不動産相続は弁護士に依頼すべき?メリットや相談の流れ、正しい選び方を解説 

「不動産をどのように相続するのだろう」と不安に思っている方も多いのではないでしょうか。実際に誰にどの不動産をどのくらい相続するかどうかを決めて相続するまでの過程は、非常に複雑でトラブルに発展する恐れもあります。 

そこで今回は、不動産相続をスムーズにトラブルなく進めるために、弁護士に依頼することのメリット、弁護士を選ぶポイント、不動産相続の流れについて詳しく解説します。 

不動産相続を弁護士に依頼するメリットとは?

不動産の相続を弁護士に依頼することは大きなメリットがあります。ここでは不動産相続を弁護士に依頼することによるメリットについて、4つご紹介します。 

不動産の価値を正確に判定してもらえる

不動産は時期によって資産価値が大きく変動します。また、資産価値の算出方法としては、相続税路線価、固定資産税や公示価格を用いるなどさまざまで状況ごとに使い分けることになります。 

つまり、これらの複雑な要素を把握し適切に使い分けて算出することで、不動産価値を正確に判定できるようになります。 

弁護士に依頼することで、誤った判定による過小評価を防ぐことになります。 

また、不動産の価値評価としては、遺産分割の際には、相続税評価額(=税法上の価格)ではなく、実勢価格(=民法上の価格)を基準にする必要があります。相続税評価額(=税法上の価格)よりも実勢価格(=民法上の価格)の方が一般的にはかなり高いので、この点特に注意する必要があります。 

依頼者の状況に応じた分割方法の提案を受けられる

不動産の相続において、たびたびトラブルの原因となるのが不動産の分割方法です。 

不動産の分割方法には、現物分割、代償分割、換価分割、共有分割があり、以下のような特徴があります。 

現物分割は、不動産X、不動産Y、不動産Zというように不動産そのものを分け合う方法です。これは遺産を受け取って完了となり、最も分かりやすい方法とされています。 

代償分割は、不動産などの高価な遺産を一人が相続した場合に、その相続人が代償として他の相続人に現金を支払う方法です。 

換価分割は、対象となる資産を売却して、それにより得られた現金を相続人同士で分配する方法です。 

共有分割は、不動産を複数の相続人が共有の資産として相続する方法です。共有分割は、上記3つの現物分割、代償分割、換価分割が難しい場合に行われる方法で、あまり一般的ではありません。 

これらからおわかりのように、それぞれの分割方法によって特徴が大きく異なります。 

相続人間ですり合わせが必要となり、場合によってはトラブルに発展することがあります。 

そのため、専門知識を有する弁護士のサポートがあるのはとても安心です。 

代理人として交渉をしてもらえる

弁護士には分割方法などほかの相続人との交渉も依頼することが可能です。 

相続については、考え方の違いから親族間で揉めることがたびたびあり、特に不動産など大きな遺産については、協議が進まなくなる恐れもあります。 

弁護士が代わりに交渉をおこなってくれることで、スムーズに納得のいく協議結果となるでしょう。 

また、既にトラブルに発展してしまっている場合は、途中からでも弁護士に依頼することで、トラブルを最小限に抑えながら、交渉が進められるでしょう。 

不動産相続全般に関するトラブルを未然に防げる 

不動産の相続について、弁護士に依頼することの大きなメリットとして、さまざまなトラブルを未然に防ぐことができるということが挙げられます。 

たとえば、以下のような3つのトラブルを防止できるといえるでしょう。 

1つ目は、相続後の不動産売却トラブルです。相続後に不動産を売却する場合、売却益には所得税が発生します。また、所得税率の変化もありますので、どのタイミングで売却するのがお得かなども含め、法律に従った適切な判断ができるでしょう。 

2つ目は、契約書のトラブルです。相続した不動産に対して賃貸借契約を結ぶケースが想定されます。しかし、契約書の内容でトラブルが発生する事例が出ています。契約書作成段階から、弁護士の力を借りられるためトラブルを未然に防げるでしょう。 

3つ目は、借地権相続に関するトラブルです。借地権についても、普通借地権、定期借地権など複数の種類があり、相続した借地権を明確にしていないことでトラブルになった事例があります。弁護士は借地権についても対応可能なため、トラブルを未然に防げるでしょう。 

