非上場株式の相続のトラブルでお悩みの方へ|メリット・デメリットから対処法まで解説

非上場株式を相続することになったものの、評価額の決まり方や手続きの流れがわからず、他の相続人との対立に悩んでいる方は少なくありません。中小企業のオーナー一族のように、相続財産の大部分が非上場株式で占められるケースでは、株式の取扱いをめぐる対立が深刻化することもあります。

非上場株式の相続は、上場株式と異なり市場価格が存在せず、評価方法も複雑です。さらに、相続後の議決権や経営権をめぐって、後継者と他の相続人・既存株主との間で利害が衝突しやすいという特徴があります。

非上場株式の相続では、評価額の算定、相続税の納税資金、株主名簿の名義書換、経営権の帰属を同時に確認する必要があります。相続人間の話し合いだけで進めると、株式評価や会社法上の手続きで見落としが生じることもあります。

特に争点になりやすい事項は次のとおりです。

論点 要点
評価方法 市場価格がなく、原則的評価方式(類似業種比準方式・純資産価額方式)か配当還元方式で算定する
相続税 評価額に応じて10%〜55%の累進税率。現金化できていない株式に多額の税負担が生じる場合がある
手続きの流れ 相続人・財産の調査 → 株式評価 → 遺産分割協議 → 株主名簿の名義書換 → 相続税の申告(原則10か月以内)
もめやすい点 後継者と他の相続人の対立・遺留分・株式の評価額・少数株主の権利・株式の独占
相談先 評価額が争点となる相続争いでは、企業価値評価に明るい弁護士への相談が選択肢となる
目次

非上場株式の相続でこんなお悩みはありませんか?

非上場株式の相続では、財産の分け方だけでなく、会社の支配権や少数株主としての権利も問題になります。特に、後継者が決まらない場合や、株式評価額に納得できない場合は、遺産分割協議が長期化しやすくなります。

後継者が決まらず遺産分割協議が前に進まない

中小企業のオーナーが亡くなった場合、誰が会社の株式を相続するかをめぐって相続人間で意見が対立することがあります。後継者候補が複数いる場合や、後継者と他の相続人との利害が衝突する場合に多く見られるパターンです。

遺産分割協議がまとまらないまま時間が経過すると、相続税の申告期限(原則10か月)に間に合わなくなり、本来受けられたはずの特例措置が使えなくなるおそれがあります。話し合いが膠着している段階で、第三者である弁護士が間に入ることで、論点を明確にし、合意形成に向けた糸口を見出せる場合があります。

他の相続人と株式の評価額で意見が対立している

非上場株式には市場価格がないため、評価方法によって評価額が大きく変動します。後継者となる相続人は評価額を低く見積もりたい一方、後継者ではない相続人は評価額を高く見積もり、より多くの代償金を受け取りたいと考えることが少なくありません。

評価方法の選択や評価額そのものをめぐる対立が長引くと、感情的なしこりが残り、その後の親族関係にも影響します。客観的な評価を踏まえて公平な解決を導くためにも、弁護士による助言や中立的な専門家への評価依頼を検討することが考えられます。具体的な評価方法は「非上場株式の評価方法のポイント」で解説します。

株式を相続したものの権利を行使できない

少数株主として非上場株式を相続したものの、配当が出ない、株主総会への参加を実質的に妨げられる、会計帳簿の閲覧請求にも応じてもらえないといったお悩みもあります。会社側や多数派株主との関係が悪い場合に、こうした状況が生じやすくなります。

非上場株式の少数株主には、会社法上さまざまな権利が認められています。権利の行使方法を理解し、適切な手順を踏むことで、状況を打開できる場合があります。

親族から株式や経営を独占されそうになっている

被相続人の生前から、特定の親族や役員が事実上会社を支配しており、相続発生後に株主名簿が一方的に書き換えられていた、株式を独占しようとされている、といったご相談もあります。中には、専務や番頭格の役員が経営権を握ろうとするケースも見受けられます。

こうした株式や経営権をめぐる問題では、株主権の確認や株主総会決議の効力を争う手続きが必要になる場合があります。会社の相続をめぐるよくあるご質問は当事務所のQ&Aでもご確認いただけます。

非上場株式の相続の基本知識

非上場株式の相続は可能ですが、上場株式とは異なる固有のルールがあります。相続による承継自体に会社の譲渡承認は不要である一方、株主名簿の名義書換、定款上の売渡請求、未分割株式の権利行使者の指定など、相続後に確認すべき手続きがあります。

非上場株式とは(上場株式との違い)

非上場株式とは、証券取引所に上場していない株式のことを指します。日本の会社の大多数は中小企業であり、その株式の多くは非上場株式です。

上場株式は証券市場で日々取引価格が形成されるのに対し、非上場株式には市場価格が存在しません。そのため、相続が発生した際の評価や売却が難しいという特徴があります。

上場株式と非上場株式では、価格の把握方法、売却のしやすさ、管理方法が大きく異なります。

項目 上場株式 非上場株式
市場価格 あり(証券取引所での取引価格) なし(評価方法に基づき算定)
売却の容易さ 比較的容易 困難(買い手が限られる)
譲渡制限 通常なし 多くが譲渡制限株式
保有者の管理 証券保管振替機構 発行会社の株主名簿
株主の特定 証券会社経由で照会可能 直接会社に確認が必要

