借用名義株の遺産帰属の立証と株式の取得時効―東京高等裁判所平成24年2月8日判決

亡くなった親が、自分の名義ではなく、役員や従業員、知人などの名義を借りて会社の株式を持っていたと考えられる場合に、その株式が遺産に当たるかが争われた判例です。企業グループの創業者の子や孫である相続人4名は、創業者の死亡から約40年後に、創業者の三男の名義になっていたグループの中核会社の株式について、創業者の未分割の遺産であるとして、相続分に応じた持分の確認を求めました。
第一審の東京地方裁判所平成21年3月30日判決は、創業者が他人名義の株式(判決は「借用名義株」と呼んでいます)を持っていたことを認めながら、株式も民法163条の「所有権以外の財産権」として取得時効の対象になるとして、三男名義の株式の大部分について三男の時効取得を認め、ごく一部の株式についてだけ持分を確認しました。これに対し、控訴審の東京高等裁判所平成24年2月8日判決は、第一審判決を取り消し、過去の時点の持分の確認を求める主位的請求を確認の利益がないとして却下し、株式移転後の株式の持分の確認を求める予備的請求を棄却しました。控訴審は、他人名義の株式が創業者個人の資金で創業者個人の財産として取得されたことが証明されていないとし、取得時効については判断を示していません。
本記事では、2つの判決の判断を審級ごとに整理し、名義株が遺産に属すると主張する相続人が何を立証しなければならないか、何十年も前の遺産分割協議を後から争うことができるか、株式の取得時効がどのように考えられたかを、判決本文に沿って解説します。
裁判例の基本情報
| 裁判所 | 東京高等裁判所第1民事部 |
|---|---|
| 裁判日 | 平成24年2月8日 |
| 事件番号 | 平成21年(ネ)第2596号 |
| 裁判の形式 | 判決 |
| 事件の種類 | 株式の持分の確認を求める訴えの控訴事件(原告ら・被告の双方が控訴) |
| 審級 | 控訴審(第一審は東京地方裁判所) |
| 結論 | 原判決を取り消す。原告らの主位的請求に係る訴えを却下し、予備的請求を棄却する。訴訟費用は第1審・第2審を通じて原告らの負担 |
| 上訴の状況 | 判決本文からは、上告等の有無及び確定は確認できていません |
この表は、判決本文の冒頭及び主文の記載に基づいて当事務所が作成したものです。
審級ごとの裁判
| 審級 | 裁判所・裁判日・事件番号 | 裁判の形式 | 結論 |
|---|---|---|---|
| 第一審 | 東京地方裁判所民事第13部、平成21年3月30日、平成17年(ワ)第19332号 | 判決 | 三男名義の株式757株のうち14株及び1株について原告らの持分を確認し、その余の請求を棄却。訴訟費用は50分の1を被告、その余を原告らの負担 |
| 控訴審 | 東京高等裁判所第1民事部、平成24年2月8日、平成21年(ネ)第2596号 | 判決 | 原判決を取り消し、主位的請求に係る訴えを却下、当審で追加された予備的請求を棄却。訴訟費用は第1審・第2審を通じて原告らの負担 |
2つの判決の本文をいずれも確認したうえで、1本の記事にまとめて解説しています。
当事者の表記
判決に出てくる会社名・氏名は、本記事独自のイニシャルに置き換えています。第一審判決と控訴審判決は、それぞれ異なる仮名や符号で当事者を表示していますが、本記事では両判決を通じて次の表記にそろえています。判決本文を引用する部分でも同じ表記に置き換え、置き換えた箇所を〔 〕で示しています。
| 本記事の表記 | 立場 |
|---|---|
| 創業者である被相続人GNS氏 | 企業グループMSRの創業者。昭和39年に死亡しました。その相続が本件の出発点です |
| 三男VCT氏 | 被相続人の子(非嫡出子)。第一審の被告、控訴審の被控訴人兼控訴人。被相続人の死後、中核会社RVNの代表者の立場にあり、本件で問題となった株式の名義人です |
| 五男NKO氏 | 被相続人の子(非嫡出子)。原告の一人 |
| 二男PLM氏 | 被相続人の子。原告の一人。かつて被相続人が後継者と定めた書面がありましたが、後継者となることを拒絶しました |
| 孫JWL氏 | 二女QRN氏の子。母の相続分の2分の1を承継した原告の一人 |
| 孫MXT氏 | 長女SYK氏の子。母の相続分の2分の1を承継した原告の一人 |
| 妻MRK氏 | 被相続人の妻。昭和59年に死亡 |
| 長女SYK氏 | 被相続人の子。平成15年に死亡 |
| 長男KBT氏 | 被相続人の子。訴訟の当事者ではありません |
| 二女QRN氏 | 被相続人の子。平成9年に死亡 |
| 四男HRZ氏 | 被相続人の子(非嫡出子)。訴訟の当事者ではなく、証人として証言しました |
| 中核会社RVN | 鉄道会社やホテル会社を中心とする企業グループMSRの中核をなす株式会社。本件で帰属が争われた株式の発行会社です。平成18年にホテル会社HPLに吸収合併されて消滅しました |
| 企業グループMSR | グループの鉄道会社TRL及びホテル会社HPLを中心とする企業集団 |
| ホテル会社HPL | 企業グループMSRのホテル事業会社。中核会社RVNを吸収合併しました |
| 株式移転設立会社QTB | 中核会社RVNの株式移転により平成17年11月に設立された会社。三男VCT氏名義の株式は、この会社の株式757株に置き換わりました |
| 純粋持株会社LMH | 組織再編により設立された、企業グループMSRを統括する純粋持株会社 |
| 学校法人EDS | 被相続人と中核会社RVNの寄附により設立された学校法人。昭和39年の遺産分割協議で、被相続人名義の株式の寄附を受けました |
| グループ会社WTN | 学校法人EDSから株式20万株を譲り受け、それを三男VCT氏に譲り渡した会社 |
| 名義人の会CLB | 第一審判決の認定によれば、被相続人の死後、株式の名義人となった役員・従業員で構成された団体 |
| 代理人KZR氏 | 中核会社RVNの取締役経理部長。遺産分割協議で五男NKO氏の代理人とされた人物 |
| 側近LXE氏 | 被相続人の側近で、中核会社RVNの監査役を長く務めた人物。遺産分割協議で二女QRN氏の代理人とされました |
| メモ作成者DFG氏 | グループの百貨店会社の取締役。被相続人の死亡後間もなく、名義株の処理に関する手書きのメモを作成したとされる人物 |
本記事では、原告である相続人4名(五男NKO氏、二男PLM氏、孫JWL氏、孫MXT氏)をまとめて「原告ら」と呼びます。上記のほかにも、判決には多数の役員・従業員、証券会社、法律事務所などの名称が出てきますが、本記事では個別のイニシャルを付けず、役割だけで記載しています。
事案の概要―創業者の死亡から約40年後に争われた「借用名義株」
相続人と相続分
創業者である被相続人GNS氏は、昭和39年に死亡しました。相続人は、妻MRK氏と子7名(長女SYK氏、長男KBT氏、二男PLM氏、二女QRN氏、三男VCT氏、四男HRZ氏、五男NKO氏)の8名です。このうち三男VCT氏、四男HRZ氏及び五男NKO氏は非嫡出子でした。
