種類株式とは?普通株式との違いやメリットデメリットなど仕組みを解説
会社法では、基本的にすべての株主は1株につき平等な権利を持つと定められていますが、株式会社は定款によって異なる権利を持つ株式を発行することが認められています。
こうした株式は「種類株式」と呼ばれ、これを保有する株主は、通常の株式を持つ株主とは異なる権利や待遇を受けることができます。この特性を活かし、種類株式は事業承継やM&Aなど、さまざまな場面で活用されています。
この記事では、会社法で規定されている9種類の種類株式の内容や特徴について詳しく解説します。また、種類株式の活用におけるメリットとデメリット、さらにその発行に必要な手続きについても紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
種類株式とは
各株式の権利が同一である普通株式とは異なり、配当や残余財産の分配や議決権、譲渡などに関する事項について、特典や制限があるなど株主の権利内容が異なる定めをした株式のことを、種類株式と呼んでいます。
会社法では、定款で定めることで、企業が複数の異なる権利内容を持つ株式を発行することが認められています。一般的に、企業が発行する株式は「普通株式」と呼ばれ、すべての株主が同一の権利を持つものです。これに対して、特別な権利を持つ株式が「種類株式」として分類されます。
2001年の商法改正(2002年4月1日施行)により、経営の安定を目的として、種類株式の発行がより広く認められるようになりました。旧商法では種類株式の発行に厳しい制約がありましたが、この改正によって発行できる種類が増え、条件も緩和されたため、企業はさまざまな場面で種類株式を活用できるようになりました。
種類株式を発行する目的
企業が種類株式を発行する主な目的を下表にまとめました。
種類株式の目的 | 補足 |
事業承継対策 | 多くの中小企業が直面する事業承継の課題に対して、種類株式の活用は効果的な解決策となり得ます。株式が広く分散している場合、後継者に十分な議決権を集中させることが難しくなり、経営が円滑に引き継げないリスクが生じる可能性があります。
株式会社では、議決権の数が経営への影響力を決定するため、後継者が少ない株式しか持たないと、事業承継後に経営の安定性が損なわれる恐れがあります。
この課題を克服するために、後継者には議決権を持つ普通株式や拒否権付き株式を継承させる一方で、経営に関与しない相続人には議決権のない株式を分配する方法が有効です。こうした種類株式の活用により、事業承継後もスムーズに経営を続けることが可能になります。 |
合弁会社の設立 | 複数の企業が合弁会社を設立する際に、種類株式を活用することで、より柔軟な組織設計が可能になるケースが増えています。通常、各企業が同等の割合で普通株式を保有する場合を除けば、少数株主は株主総会での議決権が制限されてしまいます。
しかし、種類株式を導入することで、持ち株比率にかかわらず、剰余金の配当や残余財産の分配を柔軟に設定することができます。また、無議決権株式を利用すれば、特定の役員に対してインセンティブを提供することも可能です。
このように、出資比率による不平等を解消する点で、合弁会社の設立時に種類株式を採用することは非常に効果的な手段となります。 |
資金調達 | 種類株式は、企業の株式をより魅力的にするためのさまざまな機能を備えています。例えば、優先的な配当や残余財産の分配が約束された種類株式は、普通株式に比べて投資家にとって経済的なメリットが大きいです。
また、取得請求権が付いた種類株式は、投資家が安心して投資を行うための手段として利用されます。この権利により、株主は保有する株式を企業に買い取ってもらうことができ、投資リスクを軽減できます。 |
種類株式発行会社とは
定款に基づいて、会社法第108条第1項で定められた異なる権利内容を持つ2種類以上の株式を規定している株式会社は、種類株式発行会社とみなされます。そのため、実際に複数の株式を発行していなくても、定款に2種類以上の株式を規定しているだけで、種類株式発行会社として扱われます。
種類株式発行会社が複数の種類株式を実際に発行する際には、発行可能な種類株式の総数や特定の事項を定款に記載する必要があります。ただし、会社法で認められていないものを除けば、定款に記載された9つの種類株式の内容を自由に組み合わせて発行することが可能です。
