生前贈与

生前贈与とは、財産を有する者が、生存している間に、その財産を無償で他人に与えることをいいます。死亡によって財産が移転する相続又は遺贈に対し、生存中の契約によって移転させる点に特徴がございます。
第1節 贈与契約としての性質
贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生じます(民法第549条)。契約でございますから、受け取る側の受諾を要します。
書面によらない贈与は、各当事者が解除をすることができます。ただし、履行の終わった部分については、この限りでございません(民法第550条)。したがいまして、確実なものといたしますためには、贈与契約書を作成し、あわせて引渡し又は登記等の履行を済ませておくことが望ましいものでございます。
第2節 遺産分割及び遺留分との関係
相続人に対する生前贈与は、遺産分割において特別受益として扱われる場合がございます。共同相続人中に、被相続人から婚姻若しくは養子縁組のため又は生計の資本として贈与を受けた者があるときは、その贈与の価額を相続財産に加えたものを相続財産とみなして各人の相続分を算定いたします(民法第903条第1項)。
もっとも、被相続人が持戻しを免除する意思を表示していたときは、その意思に従います(民法第903条第3項)。さらに、婚姻の期間が20年以上である夫婦の一方が他方に対し、その居住の用に供する建物又はその敷地を遺贈し又は贈与したときは、持戻しを免除する意思を表示したものと推定されます(民法第903条第4項)。配偶者の居住の安定を図る趣旨で設けられた定めでございます。
また、生前贈与は遺留分の算定にも影響いたします。遺留分を算定するための財産の価額には、相続人以外の者に対するものは原則として相続の開始前の1年間にされた贈与が、相続人に対する婚姻若しくは養子縁組のため又は生計の資本としての贈与は原則として相続の開始前の10年間にされたものが、それぞれ加算されます(民法第1044条)。
第3節 実務上の留意点
生前贈与は、相続の開始の後に紛争の火種となることが少なくございません。特定の相続人のみが贈与を受けていた場合には、他の相続人から特別受益として持戻しを求められ、その有無、時期及び金額をめぐって主張が対立いたします。契約書、預金の履歴その他の記録を保存しておくことが、いずれの立場においても重要でございます。
また、名義のみを相続人に移し、通帳及び印鑑を贈与者が引き続き管理していたという事案におきましては、贈与が成立していないものとして、被相続人に帰属する財産と評価される余地がございます。加えて、判断能力が低下した後にされた贈与につきましては、意思能力の有無が争われることがございます。
課税につきましては、暦年課税と相続時精算課税の2つの方式が設けられており、また、相続の開始前の一定の期間内にされた贈与は相続税の課税価格に加算されます。金額及び期間は税制の改正によって変動いたしますので、税務の取扱いにつきましては、税理士に御確認ください。
第4節 関連する用語
暦年贈与、連年贈与、死因贈与、受贈者、特別受益、名義預金などの用語も併せて御参照ください。弁護士費用につきましては、弁護士費用一覧のページを御覧ください。
このページの位置付けと、関連するページ
本ページは、相続税及び生前の税務対策に関する解説のうちの一つです。全体像は、次の中核となるページを御覧ください。
▶ 非上場株式の相続税評価額はどのように決まる?上場株式との違いや計算方法を解説
同じ主題を扱う関連ページ
- 非上場株式の相続税が払えないときの選択肢
- 一般社団法人による事業承継とは?メリット・デメリットや税務の注意点を解説
- 売渡しの請求における売買価格の決定の申立ての進め方
- 決算書類がないまま相続税の申告期限が近づいている場合の対応
- 遺産分割における非上場株式の評価額の決め方
- 相続税評価額で分割され取り分が減ってしまった場合の主張の組み立て
- 遺産相続とは?手続きの流れから注意点まで分かりやすく解説します!
- 「株価はゼロ円だ」と言われ価値の高い株式を承継されてしまった場合
- 所得税の算出方法!
- 相続税の物納及び延納と自社株式の換価との比較
- 株式保有特定会社とは?評価方法やメリット・デメリット、株特外しまでわかりやすく解説
- 相続税の申告期限までに買取価格が決まらない場合の対応
具体的な御相談をお考えの皆様へ
本ページの主題に関し、当事務所の取扱内容、対応の進め方及び費用の考え方は、次の御案内のページに整理しています。あわせて御覧ください。