譲渡制限株式の仕組みと相続時の扱い

非上場株式の多くは、定款で譲渡に会社の承認を要する「譲渡制限株式」とされています。譲渡制限株式を第三者に売却するには、会社(取締役会または株主総会)の承認が必要です。

ただし、相続による株式の承継は、売買などの譲渡ではなく、民法896条本文に基づく一般承継です。そのため、譲渡制限株式であっても、相続によって株式を取得すること自体に会社の譲渡承認は不要です。もっとも、定款に会社法174条に基づく売渡請求の定めがある場合は、会社から相続人等に対して株式の売渡しを請求されることがあります。

非上場株式は相続できる(会社法上の取扱い)

非上場株式も、預貯金や不動産と同様に相続の対象となります。被相続人(亡くなった方)が保有していた株式は、原則として相続人に引き継がれます(民法896条本文)。

譲渡制限株式であっても、相続による承継には会社の承認は不要です。相続人は被相続人の地位を引き継ぎ、株主としての権利を行使できるようになります。

ただし、相続発生から実際に株主名簿に名義が記載されるまでは、対外的に株主としての権利を行使できない期間があります。会社に対して株式を相続した旨を申し出て、名義書換手続きを進めることが必要です。

定款の売渡請求条項に要注意(会社法174条)

会社の定款に「相続その他の一般承継により株式を取得した者に対し、会社が当該株式の売渡しを請求することができる」旨の定めがあるケースがあります。この定めがある場合、会社は、相続その他の一般承継により譲渡制限株式を取得した相続人等に対して株式の売渡しを請求できます。請求には原則として株主総会の特別決議が必要であり、会社が一般承継を知った日から1年以内に行わなければなりません(会社法176条1項)。

会社から適法に売渡請求がなされた場合、相続人等は原則として株式を会社に売却することになります。売買価格は会社と相続人等の協議で定めますが、協議が調わない場合は、会社または相続人等が、売渡請求の日から20日以内に裁判所へ売買価格決定の申立てをすることができます。期間内に協議が調わず、裁判所への申立てもされなかった場合は、売渡請求は効力を失います。

定款にこの定めがあるかどうかは、相続発生後すぐに会社に問い合わせ、定款の内容を確認しておきましょう。後継者として株式を承継する予定だった相続人が、思いがけず株式を失う事態を避けるためにも、生前の備えが欠かせません。

未分割株式の権利行使者指定(会社法106条)

相続人が複数いる場合、遺産分割協議が成立するまで株式は相続人全員の準共有状態となります。準共有状態にある株式について議決権など株主の権利を行使するには、共有者の中から「権利行使者」を一人定め、会社に通知する必要があります(会社法106条本文)。ただし、会社がその権利行使に同意した場合はこの限りではありません(同条ただし書)。

権利行使者の指定は、判例上、準共有持分の価額の過半数によって決定できると解されています(最高裁平成9年1月28日判決の趣旨)。遺産分割協議がまとまらないと、株主総会で議決権が行使できず、会社経営に支障をきたす場合があります。

遺産分割が長引く見込みの場合は、暫定的に権利行使者を定めて会社運営の停滞を防ぐ対応が考えられます。

非上場株式を相続するメリットとデメリット

非上場株式の相続には、株主としての権利を得られるメリットがある一方で、相続税の負担や売却の困難さといったデメリットも存在します。両面を把握したうえで、相続するかどうかを判断することが望まれます。

メリット(議決権行使・配当・換価可能性)

非上場株式を相続すると、株主としての地位に基づくいくつかの権利が得られます。主なメリットは下記のとおりです。

  • 議決権の行使: 株主総会に出席し、取締役の選任や定款変更などの重要事項に関与できる(会社法105条1項3号・308条)
  • 配当を受け取る権利: 会社が利益を上げ、株主総会で配当決議がなされれば、保有株数に応じた配当を受け取れる
  • 換価の可能性: 会社・他の株主・第三者への売却によって現金化できる場合がある
  • 会計帳簿閲覧請求権など: 総株主の議決権の3%以上または発行済株式(自己株式を除く)の3%以上を保有する株主は、一定の要件のもとで会計帳簿の閲覧・謄写を請求できる(会社法433条)

特に、会社の後継者として相続する場合は、株式の議決権を通じて経営の主導権を握ることができます。一方、少数株主としての相続でも、配当や換価といった経済的メリットを享受できる可能性があります。

デメリット(高額な相続税・売却困難・評価困難)

一方で、非上場株式の相続にはいくつかの大きなデメリットがあります。

第一に、相続税が高額になる可能性がある点です。相続税は、課税遺産総額を法定相続分に応じて按分した金額に、10%〜55%の累進税率を適用して総額を計算します。非上場株式の評価額が高くなると相続税の負担も大きくなり、市場価格がなくても評価額は算定されるため、現金化できていない財産に対して多額の税負担が発生することがあります。

相続税の速算表は下記のとおりです。法定相続分に応ずる取得金額に税率を乗じ、控除額を差し引いて税額を求めます。

法定相続分に応ずる取得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10%
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

なお、遺産の総額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合に相続税の申告が必要です。最高税率55%が適用されるのは取得金額が大きい一部のケースに限られますが、評価額の高い自社株を多く承継する場合には税負担が重くなりやすい点に注意が必要です(出典:国税庁No.4155 相続税の税率)。

第二に、売却が難しい点です。非上場株式には公開市場がなく、買い手を見つけにくいのが現実です。譲渡制限株式の場合は、第三者への譲渡に会社の承認も必要となります。

第三に、評価方法が複雑で、相続人間や税務署との間で評価額をめぐる見解の相違が生じやすい点です。専門知識がない方が単独で算定することは難しく、専門家への依頼が必要となります。

