兄弟での遺産相続はできる?相続のパターンやトラブルの対処法について解説

遺産相続で兄弟が絡むのは、故人の兄弟姉妹が法定相続人となる場合と親が亡くなり子ども(兄弟姉妹)同士が法定相続人になる場合の2つのパターンがあります。
どちらの場合でも、遺産相続でトラブルに発展してしまうと、兄弟姉妹の仲が悪くなり、絶縁状態となってしまうこともあります。
こうした事態を防ぐためには、兄弟姉妹が相続する場合の法律上のルールを理解すると共に、よくあるトラブル事例と対処方法について知っておくことが大切です。
この記事では、兄弟姉妹が絡む相続のパターンとトラブルの対処法について解説します。
遺産相続において、故人の兄弟・姉妹の相続順位は「第3順位」である
相続とは、故人が持っていた財産を他者へ引き継がせることです。故人のことを被相続人、相続する方を相続人といいます。
相続人には、法律によって範囲と順位が決められており、それ以外の方は原則として財産を受け継ぐことができません(遺言がある場合などを除く)。
以下の表は、相続のおもな概要をまとめたものです。
| 順位 | 相続人 |
| 第1順位 |
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| 第2順位 |
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| 第3順位 |
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なお、配偶者は、常に相続人となります。
また、受け継げる遺産の割合も次のように決められています。
| 相続人 | 法定相続分 | |
| 配偶者と子供が相続人である場合 | 配偶者 | 1/2 |
| 子供(2人以上のときは全員で) | 1/2 | |
| 配偶者と直系尊属が相続人である場合 | 配偶者 | 2/3 |
| 直系尊属(2人以上のときは全員で) | 1/3 | |
| 配偶者と兄弟姉妹が相続人である場合 | 配偶者 | 3/4 |
| 兄弟姉妹(2人以上のときは全員で) | 1/4 | |
原則としては、上記の表に従い財産の分配がされます。ただし、状況や事情によっては相続分が変わることがあります。
兄弟姉妹の遺産相続には、基本的に2つのパターンがある
兄弟や姉妹が遺産相続できるのは、以下の2つに該当するときです。
- 「兄弟姉妹の遺産」を残りの兄弟と姉妹で相続する
- 「親の遺産」を兄弟と姉妹(子ども)で相続する
それぞれのパターン別に確認しましょう。
「兄弟姉妹の遺産」を残りの兄弟と姉妹で相続する
1つ目は、自分の兄弟や姉妹の遺産を受け継ぐときです。兄弟や姉妹の相続分に関しては、故人の置かれた状況によって異なります。おもな事例としては、以下の3つが挙げられます。
故人に配偶者がいる場合
まずは、亡くなった故人(兄弟姉妹)に配偶者がいる場合です。このときには、配偶者が3/4を相続して、残りの1/4を兄弟と姉妹で平等に分けます。
長男が4,000万円の遺産を残して亡くなり、その妻(配偶者)と次男、三男(兄弟)で分けた例で見てみましょう。
この事例では妻(配偶者)が3/4、次男と三男で残りの1/4を均等に分けて相続します。
| 妻(配偶者) | 3,000万円 |
| 兄弟(次男)(三男) | それぞれ500万円ずつ |
故人に配偶者がいない場合
続いて故人に配偶者が不在のときです。この状況では配偶者がいないため、全ての遺産を兄弟や姉妹で平等に分けます。
長男が4,000万円の遺産を残して亡くなり、次男と三男がいると仮定して見てみましょう。
