一般社団法人を利用した相続税対策と小規模宅地等の特例の適用要件

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形式のみを整える相続税対策は既に通用しなくなっています

相続税の負担を軽減することを目的として、一般社団法人を設立して財産を移転する方法や、小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例をあてはめるために形式を整える方法が、かつては広く紹介されていました。しかしながら、これらの方法は、その後の税制改正によって、いずれも大きく制限されております。弁護士法人M&A総合法律事務所では、相続に関する紛争の解決を数多く取り扱っておりますが、こうした形式的な対策が、かえって相続人の間の深刻な争いの原因となっている事例を繰り返し目にしております。

一般社団法人を利用した方法に対する規制

一般社団法人及び一般財団法人には、持分という概念がありません。そのため、法人に財産を移転しておけば、その後に理事が死亡しても相続税の課税対象とならないという考え方が用いられていました。もっとも、現在の相続税法においては、特定一般社団法人等の理事である者が死亡した場合には、その法人の純資産額を同族理事の数に1を加えた数で除して計算した金額について、その法人が当該理事から遺贈により取得したものとみなして相続税を課することとされております。ここでいう特定一般社団法人等とは、理事の総数のうちに同族理事の占める割合が2分の1を超える状態が一定の期間にわたって継続している法人などをいいます。したがいまして、同族で支配している一般社団法人に財産を移転するだけでは、相続税の負担を免れることはできません。

小規模宅地等の特例の適用要件の厳格化

被相続人の居住の用に供されていた宅地等を、配偶者でも同居していた親族でもない親族が取得する場合の特例、いわゆる家なき子と呼ばれる取扱いについても、適用要件が厳格化されております。現在は、相続の開始前3年以内に、その親族の3親等内の親族又はその親族と特別の関係がある法人が所有する家屋に居住したことがないこと、及び相続の開始の時においてその親族が居住している家屋を相続の開始前のいずれの時においても所有していたことがないことが必要とされております。かつて用いられていた、持家を親族が支配する法人に売却して形式的に借家住まいの状態を作り出す方法は、これによって封じられております。

また、貸付事業用宅地等につきましても、相続の開始前3年以内に新たに貸付事業の用に供された宅地等は、原則として特例の対象から除かれております。相続の開始の直前に賃貸物件を取得して評価額を圧縮する方法についても、同様に制限が加えられているということです。

当事務所の見解

私どもは、相続税の負担のみに着目した対策には慎重であるべきであると考えております。理由は3つあります。第1に、形式のみを整える方法は、これらの例のように、その後の法令の改正によって効力を失うことが少なくありません。第2に、法令の改正を免れた場合でありましても、実態を伴わない行為は、税務調査において否認される危険があります。第3に、そして最も重要な点として、財産の名義及び管理の実態を複雑にすることは、相続が開始した後の遺産分割において、相続人の間の深刻な対立を生みます。一般社団法人に移転された財産をめぐって、後継者と他の相続人とが長い期間にわたって争うという事例は、決して珍しいものではありません。

相続に備えるにあたって最も効果的な方法は、財産の帰属を明確にしたうえで、遺言その他の手段によって、誰が何を承継するのかをあらかじめ定めておくことです。なお、具体的な税額の計算及び申告は税理士の職務でありますので、私どもは、税理士と連携しながら、法律上の紛争の予防及び解決という観点から助言を行っております。

本記事の内容は、令和8年8月時点の法令に基づいております。

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