法定相続分は、当事者間に争いがなく、妻MRK氏が3分の1、長女SYK氏・長男KBT氏・二男PLM氏・二女QRN氏が各33分の4、三男VCT氏・四男HRZ氏・五男NKO氏が各33分の2とされています。その後の相続により、原告らの相続分は次のとおりとなりました(控訴審判決の前提事実による)。
| 原告 | 相続分 | 経緯 |
|---|---|---|
| 五男NKO氏 | 33分の2 | 被相続人の子としての相続分 |
| 二男PLM氏 | 66分の19 | 自らの相続分33分の4に、昭和59年に死亡した妻MRK氏の相続分3分の1の2分の1を加えたもの |
| 孫JWL氏 | 132分の19 | 平成9年に死亡した二女QRN氏の相続分66分の19の2分の1 |
| 孫MXT氏 | 33分の2 | 平成15年に死亡した長女SYK氏の相続分33分の4の2分の1 |
非嫡出子の相続分を嫡出子の2分の1とする当時の民法900条4号ただし書の規定は、平成25年の最高裁判所大法廷決定を受けて同年に改正され、現在は削除されています(当事務所の注記です)。本件の相続分は、昭和39年の相続開始当時の規定を前提としたものです。
中核会社RVNの株式と「借用名義株」
中核会社RVNは、鉄道会社TRLやホテル会社HPLを中心とする企業グループMSRの中核をなす会社です。被相続人の死亡時の発行済株式総数は149万9,400株で、そのうち被相続人の名義の株式(判決は「遺産株」と呼んでいます)は23万8,518株、発行済株式総数の約15.9%にとどまっていました。
原告らは、被相続人は、遺産株のほかに、グループの役員・社員、関係会社、知人、取引先、さらには実在しない架空人の名義を借りて中核会社RVNの株式を実質的に所有しており、遺産株と合わせると発行済株式総数の約96%に達していたと主張しました。このように他人名義で保有されていたとされる株式を、判決は「借用名義株」と呼んでいます。
三男VCT氏名義の75万7,000株の内訳
被相続人の死後、三男VCT氏の名義の中核会社RVNの株式は75万7,000株となり、平成16年7月に1,000株を1株とする株式併合が行われて757株(発行済株式総数は2,099株)となりました。控訴審判決は、この75万7,000株を来歴によって次の3つに区分しています。
| 区分 | 株式数 | 来歴 |
|---|---|---|
| 第三者名義株 | 30万5,931株 | 三男VCT氏がグループ会社WTN以外の株式名義人から譲り受けたとされる株式 |
| 遺産株のうち20万株 | 20万株 | 被相続人名義だった株式で、昭和39年の遺産分割協議に基づいて学校法人EDSに寄附され、学校法人EDSからグループ会社WTNに譲渡され、グループ会社WTNから三男VCT氏に譲り渡されたとされる株式 |
| 増資株 | 25万1,069株 | 昭和48年12月27日の増資に応じて株式名義人が引き受けた株式 |
3つの区分の合計は75万7,000株になります(当事務所の計算です)。原告らは、第三者名義株は被相続人の借用名義株であり、遺産株は遺産分割協議が無効であるため未分割の遺産であり、増資株は払込みの実態がなく、もとの株式の性質を引き継ぐので、いずれも被相続人の未分割の遺産に属すると主張しました。
昭和39年の遺産分割協議
被相続人の相続については、昭和39年10月7日付けの遺産分割協議書が作成されていました。控訴審判決の認定によれば、その内容は次のとおりです。
- 郷里の土地建物及び他の鉄道会社の株式148株は、三男VCT氏が相続する。
- 関連会社からの退職弔慰金2億円は、各相続人が法定相続分に応じて相続する。
- 書画骨とう品、生命保険金、現金及び預金は、各相続人が法定相続分に応じて相続する。
- 所得税等の未納税金は、各相続人が法定相続分に応じて承継する。
- 遺産株23万8,518株は、被相続人の遺志を尊重して、学校法人EDSに寄附する。
協議書には共同相続人8名の記名押印がありますが、五男NKO氏の分は代理人KZR氏、二女QRN氏の分は側近LXE氏が代理人として記名押印しています。控訴審判決は、退職弔慰金について、被相続人の遺産があまりにも少なく世間から疑いを持たれかねないため、二男PLM氏らが関連会社から拠出させて相続の対象としたものであると認定しています。
中核会社RVNの株式移転と組織再編
控訴審判決の前提事実によれば、株式併合の後、企業グループMSRは、純粋持株会社を頂点とする組織再編を順次行いました。
- 平成17年11月28日、中核会社RVNの株主総会で、株式移転により株式移転設立会社QTBを設立する決議(判決は「本件株式移転決議」と呼んでいます)が行われ、翌29日に効力が生じました。中核会社RVNの株主は、株式移転設立会社QTBの株式を取得しました。
- 同年12月、中核会社RVNは、投資会社の関連会社等に対する第三者割当増資と、ホテル会社HPLによる吸収合併を承認しました。
- 平成18年2月1日、中核会社RVNはホテル会社HPLに吸収合併されて消滅しました。
- ホテル会社HPLは株式移転により純粋持株会社LMHの子会社となり、株式移転設立会社QTBは純粋持株会社LMHの株主となりました。
三男VCT氏名義の中核会社RVNの株式757株は、株式移転により株式移転設立会社QTBの株式757株に置き換わっています。控訴審では、この株式移転設立会社QTBの株式についての持分の確認が予備的請求として追加されました。
事案の経緯の時系列
| 時期 | 出来事(判決本文の記載による) |
|---|---|
| 昭和15年 | 被相続人が、二男PLM氏に、他人名義の中核会社RVNの株式13万8,539株(当時の発行済株式総数の約81.6%)を贈与する旨の公正証書を作成。二男PLM氏は当時13歳で、贈与は効力を生じなかった(控訴審判決の認定) |
| 昭和17年 | 被相続人が「遺訓」と題する書面を作成し、二男PLM氏を後継者と定める。その後、二男PLM氏は後継者となることを拒絶 |
| 昭和31年頃から昭和35年頃 | 被相続人の指示により、中核会社RVNの役員らが証券会社を通じるなどして中核会社RVNの株式を買い集める(控訴審判決の認定) |
| 昭和36年 | 被相続人が、秘書に口述筆記させる方法で「家憲」と題する書面を作成 |
| 昭和39年 | 被相続人が死亡。発行済株式総数149万9,400株のうち、被相続人名義は23万8,518株 |
| 昭和39年10月7日 | 遺産分割協議書の作成。遺産株を学校法人EDSに寄附。学校法人EDSが名義書換を受ける |
| 昭和47年 | 学校法人EDSが、遺産株のうち20万株をグループ会社WTNに、残りを個人3名に有償で譲渡 |
| 昭和48年6月1日 | グループ会社WTNが20万株を三男VCT氏に譲渡 |
| 昭和48年12月27日 | 中核会社RVNの増資。三男VCT氏は自己の名義で23万9,831株を引き受ける(第一審判決の認定) |
| 平成16年7月 | 1,000株を1株とする株式併合。三男VCT氏名義の75万7,000株が757株となる(併合の日を、第一審判決は26日、控訴審判決は27日と記載しています) |
| 平成16年11月以降 | グループの不祥事の発覚後、債権者である金融機関を中心とする経営改革委員会が発足し、株主構成の調査が行われる |
