会社への貸付金、会社からの借入金及び個人保証 株式以外の会社に関わる遺産をどう把握し、どう分けるか

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会社への貸付金及び個人保証の承継に関するメインのページです。本ページは、非上場株式の相続において、株式以外に残された会社との間の債権債務をどう把握し、どう分けるかをご説明します。株式そのものの評価は別のページをご参照ください。
父が経営していた会社の株式について、後継者である兄から「株価はほとんどつかない」と説明を受けました。ところが、会社の決算書類を見せてほしいと述べると、「会社の資料だから相続とは関係がない」と断られます。後日、金融機関から「お父様の保証債務についてご相談したい」という連絡が届きます。当事務所には、このようなご相談が寄せられています。
同族会社の経営者の相続において、遺産は株式だけではありません。被相続人と会社との間には、貸付金、借入金、個人保証、会社が使用している被相続人名義の不動産、生命保険、役員退職慰労金といった関係が積み重なっています。これらを把握しないまま株式の評価だけを議論すると、遺産の全体像を誤ったまま分割の話合いを進めることになります。
結論から申し上げます。株式以外の会社に関わる遺産は、決算書類の勘定科目内訳明細書を起点として洗い出し、債権と債務とを分けたうえで、遺産分割の対象となるものと当然に分割されるものとを区別して整理します。以下、項目ごとに順を追ってご説明します。
株式のほかに何が「会社に関わる遺産」となるか
民法第896条は、相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継すると定めています。被相続人の一身に専属したものは除かれますが、会社との間の金銭の貸借及び保証は、これに当たりません。したがって、次に掲げるものは、いずれも相続の対象となります。
- 被相続人が会社に貸していた金銭(会社の決算書類では「役員借入金」「短期借入金」等と表示されます。)
- 被相続人が会社から借りていた金銭(会社の決算書類では「役員貸付金」「短期貸付金」「仮払金」「立替金」等と表示されます。)
- 被相続人が会社の債務について金融機関に対して負っていた保証債務
- 会社が事業のために使用している被相続人名義の土地及び建物
- 被相続人が契約者又は被保険者であった生命保険に関する権利
- 被相続人に対する役員退職慰労金の支給に関する事項
- 被相続人が会社に対して有していた未払の役員報酬
これらは、貸借対照表の一行としては現れず、勘定科目内訳明細書を見て初めて相手方の氏名が判明する場合が多いものです。株式の評価額の議論に入る前に、この一覧を作成していただきます。
被相続人が会社に貸していた場合(会社から見た役員借入金)
原則 可分の金銭債権は相続分に応じて分割されます
被相続人が会社に対して有していた貸付金債権は、金銭の支払を目的とする可分の債権です。民法第899条は、各共同相続人は、その相続分に応じて被相続人の権利義務を承継すると定めており、民法第427条は、数人の債権者がある場合において別段の意思表示がないときは、各債権者はそれぞれ等しい割合で権利を有すると定めています。この規律に従い、実務上、可分の金銭債権は、相続の開始と同時に各共同相続人が相続分に応じて分割して承継するものとして取り扱われています。
この扱いには、二つの実際上の意味があります。第一に、遺産分割の協議を待たずに、各相続人が自らの相続分に相当する額を会社に対して請求することができます。第二に、遺産分割の対象財産の一覧からは外れますので、何もしなければ、株式や不動産の分け方を決める際の調整の材料になりません。
例外 共同相続人の全員の合意により遺産分割の対象とすることができます
民法第907条第1項は、共同相続人は、いつでも、その協議で、遺産の全部又は一部の分割をすることができると定めています。共同相続人の全員が合意すれば、当然に分割される債権であっても、遺産分割の対象に含めて調整することができます。
後継者に株式を集中させ、非後継者に貸付金債権を割り当てるという解決は、この合意を前提として成り立ちます。逆に、合意がないまま「貸付金は当然に分割されるから協議の対象にしない」と述べられた場合、非後継者は、自らの相続分に相当する額を会社に請求するほかありません。会社に返済の資力がない場合には、この差が大きな不公平として現れます。
証拠 勘定科目内訳明細書の借入金の欄
会社の法人税の申告書に添付される勘定科目内訳明細書には、「借入金及び支払利子の内訳書」があり、借入先の氏名、期末現在高、利率及び返済方法が記載されています。被相続人の氏名がここに現れていれば、貸付金債権の存在の有力な証拠となります。あわせて、金銭消費貸借契約書、取締役会の議事録、振込みの記録を確認します。
