事業承継対策が必要な理由とは?対策の方法や流れ、必要な会社をわかりやすく解説 

株式相続や不動産相続に
お困りではありませんか?

国内企業の9割を占める中小企業ですが、近年では経営者の高齢化と後継者不足が問題視されています。

事業承継は会社の存続に欠かせない取り組みですが、短期間での手続きではありません。

会社や経営者が保有する資産やノウハウを後継者に承継することで、次世代へとバトンを渡すのが事業承継です。

後継者の育成には時間を要しますし、相続問題や税金問題に向けての取り組みも必要となります。

この記事では、事業承継対策が必要な理由や方法、流れをわかりやすく解説します。

事業承継対策が必要な会社の特徴や成功させるポイントも合わせて解説しますので、ぜひ最後までお読みください。

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中小企業における事業承継の課題と現実

少子高齢化が進む日本において、経営者の高齢化は無視できない問題と言えます。

経営者の平均年齢は60〜70代と高齢化しており、数年後には引退が予想できます。

経営者の高齢化は企業の業績にも影響があり、赤字経営の企業ほど経営者の年齢が高い傾向にあるのです。

経営者が高齢化すると、長期的な戦略を立てにくくなり、課題の改善や設備投資などが遅れがちになるためです。

また、黒字であっても廃業をせざるを得ないケースも少なくありません。

東京商工リサーチによると、中小企業が廃業する際の約6割が黒字とのことです。

事業承継の手続きは複雑で、時間を要します。

後継者を探す必要もあるため、黒字であっても経営を続けられない企業もなかには存在します。

若い世代へ事業を承継し、自身は引退したいと考える中小企業の経営者も少なくありません。

とはいえ、事業承継は簡単ではありません。

中小企業において、事業承継ができていない企業が多いのが現状です。

事業承継対策が必要な3つの理由

事業承継対策を行うべき必要性としては下記の3つです。

  • 会社の事業の承継
  • 相続に関するトラブル防止
  • 事業承継税制の活用

それでは、ひとつずつ解説します。

会社の事業の承継

会社を存続させるうえで、経営者の持つ知識や経験、資産を後継者にうまく承継することが大切です。

経営者の属人性が高い企業の場合、スキルやノウハウの承継に数年を要する場合もあるでしょう。

大企業に比べて会社の規模が小さい中小企業ですが、事業承継に数年かかるケースも少なくありません。

承継に問題があると後継者は不安を抱えますし、経営が失敗して倒産するリスクも高まります。

相続に関するトラブル防止

事業承継対策は、相続問題を回避するためにも役立ちます。

相続人が多い場合、資産の相続に関するトラブルが生じます。

経営者が病気や事故で急になくなる可能性もゼロではありません。

相続の取り決めを行っていないと、相続問題が起こり得ますが、当事者だけの話し合いで解決するのは難しいと言えます。

相続に関するトラブルがきっかけとなり、従業員が不安を抱えて退職したり、取引先の金融機関から信用を失ったりと、経営難に陥るリスクもあるのです。

そのため、事前に事業承継対策を行い、誰にどのくらい相続するかを明確に決めておく必要があります。

事業承継税制の活用

相続税や贈与税の対策として、事業承継税制を活用する方法もひとつの手段です。

事業承継を行う場合、相続税や贈与税といった税金も解決すべき課題となります。

納税額は株式の評価額によって決まる仕組みで、現金預金がさほどない場合には資産を処分して納税するケースもあります。

そこで、事業承継税制を活用すれば相続税や贈与税の免除や全額猶予といった措置を受けられるのです。

ただし、事業承継税制を受けるには手続きが必要であり、一定の条件を満たせなければ猶予措置が取り消しとなる場合もあります。

また、初期段階では経営者個人の保証や会社資産に付された担保、連帯債務の有無を棚卸ししておくことが重要です。

スキームにより金融機関の同意・保証解除や担保付け替えが必要となるため、後継者の負担見通しに直結します。早期に保証・担保の一覧化を行い、金融機関と計画的に協議しましょう。

