負担付遺贈

負担付遺贈とは、受遺者に一定の給付その他の義務を負担させることを付した遺贈をいいます。民法第1002条は、負担付遺贈を受けた者は、遺贈の目的の価額を超えない限度においてのみ、負担した義務を履行する責任を負う旨を定めております。

目次

第1節 制度の内容

遺贈とは、遺言によって財産を無償で他人に与える処分でございます。相続人に対してすることも、相続人以外の者に対してすることもできます。これに負担を付したものが負担付遺贈でございまして、受遺者に対し、被相続人の債務を弁済すること、特定の者を扶養すること、居住を継続させること、祭祀を主宰すること、動物の世話をすることなどの義務を課すものでございます。

受遺者の責任は、遺贈の目的の価額を限度といたします。したがいまして、負担の内容が遺贈された財産の価額を上回る場合でありましても、その超える部分については履行の責任を負いません。

受遺者は、遺贈を放棄することができます。負担付遺贈の放棄がされたときは、負担の利益を受けるべき者が、自ら受遺者となることができます。民法第1002条第2項に定めがございます。

受遺者が負担した義務を履行しないときは、相続人は、相当の期間を定めてその履行の催告をすることができ、その期間内に履行がないときは、遺言の取消しを家庭裁判所に請求することができます。民法第1027条でございます。

なお、生前の契約によって同様のことを行う場合は負担付贈与と申しまして、これは民法第553条以下に定めのある別の制度でございます。遺言による処分か、契約による処分かによって、適用される規定が異なります。

第2節 実務上の留意点

第一に、負担の内容を具体的に定めることが肝要でございます。扶養や世話といった抽象的な文言にとどめますと、履行がされたか否かの判断が困難となり、取消しの請求をめぐって紛争を生じます。給付の内容、頻度、期間、方法をできる限り特定して記載すべきでございます。

第二に、履行を確保する仕組みを併せて設けることが望まれます。遺言執行者を指定し、負担の履行を監督させる方法が考えられます。また、負担の利益を受けるべき者が高齢である場合などには、信託の活用を検討する余地もございます。

第三に、遺留分との関係でございます。負担付遺贈も遺留分侵害額請求の対象となり得ます。この場合、受遺者が負う負担の額は、遺留分侵害額の算定において考慮されることとなります。

第四に、課税の関係でございます。負担付遺贈につきましては、負担の額を控除した価額を基礎として課税関係が生ずるほか、負担の利益を受ける者にも課税の問題が生ずることがございます。税務の取扱いにつきましては税理士に御確認ください。

第五に、遺贈と、いわゆる相続させる旨の遺言とを区別する必要がございます。相続人に対して財産を承継させる場合、判例は、特段の事情がない限り、遺産分割の方法を定めたものと解しております。この場合には遺贈に関する規定が適用されませんので、負担を付する趣旨であれば、その旨を明確に記載しておくべきでございます。

第六に、受遺者が遺贈を放棄した場合の帰趨を、あらかじめ遺言に定めておくことが望まれます。放棄がされますと負担の利益を受けるべき者が受遺者となり得ますが、その者にも受ける意思がないときは、当該財産は相続人に帰属することとなります。

第3節 関連する用語

遺贈、遺言執行者、付言事項、遺留分侵害額請求が関連いたします。弁護士費用につきましては弁護士費用一覧のページを御覧ください。

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