相続後に新たに発生し得るリスク

相続したあとも、株主として継続的に直面し得るリスクがあります。少数株主として相続した場合、配当が出ず、議決権も実質的に効力を持たないため、保有していても経済的価値を享受できないことがあります。

また、定款の売渡請求条項に基づく会社からの売渡請求や、譲渡承認手続に伴う買取対応など、一定の法的手続きの中で株式の処分や価格が争点となることもあります。逆に、後継者として大多数の株式を相続した場合は、他の相続人から遺留分(一定の相続人に最低限保障される相続分)の侵害を主張され、多額の代償金や金銭の支払いを求められる可能性もあります。

非上場株式の相続でお悩みの場合は、相続発生後できるだけ早期に専門家へ相談することが考えられます。

非上場株式の相続で起こりやすいトラブル

非上場株式の相続では、預貯金や不動産と異なり、評価・分割・権利行使のいずれの段階でも対立が生じやすい構造があります。代表的なトラブルパターンは次のとおりです。

後継者と他の相続人との対立(遺留分・代償金問題)

中小企業オーナーの相続では、後継者である長男(または特定の親族)が大多数の株式を相続し、他の相続人には預貯金や不動産が分配されるケースが一般的です。しかし、株式の評価額が遺産全体に占める割合が大きい場合、他の相続人の取り分が相対的に少なくなり、遺留分が侵害される事態が起こります。

遺留分が侵害された相続人は、後継者に対して遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを請求できます(民法1046条)。令和元年7月施行の相続法改正により、いわゆる遺留分減殺請求は金銭債権化されており、当然に株式の返還を受けられるわけではありません。そのため後継者は、株式を保有し続けたまま、自己資金、金融機関からの借入れ、分割払いの協議、役員報酬や配当を含めた資金計画などによって金銭的な対応を迫られることがあります。

特に、以下のような状況では、この問題が顕在化しやすくなります。

  • 会社の業績が好調で、株式評価額が遺産の大半を占める
  • 遺言書で全株式を後継者に集中させているが、他の相続人への配慮がない
  • 後継者と他の相続人との間に感情的な対立がある

このような場合、生前から遺留分への備えを講じておくこと、相続発生後には早期に弁護士を交えた話し合いを開始することが、対立の深刻化を防ぐうえで有効です。

株式評価額をめぐる相続人間の見解の相違

非上場株式の評価額は、評価方法(類似業種比準方式・純資産価額方式・配当還元方式など)や評価目的、評価のタイミングによって差が出ることがあります。相続人間で異なる評価方法を主張し、合意できないケースがあります。

たとえば、後継者は会社の収益性が低いとして純資産価額を低く評価したいと考える一方、他の相続人は将来の収益性を加味した評価額を主張するといった対立が生じます。会社の顧問税理士に評価を依頼した場合でも、相続人間で評価の中立性について意見が分かれることがあります。

評価額の対立が深刻な場合は、相続人間で合意した中立的な第三者評価機関に評価を依頼するか、家庭裁判所の遺産分割調停・審判の手続の中で評価方法を検討する対応が考えられます。当事務所では、企業価値評価に関する資料も確認しながら、弁護士の立場で評価額をめぐる争点を検討します。

株式分散による経営権の不安定化

被相続人が遺言書を残しておらず、複数の相続人が遺産分割協議で株式を分けて取得する場合、株式が分散し、会社経営の主導権が誰にあるのか不明確になることがあります。

たとえば、被相続人が60%を保有していた株式について、遺産分割協議で3人の相続人が各20%ずつ取得する内容になった場合、それぞれが単独では会社の重要事項を決定できない状態になります。意思決定が停滞し、会社運営に支障が生じることも想定されます。

このような事態を避けるには、生前に遺言書で後継者に株式を集中させるか、相続発生後に遺産分割協議で株式を集約するための合意を形成することが望まれます。

少数株主による強い権利行使・請求への対応

被相続人や他の相続人が保有していた株式の一部が、被相続人と関係性の薄い第三者や、対立関係にある親族に渡っているケースもあります。こうした少数株主が、株主総会での議決権行使や会計帳簿の閲覧請求などを通じて、会社経営に圧力をかけることがあります。

中には、株主代表訴訟の提起や、会社側から見て対応が難しい請求がなされることもあります。このような場面では、会社法上の権利行使として適法か、請求への対応方法として何が考えられるかを個別に検討する必要があります。

親族による株式独占・株主名簿の不正書換え

相続発生後に、特定の親族や会社経営者が一方的に株主名簿を書き換え、本来相続人が取得すべき株式が反映されていないという事案もあります。本来、相続による株式の取得については、相続人が会社に対して株主名簿記載事項の記載・記録(名義書換)を請求し、会社は戸籍謄本や遺産分割協議書・遺言書などにより相続関係や株式取得者を確認したうえで名義書換を行います。

不正な名義書換がなされた場合、相続人は会社に対して株主名簿の名義書換請求や、株主権確認訴訟を提起できます。証拠の保全と早期の法的対応が、自らの権利を守るうえで重要です。財産そのものの独り占めや使い込みが疑われる場合の対応は、遺産の使い込み・独り占めに関するご案内もご参照ください。