| 平成17年9月16日 | 原告らが本件訴訟を提起(当初は現在の持分の確認を求める訴え) |
| 平成17年11月28日 | 中核会社RVNの株主総会で株式移転決議。翌日、株式移転設立会社QTBが設立される。原告らは、この決議の時点の持分の確認を求める訴えに変更 |
| 平成18年2月1日 | 中核会社RVNがホテル会社HPLに吸収合併されて消滅 |
| 平成19年3月2日 | 三男VCT氏が、第一審の弁論準備手続期日で取得時効を援用 |
| 平成21年3月30日 | 東京地方裁判所が第一審判決(一部認容) |
| 平成22年10月13日 | 三男VCT氏が、控訴審の口頭弁論期日で、前主の占有期間を併せた取得時効を援用 |
| 平成23年9月26日 | 控訴審が、口頭弁論期日で、訴えの変更のうち株式移転設立会社QTBの株式についての請求の追加を許し、その余を許さない旨の判断を示す |
| 平成24年2月8日 | 東京高等裁判所が控訴審判決(原判決取消し、主位的請求の却下、予備的請求の棄却) |
判断の前提となった法令
第一審判決が取得時効について判断する際に用いたのは、民法162条及び163条です。以下は現在の法令の条文であり、判決本文の引用ではありません。
民法162条―所有権の取得時効
1 20年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。
2 10年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。
民法163条―所有権以外の財産権の取得時効
所有権以外の財産権を、自己のためにする意思をもって、平穏に、かつ、公然と行使する者は、前条の区別に従い20年又は10年を経過した後、その権利を取得する。
三男VCT氏は、株式の名義を取得してから10年間の短期取得時効と、20年間の長期取得時効の両方を主張しました。また、株券の交付を受けた者の保護として、当時の商法229条(小切手法21条の準用)による善意取得も主張しています。株券の善意取得の規定は、現在は会社法131条2項に置かれています(当事務所の注記です)。
控訴審判決が中心に据えたのは、確認の訴えの適法要件である確認の利益と、名義株が遺産に属することの立証の対象です。これらは条文ではなく、判決が示した解釈によるものですので、後の節で判決本文に沿って説明します。
当事者の請求及び主要な主張
原告らの請求の内容と、その変遷
原告らは、平成17年9月16日の訴え提起の時点では、三男VCT氏名義の中核会社RVNの株式について、現在の持分の確認を求めていました。株式移転決議の後、原告らは、株式移転決議の時点(平成17年11月28日)において、三男VCT氏名義の757株について原告らが相続分に応じた持分を有していたことの確認を求める訴えに変更しました。第一審の審理の対象は、この過去の時点の持分の確認請求です。
控訴審で、裁判所が過去の時点の持分の確認の利益について釈明を求めたところ、原告らは訴えの変更を重ね、最終的に、次の2つが審理の対象となりました。
- 主位的請求:株式移転決議の時点において、三男VCT氏名義の中核会社RVNの株式757株について、原告らがそれぞれの相続分に応じた持分を有していたことの確認
- 予備的請求(控訴審で追加):三男VCT氏名義の株式移転設立会社QTBの株式757株について、原告らがそれぞれの相続分に応じた持分を有することの確認
原告らが求めた持分の割合は、五男NKO氏が33分の2、二男PLM氏が66分の19、孫JWL氏が132分の19、孫MXT氏が33分の2です。
原告らの主な主張
- 借用名義株の存在。被相続人は、自ら資金を出して第三者所有の株式を買い取ったり増資を引き受けたりして中核会社RVNの株式を取得したが、名義は当初から役員・従業員、親族、郷里の知人などの他人名義とした。被相続人の死亡時には、借用名義株と遺産株を合わせた割合は発行済株式総数の96%に至った。被相続人の死後、借用名義株は遺産分割を行わずに他人名義のまま管理され、その過程で一部が三男VCT氏の名義に付け替えられた。
- 遺産分割協議の無効。五男NKO氏及び二女QRN氏の代理人への委任状は偽造されたものであり、四男HRZ氏及び長女SYK氏も協議に参加していない。借用名義株を対象としない不当な一部分割である。遺産株の寄附は、グループ幹部が相続税対策のために寄附扱いとしたにすぎず、相続人らに遺産分割の意思はなかった。
- 増資株の帰属。昭和48年の増資は現実の払込みがない実質的な無償増資(株式分割)であり、増資株は、もとの株式の属性を承継して原告らの共有財産となる。
- 取得時効の抗弁に対する反論。会社ぐるみで借用名義株の制度を運用し、時効取得を主張する者が会社の絶対的な支配者である場合には、会社に対する株主としての行動から「自己のためにする意思」を判断するのは相当でない。三男VCT氏は、平成16年12月に、名義株の一部を返還すると約束した。控訴審では、三男VCT氏は家の財産管理人として株式を管理していたにすぎず他主占有である、株券は会社の金庫に保管され公然性を欠く、などの主張を加えました。
- 確認の利益(控訴審)。過去の一時点の持分の確認であっても、真の所有者が原告らであったことが判決で確定されれば、別件訴訟の相手方にも事実上の影響力が及び、組織再編の違法性判断に影響するから、紛争の抜本的解決に資する。
三男VCT氏の主な主張
- 承継取得と原始取得。第三者名義株は、対価を支払って前主から個別に買い受けたものである。増資株は、各名義人が払込期日に払込みをして原始取得したものである。株主名簿と株券の裏書の連続により、権利者であることが推定される。
- 遺産分割(抗弁)。共同相続人全員が、昭和39年10月7日、遺産株を学校法人EDSに寄附する遺産分割協議を成立させた。仮に代理権の授与がなかったとしても、その後、相続財産を受領し、約40年間異議を述べなかったのだから、黙示に追認した。
- 善意取得(抗弁)。前主から裏書を経て株券の交付を受けた。
- 短期取得時効・長期取得時効(抗弁)。株式も民法163条の「所有権以外の財産権」に当たる。名義取得後、株主総会での議決権の行使、配当の受領、増資の払込みなどにより、株主権を自己のためにする意思をもって平穏かつ公然と行使してきた。前主の大半は長期間株式を保有しており、8割はグループと無関係の外部者である。控訴審では、前主の準占有の期間を併せた20年の取得時効も主張しました。
- 信義則違反・権利の濫用(抗弁)。約40年間、誰も株式の帰属に異議を唱えなかったのに、関係者の多くが亡くなり物証も失われた今になって権利を主張するのは、信義則違反又は権利の濫用である。
以上は、いずれも当事者の主張であり、裁判所が認定した事実ではありません。
結論を左右した争点
2つの判決の判断の構成からみると、結論を左右した争点は次の5点です(争点の整理は当事務所によるものです)。
- 過去の時点の持分の確認に、確認の利益があるか。第一審は肯定し、控訴審は否定しました。
- 他人名義の株式が被相続人の遺産に属するといえるか。何を立証すれば、他人名義の株式が被相続人の借用名義株であったといえるかが問題となりました。第一審と控訴審で判断が分かれた最大の争点です。