妻が不在であるため、全ての遺産を次男と三男で1/2ずつ均等にして相続します。
| 妻(配偶者)不在 | なし |
| 次男三男 | それぞれ2,000万円ずつ |
故人に配偶者はいないが、兄弟姉妹の子どもがいる場合
最後に故人の妻(配偶者)がおらず、兄弟姉妹の子ども(甥・姪)がいるときです。
まず、故人の兄弟姉妹が存命している場合は、甥・姪は相続人になりません。
兄弟姉妹の誰かが亡くなっている場合は、甥・姪に当たる人が代襲相続します。
長男が4,000万円の遺産を残して亡くなり、兄弟2人(次男・三男)がいる例で見てみましょう。そして、次男も先に亡くなっており、その子ども2人(故人の甥・姪)がいるとします。
| 次男の子ども2人(故人の甥・姪) | それぞれ1,000万円ずつ |
| 三男 | 2,000万円 |
「親の遺産」を兄弟と姉妹(子ども)で相続する
2つ目は、親の遺産を子どもの兄弟と姉妹で分ける場合です。こちらも、配偶者がいるかどうかで相続分が変動します。イメージしやすいように父(被相続人)、母(配偶者)、兄弟2人(長男・次男)の例で見てみましょう。
父が亡くなり母はいる場合
相続分は、配偶者にあたる母が1/2、残りの1/2を子どもである兄弟(長男・次男)で、平等に分けて受け継ぎます。
父(被相続人)が4,000万円の遺産を残した場合は次のようになります。
| 母 | 2,000万円 |
| 長男・次男 | それぞれ1,000万円ずつ |
父も母も亡くなっている場合
母はすでに亡くなっており配偶者は存在しない状態のため、全ての遺産を兄弟で平等に分けて相続します。
父(被相続人)が4,000万円の遺産を残した場合は次のようになります。
| 母(他界) | なし |
| 長男・次男 | それぞれ2,000万円ずつ |
兄弟が遺産の相続人となる場合に注意すべきこと
兄弟が相続人となる場合には、注意しておくべきことがあります。法律では配偶者や子どもと取り扱いが異なるため、同じ家族でも適用される条件が異なる可能性があるためです。このことが原因となって、トラブルが起きた事例も多くあります。
トラブルに発展するリスクを減らすためにも、あらかじめポイントをおさえておきましょう。
「遺言書」がある場合には、遺言書の内容が優先される
もし故人が遺言書として紙などに最終意思を遺していた際には、相続人の権利より遺言書の内容が優先される点に注意が必要です。
例えば、「遺産を全て○○へ寄付する」という遺言が遺されていると仮定します。家族からすれば理不尽に感じるかもしれませんが、遺留分の主張ができる場合を除き、この意思が優先して執行されます。長男に全ての遺産を受け継がせるなど、偏った内容のときも同様です。
兄弟姉妹には、「遺留分」が認められていない
先述したように、遺言書がある場合には理不尽な内容であっても、故人の最終意思が優先されます。とはいえあまりにも理不尽な内容の場合には、納得できないご家族の方も多いでしょう。このような事態の発生を想定して、法律では相続人を保護する観点から、遺留分の主張が認められています。
遺留分とは、相続人における最低限の相続分が保証されている制度です。
遺留分を主張できるのは、以下の相続人に限ります。
- 配偶者
- 故人の子ども、孫(直系卑属)
- 故人の親、祖父母(直系尊属)
上記を見て分かるように、兄弟と姉妹は遺留分の主張ができません。つまり兄弟や姉妹は、遺言の内容によって財産を受け継げないときがあるということです。
「相続放棄」をした場合、遺産は相続できない
遺産の相続においては、相続放棄という制度が設けられています。相続放棄をした方は、相続人の権利を失うことになり、「最初から相続人でなかった」として扱われます。当然、遺産相続が発生しても、受け継ぐことのできる遺産はありません。