また、指名委員会等設置会社や公開会社においては、取締役などの選任権が付与された種類株式の発行が禁止されている点に注意が必要です。
種類株式の内容
会社法に定められている9つの種類株式の各内容について順番に解説します。
配当優先(劣後)株式
剰余金の配当において、他の株式よりも優先的に受け取れる、あるいは後回しにされる株式を指します(会社法第108条第1項第1号)。
配当優先株式は、企業が利益を配当する際に、普通株式よりも優先的に配当を受け取る権利が付与された株式です。この株式は、安定した収益を求める投資家にとって魅力的な選択肢となります。企業が利益を確保した場合、まず配当優先株式の株主に対して配当が支払われ、その後、普通株式の株主に配当が行われます。
配当劣後株式は、企業が利益を配当する際に、普通株式の配当が優先される株式です。この株式は、一般的に高いリスクを伴うため、リスクを取る代わりに他の条件で有利な点が設定されることが多いです。配当劣後株式の株主は、普通株式の株主に対する配当が終了した後に、配当を受け取ることになります。
残余財産優先(劣後)株式
これは、会社が解散や清算する際に、債務をすべて支払った後に残る資産(残余財産)の分配方法や優先順位、またその財産の種類を定めた株式です(会社法第108条第1項第2号)。
残余財産優先株式は、企業が解散や清算を行った際に、普通株式よりも優先して残余財産を受け取る権利を持つ株式です。この株式は、投資家にとって、企業が解散する場合でも投資資金を回収できる可能性が高く、リスクを低減するための手段となります。特に、安定性を重視する投資家にとって魅力的な選択肢です。
議決権制限株式
株主総会での決議事項に対して議決権を行使できない株式のことを指します(会社法第108条第1項第3号)。
この制限は、完全に議決権が無効になる場合や、特定の議題に関してのみ議決権が制限される場合があります。企業が議決権制限株式を発行する目的は、通常、経営権を集中させたい場合や、特定の株主が過剰な影響力を持たないようにすることにあります。
議決権制限株式は、特にスタートアップ企業やファミリービジネスなどでよく利用されます。例えば、創業者が経営権を保持したまま外部から資金を調達したい場合、議決権制限株式を発行することで、新たな投資家に配当を提供しながらも、経営の主導権を渡さずに済みます。また、大企業においても、特定の事業部門に対する独立性を持たせつつ資金調達を行うために、議決権制限株式が活用されることがあります。
譲渡制限株式
特定の株式や株式の種類に対して、譲渡する際に会社の承認が必要となる株式を指します(会社法第108条第1項第4号)。
譲渡制限株式は、株式の譲渡に際して会社の承認が必要とされる株式です。通常、譲渡制限株式を第三者に売却する場合、売却前に会社の取締役会の承認を得なければなりません。この仕組みにより、企業は望ましくない第三者が株主になるのを防ぎ、経営権の安定を保つことができます。
譲渡制限株式は、特にスタートアップ企業やファミリービジネスなどでよく利用されます。これらの企業では、経営陣が会社のコントロールを維持しつつ、戦略的なパートナーや信頼できる投資家から資金を調達するために、譲渡制限株式を発行することがあります。また、株式を家族や社員に限って保有させることで、企業の方向性を一貫させることも可能です。
取得請求権付株式
特定の株式や一部の種類株式について、株主がその株式を会社に買い取るよう請求できる権利がある株式を指します(会社法第108条第1項第5号)。
例えば、株式を一定期間保有した後に、株主が資金の回収を希望する場合、この権利を行使することが可能です。この権利は、株主にとって投資資金を確実に回収できる手段を提供し、企業にとっては株式の発行や資金調達を行う際の柔軟性を高めることができます。
取得請求権付株式は、スタートアップ企業や中小企業が資金調達を行う際によく利用されます。例えば、新規事業に対してリスクを取りたくない投資家に対し、取得請求権付株式を発行することで、投資資金の回収を保証しつつ、企業としても必要な資金を集めることが可能です。また、企業の成長段階に応じて株主が取得請求権を行使することで、企業と投資家の双方にとってメリットのある関係を築くことが可能です。
取得条項付株式