- 昭和39年の遺産分割協議は有効か。委任状の偽造、一部の相続人の不参加、相続税対策のための仮装の主張が問題となりました。
- 増資株は、もとの株式の属性を引き継ぐか。
- 株式は取得時効の対象となるか。名義人である三男VCT氏に取得時効が成立するか。第一審は大部分の株式について長期取得時効を認めましたが、控訴審はこの点について判断を示していません。
お手元の資料と経緯をお聞きし、進め方の順序をお示しします。
第一審の判断
第一審の東京地方裁判所は、確認の利益を認め、借用名義株の存在も認めたうえで、三男VCT氏名義の株式の大部分について長期取得時効の成立を認め、残りのごく一部についてだけ原告らの持分を確認しました。
過去の時点の持分の確認にも、確認の利益があるとした
第一審判決は、原告らの請求が過去の法律関係の確認を求めるものであり、しかも被相続人の共同相続人全員が訴訟当事者となっていないという問題があることを指摘しました(その際、最高裁判所平成元年3月28日判決を参照しています)。しかし、本件の訴えでは、これに続く遺産分割手続が想定されておらず、原告らは企業グループMSRの再編手続の適法性等を争う前提として訴えを提起しているとして、次のとおり述べました。
「むしろ現在よりも過去の法律関係を確認した方が、〔企業グループMSR〕の再編を巡る紛争の直接かつ抜本的な解決に資するものと解される。」
第一審判決は、三男VCT氏も確認の利益を積極的に争っていないことも挙げて、確認の利益があると判断しました。
借用名義株の存在を認め、少なくとも100万株は被相続人の借用名義株と認定した
第一審判決は、借用名義株の存在を肯定する多数の関係者の供述について、次の事実に照らして十分信用できるとしました。
- 被相続人が「遺訓」や「家憲」で、中核会社RVNの事業を家の事業と位置付け、家による事業支配の継続に強い意思を示していたこと
- 昭和15年当時には少なくとも発行済株式総数の約81.6%の株式を所有していた被相続人が、死亡時に約15.9%の遺産株しか所有していなかったとは考え難いこと
- 被相続人の死亡後間もなくメモ作成者DFG氏が作成したメモに、借用名義株が100万余株存在する旨の記載があったこと
- 遺産相続関係調書に、名義人の関係をうかがわせる記載があったこと
- 経営改革委員会、外部の法律事務所及び国税当局の各調査で、名義人と実質的な所有者が異なる株式が存在する趣旨の指摘がされていたこと
もっとも、第一審判決は、借用名義株と遺産株の合計が96%に達していたという原告らの主張は、数値を裏付ける客観的な証拠がないとして認めませんでした。そのうえで、メモの記載などから、次のとおり認定しました。
「〔GNS氏〕の死亡時において存在した第三者名義の〔RVN〕株一二六万〇八八二株(1,499,400-238,518)のうち少なくとも一〇〇万株は〔GNS氏〕が所有する借用名義株であったと認めるのが相当である。」
また、増資株については、借用名義株を持っていたことを自認する名義人が、払込みの実質的な負担をしておらず、増資株も自らのものではないと認識していたことから、次のとおり判断しました。
「借用名義人に対して発行された増資株は、借用名義株の属性を承継するものであって、その実質的な所有者は、従前と同様に、借用名義人ではなく、〔GNS氏〕の相続人と認めるのが相当である。」
株式も取得時効の対象となり、74万2,520株は長期取得時効が成立するとした
第一審判決は、まず、株式が民法163条の取得時効の対象となるかについて、次のとおり判断しました。
「民法一六三条の「所有権以外の財産権」に株式ないし株主権が含まれるか否かが問題となるが、上記文言にかんがみると、不継続又は不表現の地役権の取得時効を否定する同法二八三条のような特別の除外規定のない限り、広く財産権であれば同法一六三条の適用を認めるべきであるから、株式ないし株主権も「所有権以外の財産権」に含まれるものと解される。」
そのうえで、三男VCT氏が名義を取得した際に株券の被裏書人欄と株主名簿に氏名が記載されたこと、昭和48年の増資で自己の名義で23万9,831株を引き受けたこと、株主総会で議決権を行使し、継続的に利益配当を受領していたことを認定し、次のとおり評価しました。
「以上によれば、〔三男VCT氏〕は、上記〔RVN〕株の名義人とされ、本件増資の際は〔RVN〕株を引き受け、しかも、株主総会で議決権を行使し、利益配当も得ていたというのであるから、権利者として社会通念上承認し得る外形的客観的な状態を備えていたものと評価することができる。」
こうして、第一審判決は、75万7,000株のうち、名義取得の日から株式移転決議の日(平成17年11月28日)までに20年以上が経過した74万2,520株について、三男VCT氏が20年間、株主権を自己のためにする意思をもって平穏かつ公然と行使してきたとし、長期取得時効の成立を認めました。第一審判決は、この74万2,520株については、「原告らの持分権の有無にかかわらず」長期取得時効が成立するとしており、これらの株式が借用名義株であったかどうかや、遺産分割協議の効力についての判断には立ち入っていません。
第一審判決は、取得時効の要件の立証責任についても、次のとおり述べています。
「なお、所有権以外の権利については、所有権の取得時効の場合のような推定規定はないから、民法一六三条所定の要件の立証責任は取得時効を主張する側にある。」
会社ぐるみの名義株の運用や返還の約束の主張は退けられた
原告らは、会社ぐるみで借用名義株の制度が運用されていた場合には、名義人が会社に対して取った行動から「自己のためにする意思」を判断するのは相当でないと主張しました。第一審判決は、次のとおりこの主張を退けました。
「上記のような場合であっても、株主の名義人が会社に対して取った外形的客観的行動に基づいて意思要件の存否を判断することは、一定の事実状態を権利関係に高めようとする取得時効の制度趣旨に何ら反するものではなく、むしろこれに沿うものということができるから、原告の上記主張は採用し難い。」
また、三男VCT氏が平成16年12月に名義株の一部の返還を約束したとの主張についても、約束を認めるに足りる的確な証拠はなく、仮に約束があったとしても三男VCT氏が事実上権利者として振る舞っていることと矛盾しないとしました。第一審判決は、その話合いの際、三男VCT氏が、相続問題は既に決着済みとしつつ、次世代への財産の取扱いに関する話合いであれば応じることができるとの対応を取っていたと認定しています。
残る1万4,480株のうち1万4,395株を相続人の共有財産と認めた
名義取得から20年が経過していない1万4,480株について、第一審判決は、名義人ごとに検討しました。被相続人の死亡時の名義人が、自ら借用名義人であることを認めている者や、グループの関係者で、その株式がいずれも同じ人物に譲渡されている者である株式とその増資株は、被相続人の借用名義株であったと推認しました。他方、グループの関係者であることをうかがわせる証拠がない名義人の株式については、100万株に及ぶ借用名義株の存在の事実だけから借用名義株と推認することはできないとしました。
