持株会社を活用した節税方法とは?節税対策から事業承継対策まで詳細解説

持株会社の設立は、企業の経営戦略の一環として多くのメリットをもたらします。その中でも特に注目されるのが、節税効果と事業承継対策です。
そこで、本記事では、持株会社を活用した具体的な節税方法について詳しく解説し、さらに、持株会社の設立によるメリットや、事業承継対策としての有効性についても紹介します。
持株会社とは
持株会社とは、他の会社の株式を保有し、その経営を管理・支配するための会社を指します。グループ企業全体の戦略的な運営や管理を効率化するための重要な役割を果たします。
持株会社には、純粋持株会社と単純持株会社の2つの形態があります。それぞれ、以下のような特徴があります。
- 純粋持株会社:他の企業の株式を保有し、その経営を支配することを主たる事業とする会社。具体的な事業活動を行わず、グループ企業の管理や経営戦略の立案に専念する。
- 単純持株会社:他の企業の株式を保有すると同時に、自らも事業活動を行う会社。事業活動と経営管理の両方を行うため、幅広い経営戦略を実現できる。
持株会社の設立によって相続税や贈与税、法人税の節税効果が期待できます。
以下、それぞれの節税方法を説明していきます。
持株会社の設立による相続税の節税対策
相続税は、財産の所有者が死亡したときに相続人に対して受け継がれる財産について発生する税金です。会社の経営者が死亡した場合、経営者個人の財産に加えて、経営者が保有する株式も相続税の課税対象となります。
経営者が株式を後継者に引き継いだ場合、株式の量や評価額に比例して相続税の金額も上がることになります(最大55%)。したがって、規模が大きくて業績が良い会社ほど相続税が高くなります。
他方、持株会社を設立して保有株式を移転させると、相続税の負担を軽減することが可能となります。
借入金を利用しての相続税対策
持株会社を設立し、その持ち株会社が借入金をして経営者の保有株式を買い取ることにより、株式の評価額を下げることができ、相続税の金額も下がります。
株式の評価方式として、会社の資産を時価で評価する純資産価額方式があります。この方式を採用している会社では、資産が多いほど株価が高くなり、相続税の金額も大きくなります。
もっとも、持株会社が借入金で株式を買い取った場合、借入金は負債として評価されるため、純資産が小さくなり、株価の評価額も下げることができます。その結果、相続税も軽減されることになるのです。
37%控除制度を利用しての相続税対策
株価につき純資産価額方式を採用している場合、37%控除の制度を利用することで、自社株の評価を下げ、相続税を抑えることもできます。
経営者が自社株を相続させる場合、自社株を評価して算出した金額について相続税が課されることになるため、高収益の事業などを有していると、評価額が大きくなり、相続税もその分大きくなります。
他方、高収益の事業を持株会社として独立させ、その株式を持株会社に移し、経営者が持株会社の株主となる方法があります。
この方法によると、株価を算出する際に、会社の資産に含まれる含み益から将来支払うことになる税金分をあらかじめ差し引くという制度を適用することができるのです。
持株会社による贈与税の節税対策
事業承継にあたって、後継者に自社株を贈与すれば高額な贈与税が発生することになります。贈与税は累進課税方式であり、株式の評価額が高ければ高いほど、税率も上がるためです。
これに対し、持株会社に株式を譲渡したうえで、持株会社を後継者に引き継ぐと、贈与税は発生しません。 この場合は売買による株式譲渡となり、株式の譲渡所得を得た経営者に対して譲渡所得税が課されることになります。もっとも、譲渡所得税の税率は一律20.315%であり、贈与税よりも税額を抑えることが可能となります。
持株会社による法人税の節税対策
持株会社を設立することで、グループ通算制度を適用することができます。
この制度は、要件を満たしたグループの会社間で、法人税についての損益を通算するというものです。これを適用した場合、グループ内で業績の良い会社と悪い会社の損益を合算して法人税を申告することができます。その結果、グループ全体の課税所得を圧縮することができ、法人税の税額を抑えることが可能となります。
また、持株会社は子会社から発生した配当によって利益を得るのですが、100%子会社からの配当金については、原則として法人税は課税されません。そのため、事業承継をした後も法人税の節税をすることが可能となります。
持株会社を設立するメリット
節税面以外にも、持株会社を設立するメリットは様々存在します。
経営資源を最適化できる
持株会社を設立すると、経営資源を最適化することができます。特に人材、物資、資金、情報などの主要な経営資源を最大限に活用することが可能になります。
