会社が買取りを拒む場合に最初に確認すべき5つの事項
相続した株式の買取りを会社に申し入れましたが、断られてしまいました。この後、何から確かめればよいのでしょうか。このようなご相談を、当事務所はしばしばお受けしております。
先に結論を申し上げます。断られた直後に確認すべき事項は、5つでございます。第1に、株主名簿の名義書換が済んでいるか。第2に、定款に相続人等に対する売渡しの請求の定めがあるか。第3に、会社の分配可能額はいくらか。第4に、譲渡制限の内容はどうなっているか。第5に、被相続人の死亡から1年が経過しているか。この5点を確かめることにより、その後に採るべき経路が定まります。
第1 名義書換が済んでいるか
株式の譲渡は、その株式を取得した者の氏名又は名称及び住所を株主名簿に記載し、又は記録しなければ、会社に対抗することができないものとされております(会社法第130条第1項)。名義が被相続人のままであれば、会社は「株主として扱えない」と述べることができます。
相続その他の一般承継により株式を取得した者は、単独で株主名簿記載事項の記載又は記録を請求することができるものとされております。相続を証する書面を添えて、書面により請求いたします。遺産分割が未了である場合には、権利行使者を定めて会社に通知する必要がございます(会社法第106条本文)。
第2 定款に相続人等に対する売渡しの請求の定めがあるか
会社は、定款にその定めがある場合に限り、相続その他の一般承継により譲渡制限株式を取得した者に対し、当該株式を会社に売り渡すことを請求することができます(会社法第174条)。
この定めがある場合、株主の側が動いたことを契機として、会社が請求に踏み切る余地がございます。定款は、株主又は債権者であれば、その閲覧又は謄本の交付を請求することができます(会社法第31条第2項)。なお、この定めは登記事項ではございませんので、登記事項証明書では確認できません。
第3 会社の分配可能額はいくらか
自己株式の取得により株主に対して交付する金銭等の帳簿価額の総額は、当該行為がその効力を生ずる日における分配可能額を超えてはならないものとされております(会社法第461条第1項)。
「資金がない」という説明が、法律上の制限を意味するのか、単に資金繰りの問題を意味するのかは、計算書類等により確認いたします。株主及び債権者は、会社の営業時間内はいつでも、計算書類等の閲覧又は謄本の交付を請求することができます(会社法第442条第3項)。この請求について、法定の拒絶の事由は定められておりません。
第4 譲渡制限の内容はどうなっているか
譲渡制限株式であれば、株式譲渡承認請求という経路がございます。株主は、会社に対して承認をするか否かの決定を請求することができ(会社法第136条)、承認をしない旨の決定をしたときは会社又は指定買取人が買い取ることを請求する旨を明らかにすることができます(会社法第138条第1号ハ)。この場合、会社は「譲渡も認めない、買取りもしない」という対応をとることができません(会社法第140条)。
他方、譲渡の制限がない株式であれば、そもそも会社の承認を得ることなく譲渡することができます。定款及び登記事項証明書により確認いたします。
第5 被相続人の死亡から1年が経過しているか
会社は、相続その他の一般承継があったことを知った日から1年を経過したときは、相続人等に対する売渡しの請求をすることができません(会社法第176条第1項ただし書)。
同族会社においては、経営陣が被相続人の死亡を直ちに知ることが通常でございますので、死亡から1年を経過している場合には、この危険が小さくなります。逆に、1年を経過していない場合には、株主の側が動くことにより会社の反応を招く余地がございますので、順序の設計が必要でございます。
確認の結果と採るべき経路
| 確認の結果 | 採るべき経路 |
|---|---|
| 名義書換が未了 | まず名義書換を請求いたします |
| 売渡しの請求の定めがあり、1年を経過していない | 順序を慎重に設計いたします |
| 分配可能額が十分にある | 書面による申入れにより自己株式の取得を求めます |
| 分配可能額が不足している | 指定買取人による買取りの経路を検討いたします |
| 譲渡制限株式である | 株式譲渡承認請求を検討いたします |
| 譲渡の制限がない | 譲受人を探し、直接に譲渡いたします |
よくあるご質問
質問1 会社に買取りの義務はありますか。
会社は、株主から買取りを求められても、これに応じる義務を負うものではございません。もっとも、株式譲渡承認請求の経路によれば、会社は承認するか、自ら又は指定買取人により買い取るかのいずれかを選ばなければなりません(会社法第140条)。
質問2 定款はどうやって手に入れますか。
株主及び債権者は、会社の営業時間内はいつでも、定款の閲覧の請求、謄本又は抄本の交付の請求等をすることができます(会社法第31条第2項)。正当な理由がないのに拒んだ場合には、過料に処せられることがございます(会社法第976条)。
質問3 5つを確認するのにどのくらいかかりますか。
会社の対応により異なります。登記事項証明書は直ちに取得できますが、定款及び計算書類等については、請求から入手までに期間を要することがございます。
本記事の根拠条文
会社法
- 第31条第2項(定款の閲覧等)
- 第106条(共有者による権利の行使)
- 第130条第1項(株式の譲渡の対抗要件)
- 第136条・第138条第1号(譲渡等の承認の請求)
- 第140条(会社又は指定買取人による買取り)
- 第174条・第176条第1項(相続人等に対する売渡しの請求)
- 第442条第3項(計算書類等の閲覧等の請求)
- 第461条第1項(分配可能額による制限)
- 第976条(過料に処すべき行為)
内部リンク
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本記事は一般的な制度の説明であり、結論は事案ごとに異なります。同種の事案において同じ結果となることを保証するものではありません。個別の事情については、弁護士にご相談ください。
必ず解決できますから、一緒に頑張りましょう。
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