特定の株式や一部の株式において、会社が一定の条件を満たした場合に、その株式を強制的に取得できる権利が付与された株式を指します(会社法第108条第1項第6号)。
この条件は、特定の日付やイベント、企業の業績など、さまざまな要因に基づいて設定されます。取得条項付株式は、企業が将来的な株主構成を計画的に管理したい場合や、特定の株主に対する株式の保有期間を制限したい場合に利用されます。
取得条項付株式は、中小企業やスタートアップ企業が資金調達を行う際に、将来的な資本構成のコントロールを目的として利用されることがあります。例えば、創業者が一定期間後に投資家から株式を回収し、経営権を取り戻すために取得条項付株式を発行するケースが考えられます。また、特定のプロジェクトの進捗に応じて、投資家の株式を企業が取得するような場合にも、この種類株式が利用されます。
全部取得条項付株式
会社が株主総会の特別決議を経て、その種類の株式全てを取得できる権利が付与された株式を指します(会社法第108条第1項第7号)。これは、会社法第107条第2項第3号で規定されている全株式に取得条項を付けるケースに似ていますが、この種類株式は特定の種類株式にのみ適用され、他の株式には影響を与えない点で異なります。
拒否権付株式
株主総会や取締役会での決議事項において、通常の株主総会の決議に加え、種類株主総会の決議も必要とされる株式を指します(会社法第108条第1項第8号)。
この株式を保有する株主は、企業が行う重要な意思決定(例えば、合併・買収、資本増強、定款変更など)について、その決定を否決することができ、これにより企業の方向性に強い影響力を持つことができます。
拒否権付株式は、敵対的買収の防止策や事業承継を行う企業のほか、合弁企業やベンチャーキャピタルが関与する企業で利用されることが多いです。例えば、創業者が持つ経営権を保護しながら、外部投資家から資金を調達する場合、創業者に拒否権を持たせることで、企業の重要な意思決定に対する影響力を維持できます。また、戦略的パートナーが企業に対して投資を行う際、彼らの利益を守るために拒否権付株式が発行されることがあります。
役員選任解任権付株式
この種類株式は、公開会社でも委員会等設置会社でもない企業が発行でき、種類株主総会において取締役や監査役の選任・解任に特別な権利を持つものです(会社法第108条第1項第9号)。
これにより、特定の株主が企業の経営陣に対して強い影響力を持つことが可能となり、企業の方向性や経営方針に対するコントロールを強化できます。
種類株式のメリット
ここでは、会社と株主それぞれの視点から、種類株式を発行する際のメリットについて解説します。
企業側のメリット
まず、企業側の主なメリットを取り上げます。
資金調達の難易度低下
種類株式の発行には、資金調達を効率化する利点があります。特に配当優先株式や残余財産優先株式などは、優先的な権利が確保されるため、特定の投資家に人気があり、その結果として株価が上昇しやすくなります。これにより、会社は少ない発行株数でも多くの資金を集めることが可能です。
また、取得請求権付株式の発行も効果的な資金調達手段です。この種類株式を持つ株主は、いつでも会社に対して株式の取得を請求できるため、投資リスクが軽減されます。これにより、取得請求権付株式は投資家にとって魅力的であり、普通株式よりも高い価格で取引されることが多く、企業の資金調達を一層円滑に進めることが可能です。
経営の自由度向上
議決権制限株式を持つ株主は、定款の規定により、通常は株主総会での議決権を行使できません。これにより、会社の経営には関与できないことになります。
また、譲渡制限付株式や取得条項付株式、全部取得条項付株式を利用することで、会社にとって不都合な人物が株主となって経営に干渉することを防止できます。
これらの種類株式を活用することで、株主による経営への干渉を避け、経営権を会社の経営陣に集中させることが可能になります。その結果、経営陣が迅速かつ効率的に意思決定を行い、会社の運営や事業承継をスムーズに進めることができるようになります。
株主側のメリット
株主にとっての利点は、自身の投資目的に合った株式を選べる点です。例えば、優先配当付株式や取得請求権付株式は、通常の株式よりも投資リスクを抑えられるため、安心して投資できる選択肢となります。また、会社経営に直接関与する意図がない株主にとっても、種類株式は有用な制度であり、投資の幅を広げることができるでしょう。