後継者が「その借入金は既に返済した」と述べる場合には、返済の事実を示す資料の提出を求めます。また、後継者が「回収できないから価値は0円である」と述べる場合には、会社の直近の決算書類により返済の資力を検討します。債権の額と、その債権の実際の価値とは、別の事柄です。額は決算書類により確定し、価値は会社の財務の状態により評価します。この二つを混同した説明には、資料により反論します。
被相続人が会社から借りていた場合(会社から見た役員貸付金・仮払金)
確認事項 債務の存否と、その内容
被相続人が会社から借り入れていた場合、その債務は相続人が承継します。貸付金の場合と同じく、可分の金銭債務は相続分に応じて分割して承継されるものとして取り扱われます。会社から相続人に対して返済を求める通知が届いた場合には、まず、その債務が現に存在するかどうかを確認します。
同族会社では、被相続人が会社の資金を私的に用いた分を「仮払金」「立替金」として計上し、長年にわたり整理しないまま残している例が少なくありません。この場合、その性質が貸付けであるのか、実質的には役員報酬であるのか、あるいは既に精算済みであるのかを検討する必要があります。会計上の表示のみをもって債務の存在が確定するものではありません。
手続 会社からの請求への対応
会社から返済を求められた場合の対応は、次の順序で行います。第一に、債務の発生の原因を示す資料(取締役会の議事録、金銭消費貸借契約書、稟議書、振込みの記録)の提出を求めます。第二に、最後の返済又は債務の承認から何年が経過しているかを確認します。第三に、他の相続人に対しても同様の請求がされているかどうかを確認します。後継者が代表取締役を務める会社が、非後継者に対してのみ返済を求めるという運用は、遺産分割の交渉における圧力として用いられることがあります。
債務の額が大きく、遺産の全体が債務超過となる可能性がある場合には、相続の放棄又は限定承認を検討します。この判断は、後記の3箇月の期間の中で行わなければなりません。
個人保証はどう承継されるか
原則 保証債務も相続の対象となります
民法第896条により、被相続人が負っていた保証債務も相続の対象となります。金銭の支払を目的とする可分の債務ですので、各相続人が法定相続分に応じて分割して承継するものとして取り扱われます。後継者が「保証は自分が引き継ぐから他の相続人には関係がない」と述べても、それは相続人の間の内部の取決めにすぎず、金融機関に対しては効力を持ちません。金融機関の同意による免責的な債務の引受けの手続を経て初めて、他の相続人が責任を免れます。
根保証の場合 元本の確定
経営者の保証は、一定の範囲に属する不特定の債務を保証する根保証の形で締結されていることが多くあります。民法第465条の4第1項第3号は、主たる債務者又は保証人が死亡したときは、個人根保証契約における主たる債務の元本が確定すると定めています。したがって、被相続人の死亡後に会社が新たに借り入れた債務については、相続人は保証の責任を負いません。相続人が承継するのは、死亡の時点で確定した元本の範囲にとどまります。金融機関から示された保証債務の残高が、死亡後の新規の借入れを含んでいないかを確認します。
手続 経営者保証に関するガイドラインによる申入れ
日本商工会議所及び一般社団法人全国銀行協会が策定した「経営者保証に関するガイドライン」は、経営者の保証に依存しない融資の在り方を示すものです。あわせて、事業承継の場面に焦点を当てた特則が公表されており、前の経営者と後継者との双方から二重に保証を求めることを原則としない旨等が示されています。
これらは法令ではなく自主的な準則ですので、当然に保証が外れるものではありません。もっとも、会社の財務の状況、法人と個人との資産の分離の状況、財務情報の開示の状況が要件を満たす場合には、金融機関との交渉により、相続人の保証を求めない取扱いを引き出せる場合があります。申入れの時期は、相続の開始の直後です。時間が経過し、相続人が保証人としての地位を前提とした対応を続けた後では、交渉の余地が狭まります。
なお、保証を外す交渉そのものについては、当法人のM&A法務を扱うサイトが詳しく取り上げています。本記事では、遺産の範囲及び分割の設計に必要な限度でご説明しています。
会社が使用している被相続人名義の資産
確認事項 登記と実際の利用の状況
同族会社では、工場、事務所、駐車場等の敷地が被相続人の個人名義であり、会社がこれを使用しているという状態が広く見られます。まず、登記事項証明書により名義を確認し、次に、会社と被相続人との間に賃貸借契約書があるかどうかを確認します。会社の決算書類の「地代家賃」の欄に被相続人への支払が計上されていれば、賃貸借であることの手掛かりとなります。
