会社相続に伴う事業承継問題について
お困りではありませんか?

中小企業、とりわけ、オーナー企業では、オーナー経営者の相続問題と会社の事業承継の問題は切り離せない関係にあります。
現在、オーナー経営者の高齢化が急速に進む一方で、相続問題や事業承継問題を後回しにしている企業が少なくありません。
しかし、何もせずに放置すると、後継者が経営権を確保できなかったり相続争いになってしまうこともあります。会社を引き継ぐことができず、廃業に追い込まれたり、相続人に多額の相続税がかかってしまうこともあります。
こうした事態を防ぐには、早めに会社相続・事業承継対策を講じることが大切です。
会社の相続に伴う事業承継問題が今日の課題になりつつある
2025年問題とは、団塊の世代が2025年以降、75歳を超えることによって発生するさまざまな問題ですが、中小企業の事業承継も同様の問題を抱えています。
現在、オーナー企業においてオーナー経営者がリタイアしつつあり、後継者にきちんと経営を事業承継・事業の引継ぎをして会社相続をさせることが今日の課題となりつつあります。
他方、中小企業は400万社以上あるとされていますが、事業を後継者に承継させるに当たって何らかの障害があると認識している経営者は、全体で4割強に上っているというアンケート結果もあります。
多くのケースでは、事業を後継者に承継させるに当たって何らかの障害があると認識しつつも、そのまま特段の対応がされることなく、会社相続・事業承継が発生してしまいます。
オーナー企業の事業承継・事業の引継ぎは、遺言・相続などの話とも関連してきますのでタブー視されており、その必要性の割には、なかなか、十分な対策が進まないのです。
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会社相続・事業承継対策が進まない理由
オーナー企業において高齢となったオーナー経営者が勇退したり、後継者を決められないなど、会社相続、事業承継対策が進まない原因は主に次のとおりです。
- そもそも勇退(引退)するつもりがない
- 後継者がいない
- 取引先や従業員に引き止められている
- 事業承継の相談先がない・分からない
一つ一つ解説します。
そもそも勇退(引退)するつもりがない
今では、75歳以上でも元気な方が多くいます。オーナー経営者の方には、自分が元気なうちは、勇退するつもりなどないという方も少なくありません。
しかし、高齢者になると健康上のリスクはもちろん、事故に遭うリスクも高くなり、いつ、相続が発生するかわかりません。早めに対策を検討すべきです。
後継者がいない
後継者となる人材が社内にいないことも大きな原因の一つです。
後継者を育成してこなかった場合のほか、子どもなどの親族などで引き継いでくれる人がいない場合もあります。
このような場合は、親族内での承継にこだわらず、第三者への承継やM&Aも検討すべきです。
取引先や従業員に引き止められている
オーナー企業の場合、経営者の個人的な人間関係により経営が成り立っていることも少なくありません。経営者が勇退してしまうと、取引先とのパイプがなくなったり、従業員との人間関係が崩れてしまい、会社の経営が行き詰まってしまうこともあります。
そのため、取引先や従業員に引き止められる形で、なかなか、勇退できないことがあります。
事業承継の相談先がない・分からない
事業承継の相談を誰にしたらよいのか分からず、後回しになっていることがあります。顧問税理士などが事業承継の重要性について認識していない場合、相談しても世間話で終わってしまうこともあります。
また、子ども同士の仲が悪いなど、家族に問題を抱えている場合は、相続トラブルが生じることが予想でき、なんとかすべきと思いつつ、どうすべきかわからないまま時間が過ぎてしまうこともあります。
家族の問題と会社の問題は別と考えて、相続と事業承継が一体の問題であることに気づいていないこともあります。