種類株式のデメリット
種類株式には利点がある一方で、デメリットも存在します。ここでは、会社側と株主側のそれぞれの視点から、種類株式の発行に伴うリスクや問題点を解説します。
企業側のデメリット
種類株式の発行には、通常の普通株式と比較して、法的手続きや社内管理が複雑化するというデメリットがあります。種類株式は、通常の株式とは異なる特別な権利や条件を設定するため、定款の変更や株主総会での特別決議が必要になることが多いです。また、種類ごとに異なる権利内容を管理するため、社内の管理体制も強化しなければならず、運用コストが増加する可能性があります。
また、種類株式を発行する際には、投資家に対して透明性を確保することも求められます。種類株式は複数の条件や権利を伴うため、投資家に対してその内容を明確に説明し、理解を得ることが重要です。これを怠ると、投資家との信頼関係が損なわれ、将来的な資金調達が難しくなるリスクがあります。種類株式の内容に関する情報開示も通常の株式よりも複雑になり、企業の負担が増える可能性があります。
株主側のデメリット
種類株式は9種類の要素を組み合わせて設計されるため、その内容をしっかり理解することが重要です。株主自身の権利に直結するため、出資前に種類株式の内容を十分に把握しておく必要があります。しかし、その複雑さから、理解が難しいことも少なくありません。
また、優先株式のように配当が優先される株式もありますが、必ずしも配当が保証されているわけではありません。企業の業績が悪化したり、配当方針が変更されたりすると、期待していた配当が受け取れないリスクがあります。これは、特に配当を重視する投資家にとって大きなデメリットとなる可能性があります。
種類株式の発行に必要な手続きの流れ
下表に、種類株式を新たに設定・発行する手続きの大まかな流れをまとめました。
手続きの流れ | 補足 |
①取締役会の決議
(招集決定) |
最初に取締役会で定款変更や募集株式発行の意思決定を行います。その後、この決議を株主総会で承認してもらうために、株主総会の招集を決定します。取締役会の決議は、出席取締役の過半数の同意が必要です(会社法第369条第1項)。
実務では事前に投資家との間で投資契約の合意を得た後、取締役会での決議を経て、株主総会で承認を進めることが一般的です。 |
②株主総会の招集 | 取締役会での決議に基づき、株主へ株主総会の招集通知を送ります。
株主が1人の場合は、書面決議(会社法第319条1項)で済ませるか、招集手続きを省略して(会社法第300条)、株主総会を行うのが通常です。 |
③株主総会の決議 | まず、第1号議案として種類株式に関する定款変更を特別決議で承認します。その後、第2号議案で募集株式発行のための募集事項を特別決議で決定します(会社法第199条第1項)。
決議する事項には、以下が含まれます。
募集株式数の上限や払込金額の下限だけを決議し、その他の募集事項を取締役会に委任することも可能です(会社法第200条第1項)。 |
④募集事項等の通知 | 募集株式の引受け申込みを希望する者に対し、次の事項を通知します(会社法第203条第1項)。
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⑤引受け申込み | 募集株式の引受けを希望する者は、以下の情報を記載した書面を会社に提出する必要があります(会社法第203条第2項)。
通常、この申込みに関する書類は、募集事項の通知と一緒に送付されるため、それに記入・押印して返送します。 |
⑥取締役会の決議
(株式の割当て) |
取締役会で、申込者の中から誰に何株を割り当てるかを決定します。
例えば、100株の引受けを希望した申込者に対し、50株のみを割り当てることも可能ですが、100株以上を割り当てることはできません(会社法第204条第1項)。 |
⑦割当ての通知 | 取締役会で決定した割当て株数を、各申込者に通知します(会社法第204条第4項)。
この通知は、払込日の前日までに行う必要があるため、株主総会や取締役会の決議日を払込日とすることはできません。ただし、総数引受契約方式の場合は、この制限はなく、1日ですべての手続きを完了することも可能です。 |
⑧出資の履行 | 引受人は、払込期日または払込期間内に、募集株式の全額を会社に払い込む義務があります(会社法第208条第1項)。