例外 使用貸借である場合
賃料の支払がない場合には、使用貸借と評価されます。民法第597条第3項は、使用貸借は、借主の死亡によって終了すると定めていますが、本件で死亡したのは貸主である被相続人ですので、この規定によって当然に終了するものではありません。相続人が貸主の地位を承継し、会社が引き続き無償で使用する状態が続きます。
この不動産は遺産分割の対象となりますが、会社の事業の基盤でもありますので、後継者に取得させたうえで、他の相続人に代償金を支払うという解決が採られることが多くあります。他方、非後継者が取得した場合には、会社との間で賃貸借に切り替える交渉を行うことになります。会社の事業の継続と、相続人の間の公平とを、同時に満たす設計が必要となる場面です。
なお、不動産の共有関係の解消そのものについては、当法人の不動産相続を扱うサイトが代表して取り上げています。本記事では、遺産の範囲の把握に必要な限度でご説明しています。
生命保険金及び役員退職慰労金は遺産に含まれるか
原則 受取人固有の権利です
生命保険金は、保険契約により受取人として指定された者が、自らの固有の権利として取得するものです。したがって、原則として遺産分割の対象となりません。役員退職慰労金についても、会社の規程により受給権者の範囲及び順位が定められている場合には、その者の固有の権利として取得するものと扱われます。
他方、税務の取扱いは異なります。相続税法第3条第1項第1号は、被相続人の死亡により保険金を取得した場合について、被相続人が負担した保険料に対応する部分を相続又は遺贈により取得したものとみなすと定めています。同項第2号は、被相続人に支給されるべきであった退職手当金、功労金その他これらに準ずる給与で被相続人の死亡後3年以内に支給が確定したものについて、同様にみなすと定めています。民事上は遺産ではないが、相続税の課税の上では遺産とみなされるという二重の構造がありますので、混同しないよう分けて整理します。
なお、相続税法第12条第1項第6号及び第7号は、生命保険金及び退職手当金等について、それぞれ500万円に法定相続人の数を乗じた金額を非課税限度額とする旨を定めています。
例外 特別受益に準じて調整が問題となる場合
受取人固有の権利であるとしても、その額が遺産の総額に比べて著しく大きく、相続人の間の公平を著しく害すると評価される場合には、特別受益に準じた持戻しの対象とすべきかが争点となることがあります。後継者のみが多額の保険金を受け取り、非後継者が評価額の定まらない株式のみを取得するという構図では、この論点が正面から問題となります。
役員退職慰労金の請求そのものについて
会社が役員退職慰労金を支給しない場合、その請求そのものについては、当法人の役員退職慰労金を扱うサイトが代表して取り上げています。本記事では、遺産の範囲及び評価に必要な限度でご説明しています。もっとも、役員退職慰労金の支給は、後継者が株式を買い取るための資金の作り方としても、また相続税の納税資金の手当てとしても用いられますので、遺産分割の設計の段階で必ず検討していただきます。
資料をどう入手するか
手続 会社法第442条及び第433条による請求
会社に関わる遺産の把握には、会社の決算書類が不可欠です。会社法第442条第3項は、株主及び債権者は、会社の営業時間内はいつでも、計算書類等の閲覧の請求、その謄本又は抄本の交付の請求等をすることができると定めています。この請求は、株主でなくとも、債権者であれば行うことができます。被相続人が会社に対して貸付金債権を有していた場合、その相続人は債権者として請求をすることができます。
より詳細な資料が必要な場合には、会社法第433条第1項による会計帳簿の閲覧謄写の請求を検討します。この請求には、総株主の議決権の100分の3以上又は発行済株式の100分の3以上を有することという要件があり、請求の理由を明らかにする必要があります。同条第2項は、会社が請求を拒むことができる場合を限定的に列挙していますので、拒絶の理由がこれらに当たるかを検討します。
確認事項 名義書換の完了と保有の要件
株主としての請求を行うためには、株主名簿の名義書換が必要です。遺産分割が終わっていない段階では、会社法第106条により、権利を行使する者一人を定めて会社に通知することが求められます。名義書換及び権利行使者の指定の手続については、名義書換未了の相続人が株主であることを会社に認めさせる方法をご覧ください。
あわせて、次の資料を入手します。法人税の申告書及びその添付書類(別表二により株主の構成が分かります。)、勘定科目内訳明細書、固定資産台帳、金融機関との保証契約書及び保証債務の残高証明書、生命保険の証券及び支払の通知、役員退職慰労金規程並びに支給に関する株主総会の議事録です。会社の側が開示しない場合の手段は、会社が決算書類を見せてくれない場合に相続人が採り得る手段及び計算書類の閲覧謄写の請求と会計帳簿の閲覧謄写の請求の違いに整理しています。
