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非上場株式の評価額で揉めた時に絶対やってはいけないNG行動

非上場企業の経営者様や、その株式を相続・譲渡される方にとって、「自社株の評価額」は避けて通れない極めて重要なテーマです。市場価格が存在しない非上場株式は、採用する評価方法によって金額が数倍、時には数十倍にも変動するため、当事者間で認識のズレが生じやすく、深刻なトラブルに発展するケースが後を絶ちません。

もし今、あなたが株式の評価額を巡って相手方と意見が対立していたり、交渉が難航していたりするのであれば、焦って行動を起こす前に一度立ち止まってください。この局面において、良かれと思って取った行動や感情任せの対応が、かえって事態を泥沼化させ、取り返しのつかない経済的・精神的損失を招く恐れがあるからです。

本記事では、非上場株式の評価額で揉めた際に「絶対にやってはいけないNG行動」について、税務リスクや人間関係への影響といった観点から詳しく解説します。これらの落とし穴を事前に把握し、避けるべき行動を理解するだけで、最悪の事態を回避し、円満かつ適正な解決へ近づくことができるはずです。大切な資産と将来を守るために、ぜひ参考にしてください。

1. 自己流の株価算定は大変危険です:税務調査で否認され多額の追徴税額が発生するリスクについて

非上場企業のM&Aや事業承継、あるいは親族間での売買において、最もトラブルになりやすいのが「株式の評価額(株価)」の決定です。特に、専門家への依頼コストを抑えようとして、経営者自身や社内の経理担当者がインターネット上の情報を頼りに見様見真似で株価を算定し、取引を実行してしまうケースが散見されます。しかし、結論から申し上げますと、非上場株式の自己流算定は、会社の資金繰りや個人の資産を揺るがしかねない極めて危険な行為です。

まず理解しなければならないのは、税務署が認める「時価」と、経営者が感覚的に思う「会社の価値」には大きな乖離が生じやすいということです。多くの経営者は、「設立時の資本金の額(額面)」や「決算書の純資産を株数で割った金額」で譲渡しても身内同士なら問題ないと考えがちです。しかし、国税庁が定める「財産評価基本通達」に基づく評価方法は非常に複雑かつ厳格です。会社の総資産や売上高による規模(大会社・中会社・小会社)の判定や、特定の評価会社に該当するかどうかの判定、さらには株主が同族株主か否かによって、採用すべき評価方式(類似業種比準方式、純資産価額方式、配当還元方式)が細かく規定されており、これらを正確に使い分ける必要があります。

もし、自己流で算出した低い株価で親族や役員、従業員に譲渡を行った場合、後の税務調査で「著しく低い価額での譲渡(低額譲渡)」と認定されるリスクが非常に高まります。この場合、税務署が算定した適正な時価との差額に対して、買い手側には「贈与税(個人への譲渡の場合)」や「受贈益に対する法人税(法人への譲渡の場合)」が課税されます。売り手側にも、個人の場合は「みなし譲渡所得税」が発生したり、法人の場合は「寄付金」認定され損金不算入となったりするなど、売り手・買い手双方に当初想定していなかった莫大な税負担が発生する構造になっています。

税務署は、法人税申告書別表二の「同族会社等の判定に関する明細書」などを通じて株式の異動情報を詳細に把握しており、適正な評価が行われていないと疑われる取引には厳しい目を光らせています。調査で株価算定が否認されれば、本来納めるべき本税に加え、過少申告加算税や、悪質な隠蔽とみなされれば重加算税、さらには期間に応じた延滞税といった重いペナルティが課されます。数年後に指摘を受けた場合、延滞税だけでも相当な金額に膨れ上がります。

正しい株価算定には、税法だけでなく会社法や会計の高度な専門知識も不可欠です。例えば、保有している土地や有価証券、保険積立金の含み益を考慮した時価純資産の算出や、最新の類似業種の株価データの収集などは、一般の方が正確に行うには困難を極めます。将来的な税務リスクを排除し、安心して事業承継やM&Aを進めるためには、安易な自己判断を避け、資産税や株価算定に精通した税理士等の専門家による算定評価書に基づいた適正価格で取引を行うことが、結果として会社と個人の資産を守る最善の策となります。