遺言書の効力・無効をめぐる争い

被相続人が遺言書を残していた場合でも、その内容や有効性をめぐって争いが生じることがあります。たとえば、認知症の進行した状態で作成された遺言書、形式的要件を満たさない自筆証書遺言、特定の親族の関与のもとで作成された遺言書などについて、無効を主張する相続人が現れることがあります。

遺言書が無効と判断されれば、株式の取得者は遺言書ではなく遺産分割協議で改めて決め直すことになります。遺言書の有効性が争点となる場合は、医療記録や作成経緯に関する証拠の収集を含め、早期の対応が求められます。

トラブルが顕在化する前に、または既に発生している場合は、当事務所までご相談ください。 ご相談フォームまたは03-6435-8418までお問い合わせください。

非上場株式の相続手続きの流れ

非上場株式の相続手続きは、おおむね下記の流れで進めます。相続税の申告期限(原則10か月以内)を念頭に置き、計画的に進めることが大切です。

STEP 内容
1 相続人と相続財産(株式)の調査
2 株式評価額の算定
3 遺産分割協議と分割方法の決定(現物・換価・代償)
4 株主名簿の名義書換請求(会社法133条)
5 相続税の申告・納付(原則10か月以内)

相続人と相続財産(株式)の調査

最初に行うのは、相続人と相続財産の確定です。被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等を取得し、相続人の範囲を確定させます。

相続財産の調査では、被相続人が保有していた非上場株式の有無を確認します。上場株式と異なり、通常の中小企業の非上場株式では、証券会社の口座情報だけでは保有状況を確認できないことが多く、以下の資料から発行会社を特定する必要があります。

  • 株券(発行されている場合)
  • 株主総会招集通知や配当金支払通知書
  • 確定申告書の控え
  • 預金通帳の入金記録(配当金の振込履歴など)
  • 被相続人の手帳・メモ・名刺など

発行会社が特定できたら、その会社に問い合わせて、被相続人の保有株式数や定款の規定を確認します。

株式評価額の算定

相続税の申告と遺産分割協議のためには、株式の評価額を算定する必要があります。相続税評価では財産評価基本通達に基づく評価方法が用いられますが、遺産分割における評価とは異なる扱いとなることがあります。

評価額の算定にあたっては、会社の貸借対照表・損益計算書・株主構成などの資料が必要です。評価の時点は被相続人の死亡日(課税時期)が基準となります。専門的な計算が伴うため、税理士や弁護士などの専門家への依頼を検討するとよいでしょう。

遺産分割協議と分割方法(現物・換価・代償)

相続人が複数いる場合は、遺産分割協議によって誰がどの財産を取得するかを決めます。株式の分割方法には、主に下記の3種類があります。

分割方法 内容 主な留意点
現物分割 株式をそのまま相続人で分ける 経営権が分散するおそれがある
換価分割 株式を売却して代金を相続人で分ける 買い手の確保が必要
代償分割 一人の相続人が株式を取得し、他の相続人に金銭を支払う 代償金の原資確保が必要

非上場株式の場合、経営権を分散させないために代償分割が選ばれることが多い傾向にあります。ただし、代償金の額は株式の評価額に基づくため、評価額をめぐる対立が深刻化することもあります。

遺産分割協議がまとまったら、遺産分割協議書を作成し、相続人全員が実印を押印します。印鑑証明書も合わせて添付します。

株主名簿の名義書換請求(会社法133条)

遺産分割協議で株式を取得する相続人が決まったら、株式発行会社に対して株主名簿の名義書換(名義変更)を請求します(会社法133条)。名義書換が完了するまでは、株主としての権利を会社に対抗できません。

名義書換に必要な書類は会社によって異なりますが、おおむね下記の書類を提出します。

  • 株式名義書換請求書
  • 株券(発行されている場合)
  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等
  • 相続人の戸籍謄本・住民票
  • 印鑑証明書
  • 遺産分割協議書または遺言書

会社が名義書換に応じない場合は、名義書換請求訴訟を提起することも考えられます。

相続税の申告・納付(原則10か月以内)

相続税の申告と納付は、相続開始を知った日の翌日から10か月以内に行う必要があります。期限を過ぎると延滞税や無申告加算税が課される可能性があります。

非上場株式の評価額が高額になると、相続税も多額になります。納税資金の確保が難しい場合は、延納や物納の検討、または株式の一部を会社に買い取ってもらう(自社株買い)などの対応が考えられます。

なお、非上場株式について事業承継税制(特例措置)の適用を受ける場合は、要件を満たすことで相続税の納税が猶予されます。

非上場株式の評価方法のポイント

非上場株式の評価は、相続税評価における評価方法と、遺産分割における評価とで考え方が異なります。両者の違いを理解したうえで、適切に対応することが必要です。

非上場株式の株価は誰が決めるのか

非上場株式には市場価格がないため、株価は誰かが一義的に決めるものではなく、目的に応じた評価方法で算定します。相続税の申告では、国税庁の財産評価基本通達に沿った評価方法で算定するのが原則です。

一方、遺産分割協議や調停・審判の場面では、相続人間の公平を図るための時価が問題となり、相続税評価額とは別の評価が用いられることがあります。会社や顧問税理士が一方的に決めた評価額が、そのまま遺産分割の基準になるわけではない点に注意が必要です。

相続税評価における評価方式の概要

相続税評価における非上場株式の評価方式は、相続人が同族株主か少数株主かによって異なります。財産評価基本通達に基づく原則的評価方式と、特例的評価方式である配当還元方式の2つに大別されます(出典:国税庁No.4638 取引相場のない株式の評価)。