なお相続を放棄した際は、代襲相続できません。自分に代わり子どもに受け継がせるなどは不可能なため、注意が必要です。
「相続欠格」などの対象となるときは、法定相続人の権利をはく奪される
相続欠格とは、相続人が「相続欠格事由」に当てはまる行為をした場合、相続人としての権利を失わせる制度を指します。相続欠格に該当してしまうと、相続人としても権利をはく奪されるため、一切の財産を受け継ぐことができません。相続欠格事由の該当項目には、以下の内容などが挙げられます。
| おもな相続欠格事由 |
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極端な内容もありますが、遺言書に関する事項については該当する可能性もあります。全ての相続分を失う危険性を持ち合わせているため、安易な行動は慎みましょう。
相続税が2割加算される
兄弟や姉妹が遺産相続をした場合、配偶者や子どもが課せられる相続税に、2割加算された金額を税金として支払う必要があります。
また、相続税には支払期限が決められています。支払期限は、被相続人の死亡を知った日から10ヵ月です。期限を過ぎる、申告をしないなどの場合には、追徴金やペナルティが課せられる可能性があります。
なお期限内に申告を済ませると、「配偶者税額控除」などの優遇制度を利用できる場合があります。節税にもつながるため、相続税はできる限り期限内に申告しましょう。
相続税の支払いと注意点
相続税は、資産分割の話し合いがまとまらない場合であっても、期限内に申告しなければなりません。いかなる理由があっても申告と支払いをしなければ、ペナルティの対象となる可能性があります。
そのようなときには、仮定した金額を一度支払っておき、後で相続税の修正申告または更正申告を行うことも可能です。
修正申告は納税した相続税が足りない場合に行い、更正申告は納税額が多い場合に行います。
なお、いずれも法定申告期限(10ヶ月)の翌日から5年以内に手続きが必要なので注意しましょう。
相続人がすでに亡くなっているときは、その子どもが「代襲相続」する
代襲相続とは、相続人にあたる兄弟や姉妹がすでに亡くなっているとき、その子どもが相続人になることをいいます。
例えば、長男が被相続人であるときに、次男と三男が相続人だとします。このとき、次男がすでに亡くなっている場合には、次男の子どもが相続人です。そのため、相続人である兄弟姉妹がいないからといって、他者の相続分が増えるわけではありません。
ただし、兄弟姉妹の代襲相続は法律によって1代限りとされています。次男の子ども(甥姪)もすでに亡くなっている場合、その子ども(孫)まで代襲相続することはできません。このときには、残された相続人で財産を分配することになるため、兄弟姉妹の相続分が増える場合もあります。
相続にはたくさんの書類が必要となる
相続を行うときは、大量の書類が必要となることも覚えておきましょう。どれだけスムーズな相続であっても、たくさんの書類が必要です。遺言書がある場合など状況によって必要な書類は異なりますが、おもには以下の書類が必要です。
| 相続のときに必要となるおもな書類 |
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家族などに取得を依頼するときは、委任状が必要となります。また、印鑑証明書は相続人全員分が必要です。相続人が遠方にいる場合には、揃うまでに時間がかかることが予想されるため、計画的に余裕をもって進めるようにしましょう。
兄弟姉妹における遺産相続で起こりがちなトラブルとは?