2. 感情的な話し合いは避けてください:親族間の亀裂を決定的にしてしまう交渉時の言動とは

非上場株式の売買価格や相続時の評価額をめぐる争いは、表面上は「金額」の妥当性を問う議論に見えますが、その深層には長年にわたる親族間の感情的なしこりが潜んでいるケースが大半です。特に同族会社の場合、経営権を持つ側と少数株主との間で情報の非対称性が存在し、疑心暗鬼になりやすい土壌があります。このような状況下で、当事者同士が直接顔を合わせて感情的な言葉をぶつけ合うことは、交渉決裂への最短ルートであり、最も避けるべき行為です。

交渉の場で絶対に口にしてはいけないのは、相手の人格否定や過去のプライベートな恨みつらみです。「経営者としての能力がない」「昔から自分勝手だった」「親の介護をしなかったくせに権利だけ主張するのか」といった発言は、株式評価という本来の論点とは無関係です。しかし、一度こうした言葉が投げかけられると、相手は経済的な合理性よりも「相手を困らせたい」「意地でも譲らない」という懲罰的な感情を優先させるようになります。こうなると、公認会計士や税理士が算出した客観的な株価算定書の金額がどれほど正しくても、合意形成は不可能になります。

感情的な対立が決定的になると、解決策は裁判所を通じた売渡価格決定の申立てなど、法的な手続きに委ねることになります。これにより解決までの期間は年単位で長期化し、双方ともに多額の弁護士費用や鑑定費用を負担することになります。結果として手元に残る金額が目減りするだけでなく、親族としての関係は完全に修復不可能となります。

非上場株式の評価額で意見が対立した際は、売り言葉に買い言葉で応戦するのではなく、速やかに冷静な第三者を介入させることが重要です。直接の対話を避け、弁護士や税理士などの専門家を窓口にすることで、感情論を排したドライな交渉環境を構築することが、最終的には双方にとって最も経済的かつ精神的な負担の少ない解決策となります。

3. 専門家の関与を拒むのはお勧めできません:公平な第三者を入れることが早期解決への近道となる理由

非上場株式の売買や相続において、最も深刻な対立を生むのが「株価」の決定です。上場株式のように市場価格が存在しないため、当事者それぞれが自分に都合の良い金額を主張し、交渉が泥沼化するケースは後を絶ちません。このような状況下で「外部にコストをかけたくない」「社内の事情を外部に漏らしたくない」といった理由から、税理士や公認会計士、弁護士といった専門家の関与を拒むことは、解決を遠ざける典型的なNG行動です。

なぜ当事者同士だけの話し合いが危険なのか、その理由は明確です。売り手は「会社への貢献度や将来性」を根拠に高く売りたいと考え、買い手は「財務リスクや流動性の低さ」を理由に安く買いたいと考えます。双方が主観的な正義を主張し合っても、共通の「物差し」がない限り合意点を見出すことは不可能です。結果として話し合いは平行線をたどり、解決までの時間が長期化するだけでなく、人間関係の修復が不可能なレベルまで悪化してしまうリスクがあります。

ここで専門家という公平な第三者を介入させることには、大きなメリットがあります。まず、公認会計士や税理士による「株価算定書」は、客観的な数値の根拠となります。純資産価額方式、類似業種比準方式、あるいはDCF法(ディスカウント・キャッシュ・フロー法)など、会計基準や税務上のルールに基づいた論理的な評価額が提示されることで、感情論を排した建設的な議論が可能になります。

また、M&Aや事業承継の経験豊富な弁護士が間に入ることで、法的な妥当性を確保しながら交渉の交通整理を行うことができます。専門家への依頼費用は一時的なコストに見えるかもしれません。しかし、当事者だけで揉め続けた場合に発生する時間的なロス、精神的なストレス、そして将来的な訴訟リスクと比較すれば、専門家を活用することは極めて合理的でコストパフォーマンスの高い投資と言えます。

もし相手方が専門家の選任を提案してきた場合、それを拒絶するのではなく、こちらも信頼できる専門家を選定し、専門家同士で協議させる方法も有効です。プロフェッショナル同士であれば、評価手法の前提条件や計算根拠について冷静に議論を交わすことができ、双方が納得できる着地点を早期に見つけ出すことが可能になります。早期解決を目指すのであれば、専門家の知見を借りることを強く推奨します。