです)。

勿論、相続税評価額が時価と近い場合もあり、その場合はあまり問題は発生しませんが、相続税評価額が時価と著しく異なる場合もあり、そのような場合まで、相続税評価額を時価と思い込んで、それを基準に遺産分割をすると、非常に不公平でバランスの取れない遺産分割が起こってしまうのです。

その結果、5年後10年後には、兄は会社から得られる資金で非常に豊かになっているのに、妹の現金は減る一方であり、子供に良い教育もしてあげられないくらい格差が生じてしまい、一体どこでどう間違ったのかと思うくらいの差が生じます。

遺産分割の際には会計士先生に非上場株式の価格を計算してもらう?!

これも、非上場株式の相続税評価額は、非上場株式の時価とは大きく異なることがあることに鑑みると、①相続税申告の際には税理士先生に非上場株式の相続税評価額を計算してもらい、②遺産分割の際には会計士先生に非上場株式の価格を計算してもらう必要があるということとなります。

ただ、相続税申告で税理士先生に非上場株式の株価評価書を作成してもらうために費用が掛かっているのに、さらに会計士先生に非上場株式の株価評価書を作成してもらおうとする人は多くありません。

そのために、世間的には悲劇が大量に発生しているのです。

相続税申告書に使用する相続税評価額を遺産分割においても用いるのは、あくまでも便宜上の理由によるものであり、本来、①相続税申告の基準である相続税評価額と②遺産分割の基準である時価はイコールではありません。特に、事業承継の準備で相続税対策をしている会社については、相続税評価額が著しく低く評価されるようにテクニカルに工夫されていることも多く、そのような場合に相続税評価額を遺産分割でも用いると、⇒非上場株式を相続した兄は得をして、現金を相続した妹は悲劇に見舞われるのです。

会社が決算書類を見せず、非上場株式の価格を計算できずにお困りの方は、次のページを御覧ください。

相続税申告の際には税理士先生に非上場株式の相続税評価額を計算してもらう!

相続税評価額は相続税計算の基礎ですので、特に、事業承継を控えている優良企業においては、株価評価を引き下げて相続税評価額を引き下げようとして長期間に渡って税理士に相談することが多くなっています。

相続税評価額は、上記の通り、大量な相続案件について公平な課税のためかなり画一的に計算式が決まっており、配当を減らしたり、従業員を増やしたり、時間を掛けさえすれば、テクニカルに株価評価額を低下させることができるのです。また、税制優遇制度もあります。そのような税理士先生のテクニックを駆使して評価額を下げた⇒非上場株式が相続財産の場合、非常に価値のある非上場株式が、著しく低い価格と評価されることもあるのです。

ですので、相続から数年たってあまりにも状況がおかしい場合は、一度、この点を調べてみた方が良いと思われます。

執筆者

弁護士法人M&A総合法律事務所 代表弁護士 土屋勝裕(東京弁護士会所属 登録番号26775)

2024年(令和6年)10月に最高裁判所において株式買取請求権に関する逆転判決を得た弁護士です。長島・大野・常松法律事務所に在籍した後、慶應義塾大学ビジネス・スクール及びペンシルベニア大学ウォートン校に留学し、ファイナンス理論並びにM&A及び不動産を専攻しました。不動産投資信託(J-REIT)の上場案件にも関与しています。

主として取り扱う分野 M&A、株式買取請求権、非上場株式の価格の決定、企業価値評価、事業承継及び企業法務

所在地 〒105-6017 東京都港区虎ノ門4丁目3番1号 森トラスト城山トラストタワー17階/電話番号 03-6435-8418/受付時間 8:00-21:00(土日祝含む)

本記事の記載は一般的な法律情報であり、個別の事案に関する法律上の助言ではありません。記載した経歴は事実の記述であり、個別の事件の結果を保証するものではありません。

著書

非上場会社における少数株主対策の手法と実務
『非上場会社における少数株主対策の手法と実務』(日本法令)
中堅・中小企業のためのM&Aトラブル事例と実務対策
『中堅・中小企業のためのM&Aトラブル事例と実務対策』(清文社)
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