兄弟姉妹における遺産相続には、よく起こりがちなトラブルがあります。事例を把握しておくことで、自分が相続するときに発生したとしても、対処がしやすくなります。おもな対処法と併せて参考にするとよいでしょう。
不動産など平等な分配が難しい財産がある
土地や家屋のような不動産は、立地場所や建物の種類、流行などによって価格が変動する上、分割が難しいためトラブルの原因になりやすい傾向があります。特に財産の多くを不動産などが占める場合には、揉めやすいため注意が必要です。
不動産や美術品などは、現金ではないため分割ができません。相続する際には、それぞれに割り当てられることになるでしょう。しかし、自分の欲しいものが割り当てられない方のなかには、不満を抱く方もいます。最悪の場合には、絶縁状態や調停に至るなどのトラブルに発展する可能性があります。
話し合いがうまくまとまらない
家族間の話し合いがまとまらないことも、あります。
いくら兄弟姉妹とはいえ、それぞれに事情を抱えており、置かれた状況は異なります。それぞれに理想とするもの、および思い描く将来像も違うでしょう。
価値観も異なるため、場合によっては分配や手続きのやり方に不満を抱く方も出てきます。加えて、仕事などが忙しく冷静に話し合う時間と余裕がない場合には、なかなか解決に至りません。
以下、話し合いがまとまらないパターンを紹介します。
介護負担など「誰が一番親の面倒を見ていたか」で揉めてしまう
故人と同居していた方、おもに介護をしていた方などが相続人のなかにいる場合です。人のお世話や介護は、想像以上に大変なことがあります。なかには負担が大きかった分、遺産を多くもらいたいと思う方もいるでしょう。
このとき兄弟姉妹がそれぞれ自分の言い分を主張していると、なかなか話し合いがまとまりません。このような場合には、相手を尊重する気持ちが大切です。他の兄弟姉妹の苦労をお互いに認め合い、遺産の分配時にうまく反映させていきましょう。
親から兄弟のひとりが優遇されており、不公平さを感じる
親の生前に特定のひとりが優遇されている場合には、他の兄弟姉妹は不満を抱きがちです。例えば、親が生前、長男に対してよく贈り物をしたり、財産の一部を分け与えていたりすると、他の兄弟や姉妹が事実を知ったときには、不公平さを感じます。加えて長男の主張が強い場合には、トラブルに発展してしまいがちです。
長男が考えを改め、公平になるように他者に譲ってくれると良いのですが、望めない場合には話し合いによる解決は難しいでしょう。そのようなときは、他の解決策を探す必要があります。
なお、兄弟のひとりが、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けていた場合は、特別受益に当たるものとした持ち戻しの対象になることもあります。
兄弟姉妹それぞれの配偶者の主張が強くまとまらない
相続においては、兄弟姉妹は法定相続人と認められますが、その配偶者にあたる方には相続権はありません。しかし配偶者のなかには、意見を述べて押し通そうとする方もいます。相続者本人と配偶者で話し合って解決に至れば良いのですが、相続人全員を巻き込んだトラブルに発展するケースも多いようです。
兄弟姉妹の配偶者は相続権をもっていないため、無理に進めることも可能ですが、円満解決を望むのであればやめておいた方がよいでしょう。家族の関係性が悪化してしまう恐れがあります。まずは配偶者と話し合いを重ねて、理解を得るように努めましょう。
絶縁状態の兄弟がいる
絶縁した兄弟姉妹がいる場合にも、トラブルに発展するケースが多いようです。絶縁していても法定相続人である兄弟姉妹には、「遺産分割協議」に参加してもらわなければなりません。
遺産分割協議では、相続人全員の参加が必要となりますが、絶縁した方がいるときは、連絡がつかない場合があります。基本的には、話し合いに参加してもらわないと相続手続きが進まないため、絶縁した兄弟姉妹を探さなければなりません。
しかし、自分たちだけで絶縁した兄弟姉妹を見つけることは、難しい場合があります。このようなときは、専門家である弁護士や司法書士などに相談しましょう。解決の糸口が見つかるかもしれません。
