被相続人

被相続人とは、相続の対象となる権利義務を有していた死亡した者をいいます。これに対し、その権利義務を承継する者を相続人と申します。相続は、死亡によって開始いたします。民法第882条に定めがございます。
第1節 相続の開始と被相続人の地位
相続は、被相続人の死亡という事実によって当然に開始いたします。相続人が相続の開始を知っているか否か、届出がされているか否かは問いません。失踪の宣告がされた場合にも、死亡したものとみなされて相続が開始いたします。
被相続人の権利義務は、一身に専属するものを除き、相続人に包括して承継されます。民法第896条に定めがございます。積極財産のみならず消極財産も承継されるという点が重要でございます。
被相続人が生前にした遺言は、その死亡の時から効力を生じます。民法第985条でございます。被相続人は、遺言によって相続分を指定し、遺産分割の方法を定め、遺贈をし、遺言執行者を指定し、推定相続人を廃除し、又は子を認知することができます。もっとも、遺留分を有する相続人の権利を奪うことはできません。
数人が同時に死亡した場合において、そのいずれが先に死亡したかが明らかでないときは、同時に死亡したものと推定されます。民法第32条の2でございます。この場合、これらの者の間では相続が生じません。事故等により親子が同時に死亡した事案では、相続人の範囲が大きく変わりますので、死亡の先後の認定が重要な意味を持ちます。
第2節 実務上の留意点
第一に、被相続人の財産及び債務の全容を把握することが、あらゆる手続の出発点でございます。金融機関に対する取引の履歴の照会、証券会社への照会、不動産の名寄帳の取得、信用情報機関への照会などの方法によって調査をいたします。相続人であれば、これらの照会を単独で行うことができるものが多うございます。
第二に、被相続人の生前における財産の管理の状況が問題となることがございます。同居していた相続人が預貯金を管理していた場合には、その使途をめぐって争いが生じやすうございます。取引の履歴を取得し、多額の出金の時期と使途を確認する作業が必要となります。
第三に、被相続人が事業を営んでいた場合や、取引相場のない株式を保有していた場合には、事業の承継と遺産分割とを併せて検討しなければなりません。株式が相続人の間で分散いたしますと、会社の意思決定に支障を生ずるおそれがございます。
第四に、被相続人の死亡に伴う手続には、それぞれ期限が定められております。相続の放棄及び限定承認は原則として3箇月、相続税の申告は10箇月、相続の登記の申請は取得を知った日から3年でございます。期限を意識して進行を管理する必要がございます。
第五に、被相続人が生前に締結していた契約上の地位も、原則として承継されます。賃貸借契約における賃貸人又は賃借人の地位、保証契約における保証人の地位などがこれに当たります。とりわけ根保証につきましては、被相続人の死亡によって元本が確定するものとされておりますので、確定した債務の額を確認する必要がございます。
第六に、被相続人の死亡の後にその名義の預貯金口座から出金がされることがございます。相続人の一人が葬儀の費用等に充てる趣旨で行うことが多うございますが、他の相続人との間で疑義を生じさせないよう、支出の内容を記録し、領収書を保管しておくことが望まれます。
第3節 関連する用語
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