これは、一つの企業を複数の事業に分割し、それをホールディングスの傘下に置くことで、組織がスリム化されるためです。
具体的には、以下のように経営資源が最適化されます。
- 各事業部が独立した会社となるため、経営判断や意思決定が迅速に行える
- 各事業部門を独立した企業として可視化することで、状況の把握が容易になる
- 不採算部門を切り離すことで、好調な事業の財務状況が改善され、資金調達がしやすくなる
- 新規事業への参入が、新会社の設立によってスムーズに進む
事業の規模をそのままに、経営資源を最適化し、機動力を高めることが可能となるのです。
分社化によるリスク分散が図れる
現代の企業は以下のようなリスクに直面しており、リスク分散の重要性はますます高まっています。
- 業績の悪化
- 製品の不具合
- 行政からの指導
- SNSでの炎上
- 個人情報の漏洩
- 感染症による業務停止
- 自然災害や事故
特にインターネット上での情報の拡散力は強力で、たとえ誤報であっても風評被害やブランドイメージの低下など、実際の被害が発生することがあります。
このようなリスクに対応するためには、一社に集中した経営体制を見直し、事業を分社化してホールディングスを設立することが有効です。これにより、リスクを効果的にヘッジすることができます。
株式集約を円滑に遂行できる
相続による事業承継では、複数の相続人がいる場合、後継者以外にも会社の株式が分配される可能性があります。そして、株式が分散すると経営権を集中させることが難しくなり、事業承継後の会社運営に混乱を招くおそれがあります。
そこで、持株会社を活用すれば、持株会社が株式を取得するため、後継者に経営権を集約することが可能です。これにより、事業承継後の混乱を防ぎ、スムーズな経営移行が実現できます。
事業承継における後継者育成を進められる
持株会社を設立することで、複数の子会社を持てるようになり、社長や役員などのポストを増やすことができます。これにより、経営権を段階的に後継者に移譲することが可能となります。
後継者は実際の経営経験を積みながら、徐々に責任を引き継ぐことができるため、スムーズな事業承継が実現します。
持株会社を設立するデメリット
持株会社の設立にはいくつかのデメリットも存在します。持株会社を設立する前に、デメリットも十分に理解し、慎重に検討することが重要です。
マネジメントの難易度が上昇する
グループ全体を統括することは1つの会社を経営するよりも高度なスキルを求められます。例えば、以下のようなスキルです。
- グループ内のコミュニケーションを円滑にするための高度なスキル
- 経営資源を効果的に配分するための戦略的な視点
さらに、権限を委譲することで、不正行為の監視が甘くなるリスクや、子会社間の過剰な競争が対立を生む可能性にも注意が必要です。
ホールディングス化によって求心力が失われると、組織が分裂し崩壊するリスクもあります。この点を十分に認識しながら、ホールディングスの運営に取り組む必要があります。
事務処理の負担・費用が増加する
ホールディングスに属する企業に中小企業が含まれる場合、親会社の資本金などが特例適用の基準として影響することがあります。
例えば、中小企業向けに設定された交際費の定額控除限度額などは、親会社の資本金が大きい場合には特例を受けられないことがあります。
これにより、細かい事務処理が増え、人件費がかかる可能性がある点もデメリットと言えます。
子会社の赤字が全体に悪影響を与える
持株会社化により、損失が発生した場合の影響を最小限に抑えることができますが、子会社が赤字を出すとグループ全体のイメージダウンにつながる可能性があります。悪評は一部の子会社に留まらず、グループ全体の信用度にも悪影響を及ぼすおそれがあります。
持株会社の設立で節税を図る際の注意点
持株会社を設立して節税を図ることは、企業にとって有効な戦略となり得ますが、適切に運用しなければ逆効果となる可能性もあります。
そこで、持株会社の設立で節税を図る際に注意すべきポイントを解説します。
税務署に否認されるリスクがある
税務署は、実態のない持株会社の設立を節税目的と見なし、否認する可能性があります。持株会社が実際に経営活動を行っているか、実質的な管理業務を行っているかが確認されるため、持株会社設立の際には実態を伴った運用を行うことが求められます。
経営の効率化や事業承継の観点から持株会社の必要性を判断するためには、企業法務に詳しい弁護士などの専門家と相談しながら進めることが重要です。
想定外の課税による資金繰り悪化のおそれがある
持株会社の設立が税務署に認められなかった場合、持株会社は予期していなかった税金を支払うことで、資金繰りが厳しくなる可能性があります。
節税効果を期待して持株会社を設立するケースが増えていますが、税務署に承認されないリスクを十分に理解していないことが多いです。