なお絶縁した方が相続のときだけ突然現れて、相続分を主張することがあります。このような場合にも他の相続人は納得がいかず、トラブルに発展するケースが多いようです。
財産に借金などの負債が含まれている
遺された財産に負債が多い場合にも、トラブルに発展しやすい傾向にあります。相続人は資産だけでなく、借金などの負債も相続しなければなりません。つまり、相続人が借金を負わなければならないということです。
負債よりも資産が多ければ良いですが、負債の方が多い場合には相続人が返済をしなければなりません。このような場合には、相続を拒否する兄弟姉妹もいるでしょう。結果的には、「誰が相続するのか」で揉めてしまいます。
あまりに負債が多い場合は、相続放棄を検討します。
相続放棄は、遺産分割協議書などで「相続分を放棄します」と記載するだけで足りるわけではなく、家庭裁判所で相続放棄の申述を行う必要がある点に注意しましょう。
偏った内容の遺言書が作成されていた
遺言書の内容が偏っていた場合にも、トラブルがよく起きます。「次男に全ての遺産を相続させる」などのように、特定の方だけを優遇する内容だと、納得しない兄弟姉妹もいるでしょう。納得できなければ話し合いもまとまらず、トラブルに発展してしまいます。
なお遺言に残された内容を覆すことは困難ですが、遺留分の請求は可能です。親の遺産を相続する場合であれば、兄弟姉妹は子どもにあたるため、遺留分の主張が認められます。権利を主張することで、法律で決められた最低限の相続分を受け取れます。ただし、故人が兄弟姉妹の場合だと遺留分の主張はできません。
故人に連れ子や養子がいる
故人に養子や連れ子がいる場合にも、トラブルがよく発生します。まずは、ケースごとの関係性を整理しましょう。
| 連れ子・養子と自分の関係性 | |
| 親(被相続人)の養子・連れ子 | 異母兄弟 |
| 兄弟姉妹(被相続人)の養子・連れ子 | 甥・姪 |
養子や連れ子と自分の関係性は、上記のようになります。形式上の関係は理解できても、血縁関係がない方へ故人の財産を相続させることに、抵抗を感じる方もいるようです。双方の主張が強いと話し合いがまとまらず、トラブルに発展してしまいます。
相続においては上記の関係性を踏まえた上で、「法的に相続権が認められるか」がポイントです。それぞれ養子と連れ子の相続を詳しく見てみましょう。
「養子」がいる場合の相続
養子縁組の手続きを行った養子は、養親の遺産を相続することが可能です。そのため、実子と同様の相続権を持ちます。
例)故人の遺産を配偶者なし、養子1人、実子2人で相続する場合
養子→1/3
実子→それぞれ1/3
法的にも血縁関係が認められているため、他の兄弟姉妹が相続分の請求を拒否することはできません。養子の方にも、法律に従って財産を分割する必要があります。
「連れ子」がいる場合の相続
養子縁組の手続きを行っていない連れ子の場合、法律では相続権を認めていないため、故人の遺産は相続できません。そのため、連れ子を除いた相続人で遺産を分割します。
法的に相続権がないとはいえ、実際の関係性によってはトラブルになることもあります。例えば血縁関係がある兄弟姉妹よりも、連れ子が故人の介護を行っていた場合などです。最も介護を負担したにもかかわらず、自分の相続分がないのでは不満をもつ方もいるでしょう。
しかしながら、連れ子には相続権がないため主張ができません。連れ子に遺産を相続させたいときは、生前に養子縁組を行うか遺言書の作成が必要です。
故人に愛人や内縁関係の方がいる
故人に愛人、内縁関係の方がいる場合にも、よくトラブルが発生します。特に配偶者が存命の場合には、調停や裁判に発展するケースも珍しくありません。まずは、愛人と内縁関係の概要を理解する必要があります。
愛人と内縁関係の線引きは難しく、明確な決まりは規定されていません。基本的には、自他共に「夫婦同然の関係」と認められたものを、内縁関係と呼ぶことが一般的です。そのため、調停や裁判などでは事例ごとに判断がされます。ただし、故人に配偶者がいる場合には、内縁関係と認められるのは難しいでしょう。
なお故人に愛人や内縁関係がいる場合の相続は、以下のようになります。
故人に「愛人」がいた場合
原則として愛人に相続権はなく、故人の財産を相続することはできません。