会社相続・事業承継対策が行われなかった場合に噴出する問題
会社相続・事業承継はいつなんどき発生するか分からず、会社相続・事業承継が発生し、事業承継・事業の引継ぎが顕在化した後に対応していたのでは、対応しきれない可能性があり、様々な問題が噴出することとなります。
主な問題は次のとおりです
- 相続税の問題
- 経営権の問題
- 相続争いの問題
- 後継者の問題
一つ一つ確認しましょう。
相続税の問題
本来は自社株式の評価を低減させることができたにも係わらずそれが行われていなかった場合、巨額の相続税が課税されることになるかもしれませんし、他の相続人からの遺留分減殺請求により後継者が資金不足に陥り会社を泣く泣く手放さざるを得なくなり、自社株式が散逸することもあります。
経営権の問題
後継者に会社の株式や事業用資産を集約させることができずに、他の相続人に会社の株式や事業用資産が分散し、安定した経営権を確保できなくなり、会社の活力が失われることも多くあります。
相続争いの問題
相続人間で複数の相続人が事業承継したいと主張し、遺産分割がまとまらず、「争続」「お家騒動」が発生し企業の存続自体が危うくなるケースも頻発しております。
後継者の問題
そもそも、後継者がいない場合、会社相続・事業承継が発生した後に後継者が自動的に決まると期待してはいけません。ご子息やご親族が相続後いきなり経営をしようと思ってもできるものではありませんし、ご子息やご親族も事業を引き継ぐことを希望していないことが多くなっています。
ご子息やご親族に対しては、M&Aにより第三者に会社を売却し、それなりの資金を相続させた方が、ご子息やご親族のご希望に沿った自信に満ち溢れた人生を歩むことができるかもしれません。
かといって、M&Aにより第三者に会社を売却することも、相続が発生してからは不可能に近いでしょう。会社相続・事業承継が発生することにより経営者不在になった会社が生き永らえられるとは思えませんし、自然に企業価値を喪失し、自然消滅に近い方たちで会社が無くなってゆくのが普通です。
あるいは、役員・従業員又は第三者が経営を事実上支配し、オーナー家のコントロールがきかない状態になってゆくことが必定です。
会社相続・事業承継対策として何をすればよいのか
前述の通り、事業承継の準備不足は、「争族問題」や「経営権の不安定化」、そして「巨額の税負担」という取り返しのつかない問題を引き起こします。
これらのリスクを回避し、事業の引継ぎをスムーズに行うためには、相続法、会社法、税法などの法的見地からの検証・分析を踏まえ、以下の5つの視点から対策を体系的に講じていく必要があります。
- 後継者対策:誰に引き継ぐか(親族、役員、第三者)の選定と育成。
- 経営権対策:後継者が安定して経営できる議決権(株式)の確保。
- 相続税対策:自社株や事業用資産にかかる税負担の軽減。
- 納税資金対策:相続税を支払うための現預金の確保。
- 争族対策:親族間での遺産争いを防ぐための遺言や生前贈与。
この5つの視点に基づき、会社相続・事業承継対策として具体的に行うべき対策を解説します。
自社株の評価額を正しく算定・把握する
会社相続・事業承継対策の第一歩は、自社の価値(株価)と、それに伴う相続税の金額を正確に把握することです。
自社株の株価を算出することで、相続にどの程度の影響があるのかを把握します。非上場株式の評価は非常に複雑ですが、主に以下の方法が用いられます。
- 純資産価額方式:会社が解散したと仮定し、株主が受け取れる金額から計算する方法
- 類似業種比準方式:事業内容が似ている上場企業の株価や資産状況を参考にする方法
自社株の評価額が高ければ高いほど、将来の相続税額も高くなります。
この算出には複雑な計算が必要なため、相続税に詳しい税理士等に相談し、客観的な評価を得ることが不可欠です。
また、株式会社の場合は自社株が中心となりますが、オーナー保有の土地や個人事業の場合は、土地評価引き下げ対策の方が相続税対策としてより影響が大きい場合もあります。
