事業承継税制の全貌とは?特例措置の要件・手続と猶予が打ち切られる場合

▶ 事業承継税制の仕組みと相続税及び贈与税の負担を軽減する条件
事業承継税制の基礎知識
事業承継税制は、後継者が、先代の経営者から贈与又は相続により取得した非上場会社の株式等について、一定の要件の下で、贈与税又は相続税の納税を猶予し、後継者の死亡等の一定の事由が生じたときに猶予された税額を免除する制度です(租税特別措置法第70条の7から第70条の7の8まで)。事業を承継する際の税負担を理由に、事業の継続が難しくなることを避けるために設けられています。本ページでは、事業承継税制の仕組み、主な要件、手続、適用を受けた後に気を付けることをご説明します。
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一般措置と特例措置
事業承継税制には、恒久的な制度である「一般措置」と、期間を限って要件を緩和した「特例措置」があります。特例措置では、対象となる株式の数に上限がなく、相続税・贈与税の全額が納税猶予の対象となり、最大3人の後継者が適用を受けることができます。一般措置では、対象は発行済議決権株式等の3分の2までで、相続税の納税猶予は80%にとどまり、後継者は1人に限られます。
特例措置の適用を受けるためには、あらかじめ「特例承継計画」を都道府県知事に提出して確認を受ける必要があります。令和8年度の税制改正により、特例承継計画の提出期限は令和9年9月30日まで延長されました。特例措置の対象となるのは、令和9年12月31日までに行われる贈与又は相続等です。具体的な税額や取扱い(税制改正の内容と施行の状況を含みます)は、税理士にご確認ください。
主な要件
会社については、中小企業者であること、上場会社でないこと、常時使用する従業員が1人以上いること、資産管理会社(一定の要件を満たすものを除きます)や風俗営業会社に当たらないことなどが求められます。
先代の経営者については、会社の代表者であったこと、贈与又は相続の直前において、同族関係者と合わせて議決権の過半数を有し、かつ、同族関係者の中で筆頭株主であったことなどが求められます。
後継者については、贈与の場合には、贈与の時に18歳以上であり、3年以上継続して役員であること、贈与の時に代表者であること、同族関係者と合わせて議決権の過半数を有し、かつ、同族関係者の中で筆頭株主であることなどが求められます。相続の場合には、相続開始の直前に役員であり、相続開始の日の翌日から5か月を経過する日において代表者であることなどが求められます。後継者は、親族に限られません。
手続の流れ
特例措置を利用する場合の手続は、おおむね次のとおりです。
- 認定経営革新等支援機関の指導及び助言を受けて特例承継計画を作成し、都道府県知事に提出して確認を受ける。
- 贈与又は相続により株式等を取得する。
- 贈与又は相続の後、所定の期限までに都道府県知事に認定を申請し、認定を受ける。
- 贈与税又は相続税の申告期限までに、納税猶予の適用を受ける旨を記載した申告書を提出し、猶予される税額及び利子税に見合う担保を提供する。
- 申告期限後5年間は毎年、その後は3年ごとに、継続届出書を税務署に提出する(当初の5年間は、都道府県知事への年次報告も必要です)。
要件の確認や書類の作成には時間を要しますので、早めに税理士等の専門家にご相談ください。
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事業承継税制の適用を受けた後に気を付けること
納税猶予が打ち切られる主な場合
事業承継税制は、税額を免除するのではなく、まず納税を猶予する制度です。次のような事由が生じた場合には、猶予が打ち切られ、猶予されていた税額の全部又は一部と利子税を納付しなければならなくなることがあります。
- 申告期限後5年以内に、後継者が代表者でなくなった場合(やむを得ない理由がある場合を除きます)
- 後継者が、猶予の対象となった株式等を譲渡した場合
- 会社が解散した場合や、資産管理会社に当たることになった場合
- 継続届出書を提出しなかった場合
特例措置では、一般措置で求められる雇用の確保の要件(5年間の平均で従業員数の8割を維持すること)を満たさない場合でも、その理由を記載した報告書を都道府県知事に提出して確認を受けることにより、猶予を継続することができます。
猶予された税額が免除される主な場合
後継者が死亡した場合や、後継者が次の後継者に株式等を贈与して、その次の後継者が事業承継税制の適用を受ける場合などには、猶予されていた税額が免除されます。また、特例措置では、事業の継続が困難な一定の事由が生じて会社を譲渡し、解散する場合などに、その時点の株式の価額に基づいて税額を計算し直し、差額を免除する仕組みもあります。
株式を手放しにくくなることに注意
事業承継税制の適用を受けると、後継者が株式を譲渡すると原則として猶予が打ち切られるため、将来の第三者への売却(M&A)や、他の株主との間の株式の整理に制約が生じます。制度を利用するかどうかは、税負担の軽減だけでなく、会社の将来の方針も踏まえて判断する必要があります。
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事業承継税制を検討する際のポイント
他の相続人の遺留分への配慮
後継者に株式を集中させると、他の相続人の遺留分を侵害し、遺留分侵害額の請求を受けることがあります(民法第1046条)。中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律は、推定相続人全員の合意により、後継者が贈与を受けた株式を遺留分を算定するための財産の価額に算入しないこととする合意(除外合意)や、その価額を合意の時の価額に固定する合意(固定合意)を定めています。事業承継税制と併せて検討することが考えられます。
会社法上の手当て
後継者の経営権を安定させるために、種類株式(議決権制限株式、拒否権付株式等)の活用や、相続人等に対する株式の売渡しの請求に関する定款の定め(会社法第174条)の要否も検討します。事業承継税制の要件に影響する場合もありますので、制度の要件と会社法上の手当てを一体として設計することが大切です。
専門家との連携
事業承継税制は、税理士が中心となって手続を進めますが、株式の集中、遺留分、他の株主との調整など、法律上の問題も生じます。税理士と弁護士が連携して検討することで、後の紛争を防ぐことにつながります。
事業承継に向けて、親族や従業員に分散した自社株式を後継者に集約する進め方は、次のページでご案内しています。
まとめ
事業承継税制は、非上場会社の株式等の承継に伴う贈与税・相続税の負担を猶予し、一定の場合に免除する制度です。特例措置は、特例承継計画を令和9年9月30日までに提出し、令和9年12月31日までに贈与又は相続等を行う場合に限って利用することができます。適用を受けた後も、代表者の地位や株式の保有を続ける必要があるなど、守るべき要件があります。税理士と弁護士に早めに相談し、会社の将来の方針も踏まえて検討してください。
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この記事の位置付け
報道された事例からみる事業承継税制に関するメインのページです。本ページは、事業承継において納税の猶予がどのように用いられたかを具体の例からご説明します。制度の要件は別のページをご参照ください。
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