愛人との子どもについては、故人が認知することで財産の相続が可能です。認知とは、「自分の子どもだと認める」ことをいいます。認知されると実子と同じ扱いになるため、他の子どもと同様の割合を相続することが可能です。
ただし、故人に配偶者がいる場合には、不倫として扱われる可能性があります。配偶者から、慰謝料を請求されることもあるため注意が必要です。
故人に「内縁関係」の方がいた場合
内縁関係の方にも、相続権はありません。子どもがいる場合には、認知されることで相続が可能です。
なお内縁関係と認められると相続権はありませんが、愛人と異なり法的に保護される部分もあります。
ただし、保護される一方で、夫婦としての義務も発生することは理解しておきましょう。
兄弟姉妹における遺産相続トラブルを回避する方法
遺産相続でトラブルが発生すると話し合いもなかなか進まず、場合によっては調停や裁判を行う必要さえ出てきてしまいます。手間や労力だけでなく、状況によっては多額の費用が発生することになるため、トラブルはできる限り回避した方が得策でしょう。
争いを回避するには、事前の対策が重要です。おすすめの対策には、以下のものが挙げられます。
きちんと家族で話し合いをする
遺産相続に関するトラブルを避けるためには、事前にしっかりと家族で話し合うことが大切です。いくら家族とはいえ、兄弟姉妹のことを全て理解できるわけではありません。言葉に出してこそ、伝わる気持ちもあるはずです。お互いのことをきちんと理解できていれば、防げる争いもあるでしょう。
話し合いをするときは、できる限り早い時期から行うことがおすすめです。遺産相続の発生が予想される前後に話し合いを開始しても、「財産が欲しいからやっている」と思われてしまう可能性もあります。相手に誤解されては、話し合いがスムーズに進みません。
相続問題は、多くの方が直面する問題です。将来のことを見据えて兄弟姉妹とは、日ごろからコミュニケーションを取っておきましょう。
財産に関する事項を明確に記録しておく
財産の所在を明確に記録しておくことも、トラブルを避けるために有効です。遺産相続では、財産がきちんと把握できていないとき、争いのきっかけとなることがよくあります。場合によっては、「誰かが使い込んだのではないか」のような、あらぬ誤解を招きかねません。
そういった事態を避けるためには、財産目録の作成が大切です。財産目録とは、相続財産を明記した一覧のことをいいます。財産の量や場所、動きが発生したときの詳細などを明確に記録しておくことで、相続のときに把握がしやすくなります。不明瞭な事柄も少ないため、トラブルになるリスクも抑えられるでしょう。特に財産が多い場合には、早い段階で作成しておくことがおすすめです。
財産の情報は家族で共有する
トラブルを避けるには、故人の財産情報を家族で共有することも重要です。故人の財産に関しては、同居していた家族などが管理しているケースがあります。きちんと報告しておかないと、相続のときに誤解を招くことになりかねません。
きちんと報告していくことで、他の兄弟姉妹も安心でき信用も得られるでしょう。特に高額な商品を購入したときなどは、注意する必要があります。また、通帳を管理している場合には、定期的に内容を共有するのも有効です。
相続のときに誤解を招くことを防ぐためにも、日ごろからできる限り情報の共有に努めましょう。
公平に分配しにくいものはできることなら現金化する
遺産に不動産や美術品などが多い場合は、できることなら生前に、現金化しておくことをおすすめします。不動産や美術品は公平に分けることが難しく、「誰がどれを相続するか」で揉めることも予想されます。
現金であれば公平に分配しやすいため、公平感を保つことができ不満が出ることを抑えられます。
なお現金化を行うときは、計画的に進めることが大切です。不動産や美術品などは、そのときによって値段が変動します。安い時期に売ってしまうと遺産が減ってしまうため、計画的にタイミングを見計らって売買することが必要です。
遺産に不動産などが多い場合は、定期的に価値を調べるなど、生前の早い段階からきちんと計画しておきましょう。
現金化が難しい場合には別の手段を検討する
どうしても現金化が難しい場合には、別の手段を用意しておくことが効果的です。よくあるケースでは、生命保険を活用する方法があります。