事業承継対策が必要な会社の特徴

事業承継対策は、下記のような会社が取り組むべきです。

  • 後継者が不足している会社
  • 相続人が複数いる会社
  • 経営者がひとりで決裁権を保有している会社

それでは、ひとつずつ解説します。

後継者が不足している会社

後継者問題は多くの中小企業が抱える課題のひとつです。

従来だと、親族内で承継するのが一般的でしたが、近年では少子化の影響もあり親族内に後継者がいないケースも珍しくありません。

後継者がいないと現役の経営者はなかなか引退できませんし、黒字であっても廃業をせざるを得ない状態となります。

数年〜数十年と培ってきたノウハウやスキルは消滅し、従業員は職を失ってしまいます。

廃業による影響は非常に大きいため、早めに後継者候補を選別しておく必要があるのです。

相続人が複数いる会社

相続人がひとりの場合にはスムーズに相続が行えますが、ふたり以上いる場合にはトラブルが生じないよう公平に引き継ぐ必要があります。

現金の分配は公平に行いやすいですが、株式や不動産などはすべての相続人に対して公平に分配するのが難しいと言えます。

すべての相続人が納得した状態になるよう、事業承継対策を進めることが大切です。

当事者だけで決めるのは難しいため、一般的には専門家に相談し、長期的に計画を立てて実行します。

経営者がひとりで決裁権を保有している会社

中小企業だと、株式を100%経営者が保有しているケースが多く、経営者がひとりで決裁権を保有している会社も多いでしょう。

経営者の属人性が高い会社の場合、突然亡くなったり、引退したりすると取引先との関係が崩れ、承継後の経営が悪化する可能性があります。

とはいえ、周囲から事業承継対策を提案するのは引退を促すような気がして、なかなか難しいものです。

したがって、経営者自身が率先して事業承継対策に取り組むことが重要と言えます。

事業承継対策を行う3つの方法

事業承継対策の方法としては、下記の3つがあります。

  • 親族内に承継する
  • 従業員に承継する
  • M&Aで承継する

それでは、順に解説します。

親族内に承継する

会社や事業を親族へ承継する方法は、事業承継対策のなかでも一般的です。

親族内承継は社内から理解されやすく、スムーズに手続きを終えられる場合が多いでしょう。

とはいえ、承継する後継者の能力が低かったり、社内状況をまったく知らない状態だったり、会社経営に対する意欲がなかったりすると従業員から反対される可能性があります。

従業員に承継する

親族内に後継者候補がいない場合、従業員が株式を買い取って会社や事業を承継する方法もあります。

従業員に承継する方法としては、下記の2つです。

  • MBO(マネジメント・バイアウト):役員が株式を買い取り経営権を承継する方法
  • EBO(エンプロイー・バイアウト):従業員が株式を買い取り経営を承継する方法

社内状況を熟知している従業員が後継者になることで、承継する際の教育コストを大幅に削減できます。

取引先や従業員の理解を得やすく、現在における経営の課題を把握しているため、良好な経営を築きやすくなります。

一方で、経営権を承継できるほどの株式を買い取る必要があるため、一定の資金力が求められる点がデメリットです。

M&Aで承継する

M&Aによって他社へ会社や事業を承継する方法も事業承継対策のひとつです。

資金調達方法として、大企業だけでなく中小企業でもM&Aを行いますが、事業承継によって従業員の働く場を確保できます。

親族や従業員に囚われず、幅広い選択肢から後継者を探せる点はM&Aの大きな強みです。

ただし、双方の希望が一致するのは簡単なことではなく、うまい落としどころを見つける必要があります。

広いネットワークを持つM&A仲介会社などを利用すると、希望に合った後継者候補を見つけやすくなります。

なお、一定の成長性やガバナンス体制を備える企業では、IPO(新規上場)を通じて株式を市場に開放し、資金調達力と経営人材の確保を図りながら段階的に承継する道もあります。