不動産相続依頼する弁護士の選び方

では実際に弁護士を選ぶ際には、どのような点に気を付けて依頼するべきなのでしょうか?ここでは、不動産相続を依頼する弁護士の選び方について解説します。  

実績が豊富である

当然ですが、不動産相続の案件を担当した実績が豊富な弁護士がおすすめです。 

一概に弁護士といっても、全員が不動産相続に詳しかったり経験が豊富だったりするわけではありません。 

一般的に、弁護士を依頼する際には、弁護士事務所を通して依頼することとなります。その際に、弁護士事務所のホームページなどで実績を確認するようにしましょう。それらの実績のうち、不動産相続の実績数を確認してください。 

また、弁護士個人の実績も重要になります。必ずしも保証されるわけでありませんが、目安として年間20件程度の不動産相続案件に対応している方は比較的実績があるといってよいでしょう。  

真摯な対応である

これは不動産相続に限った話ではありませんが、真摯な対応を取ってくれる弁護士事務所および弁護士がおすすめです。 

不動産相続は複雑な法律に従いながらその時の状況に応じて適切な進め方を決定していきます。 

不動産相続に関して詳しくない方々からすれば、さまざまな不安や疑問が生じてくるに違いないでしょう。 

そんなときに、「ひとつひとつわかりやすく説明してくれる」「質問にていねいに答えてくれる」というような真摯な対応を取ってくれる弁護士だととても心強いでしょう。 

不動産相続は、ときに親族間で揉め事となることがあります。そんなときでもしっかりと信頼できるような弁護士を選ぶように心がけましょう。  

依頼者にとって不利になる内容をしっかりと説明してくれる

真摯な対応を取ってくれる弁護士と少し違いかもしれませんが、依頼者にとって不利となるような内容であっても、すべてしっかりと説明してくれる弁護士を選ぶとよいでしょう。 

さまざまな状況によりますが、依頼者側の要望が通らない場合、法律的に弁護士にはどうにもできない場合、依頼者側のリスクとなる場合など、依頼者にとって不利になる状況があります。 

そんな状況であっても、不利な状況であることをていねいに説明してくれる弁護士はとても信頼できるのではないでしょうか。 

不利な状況を伝えられて不安になるかもしれませんが、トラブルを未然に防ぐという点においても、非常に重要な点となります。 

インターネット上の口コミサイトやランキングには注意

インターネット上には、不動産相続の弁護士に関する口コミサイトやランキングが掲載されたサイトがあります。 

しかし、これらのサイトには注意しましょう。 

個人の主観が入っているケースや、弁護士へのアフェリエイトサイトの場合があります。これらが全く信用できないというわけではありません。 

これらの情報を鵜呑みにせず、上でご紹介したような観点を満たすかどうかを重要視して弁護士を決定するようにしましょう。 

不動産相続を弁護士に依頼する際の進め方

では不動産相続はどのような流れで進めていくのでしょうか?ここでは、弁護士に依頼して不動産相続を行う場合の流れの例をご紹介します。 

遺言書の有無を確認する

まず、遺産相続全般においては、誰がどの資産をどのくらい相続するか決まりはありません。どのように相続するかは、遺言書の有無によって変わってきます。 

基本的には遺言書に記載された内容に従うことになりますが、遺言書が存在していない場合には、遺産分割協議を行うことで、不動産をはじめとする遺産の分割方法が決定されます。 

もし、遺言書が存在している場合でも、遺言書の種類によって進め方が若干異なります。 

遺言書は以下の3種類があります。 

1つ目は、公正証書遺言です。こちらは公証役所で作成された遺言書であり、改ざんのリスクがなく、法的に有効性がある遺言書になります。 

2つ目は、自筆証書遺言です。こちらは自身で遺言・日付・氏名を記し押印された遺言書です。 

3つ目は、秘密証書遺言です。こちらは自分で作成したものを公証役場に持ち込み遺言書の証明をしてもらったものになります。 

2つ目と3つ目の遺言書は改ざんされる恐れがあるため、遺言書を発見してもその場での開封はできず、家庭裁判所からの検認が必要です。 

万が一遺言書を開封してしまった場合、改ざんを疑われ無効となったり、5万円以下の過料が科せられたりするので注意しましょう。 

対象となる相続人を確認する

遺言書が存在しない場合、相続人となれる人物には制限があります。 

民法で決められている相続人となれる範囲は、配偶者、直系卑属(子、孫、ひ孫など)、直系尊属(父母、祖父母、曾祖父母など)、兄弟姉妹(既に亡くなっている場合は甥姪)です。

そして、被相続人と親族だった場合でも、以下に該当する方は相続人となれません。 

内縁の妻、離婚した元配偶者、養子縁組していない配偶者の連れ子、被相続人の姻族(配偶者の兄弟姉妹や親など)、相続の順位により法定相続人から外れる人(子が生きている場合の父母や兄弟姉妹)、いとこ、伯父伯母、叔父叔母らは例外を除き相続人となれません。 