生命保険に加入すると、受取人の指定が可能です。相続させたい方を受取人にすることで、財産の相続として用いることができます。すると「長男には土地、次男には生命保険を与える」という形で相続させることが可能です。
遺言書の作成をしておく
遺産相続のトラブルを防ぐには、遺言書の作成もおすすめです。公平な内容を記述することで、兄弟姉妹におけるトラブルを防ぐことができます。
遺言書とは、自分の財産を亡くなった後に誰へ相続させるかを記した書類です。遺産の受け渡し方法や分割方法の指定もできます。遺言書を活用すれば、法定相続人以外の方へ遺産を相続させることも可能です。
また、遺言書は法的な効力をもつ書類となり、相続においては最も優先されます。故人の最終意思を尊重するものであるため、いくら家族といえども内容を勝手に変更することはできません。
相続のときは家族間における価値観の違いなどにより、話し合いがまとまらないことが多くあります。遺言書があれば、相続人は基本的に遺留分の主張しかできないため、調停や裁判に発展するリスクを減らせます。
遺言書の種類
遺言書には3種類があるため、それぞれの特徴を把握しておくことが必要です。
【自筆証書遺言】
被相続人が自分で書き記した遺言書です。自筆で紙に記すだけで良いので、手軽に作成でき費用もあまりかかりません。一方で正しい書き方をしないと、無効になる場合があることがデメリットです。
【公正証書遺言】
公証人と呼ばれる方に作成をしてもらう遺言書です。作成した遺言書の原本は、公証役場で保管されます。専門家が作成に関わるため、無効になりにくいことがメリットです。ただし、作成するのに費用がかかります。
【秘密証書遺言】
遺言書の内容を誰にも知られたくない場合に用いられる遺言書です。他の遺言書と比べると、用いられることはあまりありません。自分で作成した遺言書を公証役場に持ち込んで、管理を依頼します。自筆証書遺言と同じく、書き方によっては無効になる場合があります。
遺言書を作成するときは、「公正証書遺言」がおすすめ
遺言書を作成するときは、公正証書遺言がおすすめです。専門家が作成に関わるため無効になりにくく、トラブルの防止にもつながります。また、検認が不要なこともメリットです。ただし、公正証書遺言の作成には財産に応じた費用が発生します。
遺言書を作成するときの注意点
遺言書は、作成ルールが厳格なことに注意が必要です。特に、自筆証書遺言は、不備があるために無効となることが少なくありません。
特におさえておきたいポイントは、以下のものです。
- 遺言者がその全文を自書する。
- 日付及び氏名を記載する。
- 押印する。
- 加除その他の変更の際も署名と押印が必要。
自筆遺言書を作成するときは、最低でも上記のルールは理解しておきましょう。
トラブルに発展してしまったときの解決方法
遺産相続においては、どれだけ気を付けていてもトラブルに発展することがあります。もしトラブルが発生した場合には、取り組みたい解決方法があります。
もう一度家族で「冷静」に話し合う
まずは、もう一度家族による話し合いを試みましょう。ただし、感情的に話し合いをしても解決はしません。参加する全員が冷静さを意識することが大切です。
話し合いを進めるときには、あらかじめ情報の整理をしておきましょう。財産をきちんと把握し、順序を追って話しを進めることで解決に至る場合があります。視覚で確認できるように、財産目録や通帳などは現物を揃えておくことも効果的です。
どうしても感情的になり話し合いが進まない場合には、弁護士に代理での交渉を依頼することも検討しましょう。相続人以外であれば感情的にならずに済むため、冷静に話し合いを進められるかもしれません。
できる限り公平な分配となるように「遺産分割」を行う
遺産分割では、公平な分割を目指すことがポイントです。
遺産分割には、3つの手法が存在します。
現物分割
現物分割とは、ひとつの財産を分けずにそのまま相続人で分配することです。例えば長男には土地、次男には車、三男には株券を相続させるなどのように、財産をそれぞれに分配します。それぞれの価値を考慮しながら公平な分配を心掛けることで、家族間での不満を減らせる場合があります。