その結果、名義人4名に係る合計1万4,395株(3,734株、9,200株、1,200株、261株)が原告らの共有財産を構成すると認めました。認められなかったのは、残りの85株です(当事務所の計算です)。
短期取得時効、善意取得、遺産分割及び信義則の抗弁を退けた
1万4,395株は、三男VCT氏が平成2年3月30日又は平成7年3月30日に取得したもので、名義取得から株式移転決議の日まで20年に達していません。そのため、10年の短期取得時効が成立するかが問題となりました。
第一審判決は、借用名義株は被相続人の生前は側近の管理担当者が名義人の株券と印鑑を管理し、死後は中核会社RVNの本社で管理され、名義人の会CLBが設けられて、入会は三男VCT氏ら最高幹部が決めていたと認定し、三男VCT氏は借用名義株の存在を認識していたと判断しました。三男VCT氏は、借用名義株の存在を知らず、真の所有者から代金を支払って承継取得したと供述し、領収書や金銭出納帳などを提出しましたが、第一審判決は次のとおり述べて、この供述を信用しませんでした。
「そのような立場にあった〔三男VCT氏〕が、上記のとおり管理されていた借用名義株の存在を知らなかったとはにわかに認め難く、〔三男VCT氏〕の上記供述をそのまま信用することはできない。」
第一審判決は、被相続人の死後に借用名義株の管理を担当した者が、定年退職間近な名義人等に対し、あらかじめ日付を空欄にした売買契約書、領収書、株式申込証に記名押印を求めて書面の体裁を整えていたと認定し、また、提出された書類の多くが1株100円程度という画一的な代金額を示していることを指摘して、書類は借用名義株の制度を維持するために形式的に整えられていたにすぎない疑いが濃いとしました。そして、前主がいずれも借用名義人又はグループの関係者であったことから、三男VCT氏は取得時に借用名義株であると認識していたとして、自己が正当な権利者であると信じたとの主張を認めず、短期取得時効の成立を否定しました。同じ理由で、善意取得の抗弁も、悪意の再抗弁が認められるとして退けました。
遺産分割の抗弁については、1万4,395株は遺産株ではなく借用名義株又は増資株であるから抗弁にならないとしました。信義則違反・権利の濫用の抗弁については、約40年間異議がなかったことは、長年の事実状態を尊重する長期取得時効の成立で十分考慮済みであるとして、退けました。
なお、第一審判決は、三男VCT氏が昭和32年10月から中核会社RVNの代表取締役に就任していたと認定していますが、控訴審判決の前提事実は、三男VCT氏が昭和34年5月から平成16年10月まで中核会社RVNの代表者の立場にあったとしています。本記事では、それぞれの判決の記載に従っています。
第一審の結論
1万4,395株は株式併合により1,000株が1株となったため、第一審判決は、757株のうち14株について原告らがそれぞれの相続分の割合による持分を有していたこと、1株について、1,000分の395に原告らの相続分を乗じた割合(五男NKO氏3,300分の79、二男PLM氏1万3,200分の1,501、孫JWL氏2万6,400分の1,501、孫MXT氏3,300分の79)の持分を有していたことを確認し、その余の請求を棄却しました。訴訟費用は、50分の1を三男VCT氏、その余を原告らの負担としました。
控訴審の判断
控訴審の東京高等裁判所は、第一審判決を取り消しました。第一審が認めた確認の利益を否定して主位的請求を却下し、控訴審で追加された予備的請求については、問題の株式のいずれも被相続人の未分割の遺産に属するとはいえないとして棄却しました。第一審判決は全部取り消され、原告らの持分を一部認めた第一審の結論は変更されました。
訴えの変更の扱い
控訴審判決は、原告らの訴えの変更について、次のとおり判断しました(いずれも平成23年9月26日の口頭弁論期日で示されたものです)。
- 過去の時点の持分の確認請求を撤回し、現在の中核会社RVNの株式の持分確認と株式移転設立会社QTBの株式の持分確認を選択的に併合する訴えの変更は、選択的関係に立たない請求を選択的併合として構成するもので不適法である。新訴の審理が行われることを条件とする変更であるから、三男VCT氏が旧訴の取下げに同意しても、旧訴の取下げの効力は生じない。
- 現在の中核会社RVNの株式の持分確認を予備的に追加する部分は、中核会社RVNが少なくとも形式上既に存在せず、組織再編を覆すことが前提となり、異なる重要な争点を含むから、請求の基礎の同一性を欠き、著しく訴訟手続を遅滞させるため許されない。
- 株式移転設立会社QTBの株式の持分確認を予備的に追加する部分は、中核会社RVNの株主がそのまま株式移転設立会社QTBの株主に移行しており、三男VCT氏名義の中核会社RVNの株式に割り当てられた株式移転設立会社QTBの株式は実質的に同一のものとみることができ、判断も中核会社RVNの株式の持分の有無に帰するから、許される。
過去の時点の持分の確認は、確認の利益がないとして却下した
控訴審判決は、確認の利益について、最高裁判所昭和47年11月9日第一小法廷判決を参照し、通常は現在の法律関係の確認を求めるのが適当で、過去の法律関係の確認は、それが紛争の直接かつ抜本的な解決のため最も適切かつ必要と認められる場合に限り確認の利益が認められるとの一般論を示しました。そのうえで、本件について次のとおり判断しました。
「本件訴訟は、本件〔RVN〕株式の名義人である1審被告のみを相手方とするものであり、その判決の効力は〔RVN〕あるいはこれを吸収合併により包括承継した〔ホテル会社HPL〕に及ばず、仮に1審原告らと1審被告との間で本件株式移転決議当時の本件〔RVN〕株式の持分を確認する判決が確定したとしても、本件株式移転決議の効力を左右するものではないから、紛争の直接かつ抜本的な解決のため最も適切かつ必要と認められる場合に当たるとはいい難い。」
控訴審判決は、さらに、五男NKO氏が、ホテル会社HPL、株式移転設立会社QTB及び純粋持株会社LMHを相手方として、株式移転決議の不存在を主張する別件訴訟を提起し、その中で借用名義株や遺産分割協議の無効を主張していることから、本件訴訟で重ねて過去の持分の確認を求める必要性は乏しいとし、株式移転設立会社QTBの株式についての予備的請求が許容されていることも挙げました。
第一審では三男VCT氏が確認の利益を積極的に争わなかったことについては、次のとおり述べています。
「確認の利益は、民事訴訟制度による紛争解決の有効性、実効性という公益的要請から求められる訴訟要件であるから、1審被告の上記対応によって、上記判断は左右されない。」
こうして、第一審が認めた確認の利益は控訴審で否定され、主位的請求に係る訴えは却下されました。
第三者名義株は、被相続人個人の資金で取得されたことが証明されていないとした
控訴審判決は、原告らが、被相続人による第三者名義株の取得原因事実を主張・立証せず、間接事実の存在によって借用名義株であると認められると主張していることを指摘し、立証の対象を次のとおり示しました。
「しかし、証明の対象は飽くまで事実であるから、結局は、1審原告らが主張、立証する間接事実によって、本件第三者名義株が、もともと〔GNS氏〕自身(個人)の資金によって〔GNS氏〕個人の財産として取得されたものであること(以下「〔GNS氏〕の自己資金取得」という。)が証明されなければならないものと解される。」