原則的評価方式と会社規模の区分

同族株主が取得した非上場株式は、原則的評価方式によって評価されます。評価する会社は、従業員数・総資産価額・取引金額の3つの要素によって大会社・中会社・小会社に区分され、区分に応じた方法を用います。

会社規模 原則的な評価方式
大会社 類似業種比準方式(純資産価額方式との低い方も選択可)
中会社 類似業種比準方式と純資産価額方式の併用
小会社 純資産価額方式(類似業種比準方式との併用も選択可)

中会社はさらに大・中・小に分かれ、併用する際の類似業種比準方式の割合(Lの割合)が下記のように異なります。会社の規模が大きいほど類似業種比準方式の比重が高くなります。

中会社の区分 類似業種比準方式 純資産価額方式
中会社の大 0.90 0.10
中会社の中 0.75 0.25
中会社の小 0.60 0.40

類似業種比準方式は、上場している類似業種の株価を基準に、評価会社の配当金額・利益金額・純資産価額(簿価)の3要素を加味して算定する方法です。純資産価額方式は、会社の保有する資産を相続税評価額で再計算し、負債を差し引いた純資産額を基準にする方法です。

配当還元方式

同族株主以外の少数株主が取得した非上場株式は、配当還元方式で評価されます。これは、株式の年間の配当金額を一定の利率(10%)で還元し、1株当たりの資本金等の額を加味して株式の価額を算定する方法です。

配当還元方式は、会社支配に関与しにくい少数株主の株式評価に用いられる方式であり、事案によっては原則的評価方式より低い評価額となることがあります。相続人がどの区分に該当するかは議決権割合などによって判定されるため、慎重な検討が必要です。

特定の評価会社の株式

会社の資産構成などが一定の条件に当てはまる会社は「特定の評価会社」とされ、原則として純資産価額方式で評価します。たとえば、総資産に占める株式等の割合が高い株式等保有特定会社、土地等の割合が高い土地保有特定会社、開業後3年未満の会社などが該当します。

これらに該当するかどうかで評価方法が変わるため、評価会社の財産構成を踏まえた判定が必要です。

遺産分割における評価と相続税評価との違い

遺産分割における株式評価は、相続税評価額とは別の考え方で行われることがあります。相続税評価額は税務上の課税価格を算定するためのものであり、遺産分割協議における相続人間の公平を実現するための「時価」とは必ずしも一致しません。

遺産分割における株式評価には、次のような方法が用いられることがあります。

  • インカム・アプローチ(将来収益から評価): DCF法など
  • マーケット・アプローチ(類似事例から評価): 類似企業比較法など
  • ネットアセット・アプローチ(純資産から評価): 時価純資産法など

これらは企業価値評価の手法であり、相続税評価額より高い金額となることもあれば、低くなることもあります。相続人間の協議や調停・審判の場でどの評価方法を採用するかは、双方の主張と裁判所の判断に委ねられます。

評価額の対立を解消する方法

評価額をめぐって相続人間で見解の相違が生じた場合、以下のような解決方法が考えられます。

  1. 相続人間で合意した中立的な専門家への評価依頼: 会社の顧問税理士ではなく、双方が合意した第三者の公認会計士・税理士に評価を依頼する
  2. 複数の評価方法の比較: 単一の方法に依拠せず、複数の評価方法を比較したうえで、事案に応じた合意点を探る
  3. 家庭裁判所による遺産分割調停・審判: 裁判所の鑑定人による評価を踏まえた解決を図る
  4. 株式評価に関する鑑定人による評価: 調停・審判や訴訟の中で、必要に応じて鑑定人による評価を検討する

評価額の対立は、感情的な対立にも発展しやすい論点です。早い段階で弁護士を交えて協議の進め方を定めることで、取り得る選択肢を見立てやすくなります。

非上場株式の相続トラブルの解決方法

非上場株式の相続トラブルは、解決の方法を選ぶ段階から専門的な判断が必要です。当事者間の話し合いから法的手続きまで、状況に応じて適切な手段を選びます。

当事者間の話し合いによる解決

最初に検討するのは、相続人や関係者との話し合いによる解決です。話し合いがスムーズに進むケースでは、調停や訴訟といった法的手続きに進む前に解決できることもあります。

ただし、感情的な対立が深刻な場合や、論点が複雑な場合は、当事者だけで話し合っても合意に至らないことが少なくありません。このような場合は、弁護士を代理人として交渉に立てることで、感情的な衝突を避けながら冷静な議論を進めやすくなります。

遺産分割調停・審判の活用

当事者間の話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所の遺産分割調停を申し立てます。調停は、調停委員が間に入って双方の主張を聞きながら合意形成を図る手続きです。

調停でも合意できない場合は、自動的に審判に移行します。審判では、裁判官が双方の主張と証拠に基づいて遺産分割の内容を決定します。非上場株式の評価額が争点となる場合、裁判所の鑑定人による評価が行われることもあります。

調停や審判は時間がかかる手続きですが、第三者である裁判所の関与のもとで公平な解決を目指せるという利点があります。

譲渡承認請求に伴う買取り・相続人等に対する売渡請求への対応

譲渡制限株式の譲渡承認請求に伴い会社または指定買取人が株式を買い取る場合や、定款の売渡請求条項に基づき会社から売渡請求を受ける場合は、買取価格や売買価格が重要な争点となります。