相続の放棄を選ぶ場合の判断と3箇月の期間
確認事項 3箇月の期間の起算点
民法第915条第1項は、相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならないと定めています。同項ただし書は、この期間を、利害関係人又は検察官の請求によって家庭裁判所において伸長することができると定めています。
同族会社の相続では、保証債務の全体像が3箇月のうちに判明しないことが少なくありません。資料が揃わない場合には、期間の伸長の申立てを行うことを強くお勧めします。申立ては、期間が満了する前に行う必要があります。
手続 単純承認、限定承認及び相続の放棄
民法第920条は、相続人は、単純承認をしたときは、無限に被相続人の権利義務を承継すると定めています。民法第922条が定める限定承認は、相続によって得た財産の限度においてのみ債務等を弁済すべきことを留保して承認する制度です。もっとも、民法第923条は、相続人が数人あるときは、限定承認は共同相続人の全員が共同してのみすることができると定めていますので、一部の相続人が反対する場合には選択できません。民法第924条は、限定承認をしようとするときは、民法第915条第1項の期間内に、相続財産の目録を作成して家庭裁判所に提出し、その旨を申述しなければならないと定めています。
相続の放棄は、民法第938条により、家庭裁判所に申述して行います。ただし、放棄をすれば、株式も、貸付金債権も、不動産も、一切を取得しないことになります。会社の債務の額と、株式及び貸付金の価値とを比較したうえで判断していただく必要があります。詳しくは、非上場株式の相続を放棄する方法と相続する場合の不利益及び放棄の流れをご覧ください。
注意 処分をすると単純承認とみなされます
民法第921条第1号は、相続人が相続財産の全部又は一部を処分したときは、単純承認をしたものとみなすと定めています。会社の預金から支払を受けること、被相続人名義の不動産について長期の賃貸借契約を締結すること、株主総会において議決権を行使することが、これに当たると評価される可能性があります。なお、同号ただし書は、保存行為及び民法第602条に定める期間を超えない賃貸をすることを除いています。放棄又は限定承認を検討している間は、遺産の処分に当たり得る行為を避けていただきます。
よくある誤解と、避けていただきたい対応
誤解1 会社の資料は相続と関係がない
被相続人と会社との間の債権債務は、遺産そのものです。会社の資料を確認することなく遺産の範囲を確定することはできません。会社法第442条第3項による計算書類等の閲覧の請求は、債権者としても行うことができます。
誤解2 貸付金は回収できないから価値は0円である
債権の額と、その債権の実際の価値とは別の事柄です。会社が継続して事業を営み、毎期利益を計上している場合には、返済の資力があると評価されます。0円であるという説明を受けた場合には、直近3期分の決算書類の提出を求めます。
誤解3 保証は後継者が引き継ぐから他の相続人には関係がない
相続人の間の取決めは、金融機関に対しては効力を持ちません。金融機関の同意を得た免責的な債務の引受けの手続を経る必要があります。手続が完了するまでは、他の相続人も法定相続分に応じた責任を負う立場にあります。
避けていただきたい対応
第一に、3箇月の期間が経過した後に保証債務の存在を知ることです。金融機関への照会は、相続の開始の直後に行っていただきます。
第二に、遺産の一覧を作らないまま分割の協議に入ることです。株式の評価額のみが議論の対象となり、貸付金及び保証が視野から外れます。
第三に、会社の預金から葬儀費用等を支払うことです。会社の資金と個人の資金とを混同した処理は、後に説明の負担を生じさせます。
弁護士に任せられる範囲と、ご相談いただく時期
当事務所がご依頼をお受けする範囲は、遺産の一覧の作成、会社に対する計算書類等の閲覧の請求及び会計帳簿の閲覧謄写の請求、金融機関に対する保証債務の照会及び経営者保証に関するガイドラインに基づく申入れ、相続の放棄又は限定承認の要否の検討及び期間の伸長の申立て、遺産分割の協議及び調停における主張の組立て、並びに代償金の設計までを含みます。
ご相談いただく時期として最も望ましいのは、相続の開始の直後です。3箇月の期間の中で判断すべき事項が含まれるためです。既に3箇月が経過している場合であっても、遺産の範囲の確定と分割の設計は引き続き可能ですので、その時点でご相談ください。
いま確認していただきたいこと
- 会社の直近3期分の決算書類及び勘定科目内訳明細書を入手できているか
- 勘定科目内訳明細書に被相続人の氏名が現れる欄はどこか