さらに、法定相続人であっても、被相続人や他の相続人を殺害した場合など、相続権を剥奪される行為を行った人物は相続人にはなれません。 

それぞれの状況において、相続人となる人物が誰なのか明確にしておくことが大切です。 

不動産の価値を査定する

続いて、弁護士によって不動産の価値を査定してもらうことになります。 

前半で少し触れましたが、不動産価値を査定する方法はいくつかあります。 

よく知られる方法としては、固定資産税、路線価や実税価格などがありますが、それぞれの算出方法で結果の価格が異なります。 

どの算出方法がよいなどは一概には言えず、それぞれの状況によって異なります。できるだけ相続人の希望に沿う査定となるよう不動産相続に精通した弁護士を選ぶとよいでしょう。 

遺産分割協議を行う 

続いて遺産分割協議を行い、だれにどの遺産をどのくらい相続するかを決定します。 

基本的には遺言書が存在しない場合のフローですが、遺言書に記載されていない別の遺産がある場合や、遺言書の内容を希望しない場合にも行われます。 

また、この遺産分割協議はプラスの資産のみではなく、借金などの負債もすべて対象となります。 

そして、協議が始まる前に必ず相続人と相続対象となる遺産を確定しておく必要があります。 

遺産分割協議が完了した後に、相続人が現れたり遺産が現れたりするとトラブルとなるため、必ずこれらは確定しておくようにしましょう。 

相続登記を申請する

不動産を相続した際には、不動産の所有者を相続人に変更する相続登記と呼ばれる手続きが必要となります。 

相続登記を行う際には、遺言書、遺産分割協議書、被相続人の住民票除票または戸籍附票、被相続人の戸籍謄本を含む多くの書類の提出が必要です。 

これらの書類の準備は非常に複雑で難しい作業となるため、弁護士に協力を依頼しながら進めるようにしましょう。 

そして、相続登記は相続から3年以内に行わないと10万円以下の過料が科されるようになっています。大変な時期だとは思いますが、まだ終えていない方はすぐに相続登記の準備を始めましょう。 

相続税を納付する

遺産を相続すると、それらの遺産に対して相続税が発生し納付の義務が生じます。 

相続税の対象となる遺産は、現預金、有価証券、貴金属、骨とう品、そして不動産などです。 

相続税は、プラスとなっている資産から負債と葬祭費の合計を引いた価格に対して計算されます。不動産に対しては、弁護士が評価した価格に対して計算されることになります。 

相続税を抑えられるような場合もあるため、弁護士などの専門家に依頼して進めることを強く推奨します。 

不動産相続に関するトラブル例

では最後に、不動産相続に関してよくあるトラブルについてご紹介します。 

不動産の分割方法について揉める

先ほどから触れてきましたが、遺産分割協議において、どのように遺産を分割し相続するかを決定する際にトラブルとなることがよくあります。  

高価な資産である不動産をどのように分割して相続するのか、また誰が現物を相続するのか、さらに代償として支払う金額はいくらなのかなど争いが発生するポイントが集まっています。 

このようなトラブルを防ぐためにも、弁護士に代理として協議してもらうのがよいでしょう。 

不動産の価値評価について揉める

先ほどご紹介しましたが、不動産の価値を算出する方法は複数存在しているため、算出方法によって不動産の価値が異なります。 

また、不動産の価値評価としては、遺産分割の際には、相続税評価額(=税法上の価格)ではなく、実勢価格(=民法上の価格)を基準にする必要があります。相続税評価額(=税法上の価格)よりも実勢価格(=民法上の価格)の方が一般的にはかなり高いので、この点特に注意する必要があります。 

相続人全員が相続を希望している場合には、価値が高くなるような算出を行えば丸く収まります。一方で、相続した不動産の管理責任が生じるなどのことから、不動産の相続を望まない相続人もいます。 

その場合、不動産の価値を高く評価したい意見と、低く評価したい意見に分かれてしまい、これが争いに発展することがあります。 

もちろん相続放棄により、相続人が有する権利及び義務を一切引き継がないようにすることも可能です。 

この場合も事前にその旨を弁護士に伝えておき、弁護士同士で協議を行ってもらうことで、大きなトラブルを防ぐことに繋がるでしょう。 

まとめ

不動産相続が必要となっている場合には、相続人同士でのトラブルの防止や、法的な問題に発展しないためにも、専門家である弁護士に依頼し進めてもらうことを強く推奨します。 

また、不動産相続を依頼する弁護士事務所をお探しの方は、ぜひお気軽に弁護士法人M&A総合事務所までご連絡ください。