相続人が第三者への譲渡を希望し、会社が承認しない場合は、会社または指定買取人が買い取らなければなりません(会社法140条)。買取価格は当事者間で協議し、合意できない場合は裁判所に売買価格決定の申立てを行います(会社法144条)。

また、定款に会社法174条に基づく売渡請求条項がある場合、会社から相続人等に対して売渡請求がなされることがあります。買取価格や売買価格の交渉、裁判所での価格決定手続きでは、株式評価に関する専門的な主張立証が必要です。評価額が争点となる手続きでは、財務の視点を踏まえた立証が求められます。

株主総会決議の取消し・無効・不存在確認の訴え

相続発生後に、相続人の意向を無視した形で株主総会決議が行われたり、招集手続きに瑕疵があったりする場合は、株主総会決議の取消しの訴えや無効確認・不存在確認の訴えを提起できます。

たとえば、相続人が株主名簿に記載される前に、他の親族のみで株主総会を開催し、取締役の選任や定款変更が行われた場合、これらの決議の効力を争うことが考えられます。

株主総会決議取消しの訴えは、会社法831条1項により、原則として決議の日から3か月以内に提起する必要があります。これに対し、決議無効確認・不存在確認の訴えは会社法830条に基づく別の手続きであり、瑕疵の内容に応じて選択することになります。決議の存在を知った段階で速やかに対応する必要があります。

株主権確認訴訟・株主名簿名義書換請求訴訟

株主名簿に自分の名前が記載されない、または不正に書き換えられた場合は、株主権確認訴訟や株主名簿名義書換請求訴訟を提起できます。

これらの訴訟では、自分が正当な株主であることの主張立証と、会社の名義書換拒否の不当性を立証する必要があります。被相続人の保有株式数や相続関係を示す戸籍謄本・遺産分割協議書などの書証が重要です。

非上場株式の相続トラブルは、対応が遅れるほど解決が難しくなる傾向があります。当事務所では、これまで複雑な相続争いに対応してきた経験を踏まえ、状況に応じた解決方法をご提案します。

非上場株式を相続したくない場合の選択肢

会社経営に関与しない相続人や、相続税負担を避けたい相続人にとって、非上場株式を相続したくないというニーズもあります。状況に応じて、次のような選択肢が考えられます。

相続放棄(相続開始を知った日から3か月以内)

相続放棄は、相続に関する一切の権利義務を放棄する手続きです。相続放棄をすると、非上場株式を含むすべての遺産を相続しないことになります。プラスの財産(預貯金・不動産など)も相続できなくなるため、株式だけを選んで放棄することはできません。

相続放棄は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所に申述する必要があります(民法915条1項)。この期間を過ぎた場合や、相続財産を処分するなど単純承認と評価される行為をした場合は、相続放棄が認められないことがあります(民法921条)。

遺産全体を見渡し、株式以外に取得したい財産がないかを確認したうえで判断することが大切です。

遺産分割協議で他の相続人に取得してもらう

相続放棄ではなく、遺産分割協議の中で他の相続人に非上場株式を取得してもらう方法もあります。この場合、自分は預貯金や不動産など他の財産を取得することで、株式を保有せずに遺産を受け取ることができます。

ただし、他の相続人が株式の取得を望まない場合、合意形成が難しくなります。また、株式の評価額が高額な場合は、他の相続人との取得財産のバランスを調整する必要があります。

会社や同族株主への売却

非上場株式を相続したあと、発行会社や同族株主に買い取ってもらうことも考えられます。発行会社が自社株を取得する「自社株買い」は、株主構成の集約や事業承継の観点から会社側にもメリットがある場合があります。

ただし、会社が自社株を取得するには、株主総会決議や財源規制(分配可能額の範囲内であること)などの要件を満たす必要があります。会社が買取に応じない場合は、第三者への売却を検討することになります。

なお、相続または遺贈により取得した非上場株式を、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに発行会社へ譲渡した場合、一定の要件のもとで、みなし配当課税(総合課税)ではなく株式等に係る譲渡所得等として課税される特例があります。この場合の税率は、所得税15%・復興特別所得税0.315%・住民税5%の合計20.315%です(出典:国税庁No.1477)。

第三者(M&A仲介経由など)への売却

譲渡制限株式の場合でも、会社の承認を得ることができれば第三者への売却が可能です。買い手が見つからない場合や、会社が承認しない場合は、会社または指定買取人による買取を請求できます。

近年は、M&A仲介会社を通じて非上場株式の買い手を探す方法も選択肢の一つです。特に少数株主の場合、専門の仲介会社や弁護士のネットワークを通じて買い手を探すことも考えられます。

ただし、買取価格は交渉次第であり、必ずしも相続税評価額どおりにはなりません。当事務所では、株式評価と交渉に関するご相談に対応しています。

非上場株式の相続トラブルを防ぐ生前の備え

非上場株式の相続トラブルは、相続が発生してからでは解決に時間と費用がかかります。被相続人となる方が元気なうちに備えを講じることで、相続後の対立を防ぎ、円滑な事業承継を実現しやすくなります。

遺言書の作成(遺留分への配慮を含む)

まず検討すべき備えは、遺言書の作成です。遺言書で株式の取得者を明確にしておくことで、相続発生後の遺産分割協議の難航を避けられます。

ただし、すべての株式を後継者に集中させるような遺言書では、他の相続人の遺留分を侵害する可能性があります。遺留分を侵害された相続人は遺留分侵害額請求を行うことができ、後継者は多額の代償金支払いを迫られることがあります。