親族内・社内・M&Aに加える実務上の選択肢として、事業計画と人材戦略の整備を前提に検討余地があります。

事業承継対策の大まかな流れ

事業承継対策を実施する際の大まかな流れは下記のとおりです。

  1. 現状を把握する
  2. 後継者候補を選別する
  3. 事業承継計画書に従って手続きをする

ある程度の時間が必要なため、事前に概要を把握しておくとスムーズに手続きできるはずです。

それでは、順に解説します。

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手順1.現状を把握する

始めに、会社の状況を把握します。

  • 会社の資産や負債
  • 経営状態
  • 取引先

会社の資産としては、株式や不動産、商標権、従業員などがあります。

企業価値によって相続税や贈与税が課せられるため、会社の資産をしっかりと把握しておくことが大切です。

経営状態が悪いと、なかなか承継したいと思うような人材が現れにくく、後継者探しに苦戦するかもしれません。

後継者の負担を重くならないよう、できるだけ不備がない状態で承継するのが理想と言えます。

財務状況に問題があるようなら早めに対策する必要があります。

さらに、実務の前段として「保証・担保・契約の棚卸し」を行っておくと、後工程が円滑です。

  • 経営者個人保証、連帯債務、根抵当、仮登記・譲渡制限の有無を一覧化
  • 主要取引契約(重要顧客・サプライヤー・賃貸借・知財ライセンス等)の承継可否条項(チェンジ・オブ・コントロール条項など)を確認
  • 役員・親族間貸借や同族内の金銭消費貸借・保証状況も整理

これらは株式譲渡・事業譲渡・会社分割等のスキーム選択や、金融機関との協議の前提資料になります。

手順2.後継者候補を選別する

次に後継者候補を選別します。

親族や従業員に後継者候補がいない場合はM&Aを検討すべきです。

会社譲渡や事業譲渡によって資金を得られれば、引退後の生活が豊かになるでしょう。

近年では、早期リタイアを目指す経営者も増えており、M&Aは有効な手段と言えます。

なお、どの方法を選んだとしても従業員や取引先の理解が必要です。

M&Aによって会社を譲渡する場合、従業員の待遇を良くしてもらうなどの交渉も行ってみましょう。

手順3.事業承継計画書に従って手続きをする

自社における現状の把握や後継者候補の選定が終わったら、事業承継計画書に従って手続きを進めます。

事業承継計画書とは、事業承継のタイミングや進め方を示した書面です。

承継方法や今後の経営方針、後継者の決定などを記載しており、書面化することで長期的な取り組みがしやすくなります。

相続税対策なども書面化するなど、今後起こり得るトラブルを洗い出し、対策を練ることでスムーズな事業承継を実現します。

事業承継計画書は専門家に作成を依頼するのが一般的です。

あわせて、各都道府県の「事業承継・引継ぎ支援センター」では、計画策定支援や後継者育成セミナー、マッチング支援などの公的メニューが利用できます。

初回相談で全体像を掴み、計画書のたたき台を作成しておくと、専門家への依頼も円滑になります。

事業承継対策を成功させる9つのポイント

事業承継対策を成功させるうえで抑えるべきポイントは、下記の9つです。

  • 後継者を育てておく
  • 株価対策をする
  • 税務対策をする
  • 生前贈与や遺言書を活用する
  • 暦年課税や相続時精算課税制度を活用する
  • 代償分割を検討する
  • 早めに取りかかる
  • 従業員の理解を得ておく
  • 専門家に相談する

