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2026年最新版:事業承継トラブルを未然に防ぐ遺言と株式対策

「会社を次の世代へどう引き継ぐか」——これは、多くの経営者様にとって、避けては通れない最大の経営課題ではないでしょうか。

特に、親族内承継を検討する際、最も大きな障壁となるのが「株式の分散」と「遺産分割を巡る争い」です。準備不足のまま相続が発生し、後継者が十分な議決権を確保できなくなるケースや、遺留分侵害額請求によって会社の資金繰りが危ぶまれる事態は、残念ながら後を絶ちません。

さらに、2026年という節目を見据えた法制度や税制のトレンドを正しく理解しておくことは、円滑な承継において極めて重要です。事業承継税制の特例措置の適用期限や要件、最新の法改正に対応した自社株対策は、まさに待ったなしの状況と言えます。単なる節税対策にとどまらず、経営の安定性を長期的に担保するための戦略が求められています。

本記事では、経営権を盤石にするための「種類株式」の活用法から、法的な落とし穴を回避する「遺言書」の作成ポイント、そして最新の制度改正を踏まえた税務対策まで、事業承継トラブルを未然に防ぐための具体的かつ実践的なノウハウを徹底解説します。

長年育て上げてきた大切な会社と従業員、そしてご家族の未来を守るために。確かな知識を武器に、事業承継を成功へと導く一助として、ぜひ最後までご一読ください。

1. 株式の分散が招く経営危機とは:後継者の支配権を確保する種類株式の活用法

中小企業のオーナー経営者にとって、自社株の行方は会社の存続そのものを左右する重大な懸念事項です。多くの経営者が「家族仲が良いから問題ない」と楽観視しがちですが、相続発生後に株式が複数の相続人に分散してしまうことで、経営機能不全に陥るケースは後を絶ちません。

株式が分散することの最大のリスクは、後継者が迅速な経営判断を下せなくなる点にあります。会社法において、取締役の選任などの普通決議には過半数、定款変更や組織再編などの特別決議には3分の2以上の議決権が必要です。相続によって株式が分散し、後継者の持株比率がこれらのラインを割り込むと、経営に関与しない親族株主の同意なしには何も決められない「膠着状態」が生まれます。最悪の場合、親族間の意見対立が法廷闘争へ発展し、会社の信用失墜や後継者の解任といった経営危機を招くことになります。

こうしたリスクを回避し、後継者に経営の主導権を確実に引き継ぐための強力なツールが「種類株式」です。普通株式とは権利内容の異なる株式を活用することで、持株数だけに依存しない強固な支配権を構築できます。

事業承継の現場で特に有効性が高いのが、「議決権制限種類株式」と「拒否権付種類株式(黄金株)」の二つです。

議決権制限種類株式は、株主総会での議決権を持たない、あるいは制限された株式です。経営に関与しない相続人に対しては、この株式を渡すことで配当などの経済的利益は保証しつつ、経営への口出しは防ぐことができます。これにより、後継者に議決権のある株式を集中させることが可能となり、安定した経営基盤を維持できます。

一方、拒否権付種類株式は、株主総会の決議事項に対して拒否権を行使できる株式であり、通称「黄金株」と呼ばれます。例えば、後継者がこの株式を一株でも保有していれば、他の株主が結託して後継者の解任動議を出したとしても、それを拒否して阻止することが可能です。また、現経営者が引退後もこの株を保有し続けることで、後継者の暴走に対する抑止力として機能させるケースもあります。

これらの種類株式を導入するには定款変更が必要であり、全株主の同意が求められる場合もあるため、相続が発生してからでは手遅れです。経営者が健在なうちに専門家を交えて資本政策を見直し、遺言書と組み合わせてスキームを構築しておくことが、100年続く企業を作るための必須条件と言えます。

2. 遺言書作成の落とし穴と対策:遺留分侵害額請求を防ぐための法的ポイント

事業承継において、多くの経営者が「後継者に全ての自社株式を相続させる」という内容の遺言書を作成すれば、経営権の移転は完了すると考えがちです。しかし、ここには重大な落とし穴が潜んでいます。それが「遺留分」の問題です。遺言書の内容が特定の相続人に偏りすぎている場合、他の相続人から「遺留分侵害額請求」を起こされるリスクが極めて高くなります。ここでは、事業承継を揺るがす遺留分トラブルの実態と、それを未然に防ぐための具体的な法的対策について解説します。

