相続法の条文解説(相続の承認及び放棄(総則):915条~919条)

(相続の承認又は放棄をすべき期間)

第915条 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。

2 相続人は、相続の承認又は放棄をする前に、相続財産の調査をすることができる。

 

◆ 「自己のために相続の開始があったことを知った時」

1 「自己のために相続の開始があったことを知った時」と、相続人が相続開始の原因たる事実の発生を知り、かつそのために自己が相続人となったことを覚知した時を指す。(大決大15.8.3

 

◆ 熟慮期間の進行

2 相続人が数人いる場合には、本条1項に定める三か月の期間は、相続人がそれぞれ自己のために相続の開始があったことを知った時から各別に進行する。(最判昭51.7.1

 

◆ 熟慮期間の起算点

3 本条の熟慮期間は、相続人が相続財産の全部または一部の存在を認識した時または通常これを認識しうべき時から起算すべきである。(最判昭59.4.27

 

第916条 相続人が相続の承認又は放棄をしないで死亡したときは、前条第1項の期間は、その者の相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時から起算する。

 

◆ 放棄した再転相続人の放棄

1 甲の相続につきその法定相続人である乙が承認または放棄をしないで死亡した場合、乙の法定相続人である丙は、乙の相続につき放棄をしていないときは、甲の相続につき放棄をすることができ、その後に丙が乙の相続につき放棄をしても、丙が先に再転相続人たる地位に基づいて甲の相続につきした放棄の効力がさかのぼって無効になることはない。(最判昭63.6.21

 

第917条 相続人が未成年者又は成年被後見人であるときは、第915条第1項の期間は、その法定代理人が未成年者又は成年被後見人のために相続の開始があったことを知った時から起算する。

 

(相続財産の管理)

第918条 相続人は、その固有財産におけるのと同一の注意をもって、相続財産を管理しなければならない。ただし、相続の承認又は放棄をしたときは、この限りでない。

2 家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、いつでも、相続財産の保存に必要な処分を命ずることができる。

3 第27条から第89条までの規定は、前項の規定により家庭裁判所が相続財産の管理人を選任した場合について準用する。

 

(相続の承認及び放棄の撤回及び取消し)

第919条 相続の承認及び放棄は、第915条第1項の期間内でも、撤回することができない。

2 前項の規定は、第一編(総則)及び前編(親族)の規定により相続の承認又は放棄の取消しをすることを妨げない。

3 前項の取消権は、追認をすることができる時から六箇月間行使しないときは、時効によって消滅する。相続の承認又は放棄の時から十年を経過したときも、同様とする。

4 第2項の規定により限定承認又は相続の放棄の取消しをしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。

 

◆ 放棄の無効

1 相続放棄の申述が家庭裁判所に受理された場合においても、相続の放棄に法律上無効原因が存するときは、後日訴訟においてこれを主張することを妨げない。(最判昭29.12.24

 

◆ 放棄の撤回

2 一度受理された相続放棄の撤回は許されない。(最判昭37.5.29