もし払込期日までに入金が完了しない場合、株主としての権利を失うことになります(会社法第208条第5項)。
手続き上、発行会社の口座に出資金が着金していることが必要です。 |
⑨登記申請 | 増資の効力が発生したら、管轄法務局に登記申請を行います。主な必要書類は次のとおりです。
登記申請は、効力発生から2週間以内に行わなければなりません(会社法第915条第1項)。また、投資契約書に登記後の登記簿謄本提出期限が記載されている場合、その期限内に対応する必要があります。 |
種類株式の組み合わせ例
企業が主に用いている、種類株式を発行する組み合わせ例を紹介します。
事業承継時(「拒否権付株式」と「取得条項付株式」)
事業承継にあたって、後継者に対して現経営者が保有する大部分の株式を譲渡し、普段の経営を任せていく場合に使用される組み合わせです。
しかし、後継者に経営を一任するにあたっても、重要な決定においては現経営者として心配な点が残ることがあります。そのような場合、現経営者が拒否権付株式を1株保有しておくことで、万が一後継者が誤った判断を下した際には、拒否権を行使してその決議を否決することができます。どのような内容に対して拒否権を行使できるかは、拒否権付株式を発行する際にあらかじめ決めておく必要があります。
また、現経営者が拒否権付株式を持ったまま急逝した場合、その株式が相続の対象となるリスクがあるため、現経営者の死亡や成年後見開始を条件として、会社がその種類株式を強制的に取得できる取得条項を併せて設定しておくことが重要です。
資金調達時
続いて、企業の資金調達時に用いられる、種類株式を発行する組み合わせ例を2つ紹介します。
「議決権制限株式」と「配当優先株式」と「取得条項付株式」
経営には基本的に関わらないが、投資目的で株主でありたいと考える人がいる場合に、この組み合わせが活用されることがあります。
経営に関心が薄い株主が通常の株式を保有すると、株主総会に出席しなかったり、感情的な判断で議決権を行使したりする可能性があり、会社の円滑な意思決定に支障をきたすおそれがあります。
そこで、そういった株主には議決権制限株式を保有させ、その代わりに配当金について通常の株式よりも優先的に受け取れる権利を付与します。また、当該株主が死亡した際に、その株式が相続人の間で分散しないよう、取得条項も併せて設定しておくことが望ましいです。
「議決権制限株式」と「配当優先株式」と「取得請求権付株式」
上記で説明した組み合わせにおいて、「取得条項」ではなく「取得請求権」を設定することで、投資家にとって将来的に投資資金を回収する手段が保証されるため、特に投資リスクを回避したい投資家に対して魅力的です。
企業にとっては、資金調達時に投資家に一定の安心感を提供し、資金調達を円滑に進めやすくなります。
合弁会社の設立時(「議決権制限株式」と「配当優先株式」)
合弁会社を設立する際には、複数の出資者や企業が関与するため、各々の出資者の利害を調整し、会社の経営を安定させることが求められます。このとき、種類株式を効果的に組み合わせることで、出資者間のバランスを取りながら、会社の目的に応じた柔軟な経営を実現することが可能です。
まず、議決権制限株式を合弁会社の設立時に活用することで、特定の出資者に対する影響力を抑制し、経営に対する過度な干渉を防ぐことができます。例えば、技術提供や資金提供を主目的とする出資者には、経営の方針に影響を与えない範囲で出資を促し、経営権は別の出資者に集中させるといった運用が可能です。
また、配当優先株式の活用により、出資者は安定的な収益を期待でき、資金提供に対するインセンティブが強化されます。合弁会社の設立にあたって、資金を提供する出資者に対して、配当優先株式を発行することで、投資リスクを低減させつつ、安定した配当を保証することが可能です。これにより、出資者の資金提供意欲を高め、長期的な関係構築を促進します。
種類株式のまとめ
種類株式は、企業にとって非常に有用な制度です。9つの種類株式の特性をしっかりと理解し、活用できれば、事業承継や資金調達、合弁会社の設立といったさまざまな場面で効果的に利用することができます。
また、種類株式は複数のタイプを組み合わせて使用することも多く、実際の事例を参考にしながら、最適な種類株式を選べるようにしておくことが重要です。