相続税の申告期限までに株式買取価格が決まらない場合の対応

この記事の位置付け
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相続税の申告の期限が迫っていますが、会社との間で株式の買取りの価格が決まっていません。このまま期限を迎えてしまいますが、どうすればよいのでしょうか。このようなご相談を、当事務所はしばしばお受けしています。
先に結論を申し上げます。株式買取価格が決まらないことは、相続税の申告の期限に影響いたしません。申告は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内にしなければならないものとされています(相続税法第27条第1項)。したがって、まず申告及び納付をどのように行うかを税理士とご相談いただき、これと並行して、株式の換価の手続を進めることになります。法律事務所としてお勧めするのは、価格の協議が調わない見込みとなった段階で、法的な経路に移行して手続を前へ進めておくことです。
第1 申告の期限は延びません
相続税の申告は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内にしなければならないものとされています(相続税法第27条第1項)。会社との交渉が調わないこと、遺産分割が終わっていないことは、この期限に影響いたしません。申告及び納付の具体的な方法につきましては、税理士にご確認ください。当事務所は税務の申告及び相談を行っていません。
第2 法的な経路に移行して手続を進めます
会社は、株主から株式の買取りを求められても、これに応じる義務を負うものではありません。協議が調わない見込みとなった場合には、譲渡制限株式について株式譲渡承認請求を行い、あわせて、会社が承認をしない旨の決定をしたときは会社又は指定買取人が当該株式を買い取ることを請求する旨を明らかにすることを検討いたします(会社法第136条、第138条第1号ハ)。
この場合、会社は承認するか、自ら又は指定買取人により買い取るかのいずれかを選ばなければならなくなります(会社法第140条)。会社が請求の日から2週間以内に決定の内容を通知しなかった場合には、承認をする旨の決定をしたものとみなされます(会社法第145条第1号)。
第3 20日の期間に注意いたします
買取りの通知があった日から20日以内に、裁判所に対して売買価格の決定の申立てをすることができるものとされています(会社法第144条第2項)。この期間は極めて短いです。申告の期限に追われている時期に重なることもありますので、期限の管理を誤らないようご注意ください。
第4 遺産分割による調整を検討いたします
相続人の間で合意が得られるのであれば、遺産分割において、納税資金を要する相続人に預貯金その他の換価が容易な財産を多く配分することが、最も速い解決です。株式の評価をいくらと見るかにより各相続人の取り分が変わりますので、評価についての協議が必要となります。
また、遺産のうち株式についてのみ先行して分割の合意をすることも考えられます。一部分割の可否及び相当性は事案により異なりますが、期限の制約がある場合には検討に値いたします。
第5 被相続人の会社に対する債権を確認いたします
オーナー社長が会社に対して貸付金を有していることは少なくありません。この債権は遺産ですので、相続人はこれを承継し、会社に対して支払を求めることができます。株式の価格が決まらない場合であっても、貸付金の回収により資金を確保し得ることがあります。計算書類の勘定科目及び附属明細書から、その存在を確認し得る場合があります。
第6 やってはならないこと
期限に追われるあまり、会社が提示した金額に十分な検討を経ずに応じることは避けるべきです。いったん売買が成立いたしますと、後にこれを覆すことは容易ではありません。金額に納得できない場合には、法的な経路により価格を争う道が残されています。
また、価格が決まらないことを理由として申告を行わないという対応も避けるべきです。申告の取扱いにつきましては、必ず税理士にご確認ください。
よくあるご質問
質問1 価格が決まらないので申告できません。
相続税の申告の期限は、価格の交渉の状況により延びるものではありません。申告及び納付の方法につきましては、税理士にご確認ください。
質問2 会社の提示額で妥協した方がよいですか。
いったん売買が成立いたしますと、後に覆すことは容易ではありません。計算書類等に基づく検討を経てから判断することをお勧めいたします。
質問3 裁判所に価格を決めてもらうと、いつ現金になりますか。
売買価格の決定の手続には相応の期間を要します。申告の期限に間に合うとは限りません。
質問4 今から何を優先すべきですか。
第1に、税理士と申告及び納付の方法をご相談ください。第2に、株式譲渡承認請求等の法的な経路に移行し、手続を前へ進めてください。第3に、遺産分割による調整及び貸付金の回収を検討してください。
本記事の根拠条文
会社法
- 第136条・第138条第1号(譲渡等の承認の請求)
- 第140条(会社又は指定買取人による買取り)
- 第144条第2項(売買価格の決定の申立て)
- 第145条第1号(承認をしたものとみなされる場合)
相続税法 第27条第1項(相続税の申告書の提出期限)
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