分配する物の価値に差がある場合には、不満が出てしまうので注意が必要です。揉めることがないように、あらかじめ財産の価値を調べておきましょう。
換価分割
換価分割とは、はじめに不動産などの財産を売却し、手にした現金を分割する手法です。
遺産が現金となることで「不動産が1億で売れたから代金を、長男に5,000万円、次男にも5,000万円」のようにわかりやすい割合で分割できます。
代償分割
代償分割は特定の方が財産を相続し、他の相続人に代償となるものを支払う手法です。
例えば、父の遺産である土地5,000万円を長男と次男で代償分割するとします。
長男が土地を相続する場合、代わりとして次男に相続分である2,500万円を支払うことで、公平に遺産の分割が可能です。
代償分割は、分割が困難な財産があるときに有効な手段ですが、代償金を払う相続人は負担が大きくなるため注意が必要です。
不動産などは「共有」を検討する
遺産分割が難しい場合には、ひとまず共有することも検討してみましょう。共有とは、不動産など分割が難しい財産を相続人で共有して相続する方法です。例えば、1つの土地を「長男が2/3、次男が1/3」というように分け合います。
相続を行うときは、10カ月以内に相続税を納付しなければなりません。しかし、話し合いが終結しなければ納付ができず、弊害が起きる場合があります。とりあえず共有を行い、話し合いを終結させることで、期限内に相続税を納付することが可能です。
ただし、共有にはさまざまなデメリットがあります。共有した土地を売却、および変更するときなどには、共有した相続人全員の同意が必要です。反対する相続人がいる場合には、売却や変更をすることができません。
また、いつまでも共有の状態が続くと、次世代への相続時などに権利関係が複雑になってしまいます。共有する人数が増えたり、面識のない方と共有したりすると管理や話し合いも大変です。
相続分を他者へ「譲渡」する
相続人は、自分の相続分を他人へ譲渡できます。相続問題にあまりにも煩わしさを感じたときは、譲渡も有効な手段です。
譲渡とは、自分がもっている相続分を他人に譲り渡すことをいいます。譲渡する相手は、血縁関係のない第三者でも構いません。譲渡を応用すれば財産を受け継がせたい方へ、自分の相続分を相続させることも可能です。また、相続人でなくなるため、面倒な話し合いなどへ参加する必要がありません。
なお譲渡は、負債の支払い義務までは譲ることができません。負債の支払い義務が残るため、債権者から請求があった場合には拒めないので注意が必要です。譲渡を考える際は、負債額を正確に調べた上で慎重に検討しましょう。
どうしても解決が難しい場合には、専門家へ相談を
遺産相続のときは、どれだけ対策を講じていても、兄弟姉妹間での争いが発生してしまうことがあります。当然、解決に向けあらゆる手段を用いて対処されると思いますが、どうしても解決の糸口が見えないときもあるでしょう。
そのようなときは、弁護士などの専門家へ相談することも検討しましょう。費用はかかりますが、プロが専門的な知識をもとにアドバイスしてくれるため、早期解決にも期待できます。弁護士などに依頼すると、以下のようなサポートを受けることが可能です。
- 法的な見解からのアドバイス
- 話し合いの仲介およびサポート
- 遺言書の作成
- 調停、裁判などが発生した場合のサポート など
なお、相続手続きをよりスムーズに進めるためには、信頼できる弁護士に依頼することが大切です。自分の目的やスタイルに適した専門家を探しましょう。
遺産相続のトラブルを避けるには、あらかじめ計画的に準備しておくことが大切
遺産相続は、多くの方にとって避けて通れない問題です。円滑に進めることができれば、自分にプラスへ働きますが、兄弟姉妹などで揉めてしまいトラブルになるケースも多くあります。
円満解決を望むときは、生前の早い時期からしっかりと対策を立て、きちんと準備しておくことが大切です。すると話し合いもまとまりやすくなり、早期解決にも期待できます。
なお「どのように対策すれば良いか分からない」などのように、不安をお持ちの方は弁護士など専門家への相談をおすすめします。あらゆる手段を講じて、遺産相続の円満解決を目指しましょう。