そのため、遺言書の作成にあたっては、遺留分への配慮も含めた検討が必要です。公正証書遺言の形式で作成することで、遺言書の有効性をめぐる争いも避けやすくなります。

株式の生前贈与・売却

被相続人の生前に、後継者へ株式を贈与または売却する方法もあります。生前贈与により株式そのものを相続発生時の遺産から切り離せる場合がありますが、相続税の計算では一定期間内の贈与財産が加算されることがあります。暦年課税による生前贈与については、令和5年度税制改正により、相続税の課税価格に加算される期間が従来の3年から7年へ段階的に延長されています。令和6年1月1日以後の贈与から経過措置を経て適用されるため、相続発生時期によって加算対象となる期間が異なる点に注意が必要です。

生前贈与については、贈与税の負担を考慮しつつ、計画的に進めることが望まれます。事業承継税制(特例措置)を活用すれば、贈与税の納税猶予を受けることもできます。

また、生前に株式を売却することで、被相続人が現金を確保しつつ、後継者が株式を取得する形にすることも可能です。

事業承継計画の作成と後継者の確定

中小企業の経営者にとっては、株式の承継だけでなく、経営そのものを引き継ぐ計画を立てることが欠かせません。後継者を早期に確定し、社内外への周知・経営権限の段階的な委譲・後継者教育などを進めることで、円滑な事業承継につながります。

事業承継計画は、中小企業庁の支援機関や認定経営革新等支援機関のサポートを受けながら策定できます。事業承継税制(特例措置)の適用を受けるには、特例承継計画の都道府県への提出が必要です。自社株の承継の進め方は、自社株を相続するための進め方でも解説しています。

定款の見直し(売渡請求条項・属人的株式の活用)

会社の定款を見直すことで、相続トラブルの予防につながる場合があります。たとえば、「相続人等に対する売渡請求」の定めを置くことで、株式が想定外の相続人に渡るのを防ぐことができます。

ただし、この定めは諸刃の剣でもあります。経営者本人が亡くなった場合、後継者が他の株主から売渡請求を受け、株式を失うリスクもあります。定款変更の効果と影響を慎重に検討する必要があります。

また、非公開会社では、会社法109条2項に基づき、剰余金の配当・残余財産の分配・株主総会における議決権について、株主ごとに異なる取扱いを定款で定めることができます。いわゆる属人的株式の設計を活用すれば、議決権や配当の配分を調整できる場合があります。

非上場株式の相続に関する最新動向

非上場株式の相続を取り巻く制度は、近年も改正が続いています。執筆時点で押さえておきたい最新動向を順に取り上げます。

事業承継税制(特例措置)の期限と要件

事業承継税制は、後継者が先代経営者から非上場株式等を贈与または相続によって取得した際に、一定の要件のもとで贈与税・相続税の納税が猶予・免除される制度です。2018年度税制改正で時限的な「特例措置」が導入され、一般措置よりも対象株式数や納税猶予割合などが拡充されました。

非上場株式の承継で主に問題となるのは、法人版事業承継税制です。個人版事業承継税制は、個人事業者の特定事業用資産を対象とする別制度であり、非上場株式の承継とは対象資産や期限が異なります。

法人版の特例措置について、中小企業庁は、特例承継計画の提出期限を令和9年(2027年)9月30日までと案内しています。一方、実際に贈与・相続によって非上場株式等を取得する適用期限は令和9年(2027年)12月31日までです。

項目 法人版の特例措置の内容
対象 非上場会社の株式等
特例承継計画の提出期限 令和9年(2027年)9月30日
贈与・相続による取得期限 令和9年(2027年)12月31日
納税猶予の対象株式 全株式(一般措置は総株式数の最大3分の2まで)
納税猶予の割合 相続税の100%(一般措置は80%)

特例承継計画の提出期限は延長されていますが、実際の承継期限は据え置かれています。適用を希望する場合は、株式の承継時期、後継者の要件、会社の要件、認定経営革新等支援機関の関与などを早めに確認することが望まれます(出典:中小企業庁法人版事業承継税制(特例措置))。

中小企業経営承継円滑化法の民法特例(除外合意・固定合意)

中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律(以下「中小企業経営承継円滑化法」)には、民法の遺留分に関する特例制度があります。後継者と他の推定相続人全員の合意により、生前贈与した株式について「遺留分算定の基礎財産から除外する(除外合意)」または「遺留分算定の基礎財産に算入する価額を合意した時点の価額に固定する(固定合意)」ことができます。

この特例を利用することで、後継者が承継した株式が後に値上がりしても、遺留分侵害額請求の対象が一定額に抑えられるため、後継者の地位が安定します。

ただし、特例の適用には、推定相続人全員の合意・経済産業大臣の確認・家庭裁判所の許可が必要です。手続きは複雑ですが、事業承継を円滑に進めたい場合に有効な選択肢となります。

遺産分割が長引いた場合の相続税申告と更正の請求

非上場株式の評価額をめぐる対立で遺産分割協議が長引き、相続税申告期限(原則10か月)までに分割が終わらない場合があります。このような場合は、いったん法定相続分どおりに相続したものとして相続税を申告し、その後に分割が確定した時点で修正申告または更正の請求を行うことになります。

未分割のまま相続税を申告する場合でも、申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付し、申告期限から3年以内に分割が確定すれば、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例の適用を受けられる場合があります。分割確定後の更正の請求は、原則として分割があったことを知った日の翌日から4か月以内に行う必要があります。

3年を超えても、やむを得ない事情があれば税務署長の承認を得て期限延長が可能です。評価額の対立が長引くと、相続税の特例適用を逃してしまうリスクがあります。早期に専門家を交えて協議の進め方を定めることが、結果的に税負担の軽減にもつながります。

非上場株式の相続に関するよくある質問

非上場株式の相続に関して当事務所に寄せられることの多いご質問にお答えします。

株式の存在自体がわからない場合はどうやって調べる?