まず理解すべきは、民法改正により遺留分の請求ルールが変更された点です。かつては「遺留分減殺請求」として、対象となる財産そのもの(例えば株式の一部など)の返還を求めることができましたが、現在は「遺留分侵害額請求」となり、原則として侵害額に相当する「金銭」での解決が求められます。これは一見、株式の分散を防げるため後継者にとって有利に見えますが、実際には莫大な現金を短期間で用意しなければならないという重圧になります。もし手元資金が不足していれば、後継者は納税資金のみならず、親族への支払いのために自社株を売却したり、会社から無理な借入を行ったりする必要に迫られ、結果として会社の財務基盤を毀損することになりかねません。

こうした事態を防ぐための有効な対策の一つが、「経営承継円滑化法」に基づく民法の特例措置の活用です。この制度を利用し、推定相続人全員の合意を得て家庭裁判所の許可を受けることで、生前贈与された自社株式を遺留分の算定基礎財産から除外する「除外合意」や、評価額をその時点の価額で固定する「固定合意」を行うことが可能です。特に業績が右肩上がりの企業の場合、将来の株価上昇による遺留分負担の増大リスクを遮断できるため、非常に強力な防衛策となります。

また、遺言書そのものの質を高める工夫も欠かせません。法的効力はありませんが、遺言書の末尾に「付言事項」として、なぜ後継者に株式を集中させる必要があるのか、創業者の想いや会社の将来ビジョンを丁寧に記すことが推奨されます。「従業員の雇用を守り、事業を永続させるため」という経営者の真摯なメッセージは、他の相続人の感情的な反発を和らげ、争族を回避する精神的な抑止力となります。

さらに、金銭的な手当てとして生命保険の活用も検討すべきです。経営者を被保険者、後継者を受取人とする生命保険に加入しておけば、死亡時にまとまった現金が後継者の手元に入ります。これを遺留分侵害額請求への支払原資(代償金)に充てることで、会社の資産に手を付けることなく解決を図ることができます。

事業承継における遺言書作成は、単なる財産分与の手続きではありません。企業の永続性を守るための高度な経営戦略です。法的要件を満たすことはもちろん、税務面や親族間のバランスを総合的に考慮し、専門家の知見を取り入れながら、隙のない対策を講じることが求められます。

3. 2026年の制度改正を見据えて:事業承継税制の特例活用と自社株対策の最適解

事業承継において最大の懸念事項となるのが、自社株の評価額とそれに伴う税負担、そして遺留分を巡る親族間の争いです。特に事業承継税制の特例措置は、適用期限である2027年12月末が目前に迫るこの時期において、実行に移すか否かの最終的な経営判断が求められる局面に入っています。これまで特例承継計画を提出済みであっても、実際に贈与や相続を実行していなければ納税猶予の恩恵は受けられません。後継者への権限移譲をスムーズに進めるためにも、特例措置の適用要件を再確認し、確実に手続きを進める必要があります。

一方で、事業承継税制を使わない選択をする企業にとっても、近年の税制改正により選択肢は広がっています。特に注目すべきは、相続時精算課税制度における基礎控除の活用です。従来の暦年贈与に加え、相続時精算課税制度を選択した場合でも年間110万円の基礎控除が利用可能となったことで、早期に自社株を後継者へ移転させるメリットが増大しています。これにより、将来の株価上昇に伴う相続税負担の増加リスクを抑制しつつ、計画的な資産承継が可能となります。

また、自社株対策として欠かせないのが、株価の引き下げです。配当政策の見直しや、役員退職金の支給による利益圧縮、含み損のある資産の売却などは、純資産価額方式における株価評価を引き下げるために有効な手段です。ただし、これらの対策は税務署から租税回避行為とみなされないよう、正当な事業目的を持って行うことが不可欠です。顧問税理士だけでなく、事業承継に特化した専門家を交えて、否認リスクのないスキームを構築することが重要です。

さらに、法務面での対策として「経営承継円滑化法」に基づく民法の特例(除外合意・固定合意)の活用も忘れてはなりません。遺言書で後継者に自社株を集中させても、他の相続人から遺留分侵害額請求を受ければ、株式の分散や金銭的な補償問題により経営基盤が揺らぐ恐れがあります。除外合意によって後継者が取得する自社株を遺留分の算定基礎から外す手続きは、将来の紛争を未然に防ぐための強力な防波堤となります。

制度の期限と改正内容を正確に把握し、税務と法務の両面からアプローチすることが、企業の永続的な発展を守るための最適解となります。中小企業庁や国税庁が公表している最新のガイドラインを参照しつつ、自社の状況に合わせたオーダーメイドの承継計画を完遂させてください。