推定相続人

推定相続人とは、現に相続が開始したと仮定した場合に相続人となるべき者をいいます。相続はまだ開始しておりませんので、その地位は将来相続人となることが見込まれるというにとどまり、確定したものではございません。
第1節 誰が推定相続人となるか
推定相続人が誰であるかは、相続人の範囲に関する民法の定めによって判断されます。配偶者は常に相続人となりますので(民法第890条)、配偶者があれば常に推定相続人でございます。血族相続人につきましては、第1順位が子(民法第887条第1項)、第2順位が直系尊属(民法第889条第1項第1号)、第3順位が兄弟姉妹(同項第2号)でございまして、先順位の者があるときは後順位の者は推定相続人となりません。
この地位は、時の経過とともに変動いたします。子の出生若しくは認知、養子縁組、婚姻若しくは離婚、又は推定相続人自身の死亡によって、誰が推定相続人であるかは変わります。最終的に確定いたしますのは、相続が開始した時点でございます。
第2節 推定相続人の地位の限界
推定相続人の地位は、将来の期待にとどまるものでございます。したがいまして、相続の開始の前に、相続分を処分し、又は相続財産に属する個々の財産について権利を主張することはできません。
また、相続の開始の前に相続放棄をすることはできません。生前に「相続を放棄する」旨の念書が交わされることがございますが、これは相続放棄としての効力を有しないものでございます。相続放棄は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月の期間内に、家庭裁判所に申述をしなければならないものでございます。
これに対し、遺留分の放棄につきましては、相続の開始の前であっても、家庭裁判所の許可を受けたときに限り、その効力を生ずるものとされております(民法第1049条第1項)。相続放棄と遺留分の放棄とで取扱いが異なる点は、混同されやすいところでございます。
第3節 廃除その他の実務上の留意点
遺留分を有する推定相続人が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人に著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができます(民法第892条)。遺言によって廃除の意思を表示することもでき、この場合には遺言執行者が請求をいたします(民法第893条)。
事業の承継を検討する場面におきましては、推定相続人の全員の把握が出発点となります。中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律に定める遺留分に関する民法の特例は、推定相続人全員の合意を要するものでございますので、一人でも把握を欠きますと制度を利用することができません。生前の対策に着手する段階で、戸籍によって範囲を確認しておくことが肝要でございます。
第4節 関連する用語
相続人、法定相続分、代襲相続、廃除、相続欠格、遺留分の放棄などの用語も併せて御参照ください。弁護士費用につきましては、弁護士費用一覧のページを御覧ください。
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