相続法の条文解説(遺言の取消:1022条~1027条)

(遺言の撤回)

第1022条 遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる。

 

1 事実関係の如何によっては、贈与者が取り消すことのできない死因贈与もありうるが、このことから直ちに、贈与者がその目的たる不動産を第三者に売り渡すことができないわけではなく、その場合には、受贈者と買主との関係は、いわゆる二重譲渡の場合における対抗問題により解決されることになる。(最判昭58.1.24

 

(前の遺言と後の遺言との抵触等)

第1023条 前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす。

2 前項の規定は、遺言が遺言後の生前処分その他の法律行為と抵触する場合について準用する。

 

◆ 生前贈与

1 金一万円を与える旨の遺言をした後、遺言者が右遺贈に代えて生前に金五千円を受遺者に贈与することとし、受遺者もまたその後金銭の要求をしない旨を約したときは、遺贈は取り消されたものとみなすべきである。(大判昭18.3.19

 

◆ 財団設立

2 遺言による寄付行為に基づく財団設立行為がなされた後に、生前処分による寄付行為に基づく財団設立行為がなされた場合、右遺言が取り消されたものとみなされるためには、右生前処分の寄付行為が主務官庁の許可を得てその効果の生じたことを必要とする。(最判昭43.12.24

 

◆ 離縁

3 終生扶養を受けることを前提とし養子縁組をした上大半の不動産を遺贈した者が、後に協議離縁をした場合、その遺贈は取り消されたものとみなされる。(最判昭56.11.13

 

◆ 負担付死因贈与

4 (最判昭57.4.30

 

(遺言書又は遺贈の目的物の破棄)

第1024条 遺言者が故意に遺言書を破棄したときは、その破棄した部分については、遺言を撤回したものとみなす。遺言者が故意に遺贈の目的物を破棄したときも、同様とする。

 

◆ 遺言書全体に斜線を引く行為

1 故意に赤色のボールペンで遺言書の文面全体に斜線を引く行為は、「故意に遺言書を破棄したとき」に該当し、遺言を撤回したものとみなされる。(最判平27.11.20

 

(撤回された遺言の効力)

第1025条 前三条の規定により撤回された遺言は、その撤回の行為が、撤回され、取り消され、又は効力を生じなくなるに至ったときであっても、その効力を回復しない。ただし、その行為が詐欺又は強迫による場合は、この限りでない。

 

◆ 撤回による前の遺言の復活

1 第一の遺言を第二の遺言によって撤回した遺言者が、さらに第三の遺言によって第二の遺言を撤回した場合に、第三の遺言書を記載に照らし、遺言者の意思が第一の遺言の復活を希望することが明らかなときは、本条但書の法意に鑑み、遺言者の真意を尊重して、第一の遺言の効力の復活を認める。(最判平9.11.13

 

(遺言の撤回権の放棄の禁止)

第1026条 遺言者は、その遺言を撤回する権利を放棄することができない。

 

(負担付遺贈に係る遺言の取消し)

第1027条 負担付遺贈を受けた者がその負担した義務を履行しないときは、相続人は、相当の期間を定めてその履行の催告をすることができる。この場合において、その期間内に履行がないときは、その負担付遺贈に係る遺言の取消しを家庭裁判所に請求することができる。