そのうえで、控訴審判決は、第一審が借用名義株の存在の根拠とした書面や供述を、この「自己資金取得」の観点から一つずつ検討し、いずれも自己資金取得を立証するものではないとしました。
| 証拠 | 控訴審判決の評価(要約) |
|---|---|
| 昭和15年の公正証書 | 被相続人が他人名義の株式を自分の所有と認識していたことを推認させるが、それだけで自己資金取得は推認されない。被相続人が自分の所有と認識している株式は、会社の資金で取得されたものである可能性もある |
| 昭和17年の「遺訓」 | 公正証書を前提とするもので、公正証書の贈与は効力を生じず、二男PLM氏は後継者を拒絶した。本来書き換えられるべきものだったが、書き換えた遺訓や遺言書は見つかっていない。自己資金取得は推認されない |
| 昭和36年の「家憲」 | 後継者について述べるところがなく、借用名義株の存在をうかがわせる部分もない。かえって「自分で会社の株を持とうと思うな」との項目や、財団法人に傘下各会社の株式を保管させる構想が述べられている |
| 昭和39年3月31日付けの株主一覧表 | 作成者が不明で、会社が正式に作成した株主名簿とは様式が異なる。印の意味を示す記載もない。作成者が借用名義株と認識していたとしても、自己資金取得を立証しない |
| メモ作成者DFG氏のメモ | 作成者は前年に百貨店会社に取締役として入社したばかりで、情報源が不明であり、記載内容の正確性を担保する客観的な資料を全く欠いている |
| 遺産相続関係調書等の相続関係書面 | 作成者が不明。「名義人の関係」との記載以上に具体的な記載はない。作成者の認識を示すとしても、自己資金取得を立証しない |
| 外部の法律事務所の調査報告書 | 一方の報告書は名義人と実質的株主が異なる可能性を指摘したが、その後の別の法律事務所の報告書は、被相続人が遺産株以外の株式を有していた事実を明示するものは見当たらなかったと結論している。いずれも自己資金取得を裏付けない |
| 名義人である役員・従業員らの陳述書・証言 | 名義人らは、自己名義の株式が被相続人ないしその家に帰属すると認識していたが、被相続人の死後の「家」は、各相続人ではなく統一体としての家又はそれを代表する三男VCT氏と考えていたことがうかがわれる。名義人らは被相続人が取得した経過を知っているわけではない |
| 原告ら及び四男HRZ氏の陳述・供述 | 被相続人が株式のほとんどは自分のもの、家のものと言っていたことは認められるが、株式を管理していた側近LXE氏は長く会社の監査役であり、その管理行為が被相続人個人のためのものであったと断定できない。四男HRZ氏の陳述や証言によっても、被相続人は株式を個人で所有してはならず家単位で所有すべきと何度も言っていたというのであり、被相続人が株式を個人に帰属するものと認識していたとも断定できない |
名義人である関係者の供述については、控訴審判決は次のとおり述べています。
「借用名義株肯定関係者の上記認識は、それぞれの名義の株式が〔GNS氏〕の自己資金取得によるものであることを立証するものとはいえない。」
借用名義株であっても、会社の資金で取得された会社の借用名義株である可能性がある
控訴審判決は、さらに進んで、仮に借用名義株が存在するとしても、それが被相続人個人のものではなく、中核会社RVNのものである可能性を指摘しました。その理由として、次の事実を挙げています。
- 遺産分割協議書に記載された遺産は、郷里の僅かな不動産、他の鉄道会社の株式148株、書画骨とう品等及び遺産株だけで(退職弔慰金は関連会社から拠出させたもの)、それまで被相続人の資産と考えられていたものは、ほとんど全て中核会社RVN及び関連会社の所有となっていたこと
- 「家憲」は事業の繁栄と永続を第一に考えたもので、相続について触れず、財団法人に株式を保管させる構想を述べていたこと。死亡時の被相続人の認識としては、借用名義株が存在するとしても、他の資産と同様に会社に帰属するものという認識であったと考えられること
- 昭和31年頃から昭和35年頃の株式の買い集めは、被相続人の指示により会社の役員らが主体となって行ったもので、取得資金が被相続人の自己資金であったことをうかがわせる証拠はなく、むしろ会社の資金で買い集められた可能性が高いこと
- 多数の名義株主の名義書換、新株発行、配当金の交付などの管理費用は会社が負担したことが推認されること
- 被相続人が、会社の所有するものは自分の所有するものであるという認識を有していたことは、五男NKO氏及び孫JWL氏の陳述書にも記載されていること
控訴審判決は、これらを踏まえて、次のとおり判断しました。
「以上のとおりであるから、1審原告らが〔GNS氏〕の借用名義株と主張する〔RVN〕株式(本件第三者名義株を含む)は、仮に借用名義株であるとしても、〔GNS氏〕の自己資金ではなく、〔RVN〕の資金によって取得された〔RVN〕の借用名義株である可能性があるというべきである。」
結論として、控訴審判決は、第三者名義株が被相続人の借用名義株であると認めることはできないとし、未分割の遺産に属することを前提とする原告らの主張は、その余の点について判断するまでもなく理由がないとしました。
昭和39年の遺産分割協議は有効であり、遺産株は学校法人EDSの所有となったとした
控訴審判決は、遺産分割協議書の成立と協議の効力について、次のとおり判断しました。
- 委任状の成立。五男NKO氏及び二女QRN氏は、委任状の作成日には日本に帰国しており、作成の機会があった。協議に従って不動産の相続登記がされており、登記実務では代理人による遺産分割の場合に委任状と委任者の印鑑証明書の添付を要するから、委任状の印影は本人の実印によるものと認められ、委任状は真正に成立したものと推定される。代理人KZR氏及び側近LXE氏は被相続人の信頼が厚く、協議に関与しても不自然でない立場にあり、本人らは分配金を受け取り、約40年間協議の効力を争わなかったから、推定は極めて強い。
- 黙示の追認。仮に代理権に欠けるところがあったとしても、黙示の追認が認められる。
- 四男HRZ氏及び長女SYK氏。四男HRZ氏は協議に加わっておらず押印もしていないと証言したが、相続登記には協議者全員の印鑑証明書の添付を要することから、協議書の印影は実印によるものと認められる。二男PLM氏は四男HRZ氏が協議の場にいたと述べ、四男HRZ氏も協議書の控えを受け取り、分配を受けていた。長女SYK氏の印影が実印によるものであることは孫MXT氏も認めている。いずれも真正に成立し、仮にそうでなくても黙示の追認が認められる。
- 一部分割の主張。借用名義株の存在が認められない以上、協議書に記載された財産以外に遺産が存在したとは認められない。
- 遺産分割の意思と寄附の仮装の主張。協議書に従って分配が行われ、相続人全員が約40年間協議の効力を争わなかったから、遺産分割の意思がなかったとは認められない。学校法人EDSは寄附を受けて名義書換をし、相続人らと連名で、解散時に残余財産を寄附者の相続人等に帰属させない旨の念書を国税当局に提出していた。遺産株には相続税が課税されていない。学校法人EDSは昭和47年に遺産株を有償で譲渡し、代金を校舎改築等の費用に充てていた。名義借用の合意を認める証拠もない。
