相続法の条文解説(相続人の不存在:951条~959条)

(相続財産法人の成立)

第951条 相続人のあることが明らかでないときは、相続財産は、法人とする。

 

◆ 全財産の包括受遺者

1 遺言者に相続人は存在しないが相続財産全部の包括受遺者が存在する場合は、本条にいう「相続人のあることが明らかでないとき」には当たらない。(最判平9.9.12

 

(相続財産の管理人の選任)

第952条 前条の場合には、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、相続財産の管理人を選任しなければならない。

2 前項の規定により相続財産の管理人を選任したときは、家庭裁判所は、遅滞なくこれを公告しなければならない。

 

(不在者の財産の管理人に関する規定の準用)

第953条 第27条から第29条までの規定は、前条第1項の相続財産の管理人(以下この章において単に「相続財産の管理人」という。)について準用する。

 

(相続財産の管理人の報告)

第954条 相続財産の管理人は、相続債権者又は受遺者の請求があるときは、その請求をした者に相続財産の状況を報告しなければならない。

 

(相続財産法人の不成立)

第955条 相続人のあることが明らかになったときは、第951条の法人は、成立しなかったものとみなす。ただし、相続財産の管理人がその権限内でした行為の効力を妨げない。

 

(相続財産の管理人の代理権の消滅)

第956条 相続財産の管理人の代理権は、相続人が相続の承認をした時に消滅する。

2 前項の場合には、相続財産の管理人は、遅滞なく相続人に対して管理の計算をしなければならない。

 

(相続債権者及び受遺者に対する弁済)

第957条 第952条第2項の公告があった後二箇月以内に相続人のあることが明らかにならなかったときは、相続財産の管理人は、遅滞なく、すべての相続債権者及び受遺者に対し、一定の期間内にその請求の申出をすべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、二箇月を下ることができない。

2 第927条第2項から第4項まで及び第928条から第935条まで(第932条ただし書を除く。)の規定は、前項の場合について準用する。

 

◆ 抵当権設定登記請求

1 相続債権者は、被相続人から抵当権の設定を受けていても、被相続人の死亡前に仮登記がされていた場合を除き、相続財産法人に対して抵当権設定登記手続を請求できない。(最判平11.1.21

 

(相続人の捜索の公告)

第958条 前条第1項の期間の満了後、なお相続人のあることが明らかでないときは、家庭裁判所は、相続財産の管理人又は検察官の請求によって、相続人があるならば一定の期間内にその権利を主張すべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、六箇月を下ることができない。

 

1 958条所定の公告期間内に相続人であることの申出をしなかった者については、たとえ右期間内に相続人であることの申出をした他の者の相続権の存否が訴訟で争われていたとしても、該訴訟の確定まで右期間が延長されるものではない。(最判昭56.10.30

 

(権利を主張する者がない場合)

第958条の2 前条の期間内に相続人としての権利を主張する者がないときは、相続人並びに相続財産の管理人に知れなかった相続債権者及び受遺者は、その権利を行使することができない。

 

1 958条所定の公告期間内に申し出なかった相続人は、相続財産法人および国庫に対する関係で失権するので、特別縁故者への分与後の残余財産について、相続権を主張することは許されない。(最判昭56.10.30

 

(特別縁故者に対する相続財産の分与)

第958条の3 前条の場合において、相当と認めるときは、家庭裁判所は、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者の請求によって、これらの者に、清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができる。

2 前項の請求は、第958条の期間の満了後三箇月以内にしなければならない。

 

◆ 「その他被相続人と特別の縁故があった者」

1 「その他被相続人と特別の縁故があった者」とは、本条に例示する生計を同じくしていた者、療養看護に努めた者に該当する者に準ずる程度に被相続人との間に具体的かつ現実的な精神的・物質的に密接な交渉のあった者で、相続財産をその者に分与することが被相続人の意思に合致するであろうとみられる程度に特別の関係にあった者をいう。(大阪高決昭46.5.18

 

◆ 255条との優先関係

2 共有者の一人が死亡し、相続人の不存在が確定し、相続債権者や受遺者に対する清算手続が終了したときは、その持分は、本条に基づく特別縁故者に対する財産分与の対象となり、右財産分与がされないときに、255条により他の共有者に帰属する。

 

◆ 遺言の無効確認

3 特別縁故者として相続財産の分与を受ける権利は、審判により形成される権利にすぎず、遺言の無効確認を求める法律上の利益を有するとはいえない。(最判平6.10.13

 

(残余財産の国庫への帰属)

第959条 前条の規定により処分されなかった相続財産は、国庫に帰属する。この場合においては、第956条第2項の規定を準用する。

 

◆ 国庫への帰属時期

1 相続人不存在の場合において、特別縁故者に分与されなかった相続財産は、相続財産管理人がこれを国庫に引き継いだ時に国庫に帰属し、相統財産全部の引継ぎが完了するまでは、相続財産法人は消滅せず、相続財産管理人の代理権も引継未了の相続財産につき存続する。(最判昭50.10.24

 

◆ 「遺言させる」旨の遺言

1 遺産分割の方法の指定と解した事例。(最判平3.4.19

2 遺言の効力。(最判平3.4.19

3 登記の要否。(最判平14.6.10

4 代襲相続の可能性。(最判平23.2.22

5 遺言執行者との関係。(最判平7.1.24

6 債務の承継。(最判平21.3.24