それでは、順に解説します。

後継者を育てておく

経営理念や価値観を共有し、今後の会社を引っ張っていける人材が後継者に相応しいでしょう。

後継者の選定後には、しっかりと教育するプロセスが欠かせません。

営業や労務管理、財務などの経験を経て、経営に必要な知識や経験を身につけさせます。

経営判断も徐々に任せることで、経営者としての自覚や責任感が生まれるでしょう。

社内だけでなく、外部の企業に勤務させて教育させる方法もあります。

自社にはない新しい考え方や人脈を築けるため、抜本的な改革が期待できます。

経営者に必要な能力や考え方を短期的に学ぶのは難しいですので、長期的な計画のもと後継者の育成を進めていきましょう。

株価対策をする

事業承継では、株式の評価額に応じて相続税や贈与税が生じます。

中小企業の株式は流動性が低く、換金するのが難しいため、納税に必要な資金を準備できない場合も少なくありません。

したがって、自社株の評価額を意図的に下げ、納税額を少なくする対策が効果的です。

株式の評価額を下げる方法としては、役員退職金の支給や生命保険の活用などがあります。

一般的に、役員の退職金は多額に支給される傾向にあるため、会社の支出が大きくなります。

会社の純資産価額と利益額が減少するため、株価が下がる仕組みです。

また、高額な生命保険に加入し、会社の資産を減らすことで株価を下げる方法もあります。

生命保険の解約時に生じる解約返戻金は資産になりますが、生命保険に加入した初年度では解約返戻金が0円に設定してあります。

そのため、生命保険に支払った分だけ会社の資産が減少し、株価が下がったタイミングで事業承継を行えば節税対策になるのです。

なお、過度に自社株の評価額を下げると税務署に不当と判断される恐れがありますので注意してください。

税務対策をする

たとえば次のような具体策も検討に値します。

  • 自社保有不動産は、形状・接道・用途地域・土壌汚染・賃貸借条件などの個別要因により評価減が見込める場合があります。鑑定や評価見直しで純資産価額の圧縮が可能です。
  • 事業用宅地については「小規模宅地等の特例」の適用可否を早めに検討し、賃貸か自社利用かなど利用実態を整備しておきます。
  • 生命保険の活用は、解約返戻金の計上時期や税務リスク、資金繰りを踏まえ、目的(納税資金、株式買戻原資、役員退職金原資)を明確にして設計します。

生前贈与や遺言書を活用する

生前贈与とは、後継者に対して生前に財産を贈与する形で譲渡する方法です。

相続税の削減や、相続時のトラブル防止に役立ちます。

また、急病や事故によって現経営者が亡くなってしまった場合に備えて、遺言書を作成するのも大切です。

相続争いを防げるほか、後継者に自社株や事業用の資産を集中させられます。

遺言書には、下記のような大きく3つの方式があります。

  • 自筆証書遺言
  • 公正証書遺言
  • 秘密証書遺言

自筆証書遺言は、遺言者が氏名や日付、遺言の本文を筆記し、押印して作成する遺言書です。

作成が簡単な反面、書式の自由さから偽装や変造などの恐れもあるため、相続開始後に家庭裁判所で遺言の存在や形状、内容を確認する手続き(検認手続き)が必要となります。

公正証書遺言は、遺言者の遺言をもとに公証人が筆記して作成する遺言書です。

公証役場で遺言は保管され、検認手続きを行う必要はありません。

秘密証書遺言は、遺言の内容を親族を含めて誰にも公開されず、公証役場に遺言書としての存在だけを認証してもらえる遺言書です。

公証人及び証人立会によって作成され、第三者の代筆も認められています。

なお、開封する際には検認手続きが必要です。

自筆証書遺言では、自筆証書遺言書保管制度を活用できます。

自筆証書遺言書保管制度とは、自筆証書遺言による遺言書を法務局で保管する制度です。

法務局の職員(遺言書保管官)により遺言書の形式が正しいかどうかの確認を受けられるほか、法務局に保管されるため偽造や書き換えが防止でき、家庭裁判所の検認手続きが不要となります。