控訴審判決は、五男NKO氏及び二女QRN氏について、次のとおり述べています。
「仮に、〔代理人KZR氏〕及び〔側近LXE氏〕の代理権に欠けるところがあったとしても、〔五男NKO氏〕及び〔二女QRN氏〕は、上記のとおり本件遺産分割協議に従って相続財産の分配金を受け取り、長期間にわたって全く異議を述べずにいたのであるから、1審被告の主張するとおり、〔代理人KZR氏〕及び〔側近LXE氏〕の代理行為による本件遺産分割協議につき、黙示の追認をしたものと認めるのが相当である。」
寄附については、次のとおり結論付けました。
「本件遺産株の〔学校法人EDS〕への寄附は、実体を伴ったものであったと認められ、1審原告らの主張するように仮装されたものと認めることはできない。」
こうして、遺産株は遺産分割協議により学校法人EDSに寄附され、学校法人EDSの所有となったと認められ、未分割の遺産であることを前提とする原告らの主張は理由がないとされました。第一審は、遺産株20万株を含む74万2,520株について取得時効で決着させ、遺産分割協議の効力には判断を示していませんでしたが、控訴審は遺産分割協議の効力を正面から判断したことになります。
増資株も、前提を欠くとした
控訴審判決は、増資株の割当ての対象となった第三者名義株及び遺産株が被相続人の未分割の遺産であると認められない以上、増資株が原告らに帰属する余地はないとしました。第一審が、借用名義人に発行された増資株は借用名義株の属性を承継するとした判断は、前提を欠くことになります。
取得時効については判断を示していない
控訴審判決は、第三者名義株、遺産株及び増資株のいずれも被相続人の未分割の遺産に属するとはいえないとして、予備的請求を棄却しました。三男VCT氏は控訴審で、前主の準占有の期間を併せた取得時効の主張も追加していましたが、控訴審判決は、取得時効の成否について判断を示していません。第一審判決の取得時効に関する判断は、控訴審で肯定も否定もされておらず、第一審判決が取り消されたことにより、結論を支える判断ではなくなっています(当事務所の理解です)。
各主張を採用し又は排斥した理由
| 主張 | 第一審 | 控訴審 |
|---|---|---|
| 過去の時点の持分の確認の利益(原告ら) | 採用。遺産分割手続が想定されておらず、組織再編をめぐる紛争の直接かつ抜本的な解決に資する。被告も争っていない | 排斥。判決の効力は会社に及ばず株式移転決議の効力を左右しない。別件訴訟がある。被告の対応は確認の利益の判断を左右しない |
| 第三者名義株は被相続人の借用名義株(原告ら) | 一部採用。少なくとも100万株は被相続人の借用名義株と認定(96%の主張は排斥) | 排斥。被相続人個人の資金による取得が証明されていない。会社の資金による会社の借用名義株の可能性がある |
| 遺産分割協議の無効(原告ら) | 判断なし(取得時効の成立した株式と、遺産株でない株式に分かれたため) | 排斥。委任状は真正に成立と推定、黙示の追認、遺産分割の意思あり、寄附は実体を伴う |
| 増資株は属性を承継(原告ら) | 借用名義人に発行された増資株について採用 | 前提を欠くとして排斥 |
| 長期取得時効(被告) | 74万2,520株について採用 | 判断なし |
| 短期取得時効(被告) | 1万4,395株について排斥。借用名義株であると認識していた | 判断なし |
| 善意取得(被告) | 悪意の再抗弁を認めて排斥 | 判断なし |
| 信義則違反・権利の濫用(被告) | 排斥。長期取得時効の成立で考慮済み | 判断なし |
表は、両判決の判断を当事務所が整理したものです。「判断なし」は、判決がその主張について判断を示していないことを意味し、主張を認めたことも退けたことも意味しません。
主文及び結論
第一審判決の主文
第一審判決の主文は、次のとおりです(当事者の表記を置き換え、数字を算用数字に改めて記載したものです)。
- 平成17年11月28日開催の中核会社RVN株主総会における株式移転決議の時点において、三男VCT氏名義とされていた中核会社RVNの株式757株のうち、(1)14株につき、五男NKO氏が33分の2、二男PLM氏が66分の19、孫JWL氏が132分の19、孫MXT氏が33分の2の持分を有していたことを、(2)1株につき、五男NKO氏が3,300分の79、二男PLM氏が1万3,200分の1,501、孫JWL氏が2万6,400分の1,501、孫MXT氏が3,300分の79の持分を有していたことを、それぞれ確認する。
- 原告らのその余の請求を棄却する。
- 訴訟費用は、これを50分し、その1を三男VCT氏の負担とし、その余を原告らの負担とする。
控訴審判決の主文
- 原判決を取り消す。
- 原告らの主位的請求に係る訴えを却下する。
- 原告らの予備的請求を棄却する。
- 訴訟費用は、第1、2審を通じ、原告らの負担とする。
控訴審判決は、末尾で、主位的請求は不適法であるから、これと結論を異にする原判決を取り消して訴えを却下し、予備的請求は理由がないから棄却すると述べています。原告らが求めた株式の持分は、控訴審では1株も認められませんでした。
審級ごとの結論の推移
| 項目 | 第一審(東京地方裁判所) | 控訴審(東京高等裁判所) |
|---|---|---|
| 審理の対象 | 株式移転決議時点の中核会社RVNの株式757株の持分の確認 | 主位的請求は第一審と同じ。予備的請求として株式移転設立会社QTBの株式757株の持分の確認を追加 |
| 過去の時点の持分の確認の利益 | あり | 変更。なしとして主位的請求に係る訴えを却下 |
| 借用名義株 | 少なくとも100万株は被相続人の借用名義株と認定 | 変更。被相続人の自己資金取得が証明されず、被相続人の借用名義株とは認められない |
| 遺産分割協議(遺産株) | 判断なし | 有効。遺産株は学校法人EDSの所有となった |
| 増資株 | 借用名義人に発行されたものは相続人の共有 | 変更。前提を欠き、原告らに帰属する余地はない |
| 取得時効 | 74万2,520株は長期取得時効が成立。1万4,395株は短期取得時効が不成立 | 判断なし |
| 原告らの持分 | 14株と1株の一部(合計で1万4,395株分)の持分を確認 | 変更。いずれの株式にも持分はない |
| 訴訟費用 | 50分の1を被告、その余を原告らの負担 | 第1審・第2審を通じて原告らの負担 |
判断の射程―参考となる点と一般化できない点
以下は、2つの判決の内容を踏まえた当事務所の評価です。判決が述べた事項と区別してお読みください。最終的な判断は控訴審判決であり、第一審の判断が控訴審で改められた点は、その旨を明示しています。
参考となる点
- 名義株が遺産に属すると主張する側は、被相続人個人の資金による取得を立証する必要があるとされたこと。控訴審判決は、証明の対象は事実であるとして、他人名義の株式が被相続人自身の資金で被相続人個人の財産として取得されたことの証明を求めました。被相続人が自分のものだと言っていたことや、名義人が自分のものではないと認識していたことだけでは足りないとされた点は、親族が経営する会社の名義株をめぐる相続の紛争一般で参考になります。