後継者の決定と育成(後継者対策)
後継者を早期に決定して、いつでも経営を引き継いでいけるように育成を始めます。
ノウハウの承継など、後継者の育成には時間がかかることが多いのが通常なので、できる限り早く着手してください。
親族や社内に適任者がいない場合は、廃業を避けるため、第三者へのM&A(会社売却)を検討します。 M&Aにより、創業者は売却益を得て豊かな老後を送ることができ、会社・従業員・取引先を守ることができます。これも準備に時間がかかるため、早めに専門機関へ相談し、企業価値を高める準備を進めておくべきでしょう。
自社株の評価額を計画的に引き下げる(相続税対策)
自社株の評価額が高すぎると、多額の相続税や贈与税が発生し、後継者が会社を引き継ぐことができなくなるリスクがあります。これを防ぐため、計画的に株価を引き下げる対策を講じます。
- 役員退職金の支給:先代経営者への退職金支払いにより会社の資産を減らし、株式の評価額を下げます。
- 収益の圧縮:役員報酬を引き上げる、大幅な設備投資を行う、不良債権を処分するなどの方法で、会社の利益や純資産を減らします(ただし、役員報酬は適正と判断される範囲内に留める必要があります)。
- 優遇制度の活用:事業承継税制(相続税・贈与税の納税猶予・免除)は、税負担の軽減に有効ですが、要件や手続きが厳格なため、早めに専門家へ相談しましょう。
- 生前贈与の検討:贈与税の基礎控除(年間110万円)の範囲内などで、後継者へ計画的に自社株などの資産を贈与することで、相続財産を減らします。
経営権の確保と遺留分の対策(経営権対策、争族対策)
後継者が安心して事業を引き継ぎ、経営の不安定化を招かないようにするための対策を講じます。加えて、遺産分割時に遺留分侵害額請求を受けないようバランスを取ることも検討します。
- 議決権の集中:後継者が株主総会で支配権を発揮できるよう、発行済株式の3分の2以上を承継させることを目標とします。
- 公正証書遺言の作成:「誰に何を相続させるか」を法的に明確にするため、公証役場で公正証書遺言を作成します。自筆証書遺言と異なり、形式不備による無効や紛失のリスクを回避できます。
- 遺留分への配慮:後継者へ自社株を集中させる場合、他の相続人の遺留分を侵害しないように配慮が不可欠です。経営に関係しない遺産を後継者以外の相続人に承継させるといった対策を検討します。また、経営承継円滑化法の遺留分に関する民法の特例を活用し、生前贈与した株式や事業用資産の価額を遺留分を算定するための財産の価額から除外することも有効です。
納税資金の確保(納税資金対策)
自社株の評価額を算出した上で、高額になる相続税の納税財源を確保します。
特に、後継者が現金・預貯金を相続できなかった場合、自社株は換金性が低いため、「株は相続したが、税金を払う現金がない」という事態に陥りがちです。
その対策としては次の方法が有効です。
- 生命保険の活用:法人や個人で生命保険に加入し、後継者が死亡保険金等を受け取れるようにし、納税資金に充てられるようにします。
- 不動産等の活用:遊休資産の売却などにより、納税用のキャッシュを準備しておきます。
まとめ
事業承継・事業の引継ぎをスムーズに行うためには、相続法、会社法、資産税法などの法的見地からの検証・分析を踏まえた後継者対策、経営権対策、相続税対策、納税資金対策、争族対策が不可欠です。
また、後継者問題の解決のため、早い段階から後継者を育成するか、第三者へのM&A会社売却を検討し、手続きを進めておくべきでしょう。
会社の事業承継・事業の引継ぎを考える場合、後継者対策、経営権対策、相続税対策、納税資金対策、争族対策、さらにはM&Aなど、初めてのことだらけだと思います。
オーナー経営者の方がお一人で解決しようとするのではなく、会社相続・事業承継対策に詳しい弁護士にご相談ください。
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