取得費加算の特例

取得費加算の特例とは、相続又は遺贈により取得した財産を一定の期間内に譲渡した場合に、その者が納付した相続税額のうち一定の金額を、譲渡所得の計算上、取得費に加算することができる制度をいいます。租税特別措置法に定めが置かれております。
第1節 趣旨と要件
相続によって財産を取得した者がこれを譲渡いたしますと、相続税を負担したうえ、さらに譲渡所得に対する課税を受けることになります。相続財産を換価して納税資金を確保する場合には、この重複した負担が過大となりかねません。この特例は、その負担を緩和する趣旨で設けられたものでございます。
適用を受けるためには、相続又は遺贈により財産を取得した者であること、その者に相続税が課され納付すべき税額があること、及び相続税の申告書の提出期限の翌日以後の一定の期間内に当該財産を譲渡していることが必要でございます。取得費に加算される金額の計算の方法は、法令の定めるところによります。
この特例の適用を受けるためには、譲渡をした年分の所得税について確定申告をする必要がございます。自動的に適用されるものではございません。
第2節 実務上の留意点
最も注意を要しますのは、適用を受けることができる期間に限りがあるという点でございます。換価分割によって不動産を売却し、その代金を分ける場合には、この期間の内に売却を完了することができるかどうかが、実質的な期限として働きます。
ところが、相続人の間に対立がある事案におきましては、遺産分割の協議が調わないまま年月が経過することが少なくございません。調停及び審判を経ることとなれば、なおさらでございます。その結果、期間を徒過して特例の適用を受けられなくなり、当事者の全員が不利益を被るという事態が生じ得ます。
したがいまして、遺産に換価を予定する財産が含まれる場合には、税務上の期限を意識したうえで、分割の協議の日程を組み立てる必要がございます。当事務所は、こうした期限を踏まえた交渉及び手続の進行を担うものでございまして、税務の申告の代理を行うものではございません。具体的な要件及び計算につきましては、税理士に御確認ください。
また、相続税の申告の内容が、その後の修正申告又は更正の処分によって変動いたしますと、取得費に加算される金額も変動することとなります。遺産分割が申告の後に成立し、又は内容が変更された場合にも同様でございます。譲渡の時期と申告の内容の確定の時期とが前後する事案におきましては、両者の関係を整理したうえで手続を進める必要がございます。
なお、この特例は、相続又は遺贈により取得した財産を譲渡した場合に適用されるものでございまして、相続人が従前から所有していた財産の譲渡には適用がございません。代償分割によって代償金を支払うために自己の固有の財産を譲渡した場合には、適用の対象とならないことになりますので、分割の方法の選択に当たって考慮すべき点でございます。
第3節 関連する用語
換価分割、代償分割、相続税、準確定申告、小規模宅地等の特例などの用語も併せて御参照ください。弁護士費用につきましては、弁護士費用一覧のページを御覧ください。
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