節税効果だけを期待して安易に持株会社を設立することは、リスクを伴うため注意が必要です。
持株会社を設立する方法
持株会社を設立するには一般的に3種類の方法があります。それぞれの方法を採用する際の流れを順番に解説します。
株式移転方式
株式移転方式は、既存の会社が新たに設立する持株会社に対して全株式を移転し、その対価として持株会社の株式を受け取る方法です。
この方法は主に経営統合を目的としており、複数の企業が経営統合を行った後に、新たに設立した会社を親会社とするものです。
この手続きを進めるためには株主総会での決議が必要です。また、新設会社では資本金の設定や定款の作成に加えて、スムーズな会計処理が求められます。なお、許認可の移転手続きは不要です。
株式移転方式は、既存の会社が新たに持株会社を設立し、既存の会社の全株式を持株会社に移転するという流れになります。この株式移転により、既存の会社は持株会社の完全子会社となります。
その後、持株会社が新たに発行した株式を既存の会社の株主に交付します。この交付により、既存の会社の株主は持株会社の株主となります。
株式交換方式
株式交換方式は、既存の企業同士が株式を交換する方法です。
株式移転方式は新たに親会社を設立するのに対して、株式交換方式はすでに存在している会社を親会社にします。
大まかな流れとしては、親会社となる企業が子会社となる企業の全株式を取得し、その対価として親会社の株式を交付します。この方法を実施するには、事前に株価や手続きの詳細について十分な打ち合わせが重要です。
会社分割方式
会社分割方式は、既存の会社の事業部門を新たに設立した子会社に分割し、元の会社が持株会社として機能する方式です。この方法により、元の会社は事業活動を行わず、純粋持株会社として子会社の経営を統括します。
会社分割方式を用いる際は株主総会での特別決議が必要です。また、業種によっては許認可を継承できない場合があり、その際は新たに認可や免許、登録手続きが必要です。
なお、株式の移動がないため、株式変更手続きは不要です。
事業承継対策としての持株会社の活用
持株会社が事業承継対策として活用できる理由
持株会社の設立は、単純に節税効果が期待できるだけでなく、後継者への株式移転がスムーズに進んだり、株式の分散リスクを回避できたりする効果が期待できることも相まって、事業承継対策として活用されることもあります。
持株会社を活用した事業承継として最も一般的なのは、新しい会社を設立し、金融機関から借り入れを行い、その資金で事業会社を子会社化するという方法です。
持株会社を活用した事業承継の注意点
持株会社を活用する事業承継には以下のようなデメリットがあります。
- 持株会社の設立により多額の借入金を抱えることになり、返済が困難になる
- 節税目的だけで持株会社を設立すると税理士から問題視される
持株会社が先代経営者から株式を買い取るためには多額の資金が必要となり、通常は金融機関から融資を受けます。その結果、持株会社は大きな借入金を抱えることになり、子会社の業績が悪化すると返済が困難になるリスクがあります。
また、節税目的で持株会社を設立すると税務署から問題視される可能性があります。
したがって、経営や事業承継の効率化などの正当な理由を持つことが重要です。基本的には、弁護士や税理士などの専門家と相談しながら進めることが推奨されます。
先代経営者が持株会社を設立する場合のポイント
他にも、先代経営者が持株会社を設立し、事業会社の株式をその持株会社に売却することで株式評価額を抑え、後継者に株式を贈与または相続させる方法があります。
その際、以下の点に留意する必要があります。
評価額を抑えるために株式保有特定会社に該当しないよう注意する
株式保有特定会社とは、持株会社が所有する子会社株式の割合が50%以上の会社を指します。
株式保有特定会社に該当すると、持株会社の株式評価額は純資産価額方式という割高な計算方法で算出されるため、評価額が高くなりやすいです。
このような状態を避けるためには、不動産や投資信託を購入して子会社株式の割合を減らす方法があります。しかし、これには合理的な理由が必要で、そうでない場合は税務上の問題が生じる可能性があります。
そのため、弁護士や税理士など企業税務に詳しい専門家と相談しながら進めることが重要です。
持株会社を活用した節税方法まとめ
持株会社の設立を通じて、節税効果の獲得や事業承継の円滑化を実現するためには、法令遵守、適切な手続き、専門家の助言が必要不可欠です。持株会社を効果的に活用することで、企業は財務上の安定性を高め、将来的な成長を確保できるでしょう。
企業経営者や財務担当者などが持株会社の設立を検討する際には、本記事で紹介したポイントを参考に、慎重に計画を進めることをお勧めします。
持株会社設立の具体的な計画や実行にあたっては、専門家の助言を受けることで、最適な節税対策と事業承継を実現しましょう。


