後妻とその家族に遺産が承継された場合の対応
父は晩年に再婚しておりました。遺言により、父が保有していた収益物件は後妻とその連れ子に承継され、先妻の子である私には、ほとんど何も残されておりません。何かできることはあるのでしょうか。このようなご相談を、当事務所はしばしばお受けしております。
先に結論を申し上げます。第1に、遺留分侵害額の請求を検討いたします(民法第1046条第1項)。この請求権は、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間行使しないときは、時効によって消滅いたします(民法第1048条)。第2に、遺言の作成の当時に被相続人が判断能力を欠いていたと考えられる事情がある場合には、遺言の効力を争う余地がございます。第3に、連れ子が被相続人と養子縁組をしていない場合には、そもそも相続人ではございません。相続人の範囲を戸籍により確認することが出発点でございます。なお、承継された財産が不動産である場合の管理及び処分に固有の問題につきましては、本記事の対象といたしません。
第1 まず相続人の範囲を確認いたします
被相続人の配偶者は、常に相続人となります。後妻の連れ子は、被相続人と養子縁組をしていない限り、被相続人の相続人とはなりません。「後妻の家族に承継された」と説明されている場合であっても、実際には遺贈によるものである場合と、養子縁組により相続人となっている場合とがございます。
被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等を収集し、養子縁組の有無を含めて相続人の範囲を確定いたします。養子縁組がされている場合には、その縁組の効力を争う余地がないかも検討の対象となります。
第2 遺留分侵害額の請求
遺留分権利者及びその承継人は、受遺者又は受贈者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができます(民法第1046条第1項)。現在の制度は、金銭の支払を求めるものでございまして、財産そのものの返還を求めるものではございません。
兄弟姉妹以外の相続人が遺留分を有するものとされております(民法第1042条第1項)。先妻の子は被相続人の子でございますので、遺留分を有いたします。
この請求権は、遺留分権利者が相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間行使しないときは、時効によって消滅いたします。相続の開始の時から10年を経過したときも、同様でございます(民法第1048条)。期間内に権利を行使したことを明らかにするため、内容証明郵便により請求の意思表示を行い、記録を残すことが実務上の取扱いでございます。
第3 遺言の効力を争う余地
遺言をするには、遺言をする時においてその能力を有しなければならないものとされております(民法第963条)。被相続人が遺言の作成の当時に判断能力を欠いていたと考えられる事情がある場合には、遺言の無効を主張する余地がございます。診療の記録、介護の記録、要介護の認定に関する資料、当時の面会の状況等が資料となります。
自筆による遺言については、その方式に関する要件を満たしているかも検討の対象となります。原則として家庭裁判所の検認の手続が必要でございます(民法第1004条第1項)。
もっとも、無効の主張が認められるかは事案により異なり、断定できるものではございません。
第4 遺産及び生前の贈与の調査
遺留分侵害額を算定するためには、遺産の全体及び生前の贈与を把握する必要がございます。判例は、共同相続人の1人が単独で被相続人名義の預金口座の取引の経過の開示を求めることができるものとしております。被相続人の確定申告書の控え、預金口座の取引の履歴から、財産の移転の経過を辿ります。
遺留分を算定するための財産の価額に算入される贈与について、相続人に対する贈与は、原則として相続の開始前の10年間にされたもの(婚姻若しくは養子縁組のため又は生計の資本として受けた贈与に限ります)に限られるものとされております(民法第1044条第3項)。相続人以外の者に対する贈与については、原則として相続の開始前の1年間にされたものに限られます(同条第1項)。
第5 期限
| 事項 | 期限 | 根拠条文 |
|---|---|---|
| 遺留分侵害額の請求 | 相続の開始及び侵害の事実を知った時から1年(相続の開始から10年) | 民法第1048条 |
| 相続の放棄又は限定承認 | 自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月 | 民法第915条第1項 |
| 相続税の申告 | 相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月 | 相続税法第27条第1項 |
よくあるご質問
質問1 後妻の連れ子にも相続の権利がありますか。
被相続人と養子縁組をしていない限り、被相続人の相続人とはなりません。遺贈により財産を取得している場合には、遺留分侵害額の請求の相手方となり得ます。
質問2 財産そのものを取り戻せますか。
現在の制度における遺留分侵害額の請求は、金銭の支払を求めるものでございます。財産そのものの返還を当然に求め得るものではございません。
質問3 遺言を無効にできますか。
遺言の作成の当時に遺言をする能力を欠いていたといえる場合には、無効を主張する余地がございます(民法第963条)。診療の記録等の資料が重要でございます。もっとも、認められるかは事案により異なります。
質問4 1年の期間はいつから始まりますか。
相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時からでございます(民法第1048条)。遺言の内容を知った時点で進行が始まっていることが多うございますので、直ちにご相談ください。
本記事の根拠条文
民法
- 第915条第1項(相続の承認又は放棄をすべき期間)
- 第963条(遺言能力)
- 第1004条第1項(遺言書の検認)
- 第1042条第1項(遺留分の帰属及びその割合)
- 第1044条第1項・第3項(遺留分を算定するための財産の価額に算入される贈与)
- 第1046条第1項(遺留分侵害額の請求)
- 第1048条(期間の制限)
相続税法 第27条第1項(相続税の申告書の提出期限)
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弁護士費用については、当ウェブサイトの弁護士費用一覧のページをご覧ください。
ご相談の際に、遺言書の写し、被相続人の出生から死亡までの戸籍関係の書類、被相続人の確定申告書の控え、預金口座の取引の履歴、被相続人の診療又は介護に関する記録をご用意いただけますと検討が早く進みます。これらがお手元にないことを理由にご相談をお断りすることはございません。なお、税務上の取扱いについては税理士にご確認ください。
本記事は一般的な制度の説明であり、結論は事案ごとに異なります。同種の事案において同じ結果となることを保証するものではありません。個別の事情については、弁護士にご相談ください。
必ず解決できますから、一緒に頑張りましょう。
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