通常の中小企業の非上場株式では、証券会社の口座情報だけでは保有状況を確認できないことが多いため、被相続人の手元にある資料から発行会社を特定する必要があります。具体的には、株券・株主総会招集通知・配当金支払通知書・確定申告書の控え・預金通帳の入金記録などを確認します。

被相続人の友人・知人・取引先から情報を得られる場合もあります。発行会社が判明したら、会社に直接問い合わせて株主名簿の記載内容を確認します。

非上場株式の株価は誰が決めるのですか?

一義的に株価を決める人がいるわけではなく、目的に応じた評価方法で算定します。相続税の申告では財産評価基本通達に沿って評価し、遺産分割では相続人間の公平を図る時価が問題となります。会社や顧問税理士が示した評価額に納得できない場合は、中立的な専門家への評価依頼や、調停・審判での評価を検討することになります。

株式の評価はいつの時点で行うのですか?

相続税の申告における評価は、被相続人の死亡日(課税時期)を基準に行います。会社の決算期とは一致しないため、課税時期に近い決算期の資料等を用いて評価額を算定します。

一方、遺産分割における評価は、分割時に近い時点の時価が問題となることがあり、相続税評価の基準時とは異なる扱いになる場合があります。

株主名簿の名義書換を会社が拒否した場合は?

会社が名義書換を不当に拒否する場合、名義書換請求訴訟を提起できます。訴訟では、相続人が正当な株主であることを示す資料(被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本・遺産分割協議書または遺言書・印鑑証明書など)を提出します。

会社が定款上の売渡請求権を行使しようとしている場合や、相続人の確定をめぐって争いがある場合は、より慎重な対応が必要です。早期に弁護士へ相談することが考えられます。

株式評価額の算定はどの専門家に依頼すべき?

相続税申告のための評価は税理士に、遺産分割協議や調停・審判での評価は弁護士または公認会計士に相談するのが一般的です。両者は基準が異なるため、目的に応じた専門家を選ぶ必要があります。

複雑なケースでは、税理士と弁護士が連携して対応することが望ましい場合もあります。当事務所では、企業価値評価に関する資料も踏まえ、弁護士の立場から株式評価をめぐる争点について助言しています。

高額な相続税が払えない場合はどうする?

相続税の納付資金が不足する場合、以下のような対応が考えられます。

  • 延納: 相続税を分割して納付する制度(担保の提供が必要)
  • 物納: 延納によっても金銭で納付することが難しい場合に、一定の財産で納付する制度。非上場株式等も第2順位の物納財産に含まれますが、管理処分不適格財産に該当しないことなど厳格な要件があり、実際に認められるかは個別判断となります
  • 自社株買い: 発行会社に株式を買い取ってもらい、現金化する
  • 事業承継税制の活用: 一定要件を満たす場合、相続税の納税猶予を受けられる
  • 金融機関からの借入れ: 不動産等を担保とした借入れによる納税資金の調達

それぞれにメリット・デメリットがあるため、税理士・弁護士など複数の専門家と相談しながら最適な方法を選びましょう。

他の相続人が株式を独占しようとしている場合は?

他の相続人が一方的に株主名簿の書換えを進めたり、株主総会で勝手に決議をしたりする場合は、株主権確認訴訟や株主総会決議の効力を争う訴訟を提起できます。

また、遺産分割協議に応じない相続人がいる場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることで、調停委員を交えた協議の場を設けることができます。証拠保全と早期の法的対応が、自らの権利を守るうえで求められます。

遺産分割協議が長引いた場合に会社の経営はどうなる?

遺産分割協議が長引き、株式が相続人全員の準共有状態のままだと、議決権を行使するには相続人間で権利行使者を定める必要があります(会社法106条)。権利行使者の決定は準共有持分の過半数で行うのが判例の考え方ですが、相続人間で合意できない場合は議決権の行使自体が難しくなります。

会社の重要な意思決定が滞ると、取引先や金融機関との関係にも影響します。早期に暫定的な権利行使者を決めるか、遺産分割の早期解決を図ることが望まれます。

非上場株式の相続でお悩みならご相談ください

非上場株式の相続は、会社の経営や親族関係に大きな影響を及ぼすデリケートな問題です。当事務所では、会社株式の相続争いに重点的に取り組み、これまでさまざまなご相談をお受けしてきました。

会社株式の相続をめぐるご相談について、相続法と会社法の双方を踏まえて対応方針を検討します。関連するご質問は当事務所のQ&Aもご参照ください。

当事務所の代表弁護士はM&A・事業承継・訴訟紛争を主に取り扱っており、企業価値評価に関する資料も確認しながらご相談にお応えしています。株式の評価が論点となる事案では、法律面に加え、株式評価資料の確認も踏まえて対応方針を検討します。

複雑な親族間の対立や、会社経営に関わるデリケートな問題についても、事案に応じた法的対応を検討します。感情的になりやすい相続争いについて、法的な論点と証拠関係を明確にしながら、対応方針を検討するお手伝いをいたします。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

目次