- 金融機関に対する保証債務の残高証明を取得したか
- 被相続人名義の不動産を会社が使用しているか、賃料の支払があるか
- 生命保険の受取人は誰か、役員退職慰労金規程はあるか
- 相続の開始を知った日から3箇月及び10箇月の期限はいつか
よくあるご質問
会社への貸付金は、遺産分割の協議で分けることができますか
可分の金銭債権は、原則として相続の開始と同時に相続分に応じて分割されます。ただし、民法第907条第1項により、共同相続人の全員が合意すれば遺産分割の対象に含めることができます。後継者に株式を集中させる設計を採る場合には、この合意を先に取り付けることが有益です。
後継者が決算書類を見せてくれません
被相続人が会社に貸付金を有していた場合には、債権者として会社法第442条第3項による計算書類等の閲覧の請求ができます。株主としての地位に基づく場合には、名義書換又は権利行使者の指定が必要となります。会社が応じない場合には、裁判所の手続により求めます。
金融機関から保証債務の返済を求められました。相続の放棄をするほかありませんか
まず、民法第465条の4第1項第3号により死亡の時点で元本が確定していますので、その後の借入れは対象外です。次に、会社が現に返済を続けている場合には、直ちに相続人へ請求される場面は限られます。経営者保証に関するガイドラインに基づく申入れの余地もあります。放棄は、株式及び貸付金を含む一切を取得しない選択ですので、比較のうえで判断していただきます。
生命保険金を受け取った兄が、これは遺産ではないと述べています
民事上は受取人固有の権利ですので、その説明は原則として正しいものです。ただし、その額が遺産の総額に比して著しく大きい場合には、特別受益に準じた調整が争点となり得ます。また、相続税の課税の上では、相続税法第3条第1項第1号によりみなし相続財産として扱われます。
役員退職慰労金を会社が支給しません
役員退職慰労金の支給は、定款又は株主総会の決議によって定められます。規程がある場合には、その内容に従った支給を求めます。請求そのものの進め方は、当法人の役員退職慰労金を扱うサイトが代表して取り上げています。遺産分割との関係では、納税資金及び代償金の原資としての位置付けを検討します。
3箇月の期間が過ぎてしまいました
単純承認をしたものとして扱われるのが原則です。もっとも、債務の存在を知り得なかった事情がある場合には、放棄の申述が受理される余地があります。事情を裏付ける資料とともに、速やかにご相談ください。
まとめ
同族会社の経営者の相続では、株式のほかに、会社への貸付金、会社からの借入金、個人保証、会社が使用する被相続人名義の資産、生命保険金及び役員退職慰労金という項目が遺産の全体を構成します。これらは、勘定科目内訳明細書、保証契約書、登記事項証明書、保険の証券という資料により一つずつ確認します。
整理の要点は、二つの区別にあります。第一に、可分の金銭債権及び債務は相続分に応じて当然に分割されるのが原則であり、遺産分割の対象とするには共同相続人の全員の合意を要するという区別です。第二に、民事上の遺産の範囲と、相続税の課税の上でのみなし相続財産の範囲とは一致しないという区別です。この二つを混同すると、分割の案そのものが成り立ちません。
期限は、民法第915条第1項の3箇月と、相続税法第27条第1項の10箇月とが同時に進行します。資料が揃わない場合には、期間の伸長の申立てを行います。
本記事の記載は一般的な説明であり、個別の事案における結論を保証するものではありません。会社の財務の状況、保証契約の内容、他の相続人の対応によって、採り得る手段は変わります。
必ず解決できますから、一緒に頑張りましょう。
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出典
- 民法(明治29年法律第89号)第427条、第465条の4、第597条第3項、第896条、第898条、第899条、第907条第1項、第915条、第920条、第921条、第922条、第923条、第924条、第938条
- 会社法(平成17年法律第86号)第106条、第433条、第442条
- 相続税法(昭和25年法律第73号)第3条第1項、第12条第1項、第27条第1項
- 経営者保証に関するガイドライン(経営者保証に関するガイドライン研究会。日本商工会議所及び一般社団法人全国銀行協会が事務局を務めます。)並びに事業承継時に焦点を当てた「経営者保証に関するガイドライン」の特則
- e-Gov法令検索(デジタル庁) 法令の条文の確認に用いています。
具体的なご相談をお考えの皆様へ
本ページの主題に関し、当事務所の取扱内容、対応の進め方及び費用の考え方は、次のご案内のページに整理しています。あわせてご覧ください。