暦年課税や相続時精算課税制度を活用する

事業承継の際に、暦年課税や相続時精算課税制度を活用して、節税を図ることができます。

暦年課税とは1年間の贈与額から贈与税を納める制度であり、110万円までは非課税です。暦年課税の税率は、基礎控除額を超えた分に対して10~50%の累進課税です。ですので、毎年、110万円未満(また税率の低い額)を贈与することによって遺産を減らし、相続税を減少させることができます。なお、暦年課税は贈与税の申告書を贈与を受けた翌年3月15日までに提出する必要があります。

相続時精算課税制度は、受贈者が2500万円まで贈与税を納めずに贈与を受けることができ、贈与者が亡くなった時にその贈与財産の贈与時の価額と相続財産の価額とを合計した金額から相続税額を計算し、一括して相続税(贈与時に払った贈与税額を控除した額)を納税する制度です。

この制度の適用を選択した贈与者から贈与された財産については、特別控除額2,500万円を差し引いた残額に対して定率(20%)の贈与税が発生します。贈与財産については贈与時の価格で相続税を計算することとなりますので、非上場株式や不動産など今後値上がりをする可能性が高いようなものは、現在の株価が低い段階で相続時精算課税制度を使用して贈与してしまった方が、全体として相続税を減少させることができます。

なお、相続時精算課税制度は開始した年の翌年3月15日までに届出を提出しなければなりません。

なお、暦年贈与と相続時精算課税制度は併用できません。相続時精算課税制度を選択すると暦年課税への変更はできず、相続税を算出する際に生前贈与分の金額が増えますので注意してください。

代償分割を検討する

財産を公平に相続するための分割方法として、現物分割・換金分割・代償分割の3パターンあります。

現物分割は不動産や株式、現金などの財産を現物で相続人に対して分割する方法です。

換金分割は不動産などの財産を売却し、得た売却金を相続人に分配する方法です。

代償分割は、相続人ひとりが財産を取得する代わりに、他の相続人に代償金や不動産を渡す方法となります。

株価は税金計算の関係では財産評価基本通達により比較的低い額となります。

ただし、承継者が株式を相続する場合、他の相続人に対して代償分割する際の代償額は税務評価(財産評価基本通達)ではなく、時価を基準に算定する必要があります。

したがって、株価が非常に大きな額となり、代償額も非常に大きな額になる可能性が高いですが、相続人の平等のためにはそうせざるを得ません。

早めに取りかかる

事業承継には通常、数年〜10年ほどかかります。

なぜなら、後継者の育成や株価対策、相続税対策などに時間を要するためです。

後継者の選定は、今後の経営に関わる非常に重要なプロセスのため、十分に余裕を持っておく必要があります。

現経営者の引退直前で決まった後継者だと、会社の状態を十分に理解していなかったり、承継に穴があったりと、後々のトラブルに発展しかねません。

早めに取りかかり、後継者の育成に時間をかけるのも事業承継を失敗させないポイントです。

従業員の理解を得ておく

事業承継において、従業員の理解をきちんと得ておくことも大切です。

特にM&Aを行う場合、経営方針や待遇が変わることに不満を抱く従業員も少なくないでしょう。

不満を解消できなければ、次々に離職していき、人材不足に陥る可能性もゼロではありません。

M&A後でも、これまでと変わらない働き方であることをしっかりと従業員に伝え、どうしても変えなければならない場合には、個別での対応を行いましょう。

M&Aによって従業員が不満を抱かないよう、譲受企業と交渉し、従業員の待遇を確保することも大切です。

専門家に相談する

事業承継はさまざまな法律に関する課題が見つかるものですので、専門家に相談しておくと安心です。

弁護士や司法書士、税理士、公認会計士など、法律や税に関するさまざまな観点から自社を分析してもらい、事業承継計画書を作成してもらいます。

M&Aを行いたい場合には仲介会社を利用すると、全国から条件に合った譲受企業を見つけられるはずです。

相続や贈与にはトラブルがつきものですので、専門家に相談したうえで慎重に手続きを進めましょう。

その際、仲介・FAを選定する場合は次の点を事前に確認しておくと安心です。

  • 「中小M&Aガイドライン」遵守宣言の有無、報酬体系(成功報酬の算定基礎、ミニマム、着手金・中間金の要否)
  • 専任・排他条項の期間と解除条件、機密保持・情報返還、表明保証と補償の上限/期間、紛争解決条項
  • デューデリジェンス(法務・税務・労務・環境・不動産等)の範囲と責任分担