- 会社の資金で取得された会社の名義株である可能性が指摘されたこと。オーナー経営者が会社と自分の財産を区別していなかった場合、他人名義の株式が実質的にはオーナー個人のものなのか、会社が自社の資金で取得したものなのかが問題になり得ます。控訴審判決は、株式の買い集めが会社の役員を主体として行われたこと、管理費用を会社が負担したことなどから、会社の資金による取得の可能性を指摘しました。名義株を遺産として主張する相続人にとっては、取得資金の出所を示す資料が決め手になることを示しています。
- 相続開始直後の書面やメモの証明力には限界があること。控訴審判決は、作成者が不明な書面や、情報源が不明なメモについて、記載内容の正確性を担保する客観的な資料がないとしました。第一審が重視したメモの評価が、控訴審では大きく異なっています。
- 何十年も前の遺産分割協議を後から争うことの難しさ。控訴審判決は、相続登記の手続で実印と印鑑証明書が用いられていること、分配金を受け取っていること、約40年間異議を述べなかったことから、委任状の真正な成立を強く推定し、黙示の追認も認めました。遺産分割協議の効力を争う相続人は、早い段階で異議を述べ、分配金の受領の扱いにも注意する必要があると考えられます。
- 過去の時点の持分の確認には、確認の利益が認められにくいこと。控訴審判決は、名義人だけを相手方とする訴訟の判決は会社に及ばず、株式移転決議の効力を左右しないとして、過去の時点の持分の確認の利益を否定しました。株式移転などの組織再編があった場合には、再編後の株式についての現在の持分の確認を求める構成が許容されています。
- 株式も取得時効の対象になるとした第一審の判断。第一審判決は、株式ないし株主権も民法163条の「所有権以外の財産権」に含まれるとし、名義人として議決権の行使や配当の受領を続けてきた者について、長期取得時効を認めました。会社ぐるみで名義株が運用されていた場合でも、会社に対する外形的客観的行動から「自己のためにする意思」を判断できるとしています。名義株の問題を長年放置することの危険を示す判断ですが、次に述べるとおり、控訴審はこの点を判断していません。
一般化できない点
- 取得時効についての最終的な判断はありません。控訴審判決は、株式が遺産に属しないとして請求を退けたため、取得時効の成否に立ち入っていません。株式の取得時効についての第一審の判断は、第一審判決が取り消されたことにより、本件の結論を支える判断ではなくなっています。第一審の判断を、上級審で確認された判断として扱うことはできません。
- 極めて特殊な事実関係の事案です。大規模な企業グループの中核会社で、発行済株式の大半について名義株の存在が主張され、会社ぐるみの名義人の管理の仕組みがあったとされる事案です。相続開始から訴え提起まで約40年が経過し、関係者の多くが亡くなっていました。親族経営の小規模な会社で、被相続人が自ら代金を支払った記録が残っている名義株の事案とは、立証の状況が大きく異なります。
- 被相続人の借用名義株の存在そのものを否定したわけではありません。控訴審判決は、借用名義株が「仮に」存在するとしても、会社の資金で取得された会社の借用名義株である可能性があるとしたものです。借用名義株が存在しないと積極的に認定したものではありません。
- 相続分は当時の民法によっています。非嫡出子の相続分を嫡出子の2分の1とする規定は、その後改正されています。株券の善意取得も当時の商法の規定によるもので、現在は会社法の規定によります。
- 確定の有無は確認できていません。控訴審判決の本文からは、上告等の有無及び確定は確認できていません。別件訴訟の結果も判決本文からは分かりません。
名義株の有無など、被相続人が実際に保有していた株式を調べたい方は、次のページを御覧ください。
よくあるご質問
亡くなった親が他人の名義で持っていた会社の株式は、遺産になりますか。
他人名義の株式が実質的に被相続人のものであったと認められれば、遺産になり得ます。ただし、本件の控訴審判決は、それを主張する相続人の側で、その株式が被相続人自身の資金によって被相続人個人の財産として取得されたことを証明しなければならないとしました。名義人や家族が「親のものだと思っていた」と述べるだけでは足りず、代金の支払や払込みの資金が被相続人から出ていたことを示す資料が重要になります。
名義人本人が「自分は名義を貸しただけだ」と認めていれば、遺産と認められますか。
それだけでは十分でない場合があります。本件では、多数の名義人が、自己名義の株式は被相続人ないしその家のものだと供述しましたが、控訴審判決は、名義人らは被相続人が株式を取得した経過を知っているわけではなく、その認識は被相続人個人の資金による取得を立証するものではないとしました。また、会社の資金で取得された会社の名義株である可能性も指摘されました。
何十年も前の遺産分割協議に自分は関わっていなかった場合、今から無効を主張できますか。
主張すること自体はできますが、認められるかは証拠によります。本件の控訴審判決は、相続登記に実印と印鑑証明書が使われていたこと、分配金を受け取っていたこと、約40年間異議を述べなかったことなどから、代理人への委任状が真正に成立したと強く推定し、仮に代理権に問題があったとしても黙示の追認をしたと認めました。遺産分割協議に疑問がある場合は、できるだけ早く異議を述べ、記録を残すことが大切です。
株式も時効で他人に取得されてしまうことがありますか。
本件の第一審判決は、株式も民法163条の「所有権以外の財産権」として取得時効の対象になるとし、名義人として20年以上、議決権を行使し配当を受けてきた相続人について、長期取得時効の成立を認めました。ただし、控訴審判決はこの点について判断を示しておらず、第一審判決は取り消されています。名義株の帰属に疑問がある場合には、長期間放置しないことが重要と考えられます。
会社が組織再編で株式移転をした後は、どの株式について持分の確認を求めればよいですか。
本件の控訴審判決は、株式移転決議の時点の旧会社の株式の持分の確認(過去の法律関係の確認)については、名義人だけを相手方とする判決は会社に及ばず、決議の効力を左右しないとして、確認の利益を否定しました。他方、株式移転で設立された会社の株式は旧会社の株式と実質的に同一のものとみることができるとして、その株式についての現在の持分の確認を求める請求の追加を許しています。組織再編があった場合には、現に存在する株式を対象として請求を組み立てることが重要になります。
相手方が確認の利益を争わなければ、過去の時点の確認も認められますか。
本件の第一審判決は、被告が確認の利益を積極的に争っていないことも理由の一つとして確認の利益を認めましたが、控訴審判決は、確認の利益は紛争解決の有効性、実効性という公益的要請から求められる訴訟要件であり、被告の対応によって判断は左右されないとしました。相手方が争わないからといって、確認の利益が認められるとは限りません。
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