これらを事前に見える化し、社内決裁と整合させておくことで、実務紛争の多くを予防できます。

事業承継対策における注意点

事業承継対策を考えるうえで、下記3点には注意が必要です。

  • 後継者の負担が大きくなる可能性がある
  • 遺留分トラブルが起こる可能性がある
  • 契約・環境・情報管理に注意が必要

ひとつずつ解説します。

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後継者の負担が大きくなる可能性がある

事業承継は後継者に大きな負担がかかる可能性があります。

親族内での事業承継では相続税や贈与税が発生しますし、社内での事業承継では株式を買い取るための資金が必要です。

事業承継では、資産に加えて借金や個人保証なども後継者に承継されるため、後継者には金銭的な負担がのしかかる可能性があります。

事業承継対策において、後継者の視点に立って考えることが必要になるでしょう。

税金問題や相続問題を事前に解決しておき、後継者候補がこのまま会社や事業を引き継ぎたいと思える取り組みが重要と言えます。

遺留分トラブルが起こる可能性がある

遺留分とは、被相続人が遺言書でひとりの相続人に対してすべての財産を相続する旨を記載している場合、他の相続人も一定程度の財産は相続できる制度です。

自社株式は被相続人が亡くなったあとに価値が一気に上がる場合もあり、後継者以外の相続人が得るはずだった遺留分を侵害する恐れがあります。

後継者ひとりだけ財産を相続する場合、他の相続人から遺留分侵害額を請求され、支払うために自社株式や資産を売却せざるを得ない場合もあります。

なお、承継者が株式を相続する場合、他の相続人に対して渡す遺留分の額が著しく高額になる可能性が高いですが、相続人間の平等のためにはそうせざるを得ません。

また、経営承継円滑化法における「遺留分に関する民法の特例」の除外合意や固定合意、事業承継税制の使用には注意が必要です。

除外合意や固定合意、事業承継税制の適用の結果、後継者ではない相続人が承継する遺産は少なくなりますが、相続税率は遺産全体を考慮して決定されますので、遺産を少ししか相続しないのに、相続税率ばかり非常に高いという現象が発生することとなり、そのような相続人にとって不満のある状態となり相続トラブルの原因となります。

契約・環境・情報管理に注意が必要

さらに、事業用不動産や賃貸中物件がある場合は、契約上の地位移転に承諾・通知が必要なことが多く、承継時の空中分解を防ぐためにも事前確認が有効です。

土壌汚染・アスベスト・工作物責任等の環境・施設リスクは、表明保証・補償範囲の設計と保険活用でコントロールします。

また、情報の過度な拡散は信用低下を招くため、ティーザー(ノンネーム資料)の配布管理やNDAの徹底、アクセス権限のログ管理を実施しましょう。

まとめ

この記事では、事業承継対策が必要な理由や方法、流れを解説しました。

事業承継には相続問題や税金問題など、さまざまなトラブルが発生しやすく、各状況に応じた対策が必要です。

事業承継計画書の作成や、手続きに関する相談は専門家に頼る方が安心かつスムーズです。

弁護士法人M&A総合法律事務所では、M&Aや後継者不足に関する悩みをヒアリングし、問題解決に向けて迅速に行動しています。

身内や従業員に後継者となる人材がいない場合や、事業承継対策を完全に完了させたい場合には、お気軽にご相談ください。